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書庫と異世界と悪夢  作者: 橋下悟
第一章 罠師
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第12話

「…………います、大型です」

バナッザがヨネィザに言う。

この奥は確か少し広くなっている。

おそらく魔物も大量にいるだろう。

本には書いてなかったが、ボス戦だろうな。


「戦えそうか?」

ヨネィザが確認する。

「通常のスケルトンも多くいるようです。通路に引き込めばこの人数でも対応できるかと」

「なるほど、ちょっと待て」


俺は通路に【落とし穴】を設置しまくる。

「通路に【落とし穴】を設置した。みんな壁沿いをつたって歩いてくれ」

「マガタさまぁ、【落とし穴】じゃダメージになんないじゃないッスか。さっきの壁で押しつぶすやつのほうが良くないですか?」

カホクが聞いてくる。

最もな疑問だ。


「すまんな、【ウォールプレス】は数に限りがある。奥に魔物が大量にいるならば、【落とし穴】で進行速度を落とせば、魔物がなだれ込んでくることは無いだろう?」

「あ~、そうッスね」

しばらく【落とし穴】を設置していると、身体に脱力感が出てくる。

最後に通路の壁に【ウォールプレス】を3つ仕掛ける。

これ以上は無理だな。


「よし、魔物をおびき出してくれ」

「はい、ここは私が」

バナッザが前へ出る。


「優秀だな、敵の先導もできるのか」

「お任せください」


カタカタカタカタ……


バナッザが戻ると、奥から大量のスケルトンがやってくる。


ズドッ!

【落とし穴】に落ちた音だろう。


ズドドドッ!

大量のスケルトンが【落とし穴】に落ちている。


ん?

レベルアップだ。

身体の倦怠感が若干無くなる。


「よし、みんなもう少し下がってくれ」

俺は下がりながらさらに【落とし穴】を発動する。

そして、スケルトンの軍団は【ウォールプレス】のあたりまでやってくる。


今だ!

ズドンッ!

壁が突き出て、スケルトンが押しつぶされる。

【ウォールプレス】を発動したことで、同時設置数に余裕ができる。

現在地で再び壁に【ウォールプレス】を発動。

そして、スケルトンが進んでくるその先には再び設置した【落とし穴】。


「これは凄い……」

「けど、なんか卑怯っすよね」

感心するギンジョウと呆れるカホク。

確かに、戦ってる感じはあんまりないな。



敵がほぼ片付いた。

「よし、奥へ進もう」

一同うなずく。

奥の方には、罠にかからなかったスケルトンも数匹いる。


「ちょっと俺に殺らせてくれ」

「おやめください。危険です」

「マガタ様。罠じゃまだいいスけど、剣では無理ッスよ。スケルトンは弱くないッス」

ギンジョウ、カホクともに近づくのを辞めるように言う。


「まぁ見ててくれ」

俺はそれを無視し、単独で奥へ突っ込む。

「マガタ様!」


スパッ!


凄まじい剣速だ。

半端ない。

スケルトンの骨を切ってやった。

ガシャ……

崩れ落ちる骨。

一撃である。


「おぉ~、やっと主人公っぽくなってきたな」

「す、すげぇ! どうなってんスか?」


「フフフ、カホク君。レベルアップだよ、レベルアップ」

「素晴らしい」

ギンジョウが涙ぐんでいる。

炭鉱は暗くてよく見えないが、間違いないだろう。


「大型は我々にお任せを」

ヨネィザが前に出る。

「頼んだ。我々はマガタ様を護衛する」

「おいおい、もう護衛なんて必要ないぜ」


バゴーン!!


「私の役目だ」

盾役のベノが前に出て、大型スケルトンの攻撃を受け止める。


ブワッ!


その衝撃でここまで風圧が来る。


「前言撤回。全力で守ってくれ」

あれをくらったら今のレベルでも無理だな。


ズバババ……


なんだあれ……

ヨネィザの残像が見える。

大型スケルトンを切り刻んでいるのだろうか。

速すぎてよくわからん。


大型スケルトンが振りかぶると、必ずベノが前に出て、危なげなく盾で受け止める。

強っ!

ダメだな。

レベルアップしたといっても、雑魚しか倒せない。

あの戦いに入れそうもないのだ。


けど、少し違った感覚がある。

罠を少し離れたところにも発動できそうなのである。

やってみるか。

俺は、大型スケルトンの足元に【落とし穴】を設置する。


ズド……


大型スケルトンは片足が地面に埋もれ、大きく体勢を崩す。


「今だ!」

ヨネィザの刀身が青白く光る。

「ハッ!」


ズバァッ!


すっげ……

大型スケルトンは真っ二つになり、地面に深い亀裂が入る。


「マガタ様、アシストありがとうございます」

「お、おぉ」

いや、そんなん無くても普通に勝てそうだったな。


魔物がいなくなったことで、俺たちはあたりを見渡す。

「ひどいな……」

冒険者や炭鉱夫の亡骸が多く散らばっている。

さっきのスケルトンたちにやられたのだろう。


「マガタ様、このあたりを調べてもよろしいでしょうか」

ヨネィザがこちらを向き、聞いてくる。

父親の遺品を探したいのだろう。

「もちろんだ」

俺たちも遺品を探す。



「マガタ様、これらの装備品をいただけないでしょうか」

ヨネィザがこちらにひざまずき、聞いてくる。

「もちろんだ。持って帰るといい」

「え!? マガタ様! それ、結構高価なヤツッスよ」

カホクが言う。

「構わないよ。父親のだろ?」

ヨネィザが驚いてこちらを見る。

そりゃそうだ。

何故か俺が知ってるわけだからな。


「肉親を亡くすってのは、体験したものでなければわからないからな……」

父さんか……。

生きていれば、ギンジョウと同じくらいの年齢だろうか。

「ありがとうございます……」

ヨネィザは深々とお辞儀をする。

「その代わり、困ったときにはその武力で助けてほしい」

「はい。私にできることならば、なんなりと」

「よし! それ以外の装備品なんかは全部売っぱらってくれ!」

この金があれば、できることが少しは増えそうだ。

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