第34話 罠師エピローグ
どこだ?
俺は書庫の隠し部屋の中を見渡す。
目的は『罠師 Ⅱ』だ。
『罠師 Ⅰ』では、めちゃめちゃ苦労してマガタが最強になった。
にもかかわらず、そこで『完』だ。
もう少し最強の余韻を味わいたい。
というわけで『罠師 Ⅱ』を探しているというわけだ。
俺は『罠師』が置いてあった付近を隈なく探す。
これは『コクテの歴史』だな。
『罠師』について、これでマップなどの情報を得ることができた。
「………………」
しかし『罠師 Ⅱ』は見つからない。
なんだよ。
頑張ってレベルあげたんだから、最強の時間を楽しませてくれてもいいだろ。
◇
「ダメだ……」
見つからない。
ちくしょー。
アテラザやルオカ、それにマガタを馬鹿にしていた奴らをボコボコにしてやりたいのに。
そうだ……
これはいけるか?
ダメ元でやってみるか。
◇
「マガタ様、本日も手紙が届いておりますぞ」
ギンジョウだ。
と、いうことは……成功だな。
やった。
やってやったぜ。
俺は『罠師 Ⅰ』の最後のページにしおりを挟んだ。
『完』のあとだから、ダメ元だったが、この状況……どうやら成功したらしい。
「どれ、見せてみろ」
内容は……
クソだ。
どいつもこいつも、魔物の素材をよこせという話だ。
俺はコクテの街を、魔物の大群から救った。
あり得ないほど大規模な魔物の大群だ。
この世界では、魔物の死骸は資源になる。
武器や防具の素材はもちろん、食料や場合によっては薬にもなる。
それが今、コクテの街に大量にあるわけだ。
どいつもこいつも、それをよこせと言うわけだ。
しかもどうやらそれが、アテラザやルオカだけではない。
「ギンジョウ、この手紙は誰からだ?」
「はい、これは中央貴族のテンドル様です」
「これは?」
「はい、これはヒグシヌル様です」
「だれだ? そいつらは?」
「はい、いずれもマガタ様をこのコクテの街へと推薦した方々です」
「はぁ? なんだそれ……」
てことは、マガタを追放した奴らってことだろ。
なめてんな。
マガタなめられてんな。
「ま、とりあえず無視だな。
魔物の素材はできるだけ腐らないうちに処理して、食べられるうちに食べてしまうぞ。
街のために戦ってくれた冒険者や兵士たちに還元するんだ」
「はい!!」
「あれ? 止めないんだな」
てっきり、おやめください、穏便に……穏便に……とか言うと思ったのに。
「はい、彼らは今のマガタ様の力を知らないのです。
ですから、このような手紙を出してくるのでしょう」
「だろうな」
「しかし、こちらの手紙はご留意されたほうがよろしいかと」
「ショウナス……」
「はい」
えっと……だれだっけ?
なんか、聞いたことあるような……
「ショウナス様は、ここより南東の地を治めております」
「えぇっと……どんなヤツだっけ?」
ギンジョウは驚いたようにこちらを見る。
あ、このリアクションは、わりとマガタに近い人物っぽいな。
「ショウナス様はルオカ様と同じく、剣術の使い手でございます。
魔法については使用することができませんが、剣術だけならばルオカ様に匹敵するレベルだと言われております」
「ほぉ……」
それってかなり強いってことだよな。
ルオカと同等の強さってあんまりいないはず……
「………………」
俺は手紙を読む。
『マガタよ。
よくやった。
この私とやりとりができることを誇りに思うがいい。
お前が大きな手柄を立てたとなれば、ルオカ兄様も面白く無いはずだ。
そこで、私が角が立たないようにはからってやろう。
全ての魔物の素材は、この私が管理をしてやる。
父上、ルオカ兄様への献上、そのほかの分配も私がおこなうこととする。
すでに使いは送った。
じきにコクテに到着するはずだ。』
あ!!
そうだ!!
思い出したぞ。
ショウナス……こいつも異母兄弟だ。
マガタの兄でルオカの弟だったと思う。
『罠師』の中ではちょい役だったはず。
まぁ話のメインがコクテの救済だからな。
無関係っちゃ無関係だ。
しっかし、クソほど上からだな。
魔物の素材は全部よこせってか。




