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書庫と異世界と悪夢  作者: 橋下悟
第一章 罠師
3/43

第3話

ガタガタ……ガタッ!


馬車が揺れる。


ガタッ!

ガタガタッ!


これ、揺れすぎだろ。

馬車というより荷台だな。


そして、馬車を引いているのはギンジョウ。

確か、数少ないマガタの味方だったと思う。

「ギンジョウ、向かうまでに状況を説明してもらえるか?」

俺はギンジョウに話しかける。

ギンジョウは、白髪交じりの初老の兵士だ。

戦えば結構強いって話じゃなかったかな。

東の領地コクテが魔物に襲われるときに、最後まで一緒に抵抗してくれた数少ない兵士だったと思う。


「はい。マガタ様。コクテはアテラザ様の領地端にございます。以前は炭鉱として栄えていました。鉄鉱石や銅鉱石が採掘されておりました。しかし、10数年前から鉱石の量が減り、徐々に人口が流出しております」

なるほどねぇ。


「他に産業はなんかはある?」

「そうですね。現在は冒険者が多くいるようです」

「冒険者?」

「そうです。使われなくなった炭鉱に、徐々に魔物が住み着いています。魔物の素材やレベル上げのために訪れる冒険者は少なくありません」


「ちょっと待て。レベル上げ?」

この世界にはレベルがあるのか?

そんなこと「罠師」の本には書かれてなかったぞ。

「はい……」

ギンジョウは困ったような表情をする。

レベル上げは常識的なことなんだろうか。


「レベルについて、詳しく聞かせてくれ」

「マガタ様、どうしちまったんだよ」

ギンジョウではなく、その隣りにいる若い兵士が言う。

こいつ、タメ口かよ。

「いやすまん。ちょっと混乱気味なんだ。いろいろと教えてほしい」

「それでは、カホク。お前が説明してあげなさい」

「へーい」


ギンジョウは馬車をそのまま前方へ引いていく。

カホクと呼ばれた少年は、馬の速度を落とし、俺の横へとやってくる。

「レベルっすよ。レベル」

「それは、わかるんだが。レベルはどうやって確認するんだ?」

カホクはギョッとした表情をする。


「ちょ、マジっすか。胸元見ればわかりますよ」

やはり常識的な質問をしてしまったらしい。

俺は自分の胸元を確認する。

自分の右胸の少し上に小さな黒いひし形が3つある。

「これのことか?」

俺は胸元のひし形をカホクに見せる。

「ちょ! ダメっすよ! むやみに自分のレベルを見せるなんて!」

「そうなのか?」

「そりゃそうですよ! マガタ様だって一応領地を任せられるんですよ?」

こいつ、配下のくせに一応とか言いやがった。


「そうか、悪かったな」

「にしても……今のレベル、マジっすよね?」

「どういうことだ?」

「いや……」

カホクはなんとも言いにくそうにしている。

「なんだ? 気になるから言ってくれよ」

「いやぁ……」

「言えってマジで」

俺は少しイライラして聞いてしまう。


「レベル3ってマジですか」

「低いのか?」

「そりゃぁ……」


「カホク! 前方に魔物だ!」

カホクとの会話を遮るように、ギンジョウが大きな声を出す。

「ハイ!」

カホクの表情が引き締まる。

魔物!?

マジで?

本にこんなの書いて無かったぞ。

それから、魔物なんて全然見えないけど。

「マガタ様、ちょっと行ってくる!」

カホクはそう言うと、前方へ馬を走らせて行ってしまう。


少しすると、カホクが見えてくる。

どうやらすでに魔物を倒し、解体しているようだ。

「今日は肉っすねぇ」

イノシシのような魔物を解体しながら言う。

「もう倒したのか?」

「えぇ、そりゃ。解体してますからね」

「魔物を倒せばレベルが上がるのか?」

「いやいや、マガタ様。ホントにどうしたんスか?」

カホクは俺の質問にうろたえる。


「いいから教えてくれ」

「そりゃ、大体の人間は魔物でレベルが上がるっすよ」

「その言い方だと、上がらない人間もいるってことか?」

「上がるっちゃ上がるんスけど、上がりやすさが人によって結構違うんス。そんで、人によっては武器を作ったり、魔法を使ったほうが上がる場合がありますね。そういう人間はたいてい生産職になったりしてます」

「なるほど。カホクのレベルはいくつなんだ?」

「24です」

マジか。

そりゃレベル3は低すぎるな。


「カホクは魔物を倒してレベルが上がるタイプなのか?」

「まぁそうっスよ。兵士はだいたいそのタイプじゃないですかね」

「ところで、俺はなんで3なんだ?」

「いや、そんなこと俺に言われても……」

「おい、ギンジョウ。何か知ってるか?」

ギンジョウは古株だからな。

何か知っているかもしれない。


「マガタ様。領主様の血を引いている貴族などの人間は、幼少期にレベル上げの方針を決めます。魔物を倒したり、農業をしたり、何かを生産したり、料理をすることもあります。どのような修練でレベルが上がるかを見極め、それに沿った役職につくのです」

「なるほど。ということは、俺は何をやってもレベルが上がらなかったわけだな?」

「はい……」

それで不遇なのね。

何をやっても適性が無くて、レベルも上がらない。

その結果、最悪の領地に飛ばされたってわけか。

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