第22話
翌日。
屋敷で目を覚ます。
豪華な部屋だ。
スクワタをぶっ殺し、その豪華な部屋を奪ってやった。
しかし今回も夢が長い。
一旦別荘に戻って『コクテの歴史』を見ておきたいところだ。
しかし基本的にはゲームオーバーになるまで別荘には戻れないからな。
順調にいってるときに戻ったことが一回だけあるが、条件がわからない。
任意で戻れるわけじゃないんだよな。
にしても、そのせいで感覚がおかしくなる。
夏休みが異常に長い。
まあそれはそれでいいのか……
さて、行動するか。
時間制限があるからな。
できることはすぐに実行しておかないと、すぐに詰む。
俺はカホクとギンジョウを呼び、指示を与える。
「ギンジョウ、昨日の今日で悪いが、お前が町の内政を仕切ってくれ」
「わ、私がですか!?」
ギンジョウは珍しくうろたえている。
「あぁ」
「しかし、私は老兵です。
戦うことはできますが……」
「マガタ様ぁ、そりゃ無茶ですよ。
俺たちって戦闘訓練しかしてませんよ?」
「なら、信用できそうな人間を雇ってくれ。
ヨネィザが詳しいだろう」
ヨネィザはしばらくここに滞在していたからな。
俺たちより詳しいはずだ。
「なるほど……しかしそれならば、マガタ様ご自身が……」
「まぁ言いたいことはわかる。
しかし、やるべきことがあるからな」
「やるべきこと?」
「そうだ。
カホク、お前はついてこい」
◇
「またここっスか?
昨日来たばかりじゃないっスかぁ……」
カホクがぶつくさと愚痴を言う。
「こっちだ」
俺はカホクの愚痴を無視して、丘の上へと登っていく。
この辺りがちょうどいいな。
高低差がかなりある。
何メートルだ?
いや……よくわからないな。
下に谷が通路のようになっている。
俺は手頃な石を下の谷へと投げる。
ゴッゴッゴト!!
1、2、3……
3秒くらいか?
「何やってんすか?」
カホクが不思議そうに訪ねてくる。
「罠だよ、罠。
カホク、下の通路に魔物誘き寄せてくれ」
「えぇ……」
カホクはあからさまに嫌そうだ。
しかし、ここで検証はしておきたい。
「お前、いちいち俺の命令を嫌がるなよ」
「だってなんつーか、目的がわかんないっスから……」
俺だって説明できるならしたいところだが、ネタバレ禁止で詳しい説明はできないからな。
「まぁそう言うなよ。
それなりの金は渡してるだろ?」
「いや、まぁそうなんスけど……」
カホクは明らかに不満そうな顔をしている。
「あの、マガタ様は俺たちのこと信用してないんスか?」
「どうした急に?」
「スクワタのときだって単独で先走ったし、炭鉱の攻略のときも知識があるなら前もって俺たちに言ってくれても……」
なるほど。
こいつの不満はそういうことか。
俺が何も言わずに命令だけして攻略してるからな。
「事前に知らせておいて、失敗したらどうなる?」
「………………」
カホクは黙る。
「俺だけでなく、お前やギンジョウの首も飛ぶだろ」
本当はネタバレ禁止なわけだが、俺はそれっぽいことを言う。
「魔物、誘き寄せてくればいいんスよね?」
「あぁ頼む」
なんか、納得はいってなかったな。
まぁ本当はネタバレ禁止だからな。
どうしたって本当の理由は言えない。
ほどなくして、カホクが数体の魔物を引き連れてくる。
「走り抜けてくれ!!」
「へーい!!」
俺はカホクが罠の巻き添えにならないように、先に行かせる。
このあたりか?
ゴロッ……
俺は1m程度の岩を腕力で谷底へと落とす。
レベルアップしてなきゃこんな岩を動かすことなんてできないな。
ゴガッ!!ガッ!!
岩は壁にあたりながら、谷底へと落ちていく。
ダメだ。
魔物には当たらない。
タイミングが難しい。
「すまん!! そいつら倒して、もう一度頼む!!」
「了解っス!!」
◇
くそ……
3回目もダメだった。
ただの自由落下だろ?
途中で壁に当たると方向がずれたり、落ちるタイミングがずれる。
こればかりは何度も試すしかない。
しかし、この精度でここに罠を張って使えるのか?
いや、状況が違うか。
今は数体の魔物を引き連れてもらい、それに岩を当てようとしている。
しかし、これからくるのは魔物の大群だ。
どんなタイミングでも落とせば当たるだろ。
「走り抜けろ!!」
「はいよ!!」
今だ!!
ゴロゴロ!!
ブチ!!
お!!
できた!!
「マガタ様ぁ!! 魔物が潰れてますよ!!」
「了解!! 今確認しにいく」
俺は岩の落ちたところまで走っていく。
おぉ!!
ペシャンコだ。
「レベル上がったっすか?」
「いや、上がってないが……」
妙な感覚がある。
これは……スキルだ……
「スキル……おい、スキル習得ってレベルアップだけじゃないのか?」
「え? そうなんすか?」
そういえば、【落とし穴】のときも自分で作ったやつを成功させたら習得していたな。
てっきりレベルアップのほうかと思っていたが……
実際の罠を発動させ、成功させても習得できるのか。
しまったな……
基本的なことだろ。
バイトばかりで元ゲーマーに成り下がっていたからか。
こういうカンが鈍ってる。
「多分な……試してみるか、カホクもう一度頼む」
「はぁ」
俺は再び高低差のある岩場へ向かう。
習得したスキルは【岩石落とし】だ。
え?
何これ?
地面がうっすらと光って見える。
えっと?
これで発動か?
ゴロ!!
今までうっすらと光っていた地面の上に岩が現れる。
「うぉぉ!!」
俺は思わず声を出してしまう。
今までのスキルとはちょっと違うな。
さらに岩が谷底へ落ちる軌道がうっすらと見える。
「えっと……」
これ、方向も切り替えられるぞ。
しかも仕掛けておけば勝手に発動するっぽい。
感覚でわかる。
対象は……魔物のみ……いける……
人が通ったときに発動したらやばいもんな。
めっちゃ便利じゃん。
このスキルで局面が大きく変えられそうだ。
MPが切れるまで、毎日ここに【岩石落とし】を発動させておくべきだろう。




