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書庫と異世界と悪夢  作者: 橋下悟
第一章 罠師
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第13話

え?

目覚めると、そこは別荘の一室だ。

あれ?

マガタ死んでませんけど?

むしろ、順調に進めてましたけど?


俺はとぼとぼと一階へ降りていき、身支度を整える。

SNSを見ながら、朝食を摂る。

朝食は基本的に前日コンビニで買っておいたパンだ。

お湯を沸かし、コーヒーを淹れる。

コーヒー豆はすでに挽いてあるものを使う。


カーンコーン……


別荘の古いタイプの呼び鈴が鳴る。

このバイトの最初の訪問者だ。

荷物かな?

「はい! 少々お待ちください!」

玄関に届くように大きな声で言う。


ガチャ……


「お待たせしました」

別荘の無駄に大きな扉を開けながら言う。

外には、夏の季節に好ましくない服装の老人がいた。

真っ黒いスーツに真っ黒い蝶ネクタイ。

いや、スーツじゃないな。

中にグレーのベストを着ている。

昔の執事のような格好だ。

黒いシルクハットを被っており、丸いメガネをしている。


「突然失礼します。私、この別荘の管理をしております伊藤と申します」

老人はシルクハットを取り、胸に当てお辞儀をする。

「あぁ、管理会社の……」


この別荘の所有者は、大学の渋谷先生だ。

渋谷先生は、最近親族からこの別荘を相続したわけだが、管理会社は相続前から同じところと契約しているとの話だった。

しかしどういうわけか、書庫の整理だけは委託できないというのだ。

それで俺がバイトで来ることになったわけだが……


「この度は、書庫の整理を引き受けてくださりありがとうございます」

「いえ、こちらもバイトを探していましたし。あ、どうぞ。私が言うのも変ですが、上がってください」

俺は伊藤さんを入り口へ促す。

いろいろと聞きたいことがあるからな。

この別荘について。

書庫の隠し部屋について。

この「罠師」という本について。

そして、俺が見る夢についてだ。


「ありがとうございます」

伊藤さんは丁寧に会釈をすると、俺についてくる。

応接室に案内する。

「寝起きの格好ですみません。今コーヒーを入れますね」

「お構いなく」

「ちょうど、コーヒーを淹れていたところなんです」


俺は毎朝入れているように、コーヒーを淹れる。

「お砂糖とミルクは入れましょうか?」

「いえ、ブラックでお願いします」


コトッ……


「ありがとうございます」

俺は自分と伊藤さんのコーヒーをテーブルに置く。

「書庫の整理はどうですか?」

「はい。順調です。別荘も快適ですし……ただ、いろいろときになることがありまして」

「ほぉ……」

伊藤さんはゆっくりとコーヒーを一口のみ、それをテーブルに置く。

あの変な夢が無ければ快適なんだよな。

「ここの別荘のことを伺いたいのですが」

「はい、なんでしょう」


「管理会社のほうでは、隠し部屋について把握していますか?」

「ほぉ……隠し部屋……」


「書咲さんは、隠し部屋を見つけることができたようですね」

彼はニコリとほほえみ、こちらを見る。

「はい」

見つけることができたってことは把握していたんだよな。


「私どもは、その部屋の存在については知っています。しかし、見つけることができる人間は限られるのです」

「え? そうなんですか?」

いや、そんなことはないだろう。本棚の材質が周りと違っていたし、書庫の整理をしていれば、大抵の人間は気付くはずだ。


「本日こちらを訪問させていただいたのは、それが理由なんです」

「す、すみません。ご用件を聞くのを忘れていました」

俺としたことがうっかりしていた。

聞きたいことが多すぎて、伊藤さんがここに来た理由を聞いていなかった。


「それを聞いて安心しました。あなたには資質があるようですね」

伊藤さんは再び笑顔になる。

「書庫整理の資質……ですか?」

資質?

どういうことだ?

書庫の整理なんて、特別な知識はそれほど必要ないだろう。


「えぇ、ですから、こちらをお渡しします」

コト……

伊藤さんはそう言うと、小さな長方形の木箱を置く。

「これは?」

「開けてみてください」


カパ……

俺は言われたとおりに、木箱を開ける。

中には長さ15cm、幅5cm程度の薄い金属の板が入っている。

きれいに装飾されており、色付きのガラスが宝石のように散りばめられている。

「しおり……ですか?」

「えぇ、あなたならきっと上手く扱えると思いますよ」


「はぁ……」

俺はしおりから視線を戻す。

!!

いない……

さっきまで目の前にいた伊藤さんがいないのだ。


マジかよ……

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― 新着の感想 ―
セーブデータかな? 色々とキナ臭くなってきたな。
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