第10話
俺たちは廃炭鉱を目指す。
俺とギンジョウ、カホク、それからギルドで護衛の依頼を受けた兵士長ヨネィザとその部下、ベノとバナッザだ。
「お前たちはこのあたりに詳しいのか?」
俺はヨネィザに質問をする。
「はい。それなりには。このあたりはよく調査をしています」
「魔物が湧くからな。結構なことだ」
本当は父親の遺品探しだろう。
俺はヨネィザに接触しようとしていた。
しかし、ギンジョウの話では、ヨネィザと接触するのは難しく、領地内で声をかけるのはやめたほうが良いと言われていた。
何故なら、この領地を実質仕切っているスクワタの私兵の兵士長だからだ。
領主である俺が、スクワタの兵士長に接触するのは警戒される恐れがあるからだ。
しかし、今は違う。
ギルドを通して、廃炭鉱の調査を依頼し、その調査に自ら名乗り出たのだ。
これならば、スクワタの機嫌を損ねることはないだろう。
「こっちの方角には来たことがあるのか?」
「はい。調査で何度か」
それからしばら目的の炭鉱跡を目指す。
俺の頭の中の地図だよりだ。
◇
「こちらですか?」
「あぁ、そうだ」
俺たちは炭鉱付近まで来て、道をそれる。
もともと獣道があったのか?
というくらいの痕跡。
多分ここで良いと思うんだよな。
道とも呼べないような道に、皆の表情が難色を示す。
「こんなとこに何の用なんスか?」
「奥に別の炭鉱がある」
と、思うんだよなぁ。
距離的にはこの辺なんだよ。
「私達でもこっちには来たことがありませんね」
ヨネィザが関心を示す。
「だろうな」
彼女たちが行ったことがある場所では意味がないのだ。
◇
ギンジョウを先頭に、邪魔な草木を切り倒しながら進んでいく。
参ったな。
この辺だと思うんだけど、全然見つからない。
マジかよ。
マップは任せろと思っていたのだが、ゲームとは距離感が違うってか……。
「無いッスねぇ~……」
誰もが思っていることを口に出すカホク。
「う~む……」
俺はキョロキョロと辺りを見渡す。
ん?
窪み?
「ちょっと待った」
ガサガサッ!
俺は窪みへと近づく。
1m程度の穴があるな……。
「え? まさか、これッスか?」
「だろうな……。皆下がってくれ」
俺は【落とし穴】を発動させる。
ゴトッ!
それから手頃な石をそこへ投げ込む。
ガツッ!
ボロボロボロ……。
穴が大きく空き、入り口が見えてくる。
「おぉ……」
「やっぱりな」
一同驚いている。
こりゃ見つからんわ。
「バナッザ」
「はい」
ヨネィザがバナッザに声をかけると、彼女は前方へと手をかざす。
「かなりいますね。魔物の巣窟と言ってもいいかもしれません」
「なるほど、ちょっと手間だが俺に協力してほしい」
「はい……なんでしょう」
一同俺の意見を聞いてくれる。
「最初の魔物はどの辺りにいる?」
「ここから20mほど奥にいますね」
「わかった」
それから10mほど奥に進む。
「このあたりでいいか……一旦ここから引き返すぞ」
「へ? 奥に行くんじゃないんスか?」
「まぁな」
俺は後退しつつ【落とし穴】を発動させていく。
体力が続く限り【落とし穴】を設置しまくり、炭鉱の入り口まで戻っていく。
「では皆、このあたりの雑草を刈り取ってくれ」
「雑草ッスか?」
各自疑問を持ったまま生い茂った雑草を切って持ってくる。
俺も雑草を切り、炭鉱入り口に雑草の山が出来上がる。
「入り口塞いじゃいましたよ……」
カホクがグチグチと文句をたれる。
「誰か【炎魔法】は使えるか? 【風魔法】もあると助かる」
【炎魔法】や【風魔法】が存在するのは、事前に学習済みだ。
「はい。使えますが」
おぉ、ヨネィザが両方使えるようだ。
優秀だな。
「では、こいつに火をつけて、風で煙を炭鉱内に送り込んでくれ」
「はい」
「なるほど……」
ギンジョウは納得したようだ。
ボワッ!
ヨネィザが雑草に火をつけ、【風魔法】で煙を炭鉱内に送り込んでいく。
煙がモクモクと炭鉱内に入り込んでいく。
「来ます! 魔物が中から出てきます!」
バナッザの【索敵】に魔物が反応したようだ。
あ!
俺にも反応がある。
魔物が次々に【落とし穴】に落ちていく。
すげぇ経験値だわコレ。
ドガドガ……
魔物が【落とし穴】に落ちる音が近づいてくる。
「穴に落ちた魔物は適当に仕留めてくれ」
「了解です!」