第9話
「マガタ、東の地コクテをお前の領地とする」
「謹んでお受けいたしまぁす!」
俺はテンション高めに返事をする。
もう四回目だからな。
今回はテンション高めでいってみよう。
なんとなくこいつらの顔は覚えてきた。
しかし、誰が誰だかわからない。
また初日からやり直すんだよな……。
長いんだよ。
ロードしてぇわ。
◇
「お兄様! お見送りありがとうございまぁす!」
さっさと行こう。
「うるせぇ!」
ドガッ!
俺はルオカにケツを蹴られる。
ウソ!
前回こんなの無かったぞ。
テンションを上げすぎたか。
「さっさと行け!」
「ハイ喜んでぇ!」
◇
道中も無駄にできないよな。
確か、魔物が何度か出現している。
移動しながら落とし穴を仕掛け、それに魔物を落とすのは現実的ではないな。
狙うなら野営のときか。
◇
ザクッ! ザクッ!
俺は野営地のそばに穴を掘っている。
「マガタ様ぁ、何してるんスか?」
「落とし穴だ」
「そんなことしなくても、この辺の魔物は雑魚なんで、出たら俺たちで倒しますよ」
カホクが様子を見に来て言う。
「そうだな」
ザクッ! ザクッ!
俺は返事をしながらも掘り続ける。
カホクにも手伝ってほしいところだが、それだとレベルが上がらない可能性もあるからな。
「おい」
「なんスか?」
「今夜は恐らくこのあたりから魔物が数匹やってくる。この穴に落としてから倒してくれ」
「えぇ!? なんスかそれ」
「いいから言う通りにしてくれ」
「そもそも、こっちから魔物来るとは限らないですよ」
「もし、こちらから魔物が来たら落としてから倒してくれ。ギンジョウも頼むぞ」
「はい……」
二人は不思議そうにしながらも、返事をする。
確か魔物はこっちから来たと思うんだよな。
大体の位置はわかるけど、ピンポイントで落とし穴に落とすのは無理だ。
だから、二人には誘導しながら戦ってもらう。
落としさえすれば、ある程度経験値は入るはず……だと思う。
◇
「いや、びっくりッスわ」
「マガタ様の言う通りでしたな」
「ありがとう。おかげでレベルが上がった」
昨日野営地で俺言った方向から魔物がやってきた。
ギンジョウとカホクは交代で見張りをしてくれていたわけだが、ちっさいゴブリンがやってっきたのだ。
カホクは俺の言う通り、落とし穴に落としてから仕留めてくれた。
コイツ、言動に比べて実は優秀なのではないだろうか。
そして、俺のレベルは3から5へ上がる。
前回同様、一回罠にハメるのに成功し、スキル【落とし穴】を習得した。
これで手動でいちいち落とし穴を掘らなくていい。
◇
あれから野営のたびに落とし穴を設置し、カホク、ギンジョウには魔物を落とし穴に落としてから倒してもらった。
レベルは8だ。
身体能力が上がっている。
ゴブリンやイノシシの魔物程度なら、今のマガタでも仕留められるだろう。
そして、東の領地コクテに到着する。
前回同様、出迎えなどはない。
「これはこれはマガタ様。このスワクタ、お待ちしておりましたぞ」
相変わらず態度がでかく、憎たらしい表情のスクワタだ。
こいつはどうでもいい。
できるだけ早い段階でヨネィザに接触するべきだろう。
「スクワタ、これまで同様お前の手腕に任せる」
俺は余計なことはしないほうがいいだろう。
「ほぉ……これはこれは、後自分の立場をよく理解していらっしゃる」
スクワタはニヤリと笑いあごの髭を触っている。
無限にムカつく表情をしているが、こいつにかまっている暇はないからな。
◇
「ヨネィザはどこにいる?」
「兵士長ヨネィザですか?」
俺はギンジョウに確認をする。
「そうだ」
「恐らく、スクワタの屋敷の警備をしているでしょう。お会いになるのですか?」
「あぁ、そのつもりだ」
「それはやめたほうがいいでしょう。彼女はスクワタ様の私兵。場合によっては、スクワタ様に警戒されてしまいますよ」
「そうか」
なるほど。
それは良くないな。
しかし、どうにかして仲間にしないと戦力的に厳しいよな。
先にヨネィザの父の遺品を探し出すべきか?
「ギンジョウはこのあたりには詳しいか?」
「いえ、それほどは詳しくありません。私もカホクも赴任したばかりですので、事前情報が少しある程度です」
「なるほど。このあたりの情報を得るためにはスクワタに聞くべきか?」
「それはあまりオススメできません。スクワタ様は恐らくこのコクテの地に、マガタ様が関わることをよく思わないでしょう。それならば、ギルドへ依頼を出すべきでしょうね」
「どのような依頼を出せばいい?」
「調査依頼でしたら、情報を得ることができます」
「う~ん……できれば同行したいんだが、冒険者と一緒に調査に行くことは可能か?」
「調査ですか。可能ではありますが……」
ギンジョウはあまり乗り気ではないように見える。
「なにかマズイのか?」
「お金がかかります」
「そうか……いや、待てよ。兵士たちはギルドの依頼を受けることはあるのか?」
「そうですね。あまり聞きませんが受けることはできるのではないでしょうか」
「それならば……」
俺は炭鉱調査の護衛依頼を最低価格で出しておく。
◇
「マガタ様……これは一体……」
ギンジョウは、依頼を受けた人物に驚いている。
「護衛を引き受けたヨネィザです。部下も二人連れてきました」
「ベノです。盾を得意としております」
「バナッザです。私は索敵を得意としております」
俺が接触を試みていたヨネィザが依頼を引き受けてくれた。
ヨネィザは、スクワタの私兵であるが、あくまでも目的は父親の遺品である。
このあたりの炭鉱を調査しているはずだ。
炭鉱調査の依頼があれば安くても引き受けると予想した。
狙い通りだ。