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4話 フローラに迫る危機

 




 ◆ヒイロ視点





 僕は今お姉さんに抱えられながらフローラの冒険者ギルドに居るのですが、どうやらお姉さんは有名人でモテモテらしい。冒険者のお兄さん達がお姉さんに話し掛けて来てみんなお姉さんの言葉で悦んでいました……ぼ、僕は何も見なかったことにしておこう。


 そしてギルドの奥から、何やら凄まじい格好をしたお兄さん? おじさん? いや乙女?がやって来て僕は口を開けて唖然としてしまいました。


「ねえねえ! エリスちゃん! この可愛い女の子誰なのぉ!? も、もしかして!? エリスちゃんの子供!?」


 ガタッと大きな音がした、ふと視線を感じて扉付近を見てみるといつの間にか冒険者のお兄さん達が戻って来ていました。


「もう! エリーゼさんったら~私には子供は居ませんよ! この子は、私の可愛い可愛い妹のヒイロちゃんよ♪」


 お姉さんは、ドヤ顔でエリーゼさんにそう言った。

 周りから安堵した声が聞こえて来て、ギルド内はガヤガヤと騒がしかった。しかし、僕が可愛い……だなんて……嬉しいのか嬉しく無いのか良く分からない気持ちです。


「あ、兄貴! 今の話し聞きましたか!?」

「あぁ、聞いたぜ。あの姐さんに妹が居たとはな。だが俺は姐さん一筋だぜ!」

「幼女……幼女……幼女」

「何だろう……この胸のざわめきは……はっ!? もしやこれが恋!?」

「あぁ〜あの子に踏まれてぇ。それか俺の顔に跨ってお漏らしをしてくれねえかな?」


 後半何やら不穏な言葉が出て来た気がするが、あえて僕はスルーすることにした。僕はこうみえても立派な男性なのだ! 身体は女の子でも心は男性!


「あらまぁ!? そうなのねぇ~お嬢ちゃん! 私の名前はエリーゼと言うの! 気軽にエリちゃん又はエリーゼと呼んでね♡ ンフ〜♡(ゲイの微笑み)」

「ヒィ……!?……ぼ、僕の名前はヒイロでしゅ」


 エリーゼさんの顔が、近い……近いです! 心臓に悪いですよ。


「エリーゼさんったら、クスクス……ヒイロちゃんをいじめちゃダメですよ~♪」

「あらん、そんなつもりは無いのよぉん♪ この子は将来有望の美少女になるわよ! そこら辺の有象無象の変態共が寄ってくるかもしれないわね」


 エリーゼが視線を向けた先には、冒険者達が居たがみんな一斉に視線を逸らした。


「うふ……うふふっ……そんな変態さんには、私が引導を渡してやりますよ」


 お姉さんは女神の様な慈愛に満ちた表情で笑っていたが、目が全く笑っていなかった。お姉さんの表情……凄く良いです。何だかゾクゾクして来ちゃう。


「さて、私はギルマスに用事があるのでそろそろ失礼しますね~」

「あらぁ~そうなのねぇ、アタシもギルマスに報告しなきゃ行けないことがあるから、ご一緒しちゃってもいいかしら?」


 エリスは少し悩んでから答えた。


「はい! では一緒に行きましょうか!」


 僕はお姉さんに抱っこされながらギルドの受け付けの所まで足を運びました。何だか本物の冒険者ギルドに来たんだなと思うとワクワクして来ちゃいます。僕も冒険者になって一攫千金を狙ってみたいな。どうせなら剣で成り上がって異名は「剣聖」とか……か、かっこいい。


「ヒイロちゃん?」

「はわっ!? な、何でも無い……でしゅ」


 さて、丁度2番カウンターの受け付けが空いた様ですので、僕達は2番の受け付けで対応をして貰うことになりました。


「レオーネさんおはようございます♪ ギルマスは居ますか? 今日は私とこの子とエリーゼさんを混じえて大事な話しがあるのですが」

「はい! おはようございます♪ ちょっと待ってて下さいね~ギルマスに確認して参ります」


 そう言うとギルドの受付嬢レオーネさんは、席を立ち2階へと上がって行きました。やはり冒険者ギルドの受け付け嬢はスタイルも良く美人さんですね。容姿が美しいのはラノベでも定番でした。あ、でもエリスお姉さんの方が美人さんですからね?





 ・・・数分後・・・





「お待たせしました! ギルドマスターが2階でお待ちしております! こちらへどうぞ♪」


 僕達はレオーネさんに案内されながら、2階にある奥の部屋へと案内された。


「トントン・・・失礼します! ギルドマスター連れて来ましたよ!」

「入りたまえ」

「失礼します!」

「失礼するわぁん♡」


 扉を開けた先に、立派な白髭が生えている威厳のある老人が座って居た。フローラ支部のギルドマスターで名前は アルス・ワグナーと言うらしい。


「そこのソファに掛けてくれたまえ」


 老人に促されてソファに僕達は腰をかけた。まあ、僕はお姉さんの膝の上ですけどね。


「エリスちゃんの話しの前に、アタシから先に報告失礼するわね、マスターに頼まれてたマーレの森の調査だけど最奥の森にダグラスベアー、ダイアモンキー、アークギガンティスの生息が確認出来たわ……それと私のキャンディーちゃん達からの報告だけど、森の一部が黒く枯れていた事と黒装束の怪しい人影を、複数人目撃したとの情報が……」


 ギルドマスターは、ガタッと音を立て席を立った。


「何!? ダグラスベアー、ダイアモンキーにアークギガンティスだと……!? 何の冗談かね!? 危険指定ランクB級とA級が何故マーレの森に居るのだ……あの森には本来なら生息しない魔物であるぞ。それに森の一部が黒く枯れる……黒装束の人影とは一体……何なのだ」


 危険指定ランクとは、魔物の強さ、凶暴性、知性等の様々な要素を鑑みた時の魔物の危険度である。下から、E級、D級、C級、B級、A級でその上がS級である。


 ゴブリン等はE級に分類されているが、C級辺りになるとベテラン冒険者が数人がかりで、やっと仕留めれるという危険度である。そこから先のB級とA級は化け物クラスだ。B~Aランクの冒険者が複数人で挑まなければ厳しい危険度で、その更に上のS級に至っては、国家の存続を脅かす程の脅威である。一国の軍隊が出なければならない程の危険度なのだ。


 冒険者の階級等は、G級、F級、E級、D級、C級、B級、A級、そして国家に数人しか居ないS級までが存在する。このフローラの街は、辺境という事で危険度が高い魔物が多いので、高ランク冒険者が多数在籍しているのだ。


「マスター実は、私もマーレの森の事でご報告があるのです。ここで見た事は他言無用でお願いします。エリーゼさんも……」


 エリスは膝の上に座って居る、ヒイロちゃんのフードを外した。


「「.........。」」


 マスターとエリーゼは驚いた顔をしていた。


「まさか……その青緑色の瞳。ハイエルフかの?」

「はい……恐らくそうでしょう、私が剣の修行をしている時に魔物に襲われている所を発見して保護しました。泉の近くで危険指定ランクC級のソードマンティスが出現したことも……こちらは私が倒したので問題は無いですが」


 ギルドマスターは険しい目でヒイロちゃんの事を見つめている。


「なるほどのぉ、しかしソードマンティスか……頭が痛い案件であるな。それに何故ハイエルフが、マーレの森に居るのかが問題であるな。通常のエルフでさえ珍しいが、ハイエルフとなるとまた別格だ」

「一体……マーレの森で何が起きて居るのかしら……アタシが各国を渡り歩いて居た頃に、一度だけエルフなら見た事があるわ」

「しかし、エリス君。その幼いエルフの子供をどうするのかね?」

「この子は、私が責任を持って面倒を見ます。この子は私の大切な家族です」

「そうかね……私はあえて何も聞かないよ。エリス君の覚悟はもう決まって居る様だね。ならば、この子の事はエリス君に任せよう、私も微力ながらではあるが、出来る範囲で力を貸そうではないか」

「マスターありがとうございます!」


 エリスは感謝の意を示しながら、ギルドマスターに頭を下げた。


「この話しはここに居る者だけの秘密にしよう、エリーゼ君もいいかね?」

「もちろんよぉ! 何か私に出来る事があれば、喜んで力を貸すわよエリスちゃん! だけど隠し通す事が出来るかしら? エルフだとバレたら、各方面から狙われる可能性も出てくるわよ」

「エリーゼさん、ありがとうございます! そうですよね……ですが、この子は何があっても私が守り抜いて見せます! 忍び寄る悪意は、私の剣で全て断ち切ります! もう、大切な者を失うのは嫌ですから……」


 エリーゼとマスターは神妙な顔をしていた、この2人はエリスの事情……過去を知っているのだ。


 マスターは席を立ち、ヒイロちゃんの前まで来て目線の高さを合わせるようにしゃがみ込んだ。そして、皺くちゃの手でヒイロちゃんの頭を優しく撫でる。


「お嬢ちゃんのお名前は、何と言うのかな? おじいちゃんに教えてくれるかな?」

「僕の名前は……ヒイロ……です!」


 おぉ! 今度は噛まずにちゃんと言えたぞ! やれば出来るじゃないか! 偉いぞ僕!


 この中身25歳の男は日に日に精神が退化して行ってる事に気付いてはいなかった。


「おお! そうかそうか! ヒイロちゃん言うのか、良かったら飴ちゃん食べるか?」

「食べりゅ!!」


 最早そこには、ギルドマスターとして威厳ある姿のアルス・ワグナーではなく、孫にデレデレしているただのおじいちゃんの姿が有るだけであった。


 エリスとエリーゼはその光景を見てクスクスと笑っていた。


「では、エリーゼ君には引き続きマーレの森の調査をお願いしたい」

「もちろんよ! 私はこの街が大好きなの! この街に危害を加えるような魔物共は、私が蹴散らしてやるんだからぁ!!」


 エリーゼさんはまたしても、その巨体をくねくねとうねらせていた。


「エリス君はその子の面倒を見ないと行けないだろうから、依頼や仕事の方は無理にこなさなくても大丈夫じゃぞ、できる範囲で良いから。だが、緊急案件や緊急事態の時は力を借りるぞ」


「マスター、本当に色々とありがとうございます!」


 ふむふむ……話しを総合するとマーレの森の異変、危険指定高ランクの魔物の出現に、怪しい黒装束の人影かぁ。


(一体マーレの森で、何が起きようとしているんだろう……僕もこの世界の事分からない事ばかりだから、自分でも調べる必要があるね)


 丁度その時であった、ギルド職員が慌ててこの部屋に入ってきたのである。


「マッ……マスター!! た、大変です! 急ぎご報告したい案件がっ!!」

「バカもん! 部屋へ入る時くらいノックせんか! 来客中じゃぞ」


 ギルドマスターは職員に叱責した。


「も、申し訳けございませんんんっ! ですが、緊急事態なのですっ!」

「一体何と言うのかね?」

「マーレの森の方角から、ホワイトウルフの大群が迫って来てます! その数……推定500頭っ!」

「何じゃと!?」


 ギルドマスターは席を立つ程驚いていた。お姉さんもエリーゼさんも口を開けて唖然としていた。ホワイトウルフって何だろう?


「今までマーレの森から魔物が、出て来たという事例は無いのに!」

「マスター! アタシは、急いで冒険者達にこの事を知らせて、集めて来るわよ!」


 エリーゼさんは席を立ち、疾風のごとく部屋から退出して行った。


「君はこの件を大至急領主様に伝えてくれ! 急ぐのだ!」


 ギルド職員の男は「はいっ!」と一言残してから、走って部屋を退出した。


「マスター! 私も出るわよ! ヒイロちゃんの事お願いしてもいいかしら?」

「あぁ! 任せてくれ! エリス君済まないが、緊急事態のようだ、共にこの街を守ってくれ!」


 え……お姉さん行っちゃうの? そんなの駄目だよ! お姉さんが居なくなるのは嫌だっ!!


「ヒイロちゃん……お姉さんはこれから悪い狼さん達を、懲らしめてくるからね。マスターの元から離れちゃだめだよ!」

「で、でも! 大丈夫……なの? お姉さん……死んじゃ……やっ!」


 僕は泣きながらお姉さんの身体を強く抱きしめました。お姉さんが危険な目に合うのを黙って待っている何て、出来る筈ない! 


「ヒイロちゃん大丈夫よ、お姉さんはこう見えても結構強いんだよ? だから私の帰りを信じて待ってて……ね!」


 お姉さんはにこにこしながらそう答えた。でも、悔しいが今の僕に戦う力は無い。僕がお姉さんに着いて行けば、足手まといになるのは明白だ。僕は不安でいっぱいだったが、お姉さんを信じて待つこと決めた。


「死んじゃ……めっ! 約束!」

「うん♪ 必ずヒイロちゃんの元に無事で戻るから、良い子で待ってるんだよ? ではお姉ちゃん行って来るからね」

「……うん! 待ってる!」


 そしてお姉さんは部屋を後にした。僕はお姉さんの後ろ姿を見送りながら、神様にお願いをした。必ず、無事に戻って来ますようにと。


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