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書庫と異世界と悪夢  作者: 橋下悟
第二章 近衛騎士
46/53

第46話

無事に毒消し薬を手に入れることができた。

俺はニッコーの村を後にする。


あれは確実に負けイベントだからな。

物語終盤ならまだしも、序盤であの金髪ロン毛を倒すのは不可能だ。

今は毒消しをキヌガルに渡し、バッドエンドの状況を良くしていくしかない。


あれは無理……

無理なんだ……

俺は自分に言い聞かせる。


夢がリアルな分、嫌な気分にさせてくれる。

負けイベントだと自分を納得させるしかない。


俺は人の少ない近衛騎士の訓練所へと戻る。

近衛騎士たちのほとんどは今遠征中だ。

一部がスーナの護衛として残っているのだろう。


今回俺はターワラへは帰らずに、ニッコーのみに行ってきた。

ターワラで得られる情報はもうないからな。

毒消し薬だけを手に入れ戻ってきたわけだ。









「それで、里帰りでは何か収穫があったのか?」

キヌガル近衛騎士長が遠征から帰還してきた。

「いえ……残念ながら……」

俺はニッコーへ行ったものの、今回ターワラへは帰っていない。

得たものは毒消し薬だけだ。

チギーの強化、レベルアップについての情報は得られなかった。


「そうか……お前はまだ若い、あまり気を落とすな」

「はい……」

最初の訓練ではうっとうしいおっさんと思っていたが、キヌガルはいい奴だ。

休暇をとって帰省し、さらに何の成果も得られなかったにも関わらず、励ましてくれる。


「来週の舞踏会では、近衛騎士全員がスーナ様の護衛任務をおこなう。

 お前も例外ではない。

 これまで同様訓練に励むように」

「はい!!」

舞踏会……

そのあとキヌガルが毒をもらってしまうはず……

まずはそれを回避だ。







なげぇ……

かつてないほど夢が長い。

訓練を数日続けるが、一向にレベルアップはしない。


しかし、収穫はある。

身体の動かし方に慣れてきたのだ。

身体能力の向上は無くても、多少強くなっているはずだ。


そして、今日から舞踏会の会場までスーナを護衛だ。

野盗だけでなく、魔物が出る世界だからな。

近衛兵全員で馬車を守りながらの移動となる。


ここでスーナを守ればレベルが上がる可能性がある。

ただ気になるのは『近衛騎士』の本の中で、チギーが成長し強くなったという描写がほとんどなかった。


道中スーナを守り切ったとして、チギーのレベルは上がるのだろうか。


「整列!!」

ザッ……


俺を含めた近衛騎士はスーナとその両親を含めた馬車を中心に隊列を組む。


こいつら一人一人がチギーより強いわけか。

そこそこ強い魔物が出てきても余裕で倒せるな。


装備もそれぞれ違う。

槍や大盾も結構いる。

一番多いのは片手剣と盾の装備だ。

ちなみにチギーもそれだ。

弓も少しだけいるな。







道中魔物が出現するが、すぐに討伐される。

近衛騎士たちマジつえぇ。

キヌガルが近衛騎士長ってことは、この中で一番強いんだよな?


キヌガルは馬車の真前におり、さらにその周りに3人。

明らかに強そうな人たちが馬に乗っている。


しかし、どのくらい強いのかはわからない。

彼らが戦うまでもなく、道中の魔物は殲滅されてしまうからだ。









「舞踏会って何やってるんですかね?」

「さぁな、貴族様のやることなんて俺らにはわからねぇよ」

先輩騎士のクロイソと話をする。

長い長い陸路を経て、大きな都市へやってきた。

中世の大都市そのものだ。


「ただ、かなり重要らしいぞ」

「そうなんですか?」

ただの食事会ってわけじゃないのか。


「あぁ、場合によっては爵位が上がることもあるらしい」

「なるほど……」

偉くなって権限が増えるってことか。

だとすればそれが原因でスーナの命が狙われることもあるということだな。


「飯だ飯!!

 やっといいものが食えるぜ!!』

「ですね」

道中は干し肉と魔物の肉、木の実がメインだった。

空腹はどうかというと、実はそれほど感じていない。


この夢はリアルだが、やはり現実ではない。

痛みや恐怖などの感情が緩和されている。

それでも痛いのだが、現実に比べると軽減されている。

じゃないと人間なんて殺せない。


そして空腹については、痛み以上に軽減されている。

まぁ腹が減らないわけではないのだが……


まずは食事に注意だ。

本に詳しい描写はなかったが、キヌガルの毒は食事で与えられた可能性もある。

しかし近衛兵全体が毒になったという話はなかった。

ということは、キヌガルだけが毒を盛られるということだ。


念の為、キヌガルの食事は注意してみておくべきだろう。


「しかし、すごい人の数ですね」

「そりゃそうだろ。

 ここは地方の中枢だからな。

 ほら見てみろ、ほかの貴族の近衛騎士たちも来てるだろ?」


「なるほど」

立派な鎧を着た騎士たちが続々と集まってきている。

団体ごとに鎧のデザインが異なり、よく見るとそれぞれ紋章があるようだ。


「おい、あんまりジロジロ見るなよ」

「まずいんですか?」


「中にはプライドの塊みたいなヤツもいるからな。

 近衛騎士同士のトラブルは絶対に許されない」

「はい」

でしょうね。

近衛騎士を抱えているスーナに迷惑がかかるってことね。


ん?


あの鎧……

見覚えが……?


「おい、だからジロジロ見るなって」


金髪ロン毛の鎧と同じだ……

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