第48話
カーンコーン……
別荘の古い呼び鈴が鳴る。
「はい!!」
俺はエントランスにも聞こえるように大きな声で返事をする。
「書留です。
書咲さんで間違いありませんか?」
「はい、書咲です」
なんだ?
また書留?
「こちらにサインをお願いします」
「はい」
「ありがとうございます」
手紙……?
確かに俺宛だ。
誰からだ?
!!
伊藤さん……
伊藤さんの名前が記されている。
この封筒、いつの時代だよ……
茶色いアンティーク調封筒。
しっかりとした丈夫な紙でできているようだ。
俺は封筒を丁寧に開け、中の便箋を読む。
『マガタをお救いくださりありがとうございます。
報酬にはまだ手をつけていないようですが、それは間違いなく書咲様のものです。
どうぞ、ご気兼ねなくご使用いただければ幸いでございます。
書咲様はやはり資質があるようでございますね。
同封させていただいた鍵は、地下の書斎で使うことが可能でございます。
必ず書咲様の助けになるでしょう』
「おいおい……」
思わず声を出してしまう。
伊藤さんマガタのこと知ってるよ……
夢のことも知ってるってことだろこれ。
報酬だって?
いやいや、70万だぞ。
こんな不気味な大金誰が使うかっての……
短い文章だが情報量が多いな。
鍵?
カラン……
封筒から小さな鍵が落ちる。
4cm程度の小さな鍵だ。
俺は小さな鍵を拾い上げる。
鈍い銀色に光る小さな鍵は、小さな宝石が装飾されているな。
こちらもアンティーク調だ。
「扉の鍵……ではないな……」
扉の鍵にしては小さい気がする。
えっと……
『地下の書斎で使うことが可能でございます』
隠し部屋か。
俺は本棚をずらし、地下の隠し部屋へと入っていく。
本棚から隠し部屋の入り口までは、昼間でも真っ暗だ。
スマホのライトで階段を照らし、進んでいく。
カチッ!
地下室の電気をつける。
相変わらず本が所狭しと置いてある。
地下室で使うことができるって言われてもな……
どこだよ。
本棚にはもちろん本しかない。
あとは本棚に入りきれない本が積んである。
ここの整理はバイトに含まれるかわからないからな。
地下室の本は整理していない。
ここか……?
積み上がっている本をどけてみる。
戸棚だ。
本を置いておくものじゃないな。
戸棚の前の本を一旦退ける。
一部ガラスが使われている扉と、その横に引き出しが4つ。
中を確認してみる。
これは、宝石箱?
縦10cm、横20cm、高さ10cmくらいの金属の箱を手に取る。
これまたアンティーク調だ。
赤を基調とし、枠は金色。
細かい装飾もされており、本物かどうかはわからないが、宝石が散りばめられている。
あった。
鍵穴がある。
これだろうな……
俺は伊藤さんから届いた鍵を使ってみる。
入るな……鍵穴にピッタリと入る。
カチャ……
宝石箱の中には、指輪がひとつ。
俺は指輪を取り出す。
銀色に輝いている……
うっすらと青く光っているようにも見える……
綺麗な指輪だ。
俺は指輪をつける。
アクセサリーなんて普段はつけないのだが、なぜだか無意識につけてしまう。
気のせいか?
指輪が俺の指にフィットするように……
サイズが変わったように見えた。
ん?
小さなメモも入っている。
『継承を望むのならば、指輪を身に付けるべし』
『回帰を望むのならば、指輪を外すべし』
なんだこれ……?
どういう意味だ?




