第29話
やった。
やってやった。
来る日も来る日も高レベルの暗殺者どもを撃退してやった。
終盤は暗殺者のやってくるペースが落ちたが、それでも猛烈にレベルが上がった。
今のレベルは88だ。
以前に効率的に炭鉱を回って、魔物を倒しまくったときよりも遥かに高い。
レベルだけで言えば、ギンジョウやヨネィザよりも上だ。
これだけレベルが高いと、罠なしでもギンジョウやヨネィザとほぼ互角に戦うことができる。
スキルなし身体能力のゴリ押しでだ。
そして、今回も……
「マ、マガタ様!!
魔物が!!
魔物の大群が町に向かってやってきます!!」
俺は椅子から立ち上がり、大きな声を出す。
「よし!! 撃って出るぞ!!」
「あ、ありえません……」
バナッザがへたりこむ。
以前炭鉱を攻略したときのメンバーの一人だ。
俺と街の冒険者、ヨネィザや元スクワタの私兵たち。
戦える人間をできる限り集めて荒野へやってきた。
【索敵】が使えるバナッザが敵の数を察知する。
「数が……尋常ではありません」
「そうか……」
膨大な魔物の数に腰を抜かしたのだ。
「て、撤退を!! 今すぐに!!」
「いや……大丈夫だ」
俺は振り返り、ここにいる人間全てに聞こえるように大きな声をだす。
「聞け!!
これから凄まじい数の魔物がここへやってくる!!」
よし、ネタバレももう大丈夫なのね。
「お前たちが想像する以上の数、千は越えているだろう!!」
「なんだって……」
「本当か?」
「おいおい」
冒険者たちがざわつく。
「しかし、狼狽える必要はない!!
既に迎え撃つ準備は万全だ!!」
「マガタ様……このための準備だったんスか」
「そして何より!!」
俺は剣を掲げる。
「ここに!! 俺がいる!!」
「「「おおぉ!!」」」
一回こういうのやってみたかったんだよな。
シラフだとできねぇし。
夢ならちょうどいいわ。
「つづけぇ!!」
俺は先陣を切って駆け抜ける。
「なんだ!?」
「速い!!」
「つ、ついていくぞ!!」
自分でも驚くほどのスピードで荒野を駆け抜ける。
馬などはもはや必要ない。
なにしろ俺は高レベル。
88なのだ。
ギンジョウとヨネィザのみが、俺のスピードについてくることができている。
「先に雑魚を一掃するぞ!!」
「「はい!!」
魔物の先頭は狼系。
怒涛の勢いで走ってくる。
ズババババ!!
俺は魔物の群れを縫うように駆け抜け、周囲の魔物を切り刻んでいく。
「一気に突っ込む!!」
「い、いけません!!」
ギンジョウが俺を制止するが、無視して突っ込んでいく。
力任せの単騎特攻に見えるだろう。
しかし、俺には考えがある。
魔物の先頭は機動力があるが、今の俺にとってはそれほど脅威ではない。
問題はこのあとだ。
だから先に突っ込んで、罠をできる限り大量に仕掛ける。
あのあたりか……
俺は魔物を切り刻みつつ、数百メートル先に【グランドニードル】を仕掛けまくる。
まずは魔物の突進、勢いを止めなければならない。
そして、今の俺のレベルならば、数百メートルも先に罠を仕掛けることができる。
魔物を殲滅しつつ、罠を連続で仕掛けるとMPが尽きかけてくる。
「よし、一旦引くぞ!!」
「「はい!!」」
俺を追ってきたギンジョウとヨネィザも一旦撤退させる。
魔物と戦闘しつつ、後退していく。
「はぁ……はぁ……」
俺は後退しつつも【落とし穴】を仕掛けていく。
【落とし穴】なら残りのMPでも複数設置できる。
「マ、マガタ様……危険です」
「はぁ……はぁ……さすがに飛ばしすぎたな」
「はぁ……はぁ……自重してくだされ」
俺とギンジョウ、ヨネィザは開戦してまもないのに、息が切れている。
「初っ端から体力を消耗してしまったな。
だが見てみろ……」
「あれは……」
「魔物の勢いが落ちている?」
「そうだ。
この先に罠を仕掛けまくっておいた。
単純に突っ込んでいったと思ったか?」
「なるほど……」
「そして……」
一気に体力が回復する。
「レベルアップだ……」
力がみなぎってくる。
「ははは!!
体力が全快だぜ!!
おい、ギンジョウ、ヨネィザ、お前らはここで休んでいろ」
「な!!」
俺は回復した体力で再び魔物の群れに突っ込む。
「ま、負けてはおりませんぞ!!」
「くっ!!」
MPは全快だ。
もう一度突っ込んで罠を仕掛けまくってやる!!