第20話 新たなる刺客
「.....間違いなく、アリアがあの日着ていたドレスです」
伯爵は、かすかにまぶたを伏せた。腹部に大きな穴があり、くすんだ緑色でボロボロのドレス。
「なるほど、なるほど」
伯爵は両手で握り締め、ドレスを引きちぎった。
「あああ....え、あ、あの、おちついてください.....」
いきなりの奇行に、僕は思わず逃げ腰になった。まぁそうなるのも無理はない。一人娘を失った親はどの世界でも狂う。僕だってここまでのことはしないかもしれないが、涙は多く流れるだろう。
「あの子は……アリアはもういないんですね……」
目を赤くし、涙をため、伯爵は言った。
「ええ、残念ながら」
無感情な声色でルナリアが念を押す。
「そう……ですか……」
伯爵は、再びドレスの切れ端を握り締めた。
「.....敵は、打っていただけたんですよね.....。ありがとうございます……。本当に、ありがとうございます」
伯爵は、深く頭を下げた。僕らがこうしてドレスを無事に魔族領域から持ってきたということは、すでに復讐は済んでいると思ったのだろう。だが実際それは....間違いであるような、そうでないような。とにかく言葉や文章に表せない、とても曖昧なものであった。
謎が残った。
アリアがなぜ、昆虫族のグロスと親密になっていたのか。彼女に何があったのか。きっかけがあるとなれば、間違いなく目の前で今号泣しているこの母親だろうが、しかし一体何があったのだというのだろう。
その謎が解けることはもうない。なぜならここで依頼は終わり、このヘンドリック伯爵との関係が切れるから。
「取り乱して申し訳ない。お茶を淹れ直しましょう」
伯爵は立ち上がり、ドレスだったものを持ち上げた。
「いえ、僕たちはこれで失礼します。日が傾いてからでは、この町から出る時間が遅くなってしまいますので」
ルナリアは失礼にも、お茶のおかわりを拒否した。伯爵は何も言わなかった。気遣ってくれたのだろう。
「じゃあ.....約束通り報酬を支払おうか」
伯爵は、割れた窓の外に視線を向けた。目線の先には騎獣、というか馬が二頭。大変なことをした割には少ない報酬のように思えるが、貧困に陥った町でできる最大限の努力なのだろう。仕方がない。
「ええ、お願いします」
ルナリアはそれだけ答えて、席を立った。僕もその後ろに続く。屋敷に出て馬の元へ行くと、一頭は僕らを待っているようだった。一方の伯爵は、まるでその場を動くことがないように、一歩たりとも動こうとはしなかった。
「僕らは、これで」
「ありがとうございました」
挨拶を告げると、伯爵は首を縦に振った。僕が頭を下げるのを見て、変な奴を見るような目でルナリアがこっちを見ていたが、大したことではないと無視して馬へ乗る。久々の馬の背、現世で小さい頃、僕がいた地元は馬の名産地。そのため何度か経験がある。懐かしさが込み上げて、自然と顔が綻んだ。
「いくぞ」
後ろからルナリアに声をかけられる。ちょっと感傷に浸っただけじゃないか、急かさなくてもいいのに。
「お気を付けて」
伯爵の声が聞こえた。それに見送られて、僕らは走り出した。生物の背中というのは、自転車などと違い、独特の上下運動と温かさがある。それが心地よい。
ルナリアは意外にも、ずっと黙って落ち着き払い、巧みに馬を操った。なんというか....この世界の冒険者は誰しもに馬に乗れることが必須なのだろうか?現実の時代だったら、乗れるのなんて都会じゃクラスに一人もいないだろう。
「いいね、馬、最高最高」
ルナリアがぼそっと呟いた。この町からようやく出られるからか珍しく上機嫌。
「随分上機嫌だね」
「そりゃそうでしょ、君だってなんかあのボロボロ伯爵へ丁寧に接してたけど、ほんとはうざったくてたまらなかったんじゃないの?」
「いや、別に。そう思ってるのはルナリアだけだ」
「……真面目に接する相手じゃないよ。あんな奴は」
「なんでそんな風に言うんだ。娘を亡くして悲しいんだから、労ってあげてもいいじゃないか」
「僕らがやっても何にもなんないでしょ」
「……」
それを言われてしまうと何も言い返せなくなる。確かに、僕らが何かしたところで彼女は救われないだろう。だけど、だからと言って冷たい態度でいるのは違うはずなのだ。少なくとも僕の生きていた社会において、弱っている人に優しくするのは至極当たり前のことであるし、そうしない人物は嫌悪されるもんである。こちらの世界では、僕のような人間は違和感の塊だというのだろうか。
「そういうところ、まだ若者だね」
ルナリアは前を向いたまま言った。見た目で考えれば彼女の方が若いのに.....やっぱエルフというのが未だ信じられん。
「まぁ、僕なんでもいいけど。ここにいると疲れるし、早く出るぞ」
「うん....」
僕は、街並みに目を移す。建物と建物の隙間に見える景色は、やはりどこも暗い雰囲気に包まれており、希望というものを感じさせなかった。住民たちは、疲れ果てた様子で道を行ったり来たりし、誰一人として笑顔を見せることはなかった。そうして町から背を向け森へと進もうとしたその時、ふと僕の耳に背後から呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、そこには道具屋の店主....もといアリアの父が、こちらに向かって手を振っていた。
「ちょっと、どうしたんですか!?」
僕は思わず驚いて大声をあげてしまった。
「ちょっといいかな」
ルナリアが怪訝そうな顔をしながらも、馬を止めて店主を待つ。店主は息を切らせながら、僕たちの前に駆け寄ってきた。
「ごめんね、急に呼び止めてしまって」
「いいえ、どうしましたか?」
「実は……君たちに感謝の気持ちを伝えたくて....これを」
店主は深々と頭を下げ、僕に袋を一つ渡した。
「本当にありがとう。娘の仇を討ってくれて……」
「あぁ……いえ、その……」
僕は、お礼の言葉に対しどう答えたらいいのか迷った。直接手を下したのは、ルナリア....というより力の使いすぎで消滅しかけてたし、なにより……アリアが生きていたのにも拘わらず殺された原因は、自分にあるのではないだろうか、と考えていたから。だとしたら、むしろ謝らなくてはならないのは僕の方じゃないだろうか……なんて思って。けれど僕が言葉を発する前に、店主は話し続けた。
「これは....私が君たちにできるせめてもの感謝の印だ。受け取ってもらえるかい?」
店主が差し出した袋の中には、ポーションが二つ入っていた。この町での物資不足を考えると、かなり貴重な物なのではないだろうか。おそらく金銭面での支払いはできないものの、何か別の形でお礼をしたいと考えたのだろう。僕はしばらく考え、結局受け取ることにした。
「頂戴いたします。大切に使いますね」
「そう言ってくれて嬉しいよ。これで少しでも役立てばと思ってね。それと......」
彼は少し口ごもり、しかし意を決したような様子を見せると、僕の方を見た。
「どうかしたのですか?」
「その.....」
何か言いにくい事でもあるんだろうか?店主は、僕に耳打ちしてきた。
「何コソコソ話してんの?そーゆーの苦手なんだよね。はっきり話せよ」
「話してくださるだけいいじゃないかルナリア.....すいません」
ルナリアは明らかに不満そうだったが、僕は店主に耳を近づけた。
「な、何でしょう?」
「実は....君たちが森に入ってる間、妻の邸宅に複数の人物が出入りしていてね……」
「は、はい?」
予想外の内容に、僕は一瞬混乱した。複数人が出入りしていた?一体どういうことなのだろう?
「それってどういうことです?」
僕が尋ねると、店主は辺りを見回し、さらに小さな声で答えた。
「わからない……けれど、やけに裕福そうな服装だったよ。きっとどこかの貴族だと思う」
「なるほど……」
こんな街に貴族が?依頼でも受けに来たのだろうか。だが、それにしたっておかしい。
「それで、その人たちと僕らになんの関係が……」
「いやそれが....どうもその人たちは君たちのことを.....」
その時、前方の茂みから10人ほどの集団が騎獣に乗って現れた。皆見た目からして明らかに戦士なオーラを醸し出しており、全身防具を身に纏った強そうな男性二人に挟まれるようにして座る一人の女性は、特に異質な存在感を放っていた。周囲の屈強な男性たちとは対照的に、ひときわ小さく華奢な身体つきの少女。服装もロングドレスで明らかに浮いていた。しかし、その凛とした佇まいと自信に満ちた眼差しからは、並々ならぬカリスマ性が感じられた。彼女がこの一行の中心人物であることは明らか。
「ごきげんよう」
彼女は、よく通る澄んだ声で挨拶をしてきた。その表情には余裕があり、こちらに対する警戒心のようなものは見られない。彼女の両脇を固める男たちも同様だった。彼らからは、挑発的な雰囲気こそ感じられるものの、敵意のようなものは読み取れない。そして最後尾に控える大柄な男……一際分厚い鎧を纏った巨漢の男は、兜で顔が見えず、その正体は全くわからない。だが、明らかに強い……。この一連の流れだけでも、相当な修羅場を乗り越えてきたであろうことは容易に想像できた。
「これは……どうもこんにちは。僕らに何か用でしょうか」
「何ご丁寧なあいさつ吞気にやってんの?コイツらペーラン商会の刺客だよ」
「ええ!?」
よくよく見ればあの女性が乗っている馬車、以前僕がテオフィロと乗ったものと似ている!僕らがここで依頼を遂行しているうちにゴルディアスから僕らの動向を聞いて、追いかけてきたのだろうか?
「ええ、その通り。はじめまして、私はペーラン商会商品部、セレッティ。以後お見知りおきを。この度はラック・フォーチュナ様の身柄をお預かりしたく、参りましたの」
はてどうしたものか、と僕は考え込んだ。相変わらずテオフィロは僕を引き入れるために大規模な捜索網を敷いているみたいだが.....セレッティと名乗った女性は、高慢そうな微笑みを浮かべながらこちらを見据えており、隣にいる護衛の男性たちもまた剣呑な空気を漂わせている。
「申し訳ありませんが、僕はあなた方と一緒に参るつもりはありません。スキルの抽出に苦痛が伴うのであれば、なおさらです」
「そうでしょうとも。ですから私たちは、あなたを物理的に連れ帰って社長に献上するまでございます」
彼女はそう言うと、後ろの大男に合図を送った。次の瞬間、大男は鈍い金属音を立てながら槍を構えた。どうやら戦闘になりそうだ。この雰囲気を察した店主は、そそくさと逃げていってしまった。これも仕方のないことか……
「わ、わかりました。僕が勝ったらあの......見逃してもらいますよ」
正直、勝ち目はない。相手は重装備の大男が何人もいて、こっちは非力な新米冒険者。攻撃魔法はまともに使えない、体術もクソだ。普通に考えて負けるだろう。というか勝てるわけがない。まず僕の攻撃が通用するかどうかも怪しい。一人なら。
僕にはルナリアという頼もしい仲間がいる。彼女と協力すればまぁなんとかなるだろう。……なる……なると信じたい。
「あ~そう……じゃあ僕は関係ないから行かせてもらうねー」
「えっ?」
ルナリアは、僕の反応を確かめる間もなく、彼らを横目にそのまま茂みの中へと姿を消さんと歩みを進めた。その様子を困惑しながら見るペーラン商会一同。何事もなかったかのように去ろうとするルナリアは、ペーラン商会の面々が唖然としているのを尻目にどんどん進んでいった。
「ちょちょちょ、待って!!」
「は?なんで?」
彼らよりも奥へと行ってしまった彼女を呼び止めようと、思わず僕は大声をあげてしまった。するとルナリアは僕の方を振り返り、心底うんざりしたような表情を浮かべながら舌打ちをした。
「あのね、僕はここでこいつらと戦う義理なんてないんだよ。ペーラン商会の人間に恨みもなければ、恩もない。僕個人には一切関係のない話だからね。つまりは、今の状況で僕が君の側につく理由なんてないんだよ」
「でも……今まで一緒に行動してきたじゃないか!見捨てるのか!?」
「ああ見捨てるよ。勘違いするな、僕は別に君を仲間だと認めたわけじゃないからな。ただ利害が一致していただけ。君がペーラン商会に捕まってスキルを抽出されようが、僕にとっては.......まぁ別に殺されるわけじゃないんだからいいじゃないか」
「それはそうだけど……」
「わかってくれた?じゃ、そういうことで。僕は森を抜けて街に行くから。またね」
「お待ちなさいルナリアさん」
「……」
セレッティの静止に、ルナリアはピタッと動きを止めた。豪華な馬車がルナリアと向かい合うよう動く。以前乗った馬車とは違い、セレッティが乗る馬車はオープンな形式となっており、こちらからでも背中が見える。
「あなたにとって非情に残念なことに、ペーラン商会は現在、貴女の身柄も求めています」
「は?冗談だよね。こんな珍しくもないエルフのためにそこまですんの?もしかしてついででも捕まえられるほど、僕って弱そうに見える?」
「いいえ。貴女の実力.....使用スキル、魔力量、装備、そのピアスの銘柄……そして経歴。全てを考慮した上で、確実に貴女を確保するように、上層部からのご指示が入ったのです」
この一言を聞いて、ルナリアの顔色が変わる。恐らくこれは冗談じゃない。ペーラン商会は本気でルナリアを狙っているのだ。
「ほほう。噂を聞きつけたか……めんどくさいね。お前ら、やるの?」
向こうに五人、僕を睨む人員も五人。完全に袋の鼠って感じだ。馬上での戦闘も、ガチガチの兵士との戦闘だって初めてだ。逃げるしかない。……ルナリアと協力すれば、運が良ければ、なんとか切り抜けられるはず……!
「お爺様、ラック様の確保は任せましたよ。もちろん生け捕りは絶対です」
「おう!」
お爺様と呼ばれた大男は、背中に背負った斧をゆっくりと抜き始め僕へと向ける。生け捕りと言っても手足の一本や二本ならもがれそうだな……
「それじゃあ、さっさと片付けましょうか」
「あー待って待って、ちょっと待って!」
号令と同時に、ルナリアが両手を上げて叫んだ。唐突な提案に、全員が思わず静止してしまう。
「どうされました?ルナリアさん」
「あの……降参です。武器を下すんで、勘弁してください」
「……?」
その場にいる全員が耳を疑っただろう。まさか彼女がそんな事を言い出すとは思ってもいなかった。セレッティは、ルナリアを品定めするかのように眺めた。彼女は杖をしまい、完全に無抵抗の姿勢を示している。
「何やってんだルナリア!」
「うっさいなぁ!僕に続け!」
「いやでも!」
「お前ひとりで勝てないだろこれ!選択肢は一つしかないんだ。諦めろ」
ルナリアは真剣な眼差しで僕を見つめていた。どうやら本気で白旗を上げているらしい。どうするべきか。一旦胸に手を当て考える。周囲を見る。あの大男....というかお爺様の威圧感、そしてセレッティの自信に満ち溢れた表情……。
参りました。と一言だけで、この息苦しさと不安から解放されるならば、安いものなのかもしれない。だが、その後僕を抱いてくるのは苦痛なのだ。明確に苦痛があると、テオフィロから言い切られた。
例え勝ち目も逃げ道も見えなくとも、大人しくついていって苦痛を受けるよりも、戦った方がまだマシなのではないか。
決まった未来よりも、一寸先の闇を切り開く生き方の方が、僕は好きだ。
「いいえ!僕は戦います!さぁ皆さん、かかってきなさい!」
「あ、マジ?頑張れ~」
ルナリアは僕にひらひら手を振っていた。
「さっきまで意気揚々と戦うモードに入ってたくせにー!」
「気のせい気のせい」
「さて……覚悟はよろしいかしら。ラック・フォーチュナ様」
セレッティがこちらに顔だけ振り向いた。
「はい……もちろんです」
額には汗が滲んでいる。無意識に握りしめた拳は震えていた。逃げ場はもうどこにもない。それでも、戦う以外の選択肢はない。僕は大きく息を吸い込むと、覚悟を決めた。
「では……」
セレッティの声が静かに響く。それと同時にお爺様をはじめ6人の兵士が武器を構え始める。
「やっちゃって」
「承知しました。では参りますよ!!」
お爺様は斧を振り上げた。その鋭い刃先が陽光に反射し、一瞬眩しさで目がくらむ。だがこれにひるんでいる暇はない。
「ボッカス・ポーカス!」
僕は呪文を唱え、一瞬にしてお爺様の顔周辺になんかハトみたいな鳥が50羽出現。
「ぐぬぬ……なにっ!?」
お爺様は咄嗟に斧を横に大きく振り回し、鳥を追い払う。相変わらず無茶苦茶なスキル効果に、周囲の兵士5人も動揺を見せた。よし、今なら逃げられる。
「なるほど、噂通りのスキルのようですね。ですが、大して驚くべきことではありません。何が起きるかラック様の運次第。お爺様、躊躇は不要....」
「アース・レジク!」
突如、降参したはずのルナリアがセレッティめがけて魔法を放った。巨大な岩の弾丸が彼女に向かって一直線に飛んでいく。地面の砂埃が舞い上がり、木々の枝が風で揺れる。
この展開は頭の片隅で考えていた。ルナリアがこんなあっさり自分の身を投げ出すはずがないと。反骨精神の塊みたいな性格だし。杖を介さずスキルを発動したので、魔力の消費量は増大。だが、当たればセレッティは無事じゃすまないだろう。岩はそのまま、彼女に直撃した。
「ふふっ」
セレッティが唇の端を吊り上げ、小さく笑う。僕の目の前で余裕綽々の様子だ。さっきまでお爺さまが乗っていた騎獣の上に、彼女が乗っている。先ほどまでは明らかに馬車の上だったはずなのに、一瞬に移動していた。
「身代わりって奴?」
ルナリアの前には、盾を構え岩石を防ぐお爺さまが。
「その通り。私が付けた印のある者なら、ある程度の距離まで瞬時に入れ替わることができるの。こんな風にね」
そういうと目の前のセレッティは再びお爺様へと移った。なるほどなるほど、とにかく奇襲失敗というわけか。これは少々、逃げるのが厳しくなったな……
「逃げるのはやめて、協力していただけないかしら?」
「うるさい、阿婆擦れが」
「貴女失礼な物言いをなさるのね」
セレッティは怒りに眉をぴくりと動かした。それと同時に、周囲の騎兵2名が左右からルナリアを挟み込むようにして迫る。そのうちの一人は手に槍を持ち、もう一人は剣を抜いていた。どちらも重厚な防具に身を包み、アース・レジクで迎撃することも容易ではない。
「アース・ヴェスカルーン」
なのでルナリアは自分の周囲に土の壁を作り、攻撃を防ぎつつ壁の一部を消しながら飛び出し馬を走らせ茂みへと進んで行った。僕も観戦してる場合ではない。お爺様に首根っこを捕まえられている。
「ハ......!」
「……お前さんのスキルは危険だ。すまんが大人しくしといてくれい」
多分このまま意識を落とされて攫われたら元も子もない。すぐさま心の中で唱えスキルを発動。
「む?!」
突然周囲に出てきたのは、7匹ぐらいの狼。前会ったフェンリルとは違って普通のサイズだ。彼らは僕のペットという設定なのか、目の色を変えてお爺さまに飛び掛かり始めた。それを受けたお爺さまは、僕を一瞬で離すと武器を持ち直し狼達を振り払う。再び乗馬した僕は狼とわちゃわちゃやってる騎兵を尻目に、全力でルナリアが逃げた方へと駆けていく。いつの間にかセレッティやルナリアを狙っていた騎兵がどっか行ってることを見るに、恐らくルナリアはセレッティたちに追われているんだろう。ここは、とりあえずルナリアに追いつくために疾走だ。




