第45話
再び別荘へと戻ってきた。
少しだけ本の整理をし、それから地下の隠し部屋へと行く。
『罠師』のときは、『コクテの歴史』という本が攻略の役に立った。
今回も、何か手がかりになる本はないか探してみる。
「………………」
無いな。
すぐには見当たらない。
そして、無さそうな感じがする……
なぜだろうか……
なんとなく……無いと思う……
この感覚はなんだ?
気味が悪いんだよな……
ダメだ。
探すのをやめよう。
にしても『近衛騎士』は『罠師』に比べて情報が少ない。
だからチギーの故郷にまで行ったわけだが、そのせいで本の内容が大幅に変わっている。
まぁこっちで情報がないなら、夢でいろいろ試してみるしかないよな……
◇
「ニッコーまでですか?」
「あぁ、俺の護衛はニッコーまでにしてほしい」
夢に戻ってきた。
いや、戻るというのは適切な表現ではないか……
最近夢の方が長いからな……
しおりはターワラへと出発する直前になっている。
これからターワラへと出発するところだが、俺はターワラへは行かない。
ニッコーへと先に行き村が野盗に襲われる前に毒消し薬を手に入れる予定だ。
今のチギーの強さを考えると、ニッコーの街を救うのは不可能だ。
あの金髪のロン毛が強すぎる。
『罠師』の終盤くらいのレベルアップがあれば話は別だが、普通に考えて倒せるとは思えない。
体感だが、あの金髪はギンジョウやヨネィザよりも強い。
レベル60はいっているはずだ。
見つかれば確実に殺される。
先にニッコーへと行き、毒消し薬だけでも手に入れるべきだな。
それにしても、チギーのレベルアップ条件がわからない。
とりあえず、前回の夢での行動では全くレベルが上がらなかった。
攻撃訓練。
防御訓練。
魔物を倒す。
魔物から商人を守る。
人間を殺す。
人間から商人を守る。
これら全てレベルアップには影響がなかったのだ。
あとは考えられるとすれば特定の人物を守るだな。
今チギーはスーナの近衛騎士として働いている。
だから、スーナを守ることでレベルが上がる可能性がある。
今回はそれを試そう。
◇
「では、私はこれで」
俺は商人とその護衛たちに挨拶をし、ニッコーへと向かう。
まだ大丈夫だよな……
程なくして、ニッコーに到着する。
人の気配がある、というより人間がいる。
農作業をしている人だ。
「すみません、毒消し薬を購入したいのですが」
「あぁ、それならあっちに薬師様の店があるよ。
俺たちはみんな毒消し草をそこへ仕入れてるんだ」
「ありがとう……」
村人が教えてくれる。
彼らはまもなく死んでしまう。
どうにか救うことはできないのだろうか。
「……………………」
ダメだ。
ネタバレ禁止ね。
村人にはここが野盗によって襲われることを教えることができない。
チギーはそれで良いのだろうか……
いや……
良いもなにも無理なんだ。
チギーの実力ではあの金罰ロン毛をどうにかすることはできない。
割り切って毒消し薬を買いさっさと帰ろう。
俺は村の薬師のところへ行く。
あれだ。
他の家よりも大きな建物だからすぐにわかる。
「まずいよ、もうすぐ仕入れの人が来ちゃう」
「わかってる!! 毒消し草、どんどん持ってきて!!」
なにやら慌ただしいな。
若い男が大きな袋を店の奥へと持っていく。
「姉さん、ここに置いておくよ」
「はいよ!!」
小さな子供も茎から葉をとる作業をしている。
「にぃちゃん、これも?」
妹だろうか。
「あぁ、それも全部だ」
男は袋を置くと、俺に気づく。
「すみません、お客さんでしたか」
「あぁ、毒消し薬を購入したい」
「ありがとうございます!!」
「………………」
家族で経営しているのだろう。
「少々お待ちください」
男性は奥へと入っていく。
「こちらです」
ゴト……
彼は小瓶をカウンターへと置く。
「店頭には置いていないが、それほど数がないのか?」
「はい……村の薬師は姉さんだけなんです。
だから、毒消し草が手に入っても、それを毒消し薬にするまで時間がかかってしまうんですよ」
「なるほど……」
一般の人にはできないことっぽいな。
スキルをつかって毒消し薬を作るわけか。
「ありがとうございました」
俺は毒消し薬を念の為3つほど購入し、足早に店を出る。
「………………」
話しかけるんじゃなかったな。
彼らはこれから死んでしまうのだ。
夢とはいえ、気分が悪い……




