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皇帝の忍び  作者: 暇人=サン
第一章 忍びアズマ
7/8

忍びと忍者

バトルシーンは結構大変ですね。

 アズマと『謎の忍者Ⅹ』。両者はお互い鞘から刀を抜き、アズマは独自の流派のもとその構えを取っていた。

 アズマは武家生まれとしてのアズマの家計による独自の流派ともいえる『武藤流刀剣術』を扱えることができる。しかし、対する『Ⅹ』は一本の刀の峰で肩を叩き、余裕を保っていた。そこでⅩはアズマの構えを見て少し興味を持った様子でいた。


 「ほぉ、『武藤流刀剣術』ねえ。つってもオレっちもよぉくわかってねんだけどな。まあ、やれるもんならやってみろってんだ。」


 アズマはⅩから、自分の流派を一目で見破ってしまったため、動揺してしまった。


 「な、なぜ貴様は我らの流派を見破ったのだ!?この流派は私の父が編み出した流派のはず!?」

 「ん?いや、さっきから上の方に書いてあるじゃん。」

 「上・・・・・?」


 アズマは一瞬、上の方を見たが何もなかった。なにも書いていないはずなのに上を向いたのだ。そう、Ⅹはちゃっかりアズマに隙を作って先手必勝の作戦を謀ったのである。

 前方に高速で接近したⅩに察知することができたアズマは、Ⅹの一本の刀による斬撃を持っていた刀で受け切ったのだ。Ⅹの体つきは黒づくめでよくわからなかったが、アズマは押しつぶされてもおかしくないほどの怪力であることを受け止めている刀の重さで理解できた。Ⅹは仮面越しであるが、アズマに対して嘲笑うように見つめてきて、話しかけてきたのだ。


 「へえ、意外と力はあるんだねえ。だけど、オメエは何にもわかっていねえようだなぁ。」

 「それは、どういうことだ?」

 「オレっちは二本の刀を持っているんだぜぇ?オレっちの剣撃はまだ終わんねえってことだ!!」


 そうⅩはもう一本の手にある刀による斬撃をアズマの頭めがけて狙ってきた。アズマは受け止めている状態でもう一本の刀を防ぐことはできない。そこで、アズマは回避のために服の袖に隠していた三角形上の刃物を取り出し投げつけた。Ⅹは唐突な攻撃に対し、体を思いっきりのけ反り回避した。その隙を見てアズマはⅩから距離を取る。Ⅹはアズマの咄嗟の判断に感心した。


 「ほぉ、さてはオメエはスリケン=ジツにも長けてるとはな。武家の生まれの者とは思えねえな。」

 「私は忍びを生業としている。まだ一流とは言えないけどそれなりに自身はあったんだけどな。」


 アズマが先ほど投げたのは忍びが常時所持している『手裏剣』である。投稿武器であることは間違いないのだが、彼は威嚇と相手の攻撃を先ほどのように投げつけ回避するように使用する。これは彼が精確に当てることができないための策にしか過ぎないのだが。アズマはⅩの実力が予想の遥か上を超えている事にかなり焦っており、この状況を打破できる方法を考えている最中であった。対照的にⅩは顔が隠れていなくてもかなり余裕がある様子でアズマを見ていた。


 「おいおいおい?オメエまさか、オレっちの強さが予想より強くて焦ってんのかぁ?」


 Ⅹに図星を点かれたのかアズマはひどく動揺した。しかし、Ⅹはアズマに余裕を与えないように立て続けに攻撃を続けようとする。


 「気にすんなよ。楽に死ねるようにはしねえからよぉ!!」


 Ⅹは高らかに宣言すると、アズマが持つ『縮地』と同じように高速に近付き二本の刀でアズマに切り付ける。アズマはこれを受けようとするが、相手の怪力とも言えるほどのⅩの一撃はアズマの足のバランスをを崩し背中を思いっきり地面に強打してしまう。そして、押しつぶされそうな勢いでアズマは追い詰められてしまう。


 「ぐえっ!!」

 

 呻き声を上げるアズマにⅩは止めを刺そうとしたら、アズマは『ボヒュン』という音と共に姿が消えた。否、アズマは『忍びの能力』の一つである『影分身』を使用したのだ。これは自分の分身を作り相手と戦わせる能力である。分身の数は個人差によるが、アズマは一人しか出せないのである。

  その肝心のアズマはⅩの後ろへと立っており、手で何かの形に見えるように組んでいた。アズマは大和に伝わる『神術』の一つである術式を行使しようしていた。


 『神術』とは大和の民が行使することのできる術式である。それは体内にある魔素を利用して『術』を行使することができる。行使できる方法はまず、手を使ってその『属性』に合わせた『印』を組む。その『印』を組んだ後にその『属性』の中でどういう形に変化するかイメージする。そして『印』を組んだ手を放し、腕を前に出しイメージしたものを『術』として発動する。神術は個人の保有できる魔素の量によって強力な術を発動することができる。つまり、魔素が多い者こそ様々な『神術』が行使することができるのだ。

 そして、アズマは『火の印』を組み、Ⅹに対して『神術』を発動した。


 『火遁 火炎壁の術!!』


 アズマは右腕を前に出して、Ⅹの足元に炎の壁を発動したのだ。横幅3m、高さ2mの炎の壁がⅩを包み焼き尽くした。Ⅹは唐突な出来事に対応できず避けることはできないまま断末魔を挙げた。


 「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 アズマはⅩの強力な攻撃の前に一矢報いることができた。アズマはⅩという強敵を倒したかに見えた。


 否、Ⅹは炎の壁を受けてもなお立っていた。というより余裕を保っている様子であった。Ⅹは炎の壁を受けてもなお独り言を喋っていた。


 「はぁ~。わざと火を浴びるようにしたんだけど、なんだかぬるいなぁ~。温泉旅館に設備しているサウナとかミストサウナよりぬるい感じがするなぁ~。」


 アズマは今の状況が全く理解できていなかった。Ⅹはアズマの『神術』を受けている最中、平然と立ち尽くしていた。黒ずくめの服は全くと言って焦げ目がついておらず、『神術』による炎は数十秒後に何も燃え移ることなくそのまま消えてなくなった。アズマはⅩに対しての疑問を突き付けた。


 「な・・・なぜ・・・貴様はあの炎の壁をまともに受けて全くの無傷でいられるのだ!?」


 アズマの唐突な疑問にⅩは一瞬理解できなかったが、Ⅹ自身の思い当たることを述べていた。


 「あ?ああ。最近冷え性気味だったからな。色々とサウナとか温泉に利用してたんだけど、なかなか治んなくてな。さっきの火は温すぎるくらいだわ。」


 あまりにも理解不明な発言に口を開けて呆然してしまった。Ⅹは呆然としているアズマを見て鼻で笑っていた。


 「フッ。オメエさっきから呆然としてるけどよぉ。ずいぶん余裕かましてんじゃねえかよ。」

 「ど、どういうことだ?」


 Ⅹはアズマの行動を指摘すると、アズマはもう一度刀を構えていた。Ⅹはアズマに対して自信たっぷりな様子で立っていた。


 「さっきオメエがオレっちに火を使ってみたな?あれぬるかったけど、結構体が温まったよ。準備運動程度には良かったよ。体が温まったってことはどういう意味か分かってるよなぁ?」


 Ⅹの発言にアズマの全身に更なる緊張が走る。温まるということは先ほどの動きより速く動けるか、もしくは更なる強力な斬撃を振り下ろす可能性があるからだ。アズマはそんなことを考えていたが、Ⅹはアズマにさっきの戦っている様子を突っ込んでいたが、アズマはⅩの言動に言い返す。


 「それにしても、オメエ、色々セコイ技使ってくんな。スリケン=ジツとか分身とかおまけに火遁かよぉ。さすが忍び、忍び汚いなぁ。オメエかっこ悪いぜぇ?」

 「そう言われたてもなぁ。貴様だって嘘ばっかり言っているじゃないか。来いッて言ってるくせにそっちから来たし、上にはなんもないし。」

 「いや、上にしっかり書いてあるじゃん。ホラ、『武藤流刀剣術』って☝」


 アズマは上を見上げるが全く何も書いていない。Ⅹはアズマができていないことを一度置いて、更なる斬撃を続けようとする。


 「あー・・・まあいいや。ホラ続けるぞ。さっきより速いから・・・・・はよ死ねや!!!」


 Ⅹはそう発言すると、構えているアズマに先ほどよりも速く急接近する。アズマも先ほどよりも速いことにに驚愕する。そして、


 (速い!!!)

 

 Ⅹは斬撃を繰り出しアズマはその斬撃を受け止める。アズマはⅩの動きを見切っており、下手なことはしないようには心構えをしていたはずなのだが、Ⅹの一撃は先ほどの攻撃より重く刀に伸し掛かってきた。Ⅹは先ほど言った通り強くなっていた。Ⅹは一撃では止まることはなく、両腕を使ってとてつもないほど速い連撃を繰り出し、アズマを攻撃の隙を与えないほど圧倒していた。


 「チェストオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 Ⅹは掛け声のような叫び声を出しながら連撃を繰り出していた。アズマはⅩの思惑通りに全くと言って反撃の隙が無く、剣撃をただただ流していくしかなかった。しかも、一撃の一つ一つが重く長く受け続けることで腕が軋むほどの痛みが走り、あまりの速さに瞬き一つを瞑ることさえできないほど速いのである。


 (くっ・・・!全くといって反撃の隙が与えられない!!『分身』や手裏剣を使わないようにしているとは思うんだけど・・・。これを打破するためにも距離を取らなくては・・・!!)


 距離を取るために思考を巡らせたアズマは突如、腹部に押しつぶされるような激痛が走りだした。Ⅹはアズマの腹部に向かって蹴りを入れたのだ。そう、Ⅹはアズマが次にどうするかの動きを見切っていたのだ。


 「ホラ、オレっちから距離取りたかったんだろ。はよ下がれや!」


 Ⅹはそう吐き捨てるようにアズマを蹴り飛ばすと、アズマは倉庫の壁まで吹き飛んだ後、壁に激突した。


 「グハッ!!」

 「まだまだぁ!!」


 Ⅹはそう強く言うと、両腕で持っている二本の刀で急所は外してはいるが、体中を斬りつけていた。全身に走る痛みにアズマは叫んだ。


 「ぐわあああああああ!!!」

 「アズマ!!!」


 アズマは壁に激突し全身傷だらけになって、壁に寄り掛かるように座り込んだ。アズマがやられていることに心配したマリーはアズマの近くまで寄って『癒しの魔法』を行使しようとしていた。しかし、Ⅹはその様子を見て、手を伸ばしてどこからか鞭を取り出した。


 「させねえよ!!!イヤーッ!!!」


 Ⅹは目標に向かって革製の鞭を伸ばしてマリーが身動きが取れないように縛り上げて捕まえた。マリーは突然に縛り上げられ身動きが取れなくなったため顔面から転んでしまい、情けない呻き声をあげる。


 「プギャ!?」

 「させねえぜ『姫様』よぉ?オレっちはそんな悪いことして欲しくないんだけどなぁ?」


 Ⅹはマリーにそう話して、アズマの方へと向く。Ⅹはアズマに指を指し高らかに宣言した。


 「さぁてっと!そろそろフィナーレだぜぇ!オメエみたいな汚い忍びなんぞにオレっちこと、『凄腕の傭兵である謎の忍者Ⅹ様』の前では足元にも及ばなかったみてえだなぁ!!なんかオレっちの活躍が少ない感じるがするけど、まあいい。任務が優先だ。始末させてもらうぜ!」


 高らかに宣言したⅩは一本の刀を背中に背負っている鞘に納め、牙突の構えを取っていた。アズマはⅩの実力が自分より格上であったこと。そして、どうあがいても全く歯が立たないということを戦いを通して思い知らされてしまったのだ。彼はマリーに申し訳が立たない気持ちでいた。


 (マリーに約束したはずなのに・・・。何もできずに殺されてしまうのか・・・。)


 アズマは全身の痛みに耐えながら考えた。この危機的状況状況を打破できなくても良い。ただ、相手に一撃与えるほどの隙ができないか思考を巡らせた。格上の相手にどうしても一撃を与えなくてはいけないのだ。彼女との約束を果たすために・・・。


 アズマは思考を巡らせて、一つの『答え』見出すことができた。


 それは刀身を鞘に納め、右手で柄を持ち左手で鞘を持ってしゃがんだ状態で目を瞑ることだった。周りから見ればそれは、完全に諦めている様子であった。Ⅹはアズマの諦めた様子を見て、止めの一撃を与えようとしていた。


 「ほお・・・?覚悟を決めたようだな。では・・・行くZE!!!オラァ!!!」


 Ⅹは牙突の構えから、刀を前に突き出しアズマに急接近して止めを刺そうしていた。Ⅹはこれで終わると確信した。


 しかし、アズマは諦めることはなかった。Ⅹは油断したのだ。アズマは相手が弱っていると錯覚させ、止めを刺す瞬間を待っていたのだ。

 

 アズマは自ら隙を作りだすことに成功したのだ。それがアズマが思いついた『答え』である。彼は刀の柄を掴んでいたままだが、彼の柄を掴んでいる腕は電流が走っていた。それは彼が持つ『武藤流刀剣術』の中でも最も威力の高い一撃の一つとも言える技であった。

 

 その技は俗に言う『居合斬り』なのだが、『武藤流刀剣術』ではただの剣術ではないのだ。『武藤流刀剣術』の神髄は『属性による剣撃の強化』である。アズマは居合斬りを行う際に自分の『属性』を刀に流すことで威力と速さを上げ、まさに一撃必殺の技を相手に繰り出そうとしたのだ。


 『秘剣・雷切!!!』


 アズマは目にも止まらない速さで鞘から刀身を抜き取った。その刀身は光り輝いており、刀身の周りには電流が流れていた。その輝きは周囲が白くなるくらいだった。そして、急接近したⅩに斬撃を与えようとしていた。

 Ⅹは目の前が眩しく輝き一瞬何が起こったのか理解できないままその斬撃をまともに受けてしまう。

 マリーはあまりの眩しさに目を瞑ることしかできなかった。


 「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 Ⅹは断末魔を挙げながらアズマの斬撃を受け、壁まで吹き飛び、壁に寄せていた倉庫内の荷物の山に激突し、荷物の山に埋もれてしまった。

 周囲が眩しくなくなったときに、マリーは目を開けようやく周囲を確認することができた。アズマは全身血だらけでいたが、息を切らしていた。まだ、生きていたのだ。マリーはすぐにアズマに駆け寄った。

 

 「アズマ!!また、こんなに怪我しているなんて・・・今から癒しの魔法をかけるからね。」


 アズマは不思議に思った。彼女は縛られたはずなのに、手足を縛っていた鞭がなくなっていた。


 「ねえ、マリー?君は確か、あの男に縛られていたはずだよね?あの鞭はどうしたの?」


 マリーは一瞬何のことかわからなかったが、ようやく思い出しアズマの疑問に答えた。


 「ん?ああ、あれね。黒い人に縛られた手足の鞭は無理やり引きちぎったよ。ホラ。」


 そう言いながら地面に落ちている引きちぎった鞭を拾って見せてきた。アズマはマリーの豪腕っぷりに引いてしまい、マリーの異常性を説明した。


 「あのね、マリー?普通は手足が縛られていたら引きちぎるどころか、身動きすら取れないからね?」


 マリーはアズマに癒しの魔法をかけながら、アズマの説明を聞いて驚きを隠すことができず、『ぎょっ』とした表情でアズマを見ていた。


 「うぇっ!?そうなの!?ボクは自分で言うのも変だけどそんなに力があるとは思ってないんだけどなぁ?」


 そう言いながら、マリーは腕を捲ってひじを曲げて、腕にある力こぶをアズマに見せてきた。しかし、マリーの腕は細く、腕を曲げても力こぶすらあるかどうかわからないほど彼女の腕は貧弱に見えるのである。

 アズマはマリーの二の腕に触って本当に筋肉がないか触って確かめたのだ。触ってみてもやはり見た目通りフニャフニャした感触しかなく、硬い筋肉がある感じはなかった。


 (本当に筋肉がない・・・。どうしたらそんなに強い腕力があるんだろう)


 アズマはマリーの二の腕に触ることに夢中になっていた。さすがのマリーはこの状況に恥ずかしいと思っているはずなのだが・・・・・。彼女はアズマの手つきがくすぐったいのか、頬を赤くなって膨らましながら吹き出すところを我慢していた。

 アズマはそれに気づいたのか慌ててマリーの二の腕を離した。


 「うわぁ!?ご、ごめんね!?君の腕力に結構振り回されたから気になって・・・・。」

 「まぁ・・・いいけど。あんまり『か弱いレディ』の二の腕を触るのはくすぐったいからやめようね?」

 

 マリーが『か弱いレディ』という言葉に非常に疑問に思った。彼女はアズマを引きずり回し、手足を縛っていた革製の鞭を引きちぎるほどの剛腕をもっているのだ。アズマはそのことをマリーに突っ込もうとしたが・・・。


 「いやいやいやいやいやいやいやいや!?何イチャついてんのオメエらよぉ!?それに『姫様』よぉ!!オメエが、か弱いというかただの雌ゴリラじゃねえかよ!?それに、か弱いというんだったらオレっちはクララじゃねえかぁと思うんだけどなぁ!?」


 どこからか、いくつか聞きなれない単語を喋る大きな声が聞こえた。

 その声の主は崩れた荷物の山から聞こえた。その人物は崩れた荷物の山から出てきた。

 『謎の忍者Ⅹ』である。その男は埃まみれではあったが、アズマが与えた一撃を受けているはずなのだが斬られた傷どころか衣服すら破けていなかった。二人は倒したと思っていた人物がまだ生きていることに驚愕し、マリーは思わず驚きを口に出した。


 「君は、やられたはずじゃあないのか!?」

 「そうだよ。オレっちはそう簡単にはやられねんだよ。むしろ、そこの忍び君の貧弱の一撃過ぎなんだよ!!ったくよぉ、わざとくらって油断している間に不意打ちしてやっちまおうと企ててたのによぉ~。イチャイチャしやがって!!!」


 Ⅹは何故か地団駄をしながら、仮面越しから血の涙を流していた。二人はⅩの様子に引いていた。そんなⅩにマリーはⅩに気になったことを聞いてみた。


 「ん?不意打ちするって?じゃあなんでしなかったの?あの状況ならいくらでもチャンスはあったはずなのに・・・。」

 

 Ⅹに対して質問すると、Ⅹは静かではあったが嫉妬や怨念を込めたように短めでその質問に答えた。


 「なんか、イチャイチャして苛ついたから。」


 あまりのくだらない理由に二人はぽかんとしていた。Ⅹはアズマを何故か睨んでいたが、少し時間がたった後に鼻で笑って余裕のある態度をとっていた。

 

 「フン、まあいいや。そんなことより、オメエ自分がどういう状況かわかってねえだろ?オレっちがこの通りピンピンしてて、オメエの最後の一撃が意味のないモンになっちまったなぁ。」


 Ⅹの言う通りアズマは切り札の一つである『雷切』を発動したが、Ⅹという格上の相手に傷一つ付けることができなかった。しかし、アズマの目には諦めてはいなかった。彼にはマリーを守るということしか選択肢がなかった。


 「確かに、貴様の言う通りだ。私にはもう貴様を倒す打つ手はないと思っている。しかし、私は諦めるわけにはいかないんだ。マリーと約束したからだ。」

 「ハァ・・・。なんというか諦めが悪いというかなんというか・・・。じゃあ、殺されても文句ねえな?」


 そうⅩが話すと同時に両手で持ってい二本の刀を構えて戦闘の準備をしていた。アズマも同じくⅩを迎え撃つために刀を持ってマリーの前に立って構えた。アズマはⅩに先手を打つよう挑発をした。その様子を見たⅩは少し笑っているように見えた。


 「早く終わらせたいんだろう。来い・・・。」

 「言うようになったじゃねえか糞ジャップ。行くぜオイッ!!!」


 Ⅹは足に力を入れて高速に移動する準備をした。Ⅹはこの攻撃にすべてを賭ける気でいた。アズマも命を懸けてマリーを守るつもりでいた。二人はの思いはぶつかり激しい戦闘がまた始まろうとしていた。

 

 しかし、その二人の戦いに終止符を打つ者がいた。その者の声は突然三人に聞こえてきた。


 「悪いが、この勝負はもう終わりだ。」


 何者かの発言と共に何かが落ちて倉庫の屋根が中心から破壊され崩れていった。アズマとマリーに二人は突如落下した屋根に驚いていた。崩れ落ちていく屋根にマリーは頭を押さえてしゃがんでいたが、咄嗟にアズマがマリーを抱えて、崩れていない倉庫の端へと避難した。

 Ⅹも同じく崩れていない倉庫の端へと避難し、何が起こったのか状況を把握するために落ちている方へと目を向けた。崩れたところの中心には一人の男性が立っていた。Ⅹはその男に問い詰めた。

 

 「オメエ、何者だぁ?」 


 その男は、黒の革ジャンに黒に近い緑のパーカーを着ており下には黒いジーンズと現代風な格好をしていた。顔はフードを深く被っていてはっきりとは見えない。Ⅹはその男を見ていたが見覚えのない人物であった。

 

 しかし、マリーはその男の正体を知っていた。

 

 「『アレクシス』!!どうしてこんなところに!?」


 マリーはその男『アレクシス』であることを当てて、『アレクシス』になぜここに来たかを尋ねた。アレクシスは20代後半のような男性の声で、ため息をつきながらマリーに自分の目的を伝えた。


 「ハァ・・・。『お嬢』。自分はアンタを迎えに来たんだよ。アンタが旦那とのお勉強をすっぽかしたせいで家が大騒ぎになっているんだよ。それで旦那もカンカンになって血眼になって探しているんだぞ。とりあえず手掛かりとして、『アダムス』が小さな貴族に依頼していた大和の民とお嬢が一緒にいるという報告があって探したら、ビンゴッつうわけよ。」


 マリーに対して軽い口調で話すアレクシスであった。話を聞いている限りマリーを迎えに来たようだ。マリーは『ウっ・・・』と呻き何かに怯えた様子でいた。そして、彼は『十王の一人アダムス』を呼び捨てしていた。まさかと思ってアズマはマリーに何者か聞いてみた。


 「ねえ、マリー?いったい何者なの?知り合い?」

 「うん。彼はアレクシス。アダムスと同じ『十王の一人』だよ。」


 マリーはアレクシスが『十王の一人』であることを説明した。それだけでなくアダムスとアレクシスを呼び捨てしていたのだ。アズマはそのことに疑問を感じていたが、Ⅹが畳みかけるようにアレクシスに問い正した。


 「おいおいおいおいおいおい?オレっち特性の『人払いの結界』が張ってあるはずだろうが!それにここの倉庫までは色々入り組んでて、数十棟の倉庫のうちの一つをピタリと当てたんだよ!なんでわかってんだよ!?おかしいだろ!?」


 Ⅹの疑問にアレクシスは冷静に答えた。


 「自分たち『十王』にはあんな玩具なんぞ効かんよ。それに念のためにお嬢には旦那特性の『発信魔術』が施されている。あとは特定の倉庫を探さなくても自分が『赤外線』で探知できるから何とかなったのさ。」


 アズマとマリーは何を言っているかは理解できていなかったが、Ⅹは何故か理解していた。そんなⅩは頭を抱えて苦悩していた。


 「おいおいおいおいおいおいおいおいおい・・・・・?。こんなの嘘だろ?まさかの大ボスが乱入する任務なんて聞いたことがねえぞ?コラぁ・・・・・。こんなの報酬に釣り合わねえぞ!?」


 苦悩しているⅩを無視してアレクシスという人物はマリーとアズマに近寄って話しかける。アレクシスという人物の背丈はアズマより少し高く、アズマの目線がちょうどアレクシスの口元と同じくらいである。


 「ところで、君がアダムスが言っていた大和の民かね?」


 突然聞かれたアズマは驚き、慌てた様子で返事をした。


 「え!?あ、はひ・・・アズマでしゅ!!マリーを守ってました!!よろしくお願いしましゅ!!」


 驚きのあまり噛んでしまったアズマは顔を赤くして恥ずかしくなっていた。マリーはその様子をクスっと笑っていた。アレクシスはそんなマリーのおでこにデコピンをかまし注意した。


 「アウチっ!!」

 「お嬢。彼は必死に君を守ったんだよ。あとでお礼を言うようにしてね。」


 そう注意すると、アレクシスはアズマの肩を軽く叩き安心するように声をかけた。


 「アズマ君。お嬢を助けてくれてありがとう。後は任せたまえ。


 そう言うと、アレクシスは二人を守るように立った。Ⅹは頭を抱えていたが、どうやら三人の話を聞いて待ってたようだ。


 「あ、話終わった?そろそろ一万文字くらいになるからさ。頭を抱えて演技してみたけどこの話も結構長いから早く終わって新しい話に移りたいからさ。とりあえず任務は続行。とりあえずオメエも始末させてもらうぜ。十王だが四天王だが知らねえけど、そういうのは日本のあの世事情で十分だからよぉ!」


 Ⅹはやはり理解できないことを話していたが、アレクシスはⅩの発言を無視して自己紹介とこれから何をするか宣言する。


 「なにいっているかわからんが、さっさと終わらせるぞ。自分は『統一のアレクシス』皇帝陛下に仕える『十王の一人』だ。この勝負を終わらせる。」


 そう発言した瞬間、アレクシスの両腕が肥大化し、四本の長い爪を伸ばしていた。

 

新キャラ登場です。


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