第30話
「引け!! 引けぇ!!」
マガタのチート能力で魔物殲滅しつづけている。
しかしそれでも、魔物が押し込んでくる。
数が多すぎるのだ。
「全員谷の前で迎え撃て!!」
冒険者や兵士たちを全て谷の前に待機させる。
ドドドドド……
「グオォォ!!」
地響きとともに、魔物の大群が押し寄せる。
「こ、こんなの無理だろ……」
「………………」
冒険者たちに悲壮感が漂う。
しかし、ここで魔物の勢いは衰えるはずだ。
俺は魔物が谷に侵入するタイミングで剣を上に掲げる。
「ストーンフォール!!」
ドゴ!!ドゴ!!ドゴ!!
ズガンッ!!
突っ込んでくる魔物を目掛けて、大量の岩が空から落ちてくる。
「す、すげぇ……」
「上位の土魔法だ」
もちろん土魔法などではない。
ストーンフォールなんて魔法は使えない。
事前に仕掛けておいた【岩石落とし】だ。
そして、俺は掲げた剣を前へと向ける。
「ロックアロー!!」
ビュン!!ビュン!!ビュン!!ビュン!!
ビュン!!ビュン!!ビュン!!ビュン!!
今度は谷の壁から魔物を目掛けて大量の矢が飛び出す。
ロックアローなんて魔法も使えない。
さっき後退しつつ壁に仕掛けておいた【クロスボウ】だ。
さらに俺は前に突き出している剣を地面に突き刺す。
「クラック!!」
ゴゴゴ!!
地面に穴が空き、魔物が次々と落ちていく。
これはもちろん【落とし穴】。
俺の罠で魔物の勢いが大きく削がれる。
「よし!! つづけぇ!!」
「おおぉぉぉ!!」
俺は再び魔物の群れに突っ込む。
さっきので士気が上がっている。
兵士たちの悲壮感は一切ない。
「マガタ様をお守りしろ!!」
ギンジョウやヨネィザ、カホクも例外ではない。
さらにレベルアップ。
よし、今回はいける。
あの魔物の大群……
あれを完全に殲滅してクリアだ!!
◇
ドゴーン……
ドゴーン……
ドゴーン……
「な、なんだあれは……」
ドゴーン……
ドゴーン……
ドゴーン……
大きな足音が響き渡る。
何メートルあるんだ?
山ほどにもでかい魔物がやってくる。
「サ、サイクロプス……」
ドゴーン……
ドゴーン……
ドゴーン……
一つめの巨人が一歩近づくごとに地面が揺れる。
「無理だ……」
「………………」
こちらの兵に再び悲壮感が漂う。
マジかよ……
あんなのどうしろってんだ……
いやいや……
あんなでかいヤツに罠が効くのか?
てか、罠とかそういう問題じゃなくないか?
普通に考えて無理だ。
人間がなんとかできるとは思えない。
「マ、マガタ様……」
冒険者、兵士たちが全員で俺を見てくる。
「………………」
マジかよ。
これ、俺になんとかしろって?
さっきあんなにイキっちゃったからなぁ。
今更無理ですって言いにくいわ。
「落ち着け……」
いや、落ち着くのは俺だ……
さっきの戦闘でスキルを習得している。
戦闘し続けていたため、気づかなかった。
【バリスタ】
これは……
「お前たちは一旦谷の向こうへ引け!!
デカイのは俺がなんとかする!!」
俺は兵たちを引かせる。
魔物はサイクロプスだけなじゃない。
まだまだいる。
それらがコクテの街に侵入しないように彼らに魔物を倒してもらう必要がある。
「お供します!!」
ギンジョウだ。
「あぁ……ついてこい!!」
ギンジョウ、カホク、ヨネィザ、ベノ、バナッザの少数が俺につづく。
俺たちは谷の上、見晴らしが良いところにくる。
「まだまだいるっスね……」
「あぁ、かなり倒したはずなんだがな」
上からだとよく見える。
魔物がまだうじゃうじゃといるのだ。
そして奥からサイクロプス。
「よし……」
俺は手をかざし【バリスタ】を発動する。
「な!!」
「これは!?」
目の前には大きなボウガンのようなものが現れる。
横に15メートルくらいあるだろうか。
「デカイな……これならいけるか?」
!!
おかしい……
罠を発動したのに、攻撃が開始されない。
ギシギシギシ……
【バリスタ】が大きな綱を引いている。
ギシギシギシ……
砲を放つまで綱を引き続けるってことか?
ちょ……待て待て……
なんだこれ……
【発動まで 59:59】
クッソ……1時間かよ!!
「おい!!
時間を稼ぐぞ!!
前線に罠を仕掛けてくる」
「時間ですか!?」
「そうだ!!
こいつの発動まで踏ん張ってくれ!!」