第26話
ガラガラガラ!!
ガシャン!!
俺が握っているロープを離すと、滑車が回り木製の檻が地面に到達する。
思ったより時間がかかるな。
瞬時に落ちるってわけじゃないのか。
俺はロープを引っ張り、檻を引き上げる。
そっか。
あれだな。
罠が雑だな。
これだと魔物が来るまでロープをずっと引っ張っていなければならない。
こんなんで新しい罠を習得できるのか?
なんだろうか。
流石に手動はダメですよ、という不思議な感覚になる。
えーっと……
俺はロープを炭鉱の岩にくくりつける。
これでいいのか?
「連れてきたっすよ」
ほどなくして、カホクが魔物を引き連れてくる。
「おぅ、助かる」
「そこで待機で」
「了解っす」
カホクは振り返ると剣を構える。
奥からやってくるのはスケルトンだ。
多少タイミングがずれても、カホクがスケルトンをブロックしてくれるはず……
よし、スケルトンが檻の真下に来た。
俺は、岩にくくりつけてあるロープを剣で切る。
ガラガラガラ!!
ガッシャン!!
おぉ!?
ズサッ!!
スケルトンが木製の檻を斬りつける。
「げ!!」
「あ……」
木製の檻はスケルトンによって破壊される。
やっぱ鉄製じゃないとダメか?
「これ、倒しちゃっていいっすか?」
「あぁ、頼む」
カホクは危なげなくスケルトンを倒す。
「どうっすか?」
「あれ? できてるっぽいぞ」
【鉄格子】を習得している。
いやいや、俺が作ったのは木製の檻だぞ。
「とりあえず発動してみるか」
俺は【鉄格子】を発動する。
地面がうっすらと光る。
この光っているところが発動範囲だ。
任意に変更できるみたいだな。
「念の為聞くけど、今ここら辺光ってるのって見える?」
「いや、なんも光ってないっすよ」
やはり設置の位置情報は俺しかわからないようだな。
俺は少し奥の通路の中央に【鉄格子】を発動する。
「あの辺、何もないよな?」
俺は発動した天井を指さす。
「無いっすね……」
「この辺にまた魔物連れてきてくれ」
「了解っす」
俺は再びカホクに魔物を連れてきてもらう。
「またスケルトンっす!!」
カホクはすぐにまたスケルトンを引っ張ってきた。
「よし、そこで振り返って待機」
「了解っす!」
来た!!
ガシャンッ!!
勝手に発動するタイプだな。
ガキンッ!!
スケルトンが剣を振るうが、鉄格子はびくともしない。
罠師えぐいな。
木製の檻で【鉄格子】かよ。
「す、すげぇっすね」
「だよな。これでありならいろいろできるぞ」
◇
その後カホクの助けもあり【クロスボウ】も習得した。
習得方法はほぼ同じだ。
あらかじめボウガンを壁に設置し、魔物が来たら引き金を引く装置を作ったわけだ。
こっちは、檻よりも発動時間が短いため、比較的簡単に習得できた。
さてさて、今日の夜暗殺者がやってくるはずだ。
生捕にして、首謀者を吐かせてやるか。
仮に殺してしまったとしても、レベルアップするだろうし問題ない。
「全員屋敷の外に出てくれ。
今日は俺一人になる」
今俺の屋敷には、ギンジョウ、カホクの他に、ヨネィザたちも来ている。
「そ、それはいけません!!
危険すぎます!!
先日の暗殺者の件もカホクから聞きましたぞ!!」
ギンジョウが珍しく声を大きくする。
ちなみに、ヨネィザもこちらの陣営に雇ってある。
「私も反対です。
暗殺任務をこなす人物は例外なく高レベルのはずです」
まぁヨネィザも反対だよな。
「フフフ、ギンジョウ、ヨネィザよ。
俺は以前までの俺とは違う。
凄まじいスキルと身体能力を手に入れたのだよ……」
「そ、そうだとしても……」
「いや、マガタ様マジえぐいっすよ」
珍しくカホクがこちらの意見に賛成する。
「屋敷に罠が仕掛けられてたら、誰であってもマガタ様には敵わないっす」
「おぉ、そうだそうだ。もっと言ってやれ」
「カホク!!」
ギンジョウがカホクを睨みつける。
「マガタ様、炭鉱の罠でしたら既に拝見しております。
失礼ですが、罠の突破はそれほど難しくはありません」
「あぁ、だろうな。
しかしそれは、あれはあのときの話だ。
さっきも言ったが、今の俺はレベルもスキルも違うぞ?」
「そうであったとしても、数日間でのレベルアップです。
戦場で敵を倒し続けたとしても、私なら対応可能……」
「いや、無理っすね」
カホクがヨネィザの言葉をさえぎる。
「ほぅ……」
!!
あたりに緊張が走る。
気のせい……ではないな、明らかに空気が変わった。
「なるほど……では、ぜひ試してみたいですね……」
ヨネィザのこめかみに血管が浮き出ている。
やっべぇな。
カホクになめられて、ブチ切れている。
「それならば私も参加いたします」
ギンジョウもか……
「いえ、結構。私だけで突破して見せましょう」
しかし、ヨネィザはそれを拒否する。
「しかし、私も……」
「結構」
ダメだ。
ヨネィザから謎のオーラが出ており、周りを黙らせている。
この状態で戦ったら間違いなくやられるだろう。
しかし、罠の準備ができるなら話は別だ。
「いいだろう。
少し時間をくれ。
俺も今の力を試してみたいしな」




