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犬の躾はスピード勝負

「貴様は一体何をしているのだ!?!?!?!?!?」


またもやそこいらのメイドをテキトーに捕まえてダイニングに案内させると、鼻息荒めのネロ侯爵令息が青筋を立てながら待ち構えていた。


「あら、何とは何ですの?」

「とぼけるな!!昨夜は一晩中貴様の部屋からガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンと!!!!煩くて一睡もできんかったわ!!」

「あー、ご立派なお屋敷ですから防音は問題ないかと思ったのですけれども・・・ごめんあそばせ?」


多少の申し訳なさと共にここぞとばかりに可愛らしく見えるであろう角度で首を傾げてみると、ネロ侯爵令息の青筋がさらにビキビキと広がる。

そういえば昨日お会いした時よりも心なしかクマができているような?


「しかも貴様、勝手に部屋の鍵を変えたであろう!!」

「当然ですわね?いきなり躾だなんだ図に乗るなと宣って暴力を振るうような方と同じ屋根の下ですもの・・・きっちり鍵をかけておかねば安心してくつろげませんわ?」


こんなこともあろうかと、私が作業を始める前にノルにはドアの鍵を変えるよう指示していた。ノワールちゃんは有能侍女なのでドアの鍵を変えるくらい朝飯前である。夜だったけど。


「ぐっ・・・それはお前が生意気な態度だったのが悪い!」

「あらあら?私ごくごく普通に挨拶をさせていただいたつもりでしたが?」


「パートナーとして共に侯爵家を盛り立てていこうなどと宣っていたではないか!!

女である貴様が次期侯爵の私と並び立てるとでも思っているのか?それこそ図に乗っているであろう!女は黙って夫の言うことに従っていればいいんだ!たかが子爵家の令嬢が侯爵家と縁を結べただけでも感謝するべきだろう?」




「ふーん・・・へぇ・・・そう・・・わかりましたわ。」

「ほう、物分かりは良いじゃないか。解ればい「ネロ侯爵令息にはみっちりと教育をして差し上げないといけませんわね、改めてよくわかりましたわ!!」


「・・・・・は?」


「見事なまでの男尊女卑!ナチュラルボーンで女を見下すその思想!!!そしてレディ相手に平然と暴力を振るう、紳士の風上にも置けない腐りに腐った精神性!!!

これは教育の甲斐がありますわね!!!!」


宇宙空間に放り出された猫よろしく唖然とした表情をしているネロ侯爵令息。その横っ面に、おもいっきりグーパンを叩き込む。


「大丈夫ですわ、どれほどおつむが弱かろうとも悪いことをしたら痛みと恐怖が待っている、それが染みつけば自ずと覚えていきますわ。犬の躾と一緒ですわね。

スピードが肝心ですので本当は昨日のおいたの後もすぐに折檻すべきでしたけど・・・あの時は私がうっかり出遅れてしまいましたから私のミスですわね。申し訳ございませんわ。」



「犬・・・?」


「本日は初めての折檻なので素手でしたけれど、男性にとってはかよわい貴族令嬢のパンチなど猫にじゃれつかれたようなものございましょう?

私の旦那様になるのであれば、妻である私がみっちりとネロ侯爵令息を教育せねば・・・と昨日お会いしたときに固く誓ったのですわ!ですのでこちらを準備して参りましたの。」



「なんだ・・・これは?」

頬を抑えながら、理解の追いつかない顔で私が担いでいるもの見つめている。



「これは釘バットです。」

「釘・・・バット・・・?」

「はい、釘バットです。私のお手製ですのよ。」

This is a 釘バット。昨夜夜なべして釘を打ち込んだ、私のかわいい汗と努力の結晶である。


「私は寛容ですので、もちろんちょっとした失敗くらいでいきなり殴ったりはしませんわ。

何度も同じ間違いを繰り返したり、取り返しのつかない悪いことをした場合に容赦なくこれが飛んでいきます。」



「ふ、ふざけるな!!!!」

だんだんと我に返ってきた様子のネロ侯爵令息が、私の胸ぐらを掴もうと動く。


私は大きく1歩下がり避けると、彼の真横にあるダイニングチェアに向かって釘バットをおもいっきり振り下ろした。



ばきぐちゃめきょきょきょ・・・



かわいそうな音を立てて、お高そうなダイニングチェアが粉々に崩れ落ちる。ごめんね罪なき椅子さん。恨むなら持ち主を恨んでちょうだい。


「これ、本気で振るうと痛〜いじゃすまないかもしれませんわ。言動にはお気をつけあそばせ?」

彼は真っ赤だった顔を真っ青にしながら、数秒前まで椅子だったモノを引き攣った顔で見つめている。



私はスカートについた木屑を払い、近くのまだ椅子の形を保っている椅子にゆったりと腰掛ける。

「さあさあ、せっかく朝食にお誘いいただいたのですからもういただきましょう?

私、昨日の夕食はお声がけいただけなくて侘しい思いをしておりましたのよ・・・くすん」


ちょっと運動したらお腹が空いてきた私は、少し冷めてしまったであろうテーブルロールに手を伸ばすのであった。









己よりも非力な相手を力で抑え込むことを是としている輩には、己より強い力を持つものが現れればどうなるか身をもってわからせないといけない。


そして教育において、上下関係をはっきりさせておくことは非常に肝要である。

往々にして人間というものは自分より下に見ている者の言うことなど聞きはしないですもの。

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