第3話:実家から追い出されたんですが!? 《ルート状態:家なし/同行者:騎士/野営未遂》
セレナの屋敷は、夜の闇に沈んでいた。
門をくぐった瞬間、空気が変わる。
王城よりも、ずっと冷たい。
(あー……ここも安全地帯じゃない感じ?)
『警告。
この場所は精神的安全度が低下しています』
「もうちょいオブラート包めない?」
返答はない。
包む気はないらしい。
使用人の案内もなく、広間に通される。
ほどなくして、父の声が落ちた。
「……王太子殿下から連絡は受けている」
(はっや!?
え、なに、LIN〇でも繋がってる!?
“今さ〜婚約破棄したわw”とか来てんの!?)
「婚約を破棄された恥さらしを、これ以上屋敷に置くわけにはいかん。
今すぐ出て行きなさい」
淡々とした宣告。
『感情的対立は非推奨です』
(はいはい、従いまーす)
セレナの私室へ向かう。
――唯一、彼女が“息をしていられた”場所。
(ここが……セーフティゾーン、だったんだよね)
最低限の荷物をまとめる。
小さなカバンひとつ。
着替えと、少しの小物と、タブレット。
『……確認中』
一拍。
『セーフティゾーン、解除されました』
「言い方ァ!!」
思わずツッコんだが、
もう戻れないことは分かっていた。
夜の門前に立たされる。
カバン一つ。行き先なし。
月がやけに明るい。
(……さてさて。
これ、逆に自由では?)
『生存ルートは、まだ存在します』
「さすがジョミりん。
ポジティブ思考AI」
そのとき。
「……セレナ殿?」
低く落ち着いた声。
振り返ると、月光を背に
銀髪の騎士が立っていた。
(また会った!? 今日、遭遇率高くない!?)
ラインハルト・ヴァルツァー。
第二王子専属騎士。
視線が、アタシの足元――
小さなカバンに止まる。
「……この時間に、お一人で?」
「うん!
ちょっと実家、即日チェックアウトで!」
軽すぎる返答に、
ラインハルトが一瞬、言葉を失う。
「……そう、ですか」
(重っ)
なので、先に切り出す。
「ねえ、ラインハルトさん」
「……はい」
「今日だけ泊めてって、アリ?」
空気が、完全に止まった。
「……それは」
即答できない。
倫理、立場、規律――
騎士としてのすべてが、顔に出ている。
(あ、これは無理か)
アヤカは即座に方向転換した。
「じゃさ!
テントだけでも貸してくれたら助かる!」
「……テント?」
「うん!
この森、めっちゃキャンプ向きじゃない?
ソロキャン、前からやってみたかったんだよね〜」
夜の森を見て、
本気で楽しそうに笑う。
ラインハルトの思考が、完全に停止した。
(冗談……では、ない)
目は本気だった。
この夜を、“危険”ではなく“選択肢”として見ている。
(正気とは思えない。
だが――)
騎士としての常識が、次々と頭をよぎる。
夜の森。
無防備な令嬢。
元・王太子妃候補。
(止めるべきだ。
止める理由は、いくらでもある)
だが、同時に思う。
(では、どこへ行けと言うのだ)
屋敷には戻れない。
城にも戻れない。
行き先は、ない。
“騎士として正しい行動”が、今この瞬間、
分からなくなった。
(……これは、
情か。それとも責務か)
数秒――
だが彼には、異様に長く感じられた沈黙の末。
「……分かりました」
言葉は出た。
だが、決断は落ち着いてなどいない。
「私の屋敷へ。
それ以上の妥協は、できません」
「え、マジ!?
騎士さん優しすぎじゃん!」
『生存ルート、更新されました』
「やったね、ジョミりん!」
騎士は、そのやり取りを理解できないまま、
ただ一つだけ確信していた。
――このセレナは、
自分の知る“彼女”ではない。
夜道を並んで歩きながら、
ラインハルトは思う。
(……この選択が、
何を連れてくるのか)
答えは、まだ遠い。
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