第27話
俺は屋敷のありとあらゆるところに罠を設置する。
【落とし穴】【ウォールプレス】【グランドニードル】【岩石落とし】【鉄格子】【クロスボウ】
【グランドニードル】【岩石落とし】【クロスボウ】は殺傷能力が高い。
ヨネィザなら大丈夫だと思うが、下手すると殺してしまいかねないな……
いや、前半の体力が多いときなら大丈夫だろう。
俺は屋敷の外側に殺傷能力の高い罠を大量に仕掛ける。
前半で体力を奪う作戦だ。
そして、中心部に向かうにつれて、【落とし穴】や【ウォールプレス】そして最後に【鉄格子】だ。
ヨネィザも捕獲されてしまえば諦めるだろうが、この鉄格子で大丈夫だろうか?
あの炭鉱での斬撃……
でかいスケルトンのボスを真っ二つにした技があったな。
あれを本気でやられたら、屋敷ごとぶった切られそうではある。
まぁとりあえず仕掛けまくっておくか。
◇
「おーい、いいぞぉ!!
入ってきてくれ!!」
俺は屋敷の中からバカみたいに大きな声を出す。
レベルアップの身体能力強化はどうやら声も強化してくれるようだ。
ズカッ!!
ドコッ!!
バコーン!!
一階から地響きが聞こえてくる。
早速罠が発動しまくっているようだ。
◇
「はぁ……はぁ……」
【鉄格子】の中に疲弊したヨネィザがいる。
美しい銀色の髪が乱れているが、まだまだ闘志がみなぎっているようにも見える。
「はぁ!!」
ガギンッ
ヨネィザが【鉄格子】を斬りつけるが、【鉄格子】はびくともしない。
ガギンッ!!
ギィン!!
ガガガガッ!!
ヨネィザの激しい斬撃が【鉄格子】を切り刻む。
が……
「な、なんだこの金属は?」
鉄格子には斬撃が通らない。
確か、スケルトン戦でのヨネィザはその鎧ごとスケルトンをぶった斬っていた。
しかし、【鉄格子】を破壊することができない。
「これは一体どういうことなのでしょう?」
ギンジョウが聞いてくる。
「いや……わからん。
多分、レベルだと思うんだが……」
考えられるとすれば、レベルだ。
暗殺者を倒したことでのレベルアップ。
それにより、罠自体も強力になっているのだろう。
【落とし穴】も習得時よりも、穴を深くすることができるし、【岩石落とし】の岩も大きくすることができる。
その結果【鉄格子】も強力になっているのだ。
「はあぁぁぁ……」
ヨネィザが剣を構える。
「ちょ!!」
やばい!!
本気だ!!
剣から青白い光が出ている。
あれは、スケルトンのボスを倒した時の大技だ。
「まてまてまて!!」
ヨネィザは俺の静止を振り切って振りかぶる。
「はぁ!!」
ズドオォォン!!
凄まじい衝撃だ。
地響きと同時に砂埃が舞う。
ガシャッ!!
【鉄格子】が真っ二つに割れる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
砂埃がから満身創痍のヨネィザが現れる。
「私の勝ち……でよろしいでしょうか?」
ヨネィザが誇らしげに言う。
しかし、そんなことはどうでもいい。
「おい、これどうしてくれんだよ」
俺は親指で背後の壁を指さす。
屋敷には、外まで繋がる大穴ができてしまった。
「まぁそれはそれとして」
ガシャン!!
俺は再び【鉄格子】を発動し、ヨネィザを捕らえる。
「んなっ!!」
◇
「も、申し訳ございません!!」
さっきからヨネィザが謝り続けている。
「いや、もう別にいいよ」
ヨネィザには屋敷の修理代を出してもらった。
時間はかかるが屋敷の修復は問題ない。
「しかし、屋敷の防備に大きな影響が……
マガタ様はただでさえ狙われておりますのに……」
「やはり我々がここに残り、マガタ様をお守りするべきですね」
ギンジョウがここぞとばかりに俺の護衛をしようとする。
「いやいや、お前、俺の罠見ただろ?
【鉄格子】の設置は1つじゃない。
それにこの大穴、暗殺者を誘き寄せるのにはうってつけだろ」
「むむぅ……」
ギンジョウも罠の威力を認めざるを得ない。
「さらに、さっきので確信した。
暗殺者は俺一人で撃退しなければ意味がない」
「そ、そうなのですか?」
「あぁ、さっきの大量の罠。
ヨネィザを相手に仕掛けまくっていたわけだ。
これまでの傾向から、大幅なレベルアップが見込めたはずだ。
しかし、レベルは一つも上がっていない。
これはおそらく、ヨネィザが敵じゃないからだ。
お前、俺に殺意はなかっただろう?」
「はい、もちろん」
「俺に対して殺意があったり、魔物のように人間に対する明確な敵意が無い場合、レベルが上がらないってことだと思う」
これは非常に残念だ。
ヨネィザとギンジョウによる罠の訓練でレベルを上げることができない。
彼らでレベルアップできるなら一気に上げられただろうに。
「ま、つまり暗殺者がレベルアップにはうってつけってわけだ」