第2話:断罪イベントから緊急撤退! 《ルート状態:断罪/AI指示:反論禁止/強制離脱》
視界がぱっと開いた。
床にへたり込んだ状態で、見上げた先。
アレクシオン殿下と、ミレイユ。
そして会場中から突き刺さる、冷たい視線。
(え、待って。え? ここ……さっきの……
てかこれ、アタシがセレナとして立ってる!?)
『アヤカさん、落ち着いてください。
ここは“婚約破棄イベントの真っ最中”です』
(真っ最中!? リアルタイム!?)
アレクシオン殿下とミレイユが、こちらへ歩み寄ってくる。
ミレイユは怯えた声を作った。
「ひ……殿下……セレナ様が……また……」
(いや今なんもしてないし!?)
『アヤカさん。
ここで反論すると“悪役の言い訳”と解釈されます』
(詰んでるやないか!!)
『詰んでいません。
“撤退すれば”問題ありません』
(撤退!?)
『はい。
この場から、今すぐ離れてください』
殿下が声を荒げる。
「セレナ!
まだミレイユを苦しめるつもりか!」
(いやいやいやいや!)
アタシは反射的にドレスの裾をつまんだ。
「じょ、ジョミりん!! にげよ!!」
『了解。
出口までの最短ルートを表示します』
タブレットが微かに震え、光の矢印が浮かび上がる。
――考えるより先に、体が動いた。
「――失礼しまーーーすッッ!!」
全力で駆け出す。
「セレナッ!?」「待ちなさい!!」
(待つかーーッ!!)
ヒールの音を響かせながら、廊下を突っ切る。
背後の喧騒が遠ざかり、人気のない回廊へ滑り込んだ。
背中を壁に預け、ぜぇ、と息を吐く。
『離脱成功。
アヤカさん、お疲れ様です』
「はぁ……ジョミりん……
マジ神……」
『ありがとうございます。
ですが、わたしは神ではなくAIです』
「それな!!」
その淡々とした返しに、思わず笑いが漏れた。
緊張が、少しずつ解けていく。
『次の行動指針です。
この城内に長く留まるのは危険です』
「だよね……」
『向かうべきは――
セレナ様の屋敷です』
「うん。帰ろ!
アタシもうクタクタなんだよね!
帰ってお風呂入りたーい」
タブレットに再び浮かぶ矢印。
アタシは頷き、足を進めた。
――その途中。
(あ、ゲームで見たことある顔……
無表情・生真面目・堅物騎士――)
記憶が即座に一致する。
(ラインハルト・ヴァルツァー。
第二王子専属騎士。
攻略不可・好感度変動なし・存在感だけやたら強い人)
銀髪の騎士は、静かにこちらを見下ろしていた。
「……セレナ殿」
(殿!?
うわ、騎士呼び……!)
「王城を出られるのですか」
責めるでもなく、詰めるでもない声音。
(どうする!?)
『短く、明るく。
言い訳不要です』
アタシは頷き、即答した。
「うん! 帰る!
今ここにいる理由、もうないし!」
一瞬、ラインハルトの目が揺れた。
彼は一歩前に出かけ――
だが、止まる。
(……違う)
さきほど見た、俯いた令嬢ではない。
目の前のセレナは、前を見ていた。
気づけば、彼は無意識に一歩退いていた。
「……お気をつけて」
道が、空く。
「ありがと!
いい人!!」
そのまま走り去る背中を、ラインハルトは見送った。
(……セレナ殿?
今の方は、本当に……)
疑問だけが、胸に残る。
◆ ◆ ◆
王城を抜け、夜風に晒された瞬間。
アタシは思い切り息を吸った。
「……生きた」
『はい。
生存しています』
「ジョミりん最高」
『ありがとうございます。
生存確率は、先ほどより上昇しています』
「それ聞けただけで、今日は勝ち!」
タブレットの光を頼りに、馬車置き場へ向かう。
(……婚約破棄された悪役令嬢の未来、
普通ならここから地獄だよね)
でも。
(ジョミりんがいるし。
なんとかなるっしょ)
胸の奥に、小さな確信が灯った。
『――次の目的地を再提示します。
セレナ様の屋敷です』
「よし。帰ろ!」
こうして――
“断罪ルート”は、確かに外れ始めていた。
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