表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書庫と異世界と悪夢  作者: 橋下悟
第二章 近衛騎士
47/53

第47話

なんてこった。

貴族の近衛騎士がニッコーの村の壊滅と関係あるのか?


そうだな……ありえるか?

「あの、あっちの近衛騎士はどちら様の?」

「あぁ、オシバラ様か。

 お前は近衛騎士に入ったばかりだからな。

 ある程度覚えておいた方がいいぞ」


「了解です」

そうなると……


仮にオシバラってのがスーナを敵視しているとする。

そして、邪魔になるのが近衛騎士長のキヌガルだ。

最初からキヌガルを毒で殺すつもりで、毒消し薬を手に入らないようにするなら?

それならニッコーの村を壊滅させる必要性も出てくる。


まぁ……全て推測だが……

けど辻褄は合っているか。


今のうちに毒消し薬を渡しておくべきだな。

「ちょっと騎士長のところへ行ってきます」

「そうか」

俺はクロイソに言い、キヌガル騎士長のところへ小走りで向かう。


「キヌガル騎士長。

 チギーです」

「なんだ?」

俺は道具袋から毒消し薬を出す。


「こちらをお持ちください」

「これは……毒消し薬か?

 品薄だと聞いているが」


「はい。

 先日帰省した際に購入することができました。

 スーナ様をお守りするには、私が持っているよりも騎士長にお持ちいただいた方が良いと思いまして」

「なるほど。

 確かにその通りだな」

まぁお前に使って欲しいんだけどな。








キヌガルを常に監視し続けるなんて無理だ。

近衛騎士とその長では、ここでの役割が違うからな。

近衛騎士長レベルになると、スーナに付きっきりだ。

いつ毒を盛られるのか全くわからない。

毒消し薬は渡しておいて正解だったな。


にしても、なげぇな。

今回の夢は最長だ。

しかも、訓練ばっかりときたもんだ


「訓練は順調か?」

キヌガルだ。

「「「はい!!」」」


「我々は中央に来てもやるべきことは変わらない。

 スーナ様をお守りするのが我々の使命だ」

しかし、本当に訓練ばっかりだな。

他の騎士団は街へ出て息抜きをしているところもあるということだが……








「はぁ……はぁ……はぁ……」

「どうした? 限界か?」


「い、いえ!!

 まだいけます!!」

「その意気だ、かかってこい!!」


「は!!」

ガキンッ!!


俺は先輩騎士に思い切り剣を振る。


「ん?」

疲労が急激に抜ける。


それだけではない……

身体が軽いのである。


「ほぉ……やるじゃないか!!」

ガキンッ!!


しまった!!

集中が途切れたせいで、剣を手放してしまう。


「今のは良かったな」

「はい!! ありがとうございます!!」


「よし、少し休んでいいぞ」

「はい!!」


俺は小走りで剣を取り、宿舎の端へいく。


なんだこの違和感は?


まさか……


胸元のアザを確認する。


!!


レベルが26だ。

上がっている……

8も上がっているのだ。


訓練で上がったのか……

いや、違うな。

これまで散々訓練して1つも上がっていない。

チギーの場合は、少なくとも年単位で訓練しなければ上がらない。


それに一気に8なんて上がりすぎだ。


「………………」


これまでの行動で上がる要素は……

キヌガルに毒消し薬を渡したこと?


シナリオを変えたこと?


いや……違うな……


故郷のターワラでのレベルアップ……

あのときと共通することは……?


命を……


人の……命を救うこと……?







チュンチュン……


目覚めるとベットの上だ。


なぜだ?

チギーは死んでない。

うまくいっているからか?


いや……そうじゃないな……


『罠師』でショウナスを殺してしまったとき……

あの時のような感覚がある。

なんとも言えないが、モヤモヤが残る不快な感覚だ。

あのとき……あれは失敗だと思う。

マガタが納得いかなかったのだろう。


ということは、今回もチギーが納得しなかったということか?


「……………………」


俺は夢の内容を考察する。


チギーのレベルアップ条件が、人の命を救うことなら?

ニッコーの村の全滅はチギーが納得していない?


「フ…………」

思わずほくそ笑んでしまった。


「わかったよ」

なるほどな。

チギーは俺にニッコーの街を救えと言っているのだ。


ニッコーの住人全ての命を救い、大幅にレベルアップしろと。


「やってやるよ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
個人的に群像劇の形をとる作品は感情移入がしづらいという認識があったのですが、この作品は非常に緻密な構成で複数主人公という形を取りながら、主人格は他にいるというあまり類を見ない作品でよく考えつくなと感心…
これもアニメ化してほしいものだな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ