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5話 死守せよ!フローラ防衛戦

 




 ◆エリス視点





(急がなくちゃ!)



 私は全速力でフローラの門へと急ぎました。時間の猶予はあまり残されていません。


 私が門の前に着いた頃、門の付近は騒然としていました。フローラの街の歴戦の冒険者の人達が続々と集結している。


「回復魔法に心得があるやつは、俺の元に集まれ! ハンスっ! お前はそっちだ! 早く急げ! 何ぃ!? トイレに行きたいだと!? 早く行ってこいっ!!」


 熟練の冒険者達が初心者冒険者、中堅冒険者達に的確に指示を出して動いていた。


 ギルドの職員も忙しなく動き、物資の点検と準備を急ぎ進めている。一部の人は避難誘導に回っている様だ。


「姐さん! 話しは聞きましたか!? どうやらホワイトウルフの大群が、このフローラの街に迫っているらしいですぜっ! あのオカマ野郎から話しを聞いて、俺の方でも人を急遽掻き集めて来やしたぜ!」


 私に声を掛けてきたのは、Dランク冒険者のアルゴートだった。アルゴートの後ろにも大勢の冒険者達が付いて来ている。皆荒くれ者達だが、腕は経つ冒険者達ばかりです。


「ええ! 話しは聞いているわよ! 今は一大事です! 人手は多い方が良いです! 共に戦いましょう!」

「はいっ! 俺も昔は人様に迷惑をかけてきやしたが、それでもこのクソッタレな仲間達やこの美しい街並み、義理と人情が溢れてるこの街の人々、そして俺の故郷でもあります! 必ず守り抜いて見せやす! どこぞの狼共の好きにはさせませんっ!」


 アルゴートは得意武器のウォーハンマーを力強く握り締めて神妙な面持ちであった。普段ふざけているアルゴートだが、有事の際には頼りになる男である。


「アルゴート……貴方」

「おい! てめぇらぁ! 姐さんの美しい肌に、一つでも傷が着いたら俺たちの名折れだ! 死ぬ気で守れっ!!」


「「「「「「「うおぉぉおおお!!!」」」」」」」


「全く……くすくすっ。そこは「街を守るため」とか言うべきじゃないの?」


 私はこんな時だけど、思わずくすくすと笑ってしまいました。私も気を引き締め無くては……



 ―――丁度その時、この街の有名な冒険者達が続々と到着した。




「おぉ~愛しのマイハニー会いたかったよぉ~」



 ★Bランク冒険者の【紅の薔薇】グレス・アランドール





「ふふっ、血が滾りますねえっ!」



 ★Bランク冒険者の【漆黒の暗殺者】ステイン





「ひと暴れするかぁ!!!」



 ★Bランク冒険者の【闘牛】テオロス





 そして……



「オーホッホッホ! 私の前に(こうべ)を垂れて、平伏しなさい愚民共」



 ★深紅色に輝く赤いドレスに、魔剣を携えている美しい女性。妖艶な色香を放っている赤髪ロングヘアーの巨乳美人、上級Aランク冒険者【炎帝】の異名を持つ、リリーゼ・アルトリア。その後ろには従者の女性のメイドが控えている。


「おまたぁせ♡ 何とか間に合ったようねぇ~! 良かったわぁん♡ それじゃアタシ達もひと暴れするとしましょう!」


 上級冒険者チーム【秘密の花園♡】のリーダーにして、Aランク冒険者の【殺戮の天使】ことエリーゼ・ランカスター。


 その後ろにはチームメンバーの4人のオカマ達が、身体をうねらせていた。


 他にも屈強な冒険者チームの【ロリコン紳士の集い】と【バビーチェ】、【雷神の咆哮】、【シルクロード】、【四神】、【童帝】、【ブラストファング】、【ブロッサム】のメンバーも揃っていた。


 門の前には錚々たる顔ぶれが集まっている。全ての冒険者達が愛するフローラの街を守ろうと立ち上がったのだ。


「相手はホワイトウルフ! 単体での危険度はD級の魔物だけど、今回は大群で迫って来ているから危険度は跳ね上がるわよ! みんな、1人で突っ込むのは危険よんっ! 周りを見て戦況が押されていそうな場所があれば援護しに行ってちょーだい! 油断は禁物! 絶対に無理もしちゃダメよぉ! アタシ達が負けたらこの街は終わりよ! それでは皆、行くわよぉぉぉぉぉぉんん!!」



「「「「「「「「うおぉぉお!!!」」」」」」」」



 地面を揺るがすような、冒険者達の屈強な雄叫びが鳴り響いている。フローラの存亡を掛けた戦いが今まさに始まろうとしていた。





 ―――――――――

   

 

 

 

(見えてきたわ……それにしても凄まじい数ね……)



 エリス達は、今街から少し離れた平原で陣を構えて敵の到来を待っている。マーレの森から溢れ出てきた、大地を埋め尽くすほどのホワイトウルフが飢えた獣の様に迫ってるのが遠目でも確認出来る。


 そして、今…… 冒険者達とホワイトウルフの戦の火蓋は切られたのであった。冒険者達は皆武器を手に取り迅速に行動を開始した。


「来たぞぉぉおおお! A班とB班は左右に展開! C班は後方での援護だ!」


 熟練の冒険者の指示でいくつかの冒険者グループが動いた。


「グルゥウアアアア!!」


 そして今、私の目の前にも獰猛な牙を生やしたホワイトウルフが迫っている。


「はあああっ!! せいっ!」


 エリスの斬撃により、一頭のウルフが事切れる。そして次から次へと、津波のようにこちらへと攻めてくるホワイトウルフ。



(くっ……範囲攻撃で畳み掛けるしかないわね)



 己の剣を信じるのよ……私の剣は理不尽に屈指ない剣なのだから!


 手に汗が滲む……私もそれなりの場数を踏んで来たつもりだけど、これ程多くの魔物と戦うのは初めてだ。慎重に行くわよ…… 



【⠀雪華流 弐ノ型 深淵の氷道(ヴァージカル・ロード) 】



 エリスの氷を纏った冷気の斬撃が、弧を描きながら前方に解き放たれた。複数のホワイトウルフに斬撃が命中し、ホワイトウルフは呻き声を上げながら死んで行く。


「姐さん後ろ! 危ないっ! 武技 【巨腕の一撃】!」


 アルゴートがエリスの背後に近付いて居たホワイトウルフの間に入り、ホワイトウルフの顔面ウォーハンマーで吹き飛ばした。


「助かるわ! アルゴート!」

「いえいえ、今は協力して戦う時ですぜ! 姐さんの後ろは俺達に任せてくだせぇ! 姐さんは、前だけを見てて下さい! 野郎どもぉ! 姐さんの後方に、一匹も犬コロ共を入れるんじゃねえぞ!!」



「「「「「「うおおおおおっ!!」」」」」」



 エリスの後ろには、アルゴート率いる屈強な冒険者達が付いて来てくれていた。



(私も持っと頑張らなくちゃね!)



 すぅ…………氷上に踊れ……荒れ狂うは刹那の斬撃!



【⠀雪華流 参ノ型 氷雪乱舞(ひょうせつらんぶ) 】



 エリスは、次々とホワイトウルフを屠りながら戦場を縦横無尽に駆け巡って行く。





 ◆B級冒険者 【漆黒の暗殺者】ステインside





「ふふっ、ぐふふふ……はっはははは! えぇ! 愉快ですねぇ! こんなにも沢山の獲物を仕留める事が出来るなんてね! 実に愉快!」


【漆黒の暗殺者】ステインは死神が持つような鎌で、次々とホワイトウルフの首を刈り取り狂ったように笑う。ホワイトウルフは悲鳴を上げる前に絶命して行く。


「まだまだ足りませんよぉ! 次ぃ!!」


【暗殺術  一式  死に神の一撃(デストレッツァ)


 ホワイトウルフの首が、一斉に跳ね上がった。ステインは大きな鎌を持ち、笑いながら戦場を駆け巡る。


「フローラの冒険者達に喧嘩を売った事、あの世で後悔すると良いですよ」


 ホワイトウルフ単体ではそこまでの脅威はありませんが、これだけの数が居ると一筋縄では行かなさそうですね。一部特殊個体が混じって居る様ですし……早急に片付けて他の冒険者達の支援に向かうのが最適解でしょう。


「さて、死神からは逃れられませんよ……ふふっ」 





 ◆B級冒険者【紅の薔薇】アランside





 やはり、数が多いですね。あぁ……愛しのマイハニーが心配だ……早く魔物を片付けて、このアランがエリス殿の盾となり剣となってお守りせねば。こんな品も無く美しくも無い戦いは、早急に幕を閉じさせなければ行けませんね。


「ん〜やっぱり美しい僕には、この血生臭い戦場は似合わない……あぁ愛しのマイハニー♡ 今迎えに行くよ」

「グルル……グワァン!!」


 5頭のホワイトウルフがアランを囲むようにして、四方から一斉に襲い始めた。


「君達は、美しい花には棘があるって知ってるかい?」


 アランを中心に突如として、薔薇の花吹雪が一面に舞散った。


「君達は醜い……君達の最期くらい薔薇色に染めてやろうではないか【薔薇の散弾(ローズ・ショット)】!」


 ホワイトウルフは薔薇の花びらによる散弾で、次々と死に絶えていく。


【紅の薔薇】の異名を持つアランの強さは伊達じゃない。





 ◆B級冒険者【闘牛】テオロスside


 


 

「おらおらおらぁあああ!! さっきまでの威勢はどうしたぁ!! クソ狼共!!」


 テオロスは己の肉体に強化魔法を掛けて、鋼のような硬さの肉体でホワイトウルフ相手に暴れて居た。


 ホワイトウルフはテオロスのタックルや拳により撃沈。魔物は次々に地面にめり込んで行き絶命する。


「おらぁっ! いっちょ! ド派手に行くぞっ!!」


 テオロスは体制を立て直して、正面の狼達へ向けて奥義を放った。


 久しぶりに気合いを込めた一撃をお見舞いしてやるぜ! ふんっ!


 唸れ! 俺の筋肉よ! テメェらとは気合いが違えんだよ! はぁあああああああああああっ……!!



【 岩山砕きの一撃(フルバースト)! 】



 地面に向かって、テオロスは己の拳を渾身の一撃で叩き付けた。ホワイトウルフの立っていた足場が隆起して、次の瞬間地割れとなり狼達を多数巻き込んで行く。


「死にてぇ奴から掛かって来なぁ!」





 ◆A級冒険者【炎帝】リリーゼ・アルトリアside





「シャロン……危ないので少し離れて下さいまし」

「はい……お嬢様。ですが、お嬢様に危険が及ぶ場合は、介入させて頂きます」


 そう言うと金髪のショートヘアのメイドは後ろに下がった。


「狼共、全員私の足元にでもひれ伏しなさい。ミリアムとレア、どちらがお好みですかぁ?」


 リリーゼの魔剣が赤く燃えるように煌めいている。ホワイトウルフ達が、リリーゼに一斉に襲いかかって来た。リリーゼは妖艶な笑みを浮かべながら、魔剣を振りかざす。


「燃え尽きなさ~い、【 炎龍の咆哮(レーヴァテイン)⠀】!!」


 次の瞬間数十頭のホワイトウルフ達は、一斉に燃え尽きて灰と化した。


「あら! わたくしとしたことが、焼きすぎてしまいましたわ! おっ〜ほほほ!」


 さて。お次はどなたが丸焼きになりたいのかしら?


 彼女が【炎帝】と呼ばれる所以である。





 ◆Aランク冒険者パーティ【秘密の花園♪】side





 戦場のとある一角では、更なる地獄絵図が繰り広げられていた。



  ・・・Aランク冒険者パーティ【秘密の花園♡】・・・



「やだぁ~お姉たまぁ! 私のスカートが血で汚れちゃったじゃないのお!」

「あなたわぁ~元から汚れてるでしょおん? 気にしない気にしない~あらやだぁ! あそこの狼ちゃんこっち見て怯えてるわよぉん~んふっ~♡(悪魔のセクシィーポーズ)」


 ホワイトウルフ達が、【秘密の花園♡】のオネエ軍団を見て怯えている。


「あらやだぁ! あそこに居る冒険者結構イケてなぁ~い? アタシのタイプよぉん♡ 食べちゃいたいわぁん~♡」

「あらぁ? 私としたことが、うっかりさんねえ〜口紅落としちゃったじゃないのぉ~何処に行っちゃったのかしらぁ? 今流行りのお高いやつだったのにぃ!! キィィイイ!! そこの狼、死にさらせぇあああクソボケェ!!」


 エリーゼは溜息をつきながら呆れていた。


「ちょっとぉん!? キャンディーちゃん達、ちゃんと戦ってよぉ! この戦いに勝利したら、私の取って置きをア、ゲ、ル♡」



  「「「「きゃぁぁああ! お姉たまぁん♡」」」」



 この時その光景を見てた冒険者達は、続々と吐いて医療班に運ばれるのであった。





 ◆エリス視点





(はぁはぁ……今の所こちらの陣営は、善戦しているようね……数が多すぎる、これでは皆の体力の方が先に尽きてしまう……)


 エリスもかなりのホワイトウルフを斬ってきたが、最早体力は限界に近かった。




 ―――突如遠くの方で轟音が鳴り響く。




 そして、1人の冒険者が絶望的な表情を浮かべ声を震わせながら呟いた……


「お、おい!? 敵はホワイトウルフだけじゃなかったのかよ!? あんな奴が居るとは聞いてないぞっ!!」


 エリスは視線を前方に向けた、遠くの方で大きな巨人が、こちらにゆっくりと歩みを進めていた。



(あ、あれはまさか……!? 危険指定ランクA級のアークギガンティス!? しかも、B級のダグラスベアーにダイアモンキーまで……!?)



 戦場の状況が一変する……しばらくすると至る所から、冒険者達の悲鳴が上がった!


「A班B班共に壊滅状態です! 至急援軍を!!」


 冒険者の一人が恐怖を孕んだような声で叫んだ。こちらも戦力にはもう余裕は無い。


 フローラの冒険者チームは、徐々に数と言う物量に押し負けそうになって来ている。



(くっ! どうすれば……!?)



 その時であった、手負いのホワイトウルフがエリスに牙を剥き襲い掛かって来た。


【 雪華流 肆ノ型 氷輪薄荷閃(ひょうりんはっかせん)⠀】


 螺旋状の軌跡が煌めいた瞬間、ホワイトウルフ達を氷の刃がかまいたちが過ぎ去った後のように切り刻まれて行く。


「がるるるっ……ぐわおお!!」


 しかし、他のホワイトウルフに襲われてエリスは腕を負傷してしまう。


「うぐっ……!?」


 エリスの身体は全身ボロボロだった……数の暴力の前ではいくら強くてもいずれは疲弊してしまうのが関の山だ。


「姐さん! 大丈夫ですか!?」


 アルゴートがエリスに群がっていた狼共を叩き潰した。全身ボロボロになりながらもアルゴートはウォーハンマーを振り続ける。


「姐さん! 一旦後方へ下がって下さい! その身体では持ちませんよ! ここは俺らに任せていってくだせえ!」

「そうですよ! 姐さんっ! 姐さんには、帰りを待つ妹ちゃんが居るでしょうがっ!」

「姐さんを守れるなら、俺たちは死んでも悔い無しだぜっ!」



 アルゴート達は、エリスに退却するように進める。



「バカっ!! あなた達だってボロボロじゃないの……」



 ―――エリスの瞳から、涙が零れた。


 日頃はアルゴート達の事を散々罵っては居るが、実は結構気に入って居たのだ。自分の事を姐さんと呼んで慕う彼らを、エリスはどうしても見捨てる事が出来なかった。変態で素行も悪くアホな連中だが、これでも良い所もあるのだ。フローラの街を想う気持ちは皆本物。


「進むも地獄、退くのも地獄……」


 少しでも多くのホワイトウルフを斬り捨てる……



(ヒイロちゃん……)



 エリスは目をつぶって、幼いエルフの愛らしい少女の事を想う……



(覚悟を決めよう……ごめんね……ヒイロちゃん。お姉ちゃん、約束守れないかもしれない)



 エリスは涙を流しながら、覚悟を決めたのであった。



 ―――だがその時、天はエリス達を見捨てては居なかった。



 突如として冒険者達の背後から謎の集団が現れた。


「第一陣、第二陣は、冒険者達の援護を! 第三陣と第四陣は可及的速やかに、ホワイトウルフの群れを駆逐しろ!!」


 白銀の鎧を纏った謎の騎士達が、突如戦場へと現れたのであった。


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