仮面の傭兵
今回かなり長いです。
わけわかんなくなってきました。
二人は握手をした後、手を放した。アズマは目の前にいる少女『マリー』に聞きたいことを質問した。
「ねえ、マリー。どうしてミレリアさんを見たときに急に逃げ出したの?確かにミレリアさんは貴族だけど、決して悪い人ではないよ?」
アズマはマリーにそう話をしてみると彼女は眉間にしわを寄せて、嫌そうな様子でこちらを見てきた。もしかしたら何かまずいことでも聞いたかもしれないと思ったアズマだが、マリーはため息をついて腹を括ったのか逃げ出した理由を話した。
「まあ・・・。ボクは貴族の令嬢でね。帝都の様子を見たくて屋敷から何も言わないで一人で来たんだ。言わば視察?みたいな?それでもしかしたら、ボクの召使が貴族を通して探しているのを頼まれているのではないかと思ってね。」
「貴族の君が視察?どうしてそんなことを?」
アズマはマリーの言ったことに対しての矛盾を感じた。帝国の貴族は視察する際は本人の目で確かめるのではなく貴族が持つ配下の『文官』が代わりに視察を行っていることをミレリアから聞いていたのだ。自分の目で確かめたいなら、なおさら『ウシャブティ』のような護衛を準備し、安全を確保しなくてはいけないのに、マリーは連れていないのだ。
さらには貴族は貴族同士による頼み事は余程の親密な関係ではない限りしないのだという。というのも、貴族の場合、もし誰かに『頼みごと』をする際はそれは『依頼』であり、それに相応しい正当な報酬を準備しなければいけない『契約』となってしまう。そのため財産等を回収される危険性があるから容易には頼み事はできないのだ。これもミレリアから聞いていたのだ。
その矛盾を知っていたアズマはマリーに説明した。しかし、マリーはこの矛盾に対して何か固い決意をした瞳をしながら答えてくれた。
「確かに君の言う通りこの帝国ではそういう決まりになっている。だけど、ボクはお忍びとして帝都の様子を見たかったんだ。迷惑をかけてしまうかもしれないけど、それでも帝国の人々がどんな暮らしをしているのか見なくてはいけなかったんだ。」
アズマはマリーの瞳を見て何か力強いもの感じた。しかし、マリーは立て続けに答えを続けた。
「それにボクの家はそれなりに権力を持っていてね。それなりに顔は聞くんだよ。召使の人はボクのことを特徴で書いて、頼み事をしてると思うし。どの貴族が依頼してるかわからないからね。」
しかし、その答えにも疑問に思っていた。ミレリアはマリーのことを知っている様子ではなかったのだ。もし、マリーの家が顔が聞く者ならミレリアも知っているはずだ。それなのにマリーだと気づくことができなかったのだ。それを説明すると、マリーは両手を水平に上げてを羽織っているマントを見せた。
「おそらく、このマントのおかげかも?このマント特殊な『能力』の施しがされていて、よっぽど魔力が強い人じゃないとボクだと気づかないようになっているんだ。彼女はそれなりに魔力に精通していることを知っていたから、ボクは不味いと思ったんだ。」
色々腑に落ちない部分はありつつ、まだ何か隠していることがあると察しているアズマだが、それでも彼女は嘘をついていないことと自分と同じ何か事情あって話せないことがあることを勘づいたアズマはこれ以上の詮索をしないようにした。
「マリーにも色々あるんだね。わかった。これ以上聞かないようにするよ。」
アズマはマリーにそう話すと安心したのか少し口角を上げ微笑んだ表情でいた。
「ありがとう。そう気遣ってくれるとボクも助かるよ。ねえ?せっかくだから君も一緒に帝都の中を散策してみない?ボクが連れてしまって迷惑かけたし、お詫びとして色々案内するよ。」
マリーはアズマ一緒にと行動しようとお誘いをかけた。しかし、アズマはまだマリーを信用していなかった。マリーに対して裏があると思いまたもやマリーに質問する。
「とは言っているけど、まさか私を護衛の代わりとして連れて行く気なんじゃあないの?」
「それもそうだけど、さっきも言ったけど本当になんとなくだよ。ボクは君と仲良くやっていけそうと思ってるんだよ。それに君にはさっきみたいに迷惑かけたから、仲良くしたいだけなんだよ。」
マリーはアズマに微笑みながらマリー自身が受けられている疑いを晴らそうとアズマに何とか説得しようとしている。しかし、まだアズマの信用を得るには足りていなかった。アズマ自身は彼女の言っている事には嘘をついていないことは理解できている。しかし、あまりにも突拍子もないことを聞かれ、さらには納得できない理由でものすごい力で連れていかれたのだ。変に仲良くしたら、余計に振り回されるのではないかと思ったのだ。さらにはミレリアがかなり心配してしまっているのではないかと考えているのだ。
つまりは、『面倒ごとには巻き込まれたくない』というのが本音である。しかし、さっきみたいにマリーが三人の男に絡まれるくらいなら、アズマは『自分が負担を背負っても良い。』という考えに至った。
「まあ、さっきみたいに絡まれても大変だと思うし、せっかくだから一緒にいるよ。」
そうアズマは、彼女のお誘いに渋々受けることにした。マリーは大変うれしそうに満面な笑みを浮かべて、アズマに感謝の言葉を嬉しそうに話した。
「ありがとう!アズマ!せっかくだからいろんなところへ行こうね!」
そうマリーはアズマの手をつないでマリーはアズマを連れて行くように歩きだした。しかし、マリーはただアズマの手をつないで歩いているが、アズマは違った。
アズマは彼女に引っ張られていたのだ。アズマはマリーの歩くペースについて来れず、かつ腕力に負けて、そして引っ張られている最中に足が突っかかりこけてしまった。しかし、マリーの歩くペースは変わらず転がったまま思いっきり引きずられてしまう。引きずられているにもかかわらずマリーのペースは変わらず。引きずられている痛さに叫んでしまう。
「痛い!痛い!痛い!ちょ・・・ちょっと待って!ブッ!!」
地面の石や路面ににぶつかりながら止めるようにマリーに懇願するも、彼女自身が全く聞こえてないのかペースは変わらず引きずられていた。
「一番のおすすめは『牛串』だね!塩をかけて焼いたものもいいけど、ボクは断然に塩胡椒をかけたものかな?あれはすっごくおいしいんだよ!」
アズマは後悔した。こんな辛くて痛い思いをするくらいだったら、『ついて行くべきではなかった。』
アズマはマリーにより、地面を使って無意識にボコボコにされ、アズマはすでに血だらけになっていた。マリーはふとアズマの方に振り替える。
「ねえ、そういえば君はどうして帝都に・・・・・ええ!?」
マリーはアズマの姿を見てゾッとしてしまったのだ。振り返った時には砂と血だらけなっており、アズマは満身創痍になっていた。マリーは傷だらけのアズマを抱き上げて何があったのか尋ねた。
「えええええええええええええええええ!?どうしたの!?そんなに傷だらけになって!?誰がこんなことを・・・・・!」
アズマは満身創痍でありながらも意識があり、目ははっきりしているためマリーを見つめて傷だらけの原因を言った。
「いや・・・君だから・・・君が思いっきり私を引きずりまわしたからね・・・。」
「へ?」
マリーはアズマがそう告げるとマリーがアズマの手を掴んでた手を少し見て、サァーっと血の気が引き青ざめた表情でマリーは慌ててアズマの肩を掴んで思いっきり揺さぶっていた。
「うわああああああああああああああああああああああ!!ごめん!悪気はなかったんだよおおおおおおおおおおお!い、今から『癒しの魔法』をかけるから!!」
そうマリーはアズマに右手をかざし、右手の先には緑色の円陣が輝いており円陣の中には四角形と帝国の文字が円の内回りになぞられていた。そして、マリーは小さく何かを呟いていた。
(彼に癒しを与えてください。)
そう呟くと、マリーの右手の円陣が小さな光の粒となりアズマの頭の上にくるくる回ると、光の粒は弾けてアズマを包んだ。アズマは体中にある痛みが引いていき、出血している傷口は塞いで血は止まっていった。アズマは体中に起こっている異変に驚いていた。
「こ・・・これは・・・『神術』!?ここまで洗練されているなんて・・・。君は一体?」
驚いているアズマを誇らしげに胸を張ってマリーは自慢していた。
「ふっふーん。これは我が帝国に伝われる『癒しの魔法』なのだよアズマ君。多分、君のところにも同じようなものがあるかもしれないけど、ボクがこれほど洗練された癒し出せるのは教えている『アリス』おかげだもの。」
「『アリス』?誰それ?」
「ボクの魔法の先生。怒ったらかなり怖いけどね。」
聞きなれない人物を聞いていたアズマだが、それ以上聞かないようにしてアズマはマリーにやられたことを忠告する。
「無理に手を繋がなくていいから、その代わり私と同じペースで歩くようにしてね!」
そう強く言うと、マリーは項垂れながらアズマの言い分に納得した。
「ご、ごめんなさい・・・。気を付けます。」
「い、いや、そこまで落ちこま無くてもいいから・・・ね?私も言い過ぎたし、気を取り直して行こう!」
落ち込んだマリーを慰めるように声を掛けると先ほどの落ち込んだ様子が忘れたように明るい表情で頷いた。
「うん!わかった!じゃあ気を取り直して行こう!」
先ほどの二人の会話から二時間くらいが経過した。二人は横に並んで帝都の市民街を歩いていた。
市民街とは帝都の区画の一つで、主に一般市民が住むことができる区画である。ほかにも貴族街、『十王』たちが治める『宮廷』、『皇帝』が治める皇居と四つに分かれている。
その市民街にある露店が並んである場所にて二人はとある露店へと足を止めた。それはマリーが先ほど話していたおすすめの『牛串』を打っていた場所であった。
「あ、見てよアズマ。あれが『牛串』だよ。貴族の世界では中々食べられないんだよ。一緒に食べよ?」
マリーはアズマに牛串を勧めた。アズマは露店の中にある炭火の上に串で肉を刺しているものを見た。アズマは『牛串』を見てふと気になる単語を聞いたためマリーに聞いてみた。
「ん?この串で刺している肉は鹿かな?」
「ううん。これは牛の肉だよ。食べたことないの?」
アズマの質問に対してマリーはそう答えた。アズマの故郷である大和には牛がいることは間違いないのだ。しかし、大和には牛や豚などの家畜動物を食べるという習慣がなく、鹿や猪などの野生動物を食べるのだ。大和での牛は主に農作業で畑を耕したり、牛糞を堆肥にしたり重い荷物を運搬してもらうときに役立っているため、牛を食べることはないのだ。
「そうだね。私の故郷では牛を食べることはないかなぁ?私は鹿を食べる」
「そっかー。でもおいしいから食べて行こうよ!」
マリーはそう言いながら露店に向かい、店員に声をかける。
「おじさん!牛串4本ちょーだい!」
「あいよ!味はどうするんだい!」
「うーんと、塩胡椒と4本で!」
「あいよ!大銅貨一枚と小銅貨2枚で!」
露店の店員が牛串の値段を伝えると、マリーは革袋から店員が言ったとおりの銅貨を出し、店員に差し出した。店員はその銅貨を受け取り、そして4本の牛串を渡す。
「へい!お待ち!隣のあんちゃんと一緒に食べな!」
「うん!ありがとう!」
マリーはすぐにアズマのところまで戻り、買ってきた牛串をアズマに渡す。
「はい!これは君の分。二本あるからよく食べてるんだよ!」
「うん。ありがとう。」
アズマはマリーから牛串をもらい、二人で並んで帝都の中を歩き続ける。アズマは懐に入っている帝都の貨幣を見た。帝都の入国した際に自分の全財産を換金したのだが、帝国の貨幣の価値がどれくらいの価値があるのかわかっていなかった。換金してくれた人は詳しく話してくれなかったし、ミレリアにお金の話をしようとしたが、
(アズマ様にはアダムス様がしっかりと教えてくれますよ。)
と言って詳しくは話してくれなかったのだ。しかし、貴族の令嬢であるマリーならわかると思って帝国の貨幣についての話をした。
「ねえ、マリー。わからないことがあるんだけど聞いてもいい?」
「ん?なんだい?何でも聞いておくれよ。」
「実はまだ帝国の貨幣の価値がわかっていないんだよね。それで、もし良かったら教えてくれないかな?」
アズマはマリーに懇願するとマリーはとてつもないほど誇らしげな顔をした。そして、胸を反らして腰に左腕を当てて、自慢げに話した。
「しょうがないなぁ~君はぁ~。そんな君にはボクが教えてあげようじゃあないかぁ~?」
マリーはあまりにも騒々しく人の捉え方によっては苛ついてしまうほどの言い方である。しかし、アズマは苛つくどころか、
「ホント!?よかったぁ~。なかなか教えてくれなかった助かるよ~。」
アズマは素直な男であった苛つくどころか感謝していた。もしかしたら、そこまで気にしていないだけかもしれないが・・・
気を取り直してマリーはわざとらしい咳ばらいをしてからアズマに説明をした。
「まずは、帝国のお金の単位ね。帝国では『ディア』って呼ばれているの。それで貨幣は全部で6種類に分かれていてね。『小銅貨』、『大銅貨』、『小銀貨』、『大銀貨』、『小金貨』、『大金貨』、って言う感じで区切っているの。それでね、『小銅貨』は『100ディア』、『大銅貨』は『1000ディア』って感じで桁数が上がるにつれてその価値が上がっていくということになっているわけ。」
「はえー。私の故郷とは違うんだね。話を聞く限り、一番高くて価値のあるものが大金貨で相場が『一千万ディア』っていうことなんだね。」
「ふふん。そういうことだよ。なかなか物分かりがいいねぇ。そういえば、どのくらい持っているの?」
マリーはアズマに所持金を聞いてみた。アズマはもう一度懐から所持金を確認してみた。見たところ小さな銀色の小銭が見えた。
「おそらく、私の間違いじゃあなければ銀色の小銭が小銀貨だとして、それが5枚くらいだから・・・。」
「小銀貨5枚!?ってことは『5万ディア』!?君のお小遣い事情はどうなっているんだい!?」
マリーはアズマの所持金の少なさに驚きを隠せなかった。しかし、ここでの話、大和と帝国では物価と私生活が全然違うためアズマはお金が少なくてもなんとかやっていけるのだ。
しばらくして、アズマはマリーと別の話を聞きながら牛串を一口食べた。アズマが食べたのは塩胡椒が塗してある牛肉であり、食べた瞬間に塩の丁度いいしょっぱさと胡椒のアクセントが効いており、肉本来の臭みが消えており、そして噛めば噛むほど肉汁が溢れそれが塩胡椒に絡まり口の中に旨味が広まっていく。あまりの美味しさに思わず声に出してしまう。
「美味い!牛の肉ってこんなにおいしいの!?」
「それ以外にも香辛料とか塗しているから、肉の臭みとかが消えるんだよ。」
「なるほどねえ。『香辛料』というのがあるのかぁ。大和にはないなぁ。」
牛串を頬張りながらアズマはまだ気になっていることがあった。それはマリーが帝都の中を散策する理由である。なんとなくの理由で帝都の市民街を歩いているとは思えない。マリーはすれ違う住人の表情や路地裏に通った際に具合が悪い人が見つけた際に、その人に『癒しの魔法』を掛けたりしたり、露店で食べ物を買う際にその店員が知り合いなのか何か話をしたりしていた。マリーにも事情があるとはいえ自分自身もマリーのことが気になっていたのだ。
「ねえ、マリー。どうして帝都の市民街に来たの?さっきまで絡まれて怪我でもしたら君の親が心配してしまうのではないのかい?」
そう質問すると、マリーはどこかを遠くを見ているが、しかしそこにははっきりとした目的地へと向かっている表情で語りだした。
「ボクはね。おじ様に色々世界について教えてもらったの。砂の大地、凍てつく氷の世界、鳥の楽園、人がまだ踏み入れていない大陸などがいっぱいあるって、おじ様は『世界の果てまで歩んでいきたい』。って話してくれた時、私も色々と冒険したくなってきたの。」
「でもなんで帝都を散策してるの?そういうのは『文官』に任せればいいんじゃあないの?」
そうアズマは聞くと、マリーは頬を膨らまして不服そうに話した。
「それじゃあ、つまらないじゃあないか。ボクは自分の目で見て帝都の様子を見ていたいのだよ。ボクはこの帝都で暮らす人々の営み、さらにはこの帝国に住まう人々がどんな生活をして、帝国の臣民として誇らしくあるか、とても満たされているか、幸せで居てくれているか気になるんだよ。ただ、それだけが知りたいんだよ。そして、帝国を見たら世界を見て回っていきたい!」
アズマはマリーがそこまでこの国の人々に対して思う気持ちが強いことと大きな夢持っていることを感じ取った。このような考えを持つ人物は今までアズマが出会った人物はただ一人。かつて大和で過ごした時に出会った『帝』であったこと。マリーの話を聞いた時は『帝』の面影を思い出してしまった。
『儂はこの大和に住まう民草が平穏でいられればそれで良い。民草がいてこその大和なのである。そして、世界がどれだけ広いか儂は見て行きたいのお。』
アズマはマリーと『帝』を重ねてしまい、思わず目を見開いて沈黙してしまった。
「どうしたの、アズマ?ボクに牛串の肉汁が付いているのかい?」
「え!?あ、うん。口の周りにべっとりついてる。」
アズマはマリーに声を掛けられ驚いてしまった。まさか『帝』と同じ考えの持つ人が目の前にいることに。しかしマリーは顔のの異変がないかアズマに問う。アズマはマリーの口の周りに肉汁が付いていることを、指摘すると赤面しながらポケットからハンカチを取り出し拭き取った。そして、アズマはこの子の正体に何か察してしまった。
(まさかとは思うけど、この子の正体ってまさか・・・それにしてもこれは偶然か?)
アズマの憶測での話、彼女はとても顔の広い貴族であること、貴族としての権力も高くどんな貴族でも融通が利いてなおかつ、彼女自身が持つ『帝』と同じ考えと風格を持つ。もしかしたら・・・・・。
しかし、そんなアズマは無意識に察した周囲の異常に感づいてしまった。しかし、マリーはそのことに感づいておらずアズマに聞いていた。
「ねえ、アズマ。そういえば君は異国から来たんだよね。どうして帝国に・・・・・ブモっ!?」
周囲の異常に感づいていないマリーの口を塞ぎ、音を出さないようにした。マリーはアズマがいきなり口を塞いでいるため、状況が全く理解していないためモゴモゴしていたが、マリーはアズマの表情を見て、驚いた。彼は苦虫を嚙み潰したような顔をして、下を向いてしまった。アズマは口を開いてマリーに聞いた。
「マリー。私たちはどうして、こんなところにいるんだろうか?」
「へ?どういうこと?」
マリーは全く状況がわかっていないため、アズマは目線を横にして周りを見渡した。マリーもアズマと同じようにした。すると、マリーはこの状況がおかしいことに察してしまった。
まず、自分たちは市民街にある露店が並んである道を歩いていたはずだが、いつの間にか古びた何かの建物の中に入っていた。そこには使われていなさそうな荷物や道具が無造作に置かれており、何年もの間人が出入りしている形跡がなかった。マリーは自分たちがいる場所が何なのかが理解できた。
「ここは、使われなくなった倉庫だね。でもいつの間にこんな所にいるんだろう。」
「おそらく、『思考誘導』の能力を使用したんだ。そして、ここには『人払いの結界』が施されている。」
アズマが言った『思考誘導』とは端的にいえば、二人の本来の目的地とは違い『第三者』の目的地へと無意識に誘導されていたのだ。そして、『人払い』とは文字通り他者による介入を阻止するために二人と『第三者』以外を寄せ付けず気づかれないように『結界』という空間を施しているのである。
「私としたことが・・・こんなにも誰かに接近を許してしまうなんて、私の怠慢だ・・・。」
アズマは悔しそうに顔をしかめていたが、マリーは彼を冷静にさせようと肩を叩く。
「後悔するのは後にしよ。それよりも誰がこんなことをするんだろうね。」
アズマはマリ―行動に少し冷静になった。そして、今起きている状況を確認した。
「おそらく、私かマリーを標的にした何者かがこちらに近づいたのだと思う。目的はわからない。だけど、さっきの三人組ではないのは確かだよ。彼らはそこまでの手練れではないからね。正直何者かもわからない。でも、これだけはわかる・・・。
アズマはひと呼吸置いて、一つの答えを出す。
「私たちの敵の手に落ちて、その敵はすぐ近くにいることだ。」
アズマは体ごと90度回転させ、腰に携えていた刀を鞘から抜き、大きな声で『敵』に姿見せるよう叫んだ。
「姿を現せ!!我々は逃げも隠れもせんぞ!!!」
そう叫ぶと、二人の前から全身黒づくめの男が現れ大きな声で独り言を話していた。
「あーあー!やっと来たよオレっちの出番がよぉ~。ったく。待ちくたびれたわぁ~!ホントにもぉ~。オレっちの初登場から、8、9日間?一週間くらいじゃねえか!?それに、この話数でおれっちの登場するのに8900文字?長すぎじゃねえか!?ホントに前振り長すぎ!?なんで肉喰ったり、金の勘定してんだよ!!『文字数稼ぎも大概にしろ!』っつーの!!」
男の言葉から二人には理解できない単語が複数も出てきた。その男は全身黒づくめなのだが、顔の部分が『鬼の仮面』を被っていたのだ。アズマは仮面の姿の人物を見て、強い口調で睨んだ。
「『鬼の仮面』?いったい貴様は何者だ!?貴様がこの結界を張ったのか!?貴様の目的はなんだ!?」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい?お前はバカなの?死ぬの?質問はいっぺんにするもんじゃないってママに教わってないのかオメエはよぉ~?つーか今からオレっちの自己紹介タイムだから文字数稼ぎすんなって。」
そう黒づくめの男は右手首頭まで上げ人差し指を立て、左腕は腰に当て、両かかとを一線上に揃えて付け、足首を45度開き自己紹介をした。
「オレっちこそ、この世界で存在する人気No,1の凄腕の傭兵、任務達成率100%。狙った獲物は逃がさない。金次第でどんな任務だってこなして見せる。特徴はこの『鬼の仮面』そう、オレの名前は・・・
『謎のぉ忍者ぁ・・・エックゥス(Ⅹ)』様だ!!!」
二人は黒づくめの男のあまりにもダサすぎる名前にポカーンとしてしまった。
「え?なぞ?・・・・・え?えっくぅす?」
「忍者?・・・・・忍びではないのか?」
そして、黒づくめの男『Ⅹ』は二人の微妙な反応に呆れていた。
「あのさぁ・・・もっといい反応ないの?例えばさぁ・・・『ええ!?あの伝説の!?』とか、『なんだって!?あのⅩ=サンだって!?』とか、『ファンです!握手とサインしてください!ツーショットもお願いします!!』とかないの!?」
Ⅹは様々な動きをしながら二人に理解不能な話をしていた。会話の内容に全くついて来れてないのに気付いたのかⅩは完全にテンションが下がっていた。
「あー・・・もういいや。これだから素人は困るんだよ。ったくよぉ、とりま仕事に入りますか。もうちょっと見てたらいいの見れるかなって思ったけどなんもないのがつまらん。」
「話を戻すが貴様が結界を施したのか?」
アズマはⅩに質問すると、面倒そうに質問に答える。
「あ?ああ、そうだよ。人払いの結界はオレっちのだよ。仕事内容を話すのはオレっちのポリシーに反するが、まあいい。片づければ問題ねえ。オレの目的はその嬢ちゃんの確保だよ。」
そうⅩはマリーに指をさす。マリーは自分が標的だということに驚愕を隠せなかった。
「え?ボクが、君の目的?なんで?」
「ふぅーん・・・まさか、知らないなんて言わせねえぞお嬢ちゃん?すでにオメエの『正体』なんざ俺っちはわかって言ってるんだぜ?」
Ⅹのよくわからない発言にアズマはわからなったが、マリーだけは理解できた。彼女はⅩの発言に焦りを感じたのか冷や汗を掻いていた。
「やっぱり・・・カマをかけたらまんまと引っ掛かったな。少しはポーカーフェイスを覚えた方がいいぜ、『姫様』?」
「!!!」
マリーからヒュっと呼吸をする音が一瞬聞こえると、アズマの服を掴んでいた。アズマはマリーのあまりの不自然さに困惑した。しかし、それを確かめることはできずⅩはアズマに交渉を出してきた。
「おい、そこの東洋人。オメエ大和の民だろ?少し交渉しねえか?オメエはこの場では関係ねえからな。チャンスをやるよ。オメエがそこの嬢ちゃんと離れるなら命まではとらねえぜ?ついでに大金貨3枚やるよ?ただし、残る場合は死んでもらうぜ。」
「その交渉に乗った場合マリーはどうなる?」
Ⅹの交渉に対してアズマはⅩに質問を返す。
「依頼主は無傷で連れて来いって言うからなぁ。うーーーーーん?そうだなぁ?、スタイルもいいし、結構可愛い顔をしてるしねえ?嬢ちゃんの合意のもとだったら、ちょっとお茶とかご飯嗜みながら仲良くするでも良いしぃ?スポーツをしながら交流を深めるとかも良いしなぁ?ついでに乗馬をするのもいいなぁ?あ、もちろん乗るのはオレっちの上だがな。どういう意味かはお父さんお母さんに聞くんだぞ!」
「君は誰に話しているんだい?」
Ⅹは画面越しから話しかけるが、二人とも誰に話しているか見えておらず、マリーは突っ込んだ。
アズマは考えた。もし、この交渉に乗ってしても彼女の安全は保障できない可能性がある。しかし、自分の身は確保できるがあまりにも胡散臭い男の発言をまともに信じることができない。交渉に乗らない場合戦闘になるが、相手に勝てるかはわからないどのくらいの実力があるか不明なのだ。おそらく負けた場合は命を失うかもしれない。そう考えていると、Ⅹから答えをせかされる。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい?オメエさっきから文字数稼ぎしてんじゃあねえぞ?もう一万文字言ってるんだからよぉ。早く選べよあくしろよ。」
「・・・・・。」
「アズマ?」
アズマはマリーを見て思い決断した。そして、マリーに安心するように柔らかい口調で話した。
「大丈夫だよマリー。私が君を守って見せる。」
「ああ?」
アズマはⅩの前で刀を『正傳中段構え』の姿で構えていた。Ⅹは自分の聞き間違いでなければアズマは一人で迎え撃つつもりでいた。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!?オメエ人の話を聞いていなかったのか?オレっちにかかればオメエの命を奪うことだってできるんだぜ?死にてえのかぁ?」
Ⅹの脅し文句にアズマは静かに自分の『覚悟』を答える。
「マリーは世界を見たいという夢があるんだ。それにこんな状況ならわかるはずだ。『どちらが良いか選ぶんじゃなくて、どちらが正しいか決めるんだ。』だから、私はマリーを守る。」
Ⅹは交渉が決裂したことに対して歯痒い思いをしたが、これも予測の範囲内だった。頭を掻いて面倒くさそうに独り言を話した。
「はぁ、一万文字以上でこの結果か。まぁいいや。どのみち交渉成立しても殺す気だったし。」
「それは交渉の意味が無いのでは!?」
「オメエ話聞いてないだろ?『片づければ問題ねえ』ってよぉ。」
そう、Ⅹは初めからアズマを始末するつもりでいたのだ。そう、抵抗しないように嘘を吹いたのだ。だが、それでもここまでの展開はⅩにとって問題ないことなのだ。
Ⅹは背中には二本の刀があり、それを腕で抜き一本を肩に乗せて峰で肩を叩き、もう一本でアズマを近づくように持っている手の指を動かした。
「来いよ糞ジャップが。三枚に下ろしてやるよ。」
「その言葉。侮辱として受け取ってもらうぞ。」
次回完全バトルです。
面白くなってきましたよ。