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書庫と異世界と悪夢  作者: 橋下悟
第一章 罠師
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第15話

大学に到着した。

もう秋元は先に着いて待っているらしい。

大学には学食が4つもあり、そのうちひとつは昼時以外の朝から夜まで営業している。

安く、美味しく、量があるので、非常に重宝している。

カレーなんて250円なのだ。

学生のたまり場にもなっているのだが、今は夏休み中で空いている。


いた。

秋元だ。


「よ!」

「おぅ!」

秋元は短髪で少し強面だ。

スポーツもできるので、さわやかといえばさわやかだが、実は気が弱い。

夏休みで日に焼けている。

いつもより、さらにゴツく見えるな。


「お前、焼けた?」

「まぁな。実家に戻ったときに川で遊んだから」


「小学生かよ」

「お前、逆に白くなってない?」


「こもって別荘のバイトだからな。いや、つーかそれより聞いてくれよ……」

俺は別荘で起こった不思議な出来事を秋元に話す。


「なにそれ、面白いじゃん」

「いやいや、当事者は面白くねぇよ」

秋元は他人事だ。

そりゃそうだよな。

俺も自分のことじゃなかったら面白そうだと思う。


「んでさ、これ見てよ……」

俺はスマホで撮った動画を探す。

「あれ……?」

無い。

最初に地下室に入ったとき、不気味すぎて動画を回しながら入った。

その動画が見当たらない。


「ちょっと待って……あれ?」

「なんだよ」


「いや、地下室の動画撮ったんだけど無くなってんだよ」

「は? それ、超面白いじゃん」


「いや……マジで面白くない……」

「あ……すまん」

面白がっている秋元に少しイラついてしまった。

クソ……どんどんホラーになってきたぞ……


「あ、そうそう。俺、彼女できそうだわ」

「はぁ?」

こっちはそれどころじゃないのに……


「浮かれてんな。お前、それが言いたくて俺を呼んだだろ」

「う……」

図星だな。


「なんだよ~……お前なら喜んでくれると思ったのに」

秋元は悲しそうに言う。

確かに、今のリアクションは悪いことをしてしまったかも。

「いや、悪かった。例のバイトで余裕がなかったんだよ。すまん。それで、相手は? 俺が知ってる人?」

途端に秋元の顔がにやける。

この野郎……


「田村さんだよ、田村さん」

「はぁ!? マジかよ!?」


田村さんは、テニスサークル内でダントツにモテる女の子だ。

低身長でいつもニコニコしている。

愛想がめちゃくちゃいいので、勘違いで惚れてしまう男子が続出中らしい。

らしい、というのは俺はよく知らないからだ。


「いつの間にそんな関係になってんだよ」

「夏合宿があっただろ? それでちょっとな……」

いや、しかし信じられん。

秋元は俺と同じく、女の子があまり得意ではない。

男だけならよくしゃべるくせに、女の子が一人はいるだけでだんまりしてしまうタイプだ。


「マジかぁ……お前らは青春の夏だなぁ」

「お前も合宿来れば良かったじゃん」


「いや、無理無理。俺がバイト掛け持ちしてんの知ってんだろ?

 しかも、他のバイトは実家帰るとか、教育実習とかで人足りないんだよ」

俺は毎年夏休みはバイト三昧だ。

書庫の整理以外にも、いろいろとやっている。


「それで、付き合いそうってどういうこと?

 付き合ってるわけじゃないの?」

「そう。今度の飲み会でカミングアウトしようって話になってんのよ」


「なんだそれ」

「ほら、田村さんモテるじゃん?

 だからみんなに発表しておけば、変に男がよってこないだろ?

 次の飲み会は、お前も絶対に来いよ」


「えぇ~……それを見に来いってこと?

 クソだりぃんだけど」

「そんなこと言うなよ。

 友達のめでたい初彼女だろ?」


「まぁ、シフトに余裕あったら行くよ」

「んで、今日暇なんだろ?

 カラオケかダーツ行こうぜ」


「いや、弟の飯買って帰るわ」

「そっか、お前忙しいな」

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とりあえず秋元君の勘違いに一票いれとこう
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