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3話 変態と変態

 



 ◆エリス視点




「ふわぁあ~……ん? もう朝なのね……」


 窓の外を見れば外は明るく小鳥の囀りが聞こえて来ます。外の天気は清々しい程の快晴ですね♪ 良い一日になりそう。



(あらあら……うふふっ♪ 可愛い寝顔だね♡)



 私の隣りには金髪の美しくも幼い少女が小さな寝息を立てて、すぅすぅ……と寝ています。はぅ……眼福♡


「すぅ……すぅ……んんっ……」


 エリスは少女の顔をじっと見つめ頬っぺたを人差し指でぷにぷにとつついてみたり、頭を優しく撫でてヒイロちゃんの寝顔を思う存分堪能している。



(今日はギルドに行って、ギルマスに昨日の事を報告しないと行けないわね)



 本当はその日の内に報告をするべきなのだろうが、日は暮れて時間も遅かった。緊急案件では無いと判断したので、私は翌朝ギルドに行って報告しようと思ったのです。


 ヒイロちゃんが、何故マーレの森に1人で居たのか……ヒイロちゃんの足首の痛々しい擦り傷は、私が昨日手当てを入念にし、回復魔法をかけて傷は塞がったから大丈夫だけど……



(幼い少女が森で1人……裸足……暗い表情に何かを恐れているように喋るその姿……周りには人影らしき気配も無かった)



 エリスはなんとなく、彼女の境遇を想像してしまう。


 もしかしたら「奴隷なのでは」……と。何処かの悪徳奴隷商人に捕まって、何かの拍子に逃げ出したのではないのかと……エルフは希少な種族、更にヒイロちゃんは可愛い女の子である、彼女を欲しいと思う有象無象の変態共は沢山いるだろう。エリスの想像は、思わぬ方向へと段々と飛躍していく。


 エリスが考え事をしてる時に、丁度ヒイロちゃんが目をごしごしと擦りながら目を覚ました。


「あっ! ヒイロちゃんおはよ!」








 ◆ヒイロ視点







「あ、あぅ!? あ、おはよう、ございます、です……」


 僕が目覚めたらお姉さんの綺麗なお顔が目の前に……心臓が止まるかと思った。朝起きていきなり美少女のお顔が目の前にあったら、誰だって驚いちゃうよ。お姉さんは優しい表情でニコニコしてました。



(寝顔、見られちゃったのかな……)



 僕は顔が真っ赤になるのを自覚しながらもベッドの近くに置いてあった猫さんのぬいぐるみを取って、お姉さんに背を向け顔を隠すように埋めた。恥ずかしい……穴があったら入りたい。


「え、、ちょ!? 何……この可愛い生き物……可愛すぎる! もう無理よ! こんなん反則だわ!」

「 うにゅ!? く、苦しい……です」


 エリスはヒイロちゃんをむぎゅっと強く抱きしめすぎた事に気付いてから、ごめんねと謝るのでした。


「ヒイロちゃんごめんね~お姉さんは反省しました……次からは優しく抱くね!」


 僕はこの瞬間、疑惑から確信へと変わった。このお姉さんには抱きつき癖があるのだと。


「さてと、まあそれはさて置き……」


 お姉さんは急に真面目な声で僕に話しかけてきた。


「ヒイロちゃん、お父さんとお母さんは居ないの??」


 え? あ、まあそうなるよね。僕みたいな怪しい奴が森で一人で居たんだもん。それはお姉さんだって気になるよね……はぁ……お父さんとお母さん。


「僕、お父さん……お母さん……居ない……です、家族――みんな、死んじゃった」


 あれ……僕の目から何かが零れ落ちる、これは…涙? 何故今更泣くんだ? 今に始まった事ではないのに……何故? そしてお姉さんは驚いた顔をして、慌てて僕を再び抱きしめたのである。


「ヒイロちゃん!? ごめんね……辛いこと思い出させちゃったよね」


 後ろを振り返るとお姉さんが泣いていました。てか、なんでお姉さんが泣くの?


「お姉さん……大丈夫……僕は1人……慣れてる」


 そしてまた強く抱きしめられました。何か僕が喋る度に変な誤解を生みそうな気がして気ました。


「そんな寂しい事は言わないでヒイロちゃん! これからは私……お姉ちゃんがずっと……ずっと……ずっと付いてるよ! 私決めたよ。ヒイロちゃんの事を家族として迎えます。もうこれは決定事項だからね!」


 え? 僕を家族に……? お姉さんと家族……


「か、家族に……?」

「うん♪ これからはエリスお姉ちゃんって呼んでね♪ ヒイロちゃん♡」


 僕は家族と言う言葉を聞いた瞬間無意識に目から涙が零れていました。僕を家族だなんて言ってくれたエリスお姉さん……良く分からないまま異世界に飛ばされましたけど、今この瞬間、僕は神様とエリスお姉さんに向けて、誰にも聞こえないような小さな声でありがとうと呟きました。








 ◆エリス視点







 ヒイロちゃんと一緒にお風呂に入った、一緒にご飯も食べた、同じベッドで共に寝た。出会ってから日は浅いですが、家族になる為に理由なんていらない。私はヒイロちゃんを幸せにしたい。


 私もとある事件がきっかけで、両親と妹を亡くしてる。()()()()()、それは耐え難いほどの辛い悲しみである。


「ヒイロちゃん、実はねお姉さんの家族もみんな死んじゃったのよ。とある男に殺されたの……」


 思い出すだけで、恐怖や憎悪、悲しみや自分の無力さ等のごちゃごちゃと混ざったような感情が私の胸の中いっぱいに満たされて行きます。気付けば無意識に強くヒイロちゃんを抱きしめていました。


「あっ! ご、ごめんねヒイロちゃん!」

「大丈夫……お姉さんも……辛い事……沢山あるんだね」


 本当はこんな事を幼いヒイロちゃんに言うのは間違ってるんだろうけど、私の胸の奥底にある本音をヒイロちゃんに言うと何だか少し気持ちが晴れたような気分になるのです。今だけ……もう少し弱音を吐いても良いかな?






 ◆ヒイロ視点






「それ以来、私は己の無力さを痛感してから必死に強くなろうと血反吐を吐くほど、辛い鍛錬にも耐えてきた。私から家族を奪った、その男に引導を渡すために!」


 話しを聞いてる最初は、お姉さんの目が怖かった……だけどお姉さんにそんな辛い過去があったなんて驚いたけど……お姉さんが再び僕のことを、家族と言ってくれた事が嬉しくて、また涙を流してしまいました。



(そうか……僕が本当に欲しかったのは家族だったんだ)



 僕は今まで、1人に慣れてるとそう思ってたはずだけど、心の奥底では人との温もり、そしてかけがえの無い家族が1番欲しかったのだと。自分は無理をしていただけだったんだ……自分の本当の気持ちから逃げて目を背けていただけだ。


「ヒイロちゃん、私はね。家族を失ってからずっとずっと――寂しかったんだよ。今でもあの時の悪夢を夢で見るの……私の目の前で妹が、「お姉ちゃん助けて!」と言いながら男に剣で殺されたの、しかもその男は何度も妹を滅多刺しにして狂ったように笑ってた……」


 お姉さんの声は震えていた、そんな理不尽な悲劇……残酷過ぎる。僕の事を家族と言ってくれたエリスお姉さんを守りたい。こんな僕だけど、エリスお姉さんの不安や寂しさを少しでも埋めてあげたい。


 烏滸がましい等と言われても僕はお姉さんの傍に寄り添ってあげたい。僕やエリスお姉さんのお互い欲しいものは、家族だったんだ。


「人は、一人では生きていけないの。それは人間に限らず生きとし生けるもの全てそうよ。ヒイロちゃんの事はもう大体察しはついてるよ、家族を失い今まで奴隷だったとかそんなの私は気にしないから、奴隷だなんて言いづらいよね」


 ん~えっと、え? 奴隷ってあの? 何処からそんな話しが出てきたの? 僕奴隷だなんて一言も言ってないよ!?


「あ、あの!」

「ヒイロちゃん……良いのよ……無理しなくて」


 僕は奴隷ではありませんよと訂正しようとしたのですが、この雰囲気で奴隷じゃありませんよと言いにくいのと僕はちゃんと喋れるのかが不安だったので、もうその流れで行く事にしました。僕のコミュ障は筋金入りだな……はぁ……


 そしてお姉さんは涙を流しながら、言葉を続けました。


「ヒイロちゃんは今日から私の妹! これからは楽しく、明るい思い出を沢山作って行くのよ!」


 うぅっ……お姉さん……




・・・朝から2人は抱き合って泣いた・・・






 2人で軽く朝食を済ませた後、お姉さんがこの街のことを教えてくれた。この街の名前は、アルシア王国の「フローラ」と言う辺境の街らしい。


 規模もそこそこの大きさで、街は市場や屋台で賑わっているそうだ。そして、お姉さんはギルドに行くよと言って、僕にフード付きの服をワンピースの上から被せてくれました。エルフという種族はこの世界でも貴重な存在なのかな?


「あ、あの……お姉さん?」

「ん? どうしたの?」

「あ、やっぱり……何でも無い……でしゅ」


 僕はその後お姉さんに抱えられながら、フローラの冒険者ギルドへと向かうのであった。







 *冒険者ギルド フローラ支部*







 ◆エリス視点






(さてと、報告だけしたらさっさと帰ってヒイロちゃんとあんなことや、こんなことしよ♪)



 エリスは妄想に耽りながら、ヒイロちゃんを抱えて冒険者ギルドの扉を開くのであった。中は広く沢山の冒険者達で賑わっており、酒場等も併設されていて辺りは活気に満ち溢れていた。エリスが受付けの所に行こうとしたその時、横から柄の悪そうな男達に声を掛けられるのであった。


「あ! 姐さん! おはようございやす! 今日も美しいですね! おい、野郎共! 姐さんが参ったぞ! 早く整列しろ!」

 

「「「「「「姐さん! おはようございます!」」」」」」


「あ、あの……近寄らないで貰えます? 昔よりは貴方達は多少マシになったとは思いますが、私の中では貴方達は生ゴミからただのゴミになっただけですからね! そこの所勘違いしないでください!」


 はぁ……私の周りってろくな奴が居ないわね。


「ぐふぉっ!? 姐さんの罵倒……ゾクゾクするぜ! ご褒美ありがとうございやす!! ですが、まだまだ足りないです! 俺は昨日、姐さんの履いているパンツは何色だろうと想像しながら寝ましたよ!姐さん、少しで良いのでスカート捲ってパンツ見せて貰えませんでしょうか?」

「俺は姐さんをおかずにご飯食べました!」

「姐さんまた踏んで下さい! 姉さんに踏んでもらうと力が漲って来るのです! お願いします! 俺の全財産払いますので!」

「姐さんの罵倒が無いと、俺の1日は始まりません!」

「おい! 野郎共! どけどけ! すみません、ウチの子分共が騒がしくて……靴舐めてもいいですか??」


 声を掛けてきた変態……おっと、失礼。スキンヘッドに身長は190cmはあるであろう大男だった。


 こいつは何年か前に私に絡んできて、完膚無きまでにボコボコにしたランクD冒険者のアルゴートという男である。


 当時は素行が悪く、チンピラ達のボス的なポジションで歩く生ゴミみたいな男ではありましたが、ボコボコにされた後に、私の毒舌攻めを受けて相当堪えたのかそれ以来私に従順なのです。本当に困ったもんですよ……


「やぁやぁ~愛しのマイハニ~! 寂しかったよぉ!」


 ここは変態達の楽園なのだろうか……何処ぞのやばい奇行種が現れたと思えば、キザ男のアランでした。この男は貴族の癖に冒険者としての実力はあるBランク冒険者のグレス・アランドールと言う変態だ。ナルシスト全開の薔薇を愛する男です。


「ちょっとぉ~? 男子達! うるさいわよぉん~! そんなにアタシと遊びたかったのぉ? もぉ……しょうがないわねぇ~掘られる覚悟のあるやつから前に来なぁ!」




 ・・・奥からもっとやばいのが現れる・・・




 彼女?は、はち切れそうな筋肉に特注の硬質ニーソメイド服を身に纏い、身長は恐らくアルゴートよりも大きく、厚化粧にアフロである。この方はランクAの上級冒険者チーム【秘密の花園♡】のリーダーであり、異名は【殺戮の天使(エンジェル)】、名をエリーゼさんと言います。


 いつの間にか男達は跡形もなく逃げ去っていた。


「いつもありがとうございます! エリーゼさん!」

「いいのよ! また何か困ったことがあれば何時でも言ってちょーだい! 私の目が黒いうちはエリスちゃんに、指1本触れさせないんだからぁ♡」


 エリーゼは豪快に笑いながら、エリスに抱かれてるヒイロちゃんを見て口に手を当てる。


「あらぁ!! まぁ!? 何この子!? めっちゃ可愛いんですけどぉ!?」


 エリーゼはその巨体をくねくねとうねらせていた。


(……………)


 ヒイロちゃんは目を大きく見開いて終始唖然だった。


マーヤです!いつも読んで下さってありがとうございます!

(〃・д・) -д-))ペコリン

第4部となります!

私は読むのは好きなのですが、書くのはどうも苦手です((白目))

何故書いてるのか自分でもよく分かりません、これからも応援して下さると嬉しいです!作者は豆腐メンタルですが、どうかよろしくお願い致します!



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― 新着の感想 ―
[一言] 豆腐って案外頑丈ですよガンバ (^O^☆♪
[一言] あまり文句は言いたくないんですが視点がころころ変わりすぎて読みづらいです。
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