第19話 虫らしい生き方
あのアリアが....生きた状態で、僕たち二人の前に現れた。そして……グロスをかばうような行動を取っている。
まさかあんな形容しがたい生物を本心からかばうなんて信じがたい。何らかの術を疑ってしまう。
「あの……それって、あなたの意思なんですか?本当に」
「え?」
「そこにいる死にかけの虫けらに操られてるんじゃないの?」
僕とルナリアは、アリアを怪しむような目で見る。相変わらず発言に容赦がないなぁと、僕の左太ももを岩石で押しつぶしてるルナリアを見上げた。
「そ、そんなことない!私は……自分から街を出て、自分の意志でグロスと……一緒にいるの!」
アリアは必死に訴えかけるように、そう叫ぶ。うーんこうなってくると、本当にアリアの意思なんだろうと認めざるを得ない。仮にそうじゃなかったとしても説得だけじゃどうにもできない。
アリアの表情からもわかるくらい、彼女はグロスのことを庇っている。それにしてもどうしてこんな生き物に固執するんだろう……?さすがに理解が追いつかない。普通の女の子ならこれを見て吐き気を催すか卒倒すると思うんだけど……。
「まあいいや、とりあえず私たちはあなたを家族の元へ連れ戻しに来たの。無理やりにでも来てもらうよ、アリアさん」
ルナリアは落ち着いた声でそう告げる。するとアリアは少し後ずさりしながら……首を横に振った。
「い、嫌だ……私、帰りたくない」
「ふーん、そう。でもこっちには選択肢は一つしかないんだよね。だって私たちが何にもなしで帰ったら多分、報酬はなしで無駄骨だ。冗談じゃないよ、いつまでたってもあんな街から出られない」
「……」
グロスはピクピクと痙攣を繰り返していた。まだ一応息はあるようだが……これ以上動けば間違いなく体は崩壊するだろう。亀裂はさらに深く刻まれている。
アリアはその様子を見て表情を曇らせると、意を決したように彼女のほうをまっすぐ見た。
「グロスにこれ以上酷いことはしないで……私を連れて行っても構わないから……お願い……!」
涙ぐみながら懇願するアリアに、ルナリアは小さくため息をつく。
「確かに....君が大人しくついてくるだけで報酬は得られる。だけどねー」
彼女はグロスに指を刺した。そして非情な現実を、彼女に突きつけるのだった。
「こいつは殺す。僕の顔に土つけてさぁ、さらに殺そうとしたんだ、絶対に許されない罪だよ。」
ルナリアは冷たく言い放つ。確かにグロスを庇おうとする姿勢自体は立派だと思うけれど……こちらとしては非情に迷惑だ。グロスは今ルナリアが言ったことに加えグラスバードの町民や冒険者を殺した張本人であり、放置しておくわけにはいかない。
「殺すの?私の大切な....グロスを、どうしても殺すの?このおなかの子の父親になるかもしれないのに……!!」
アリアの口から驚愕の事実が飛び出した。なんだって……?ここにいる化け物との間に、すでに命が宿ってるだって……?こんな話ありえるのか?いくらなんでもおかしくてやばいと思った僕はルナリアを見る。
彼女もかなり困惑しているようで……珍しく眉をひそめていた。
「なるほど……その出っ張ったお腹にも昆虫族の子供が入ってるわけか」
ルナリアは納得したように頷く。しばしば据わった目で彼女の腹部をじっと見つめた。彼女の性格的にこれを許すとは到底思えない、あっさり殺してしまっても不思議ではない。
「じゃあもう殺すしかないね。昆虫族はもうこの世界で繁栄してない上に、君の夫はあの様だ。どう育てるつもりなの?馬を育てるのとはわけが違うんだ」
淡々と説明する彼女に対し、アリアは泣きそうな顔を浮かべていた。もはや泣きそうどころか、すでに涙がこぼれ落ちている。
「お願いします……お願いします、殺さないで……グロスだって積極的にあの町の人々を食べたりした訳じゃないんです……私が、私がそうした方がいいって、グロスに教えたんです……」
そうした方がいいって勧めたってこと?一体全体どんな倫理観してたらそんなことができるんだ……?
というよりその件に関してはグロスも悪いだろう。いくらアリアが唆したとはいえ、実際に手を下したのはグロスなのだから。
「どういうことですかアリアさん、あなたが先導して人々を襲撃したということですか?」
「そう、私が町の人々を殺す様に言ったんです……どうせ、あの町の人たちなんて既に死んでるようなものだし、生きてても楽しいこと今後ないじゃないですか……絶対」
「だからといってなんでそんなことする必要があるんですか……?」
僕はさらに質問をする。しかしすぐに答えは返ってこなかった。ただ唇を噛み締めながら俯いているだけだ。そして数秒後、意を決したように顔を上げると彼女は語り始めた。
「……昆虫族....いや、私たちゴキブリ族の新たなる繫栄のために、町の人間達には死んでもらう必要があったんだ。長く人間の目に付かない環境を用意するには、グラスバードが邪魔だっ....」
「アリアさん、それはさすがにダメですよ」
僕は思わず割って入ってしまった。いくらなんでも酷すぎる。どう考えても彼女の言い分が正しいはずはない。グラスバードは廃れているとはいえ町として機能している。伯爵の話を聞いてみるにちまちまと子供から町民を殺しているようだけどそれではあまりに非効率的だし……結局僕たちみたいな冒険者が来てしまっているではないか。
「あなた方一組のつがいしかいないのに何が繫栄ですか、まず仲間をさがすところから始めるべきでしょう……人殺しをタラタラやって....」
僕は少し怒気を含ませて言う。アリアは少しうつむいた。しばらく沈黙が続いた後、ルナリアは口を開いた。
「もういいだろラック、これ以上彼女を責め立ててもこいつらを拒絶する理由が増えるだけだ。僕たちの役目はこのガキを回収することであって裁判官とか尋問係じゃない」
たしかに彼女の言う通りだ。僕は何を熱くなっていたんだろう。今は依頼主である伯爵の元にアリアを連れ帰ることが最優先事項だ。偉そうに説教しようとするなんて馬鹿げてる。
「結局グロスを....いやこの子共々.......殺す気なんですよね?」
アリアは虚ろな目で呟いた。おそらくこれからの未来に絶望しているのだろう。今もなお愛おしそうに自分のお腹をなで続ける。いったいこの子に何があったのか気になるけど、僕たちは同情せず依頼を果たさなければならない。
「そうだね、そこの死にかけゴキブリを殺すのは確定事項」
ルナリアが短く答え、岩が先端に付いた杖を持ち上げる。僕の左太ももは見るも無残な状態になっているが出血は少ない。ボッカス・ポーカスを唱えまくってなんとかポーションを出そうと試み始める。その間にルナリアは、グロスではなくアリアの頭に杖を向けた。何をしているんだろう。グロスはもう満身創痍だとはいえ、目を離していい存在ではないはずだ。
「だけど、僕は今とても不安なんだ。君が孕んだそのゴキブリの子を確実に殺せるかどうか、それがわからないんだよ」
「や、やめて.....来ないで……」
杖を向けられ怯えるアリアに、ルナリアはゆっくりと近づいていく。アリアは後退りをするが、木の幹に追い詰められてしまった。
「じゃあ、ジッとしててね。多分君も死ぬと思うんだけど、仕方ないよね。頑張って耐えてよ」
不味い、ルナリアは岩の付いたあの杖をアリアの腹部へ強打させるつもりだ。胎児が死ぬだけではすまないだろう。下手したら即死の可能性だってある。人体は脆弱だ。アリアが死んでしまったら依頼主の伯爵が悲しむ。彼女の強い思いが、願いが無駄になってしまう。流石に黙っているわけにはいかない。
「止めろ、ルナリア……!」
「黙ってろ」
彼女は杖を大きく振りかぶって今にも降ろさんと力強く握りしめた。止める手段がない、ボッカス・ポーカスはさっきから一本のバラだったりニンジン3本だったりプレパラートだったり、ろくなものが出てこない。完全に運が僕を見捨ててる。
もう間に合わない……
「やめて、やめて、やめて……!」
「やめない....ここで殺す......そしたらお前たち3匹とも......地獄で楽しくくらせばいいじゃないか.....!!」
ルナリアはあのおっさんを殺したときと同じように、目をかっぴらいた。あぁ終わった、と思った時だった。
「……待て」
グロスがルナリアの背後を取っていた。その一言を聞いて、彼女は杖を振ることなく、グロスのほうへと振り向いた。僕は突然動き出したグロスに警戒しつつも、急いでボッカス・ポーカスを再度唱えると、黄金色に輝くの液体が入った試験管が出てくる。これはひょっとしたらいいポーションなのかもしれない。ルナリアは依然として、鋭い眼光を光らせてながらも、体を震わせていた。グロスに対する恐怖なのか、はたまた別の感情によるものなのかわからないけど、少なくとも平常ではない。
「我の......大切な番と、子を傷つけないでくれ」
ルナリアめがけて鎌が振り下ろされる。今にも破裂しそうな体でよくやるなぁ。彼女は杖に付いた岩の部分で受け止め力の押し合いに持ち込んでいる。お互いに体を震わせながら睨み合う姿はまさに壮絶だ。
「.....死にぞこないのくせに、威勢だけは良いね。」
亀裂だらけの体、一回つつくだけで崩壊してもおかしくないほどにバキバキなグロスだが、それでもなおルナリアの力を上回っているのか、徐々に押し込んでいる....首筋に迫る刃に、彼女は焦りを感じたようで舌打ちを重ねている。このままでは不味い。僕は急いでポーションを飲んだ。
「我は君たちとは違い...憎しみや拒絶だけで行動していないのだ……大切な家族……新しい生命を守るために……」
「大切な、家族……?くだらない」
ルナリアは鼻で笑う。確かに心の持ちようだけで力は本来強くなることなどない。しかし、今の彼を繋ぎとめているのは、間違いなくそういった想いからくる力なのではないか。どこか父親らしいような、温かみのある雰囲気が、強さが感じられる。
「もうやめてグロス……」
グロスの腕からパキッという音が鳴り、アリアは青ざめた顔で呟いた。限界が近いのか腕を支える脚や胴体に大きなヒビが広がっていく。一方ルナリアの方にも限界が訪れようとしていた。地に膝をつき、額から脂汗を流している。
「アリア……もう我の役目は果たされた……我が子にこの体を食べさせてやれないのは残念だが……今のうちに逃げろ……」
「嫌だ……そんなの嫌だ!あなたも一緒じゃないと……行けない!」
「アリア……」
悲痛な叫びと共に彼女の瞳からは大粒の涙が流れ落ちる。グロスはそれを悲しい瞳で見つめていた。
「我がいなくとも....代わりとなる者はすぐ近くにいる……だから我のことは忘れろ……アリア」
「……代わりなんてない。グロス……あなたはあなたで、誰とも比べられないし代わりなんていない。だから私のため....この子たちのためにも、グロス、生きて」
「.....そうか、代わりなんてないのか......」
グロスの動きが一瞬止まった。ルナリアはそれを見逃さず、鎌を弾き、彼の腹に蹴りを入れた。当然のことながらグロスの体は衝撃を受け、腹部に大きく亀裂が入り……割れる。そこから臓器のようなものが零れ落ちてくる。どす黒い内臓だ。僕はどぎまぎしながら試験管の中に入っていたポーションを飲み干した。味は非常に苦く酸っぱかったが、太ももから先が復活した。
「お前は望み通り大地へ還るんだ……仲間たちと同じように、いい顔して死ねよ」
ルナリアは息を切らしながら、その場にへたり込む。僕は彼女の元へ近づき、グロスの最期を見届けた。彼の体は粉々になり、内蔵はドロドロにとけ地面へと消えていく。アリアはなんとか掬おうとするが、彼女の手には何も残りやしない。
「グロス……グロス……グロス……」
アリアはその場に座り込み、嗚咽混じりに何度も彼の名前を呼んだ。その顔には絶望の色が滲み出ている。全て、これで終わったのか。僕は安心して地面に尻餅をつく。ふぅ……と一息ついたのも束の間だった。アリアが何かを呟いたように聞こえ、耳を澄ませる。
「うう.....」
うめき声?……一体どうしたのだろうか。一瞬そう考えてると、アリアはその場で倒れる。体調でも悪くなったのか、僕は思わず声をかけてしまう。
「どうしましたかアリアさん……」
「う……お腹が……」
目が血走っている……焦点が合っていないと言うべきか、明らかに普通じゃない。正直ちょっと怖い。もしかしてショックのあまり狂ってしまったとか……!?いや、よく見たら彼女の大きな腹部がどんどん膨張して動き出している。それは激しく、皮膚が避けてしまうんじゃないかと感じるほどに。
「ちょっと……まさか……!!」
ルナリアが駆け寄ろうとしたその瞬間、アリアの腹部から何かが突き出た。それは手のように見え、さらに足のようなものが現れる。その生物は腹部を内側から突き破り、外へと這い出てきた。まるで、蝉が羽化するような……初々しい翼とともに、人間の赤ん坊が、いやゴキブリの要素を織り交ぜたキメラの幼体が二匹、現れた。そして、初めて見た光景に戸惑いを隠せずに周囲を見渡し始める。
「や、やっぱり......!こいつら....ここで殺すしかない!」
ルナリアは悪態をつきながら杖を両手で振り上げる。僕は焦って、彼女を引き止めた。
「待ってルナリア、その子達に罪はない!産まれたばかりだ、まだ何もわからない……!!」
僕は必死に彼女を制止する。赤ん坊に罪はないはずだ。ゴキブリとの混血だからと言って殺してしまっていいはずがない……。
「そんなことない!こいつらはいずれ化け物になって人を喰らうんだよ……!ここで殺すのが慈悲、それが世の秩序だ!」
「確かにそうかもしれないけど……でも……そんな予測だけで君が殺す必要はない……」
鳥肌が立ち、体は震え、目を赤くした彼女があの赤子を殺して平気でいられるのだろうか。いや……そもそも彼女は今まで平気で殺せていなかったんだろう。殺す前に目をかっぴらいたり、息を切らしていたりと不自然な挙動が多く見えたから、僕はそう感じた。
「……」
彼女はしばらく沈黙していて、僕はその間様子をうかがっていた。やがて彼女は溜息をつくと杖を下ろし、膝をつく。赤子はその隙にダンジョンのさらに奥へと逃げ去っていった。これで一件落着だろうか。僕は安堵のため息をつく。
「お前のせいで....逃げていったじゃないか」
ルナリアは半分放心状態になりながら、呆然と赤子が逃げていった方向を眺めていた。その目は生気がないようで、何を考えているのかわからない。
「ごめん」
彼女は僕を一瞥し、ふんと一息つく。
「まぁ、たしかに僕が殺す必要なんてないかもな。親のいない餓鬼なんて、どの道すぐに死ぬ」
「……僕もそう思うよ……」
僕は彼女がなんとか諦めてくれたことを察して、ほっと肩を下ろす。
「ところで....どうする?アリア.....なんかすごいことになっちゃったけど」
彼女は僕の目の前に転がる女性の亡骸を見て言った。彼女は血だまりの中、腹部には巨大な穴が空いている。即死だろう。辺り一面血の海と化していて、鉄臭さが漂ってきた。
「死体をもってかえるのは……ダメだな」
こんな凄惨な死体を見せられるのだろうか?少なくとも僕は見たくもないし、見せたくもない。これを持って帰ることはできないだろう。僕とルナリアはしばらく彼女の遺体を眺めていた。不思議と気持ち悪くない。むしろどこか儚さと美しさを兼ね備えた何かを感じるほどだ。おかしくなっちゃったかな?僕。
「まぁ.....このドレスでも持って帰るか?アリアの形見として認められそうだからな」
「そうだね」
僕たちは腹部に大きな穴が空いたドレスをアリアから剝ぎ取る。深緑色のドレス、今となっては血によって変色し、赤黒い模様が服の上に描かれている。
「じゃあ、帰ろうか」
「帰り道わかるの?」
「.....あー」
僕らはダンジョン内の落とし穴に落ち、その後進むことでここまでやってきた。事件の首謀者とアリアは死んだ。もう奥へ進む必要がない。つまり地上へ戻るには落とし穴の急斜面を登らなくてはならないので彼女のスキルが使えるようMPを確保しなければならないということだ。となると、僕がまたボッカス・ポーカスを唱えまくってルナリアのMP回復のアイテムを出すしかない。
「頑張れラック〜」
「他人事かよ」
「僕としてはここで死んでも構わないから他人事だ」
ルナリアはへらへらしながら地面に仰向けになって休憩している。僕はというとボッカス・ポーカスを延々と唱え続けていた。先程は偶然ポーションが出たからよかったものの、あんなものは早々出るものじゃない。実際あれ以降いろんなものを出してきてるけどほとんどゴミみたいなアイテムだったり変な出来事が起こったりして試行回数100回、ようやくポーションが出て僕たちは帰路についた。
「……疲れた」
ダンジョンに入り、出てくるまで何日たったのだろうか、僕はかなり疲弊していた。途中から眠くなって記憶がない。グラスバードに再び足を踏み入れた時、あたりは暗くなり始めていて夕暮れ時であった。
「お疲れラック、今日はとりあえず宿へ向かうぞ。伯爵への報告は明日だ。今日はもう寝る」
「納得してくれるかなぁ.....これしか持って帰れなかったけど」
僕は手に持ったアリアのドレスを見ながら不安に思う。部屋へと戻っても、このドレスばかり見つめていた。無事?に依頼を達成したと言えるだろうか?僕にはよくわからない。この達成によって、僕は成長できただろうか?たしかにルナリアが言う通り、拒絶することで僕は恐怖心を塗りつぶし、大嫌いなデカいゴキブリ、グロスと戦うことができた。ちょっと前までは普通に仕事してた身。成長したのかもしれない。
でも、きっとそういった憎しみだけでは人の道を失ってしまいそうで.......楽なのだろうけど、楽にはなりたくないな。
________「我は君たちとは違い...憎しみや拒絶だけで行動していないのだ……大切な家族……新しい生命を守るために……」
グロスが言っていた言葉を思い出し、僕は少し考え込んだ。きっとこれは、僕の悩みに対する回答として重要なものだ。僕は彼のようになれるのか……人を憎み、恐れ、拒絶することで力を行使するだけでなく、絆や愛のために戦うこと……
「何を難しく考えてるんだ?」
ルナリアが壁の穴から顔を出して不機嫌そうな顔で聞いてきた。僕はびっくりしながらも、慌てて答える。
「いや……その、色々考えちゃってさ。アリアがなんでここに戻るのを拒否したり、グロスとあんな親密な関係を持ったりしたのかってね。そしたらさ、考えれば考えるほど謎が増えちゃって……」
「ふーん」
ルナリアは興味なさげに欠伸をして布団をかぶった。全く反応してくれないあたり、彼女らしいというかなんというか……。
「そういうの考えるのやめろ。無駄だ。頭がおかしくなるぞ。反抗期がこじれてあんな感じになっちゃったんだろ多分....そういうことにして、いつも通り頭を空っぽにして何も考えず、明日への活力を養えラック……」
そう言って彼女は隣の部屋のベッドにダイブし、そのまま深い眠りについたようだった。まぁ彼女の言う通りかも知れない。何を考えても意味なんてない。結果アリアとグロスは地へと帰った。子孫を残し。生物として最低限の役割を果たし地へと還る。虫らしい最期じゃないか。
これにて1章完です。2章は短編作品をいくつか書いてから執筆します。




