表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇帝の忍び  作者: 暇人=サン
第一章 忍びアズマ
4/8

始まりの出会い その3

今回長めで



 セントラ駅での一悶着の後、アズマは『十王』の一人より命を受けた魔族の一人『ミレリア=ウルワルド子爵婦人』と共に、無事鉄道に乗車することができた。ミレリアは『詳しい話は鉄道の中で話す。』と言っていた。 彼女はアズマが換金所にて目撃したと情報があり、それに合わせて合流することができたのである。アズマは彼女が魔族であることを『観た』だけで、理解した。


 『ミレリア=ウルワルド子爵婦人』は『蒼魔族(そうまぞく)』の一人である。

 『蒼魔族』は魔族にとってごく一般的な魔族であり、特徴は紫色の髪の色に青い肌をしておりそれ以外は人間とは全く違いはない。身体能力もさほど違いはないが、唯一の違いが『魔力』の保有量である。

 この世界にある『魔素マナ』は誰もが持っている『粒子』の一つである。種族や個人によって差はあるが、『人間種』に比べて『蒼魔族』が多いことが違いである。『魔素(マナ)』はその人の魔力量が多いければ多いほどその魔力を『気配』として感じることができる。しかし、この『気配』は余程勘の良い者か魔力を感知することのできる『能力(スキル)』を持つ者か特殊な訓練を行わない限り感じることができない。

 アズマはまだ大和にいたときに祖父から魔素を感知する方法を会得しているため、感知することができたのであった。故にこの蒼魔族の女性の魔力量は普通の人間より多いということ感知することができたのである。


 アズマはミレリアと他大きな人型の存在が二体の案内のもと鉄道の中を歩いていた。案内された場所は綺麗なところであった。テーブルクロスが敷いた長方形のテーブルに向かい合うように、背もたれと座面部分にあるクッションにはきれいな模様が入っている肘掛け椅子が4つ置いてある。それが通り道の間に二列に並んでおり、それぞれの席に身なりの良い魔族たちが席に座りテーブルの上で食事を摂っていたり、ワイングラスを片手に雑談をしているのだ。 

 そう、アズマは鉄道の中にある貴族専用の『スイートルーム』の車両に招待されていたのだ。

 アズマは和風の座敷で生活していたため、帝国による『圧倒的文化力の違いに対しての敗北感』を味わうこととなった。ここまできれいな生活を送っている帝国貴族にアズマは驚きのあまり口と目を大きく開けてしまい、その顔をミレリアは見て不安な様子でアズマの容態を心配した。


 「どうかしましたか。アズマ様?何か気になさる事でもありますか?」


 ミレリアの質問に対してアズマは正気に戻り、慌てた様子で返答をした。


 「い、いやあ。何でもないですよ。ただ、豪華な場所だなぁと思ってさ。」

 「そうですね。この車両は貴族専用なんですの。一般の方々に乗るにはあまりにも値段が高いものですからね。せっかくですのでこちらの席へどうぞ。」


 ミレリアはおしとやかにアズマに貴族専用車両であることを説明し、肘掛け椅子に座るように勧める。

席を勧められたアズマだが肘掛椅子は大和では見ないため、戸惑ってしまった。そこに察するミレリアはお手本として肘掛椅子に座った。アズマは硬い表情で肘掛椅子に座りこんだ。すると、椅子に座ったアズマはあまりの座り心地の良さに硬い表情が和らぎホッと息を吐いた。


 (な、なんて座り心地なんだ!座布団とは違い背中にある板に、もたれかかると柔らかく包み込まれ安心感を抱いてしまう。そして、お尻部分はふんわりしており、長時間座っても痺れないように作っている!まさに・・・。至福・・・。)


 アズマの柔らかい表情を見たミレリアはくすくすと笑い出した。


 「その表情をを見るに問題なさそうですね。」

 「あ・・・。そうなんですよ~!私の故郷にはみたことがないわけですからね~!」


 アズマは淑女の前で醜態を晒したことで耳まで赤くなってしまい、居た堪れなくなってミレリアの後ろに護衛するように大きな人型の存在に目を移した。明らかに先ほどのセントラ駅で一悶着をした大柄の男より背丈が大きいため、かなり目立つはずなのだが、先ほどからここの乗客はその二体に全く見向きもせず食事を楽しんでいる。疑問に思ったアズマはエミリアに質問した。


 「そういえば、その・・・。大きなお二人は何者なんですか?明らかにほかの魔族とは違うのは見てわかるのですが・・・。」


 ミレリアは一瞬だけアズマは何の質問をしているのかわからなかったが、アズマの目線の先がその人型の存在であることに気が付いた。ミレリアは「あぁ。」とアズマが何に対して気になってたのかを説明するためにアズマに話しかける。


 「これは『ウシャブティ』と呼ばれる『魔術道具』です。」

 「『ウシャブティ』?」

 「はい。簡単に言えば埋葬した遺体を魔術で構築した『器』に入れて、召使いや護衛として動くことのできるようにしたものです。これは異国の方ではあんまり見ないですね。」


 アズマは『遺体』と聞いて驚愕を隠せなかった。大和は死生観に関してはこだわりは強く死者に対してはきちんと供養し、死者には月に一回は会うように墓参りを行うようにし、そして埋葬された場所は決して掘り返したり、遊ぶことさえ許されなかった。アズマは慌てた様子でミレリアに質問を続ける。


 「ど、どうしてそんなものをあなたはお持ちになっているのですか?我々は死者に対してはしっかり弔い、『決して死者を掘り返さない』というのが掟となっているのですが・・・。」

 「確かに構造を知ってなおかつそういう弔い方がある文化には抵抗はありますね。ですがこの二体を作った国はその国としてのれっきとした弔い方なのでした。かつて帝国に滅亡され、ウシャブティを作った『ネフェル=ティト国』は『不死者(アンデット)』の国でした。その者たちの考えは『魂は冥界へと旅立ち、再び戻ってくるまでウシャブティとして仕える』というのです。彼らは『死者転生』を信じており、一度死んだ人間は必ず蘇るため、もし肉体がなければ困るので『ウシャブティ』として一時的保存し、冥界ししゃが蘇るまで誰かに仕えるように作ったのです。私はその考えに惹かれ、私はこの二体の主として迎え入れたのです。」


 アズマはこの話を聞く前は『この令嬢は死者を弔わない野蛮な者』というイメージしかなかったが、彼女の考えやその国の文化の違いというだけであった。アズマは先入観により、他国や他人の考え方を否定する浅ましいことをしてしまい、罪悪感を抱いてしまった。かつて大和にいた自分が兄弟姉妹に考え方を否定され不遇な扱いを受けていたはずなのに。


 (だめだな・・・自分は。これからは帝国に仕えるのに。その国の文化を受け入れなければ・・・。)


 アズマはミレリアに対して謝罪をする。自分自身が彼女に対して己の考えとは反対のことをしてその考えに抵抗をしてしまったことに。


 「すみません、ミレリアさん。ほんとは帝国にしばらくお世話にならなくちゃいけないのに、私はあなたの素晴らしい考え方に否定してしまいました。心から謝罪します。」


 アズマの唐突な謝罪にミレリアは慌てた様子で謝罪するアズマを止める。


 「そんな、謝らなくても大丈夫ですよ!もともとウシャブティには好き嫌いは誰にだってありますから。」


 自己嫌悪に苛まれ、猫背になる。アズマにミレリアは困っていた。何か別な話題に考える考えてた。その時、ミレリア自身にもアズマに対しての疑問を感じていた。それは、異国の民が帝国の言語を流暢に話せていることだ。世界各国が大和を発見して3年。帝国が大和と交渉を深めるための使節団を送ってから交易協定を制定するまで一年という期間を費やし、そして大和の民を一人送ることへの条件を出したのが、つい一月前の話なのだ。閉鎖的な考えを持つ大和の民は、当然帝国の言語など理解できるはずがないのだ。

 ミレリアはその秘密をアズマに聞こうとしていた。


 「そういえば、アズマ様はずいぶんと帝国の言葉を話されておりますね。やはり、言葉を話されることへの努力を取り組まれたのですか?」


 急なミレリアの質問に対して、アズマはハッと背筋を伸ばし、ミレリアの質問に返答する。


 「いえ、私はそこまで勉強を取り組んではいません。地図に書いてある文字も『翻訳本』を読まずにはいられませんし、これと言っては・・・。」


 と、アズマは帝国の言葉を話すことへの深い考えはなかったのだが、話すことを止めあることをふと思い出す。それは帝国の船へと乗船する前のおじい様からお守りをもらっていることを思い出したのだ。

 そのお守りを懐からおもむろに出し、ミレリアに見せるように持った。

 

 「もしかしたら、これに秘密があるかも私のおじい様が『これを付ければ多少いいことがあるかものう。』と話してました。」

 「よく見せてください。」


 ミレリアは手を差し出し、アズマはその手の上にお守りを置いた。お守りは大和では珍しいものではなく、神社やお寺などへ行けばもらうことのできるお守りなのだ。ミレリアはじっとお守りを見つけ初めての物を見たという顔をしていた。


 「なるほど・・・。そういうことですか。」


 ミレリアの言葉にアズマは理解できなかった。ミレリアが帝国の言語で話しているため、アズマには理解できていなかったからだ。アズマはミレリアに対して「すみません。今なんて言いました?」と言ったがミレリア自身にはアズマが大和の言葉で話していたため、理解できていなかった。ミレリアはアズマの御守りを返却し、そのお守りの正体を伝えた。


 「そのお守りは『翻訳機能』がついておりますね。魔術師がこのお守りに術式を施し、これを持つだけで他国の言語に合わせて話せたり、聞こえるように変換できるようになってますね。」

 

 アズマはお守りを不思議に見つめながら不思議に思った。一見すればただの御守りに過ぎなかったのだ。


 「このお守りにそんな効果があるなんて、おじい様はどこで手に入れたのでしょう。」

 「そう、気になるところはそこなんです。この術式は帝国に存在する『魔術師師団』や『魔法師師団』という一万人の軍隊の中でも群を抜いて魔術に長けている者にしか作成することはできないのです。」


 ミレリアはある疑問が二つ出てきた。まず一つ目は『大和が帝国の技術を盗んだこと』だ。もちろんのことだが、アズマ自身は帝国に来たのは初めてだし、アズマ以外の者が帝国の技術を盗んだ可能性があるのだ。当然ながら、アズマはその可能性が頭に出てきたため、すぐに否定をした。


 「大和の民は盗みなんかしません。それに大和は自国から出た者がいませんので。」

 「もちろん信じています。アズマ様を一目で見て誠実さがわかりましたもの。」


 ミレリアはアズマに信じていることを優しい感じで伝えると、アズマは安心したようにホッと息を吐いた。その光景を見てミレリアは少し微笑ましい様子で見ていた。


 (あらあら、結構忙しい方ですね。)


 しかし、アズマは完全に忘れていた。祖父が帝国へ密偵しに行っており、術式を盗んでいる可能性があることに。

 だが、ミレリアはアズマの言葉を信じているため、一つ目の疑惑を否定した。

 二つ目は『十王』の一人である『アダムス』の存在である。ミレリア自身もこの考えが当たりだと確信した。


 「おそらく、十王の一人である『アダムス』様が何らかの方法を使ってあなた様に渡されることを計画したのでしょう。」

 「『アダムス』って言うとあの港町にあった像の方ですか?」

 「ええ。彼はあらゆる学問に精通し、魔術にも長けています。初代帝国皇帝時代から仕え、様々な経済政策や教育の基礎の助言をしたのも『アダムス』様との伝説があります。それを称えて帝国随一の知恵者と言われています。」


 それでも、ミレリア自身には疑問が渦巻いていた。なぜ『アダムス』自身がそこまでの手間をかけて翻訳機能の魔術を込めた代物を制作しアズマに渡したのか。しかし、目上の者の考えを深く探りを入れることは失礼極まりないこと、と教育されているためこれ以上考えていることをやめた。


 (アダムス様本人には尊きお考えがあるのだろう・・・。)


 ミレリアが思考巡らせている最中に、誰かから腹の虫が鳴いていた。音の正体はアズマだった。あまりに不意打ち故に照れ臭くなりながら、謝罪した。

 

 「すいません・・・。そういえば、朝食を摂っていいませんでした。」

 「いいえ、問題ありませんわ。せっかくですので少し早いですが昼食といたしましょう。準備いたしますので、少々お待ちください。メニューはこちらの方で選びますが、それはご了承ください。」


 ミレリアはテーブルに置いてあるベルを鳴らすと、鉄道の乗務員がこちらに近づき、ミレリアにメニューを伺う。ミレリア自身も手慣れた様子でメニューを伝えると、乗務員は離れる。数分後に昼食が届く。メニューは三つあり、一つ目は皿の上に表面を焼いたパン。もう一つはとオムレツと焼いた分厚い燻製肉(ベーコン)。三つ目は透き通った琥珀色のコンソメスープがあった。アズマ自身は見たこともない食欲をすする香りがする料理が出てきたときによだれが止まらず、腹の虫がさらに鳴ってしまった。もはや、恥じらいなどなく食欲だけを満たす。気持ちはそれしかなかった。


 「こ、これは・・・いいんですか?こんなに頂いてしまって・・・?」 

 「もちろんです。今回はアズマ様が客人です。それに今回はアズマ様は初めて帝国へ訪れた日なのです。ご一緒にお祝いいたしますよ。」


 そう言いながらミレリアは片手にワイングラスを持ち、乗務員がそのグラスに葡萄酒(ワイン)を注ぐ。アズマも片手にワイングラスを持ち、乗務員が続けて葡萄酒を注ぐ。


 「アズマ様が今後も帝国でのご活躍を祈って・・・」

 

 と、ミレリアが言いながらグラスをチンと音を立てて合わせる。

 アズマは葡萄酒の香りを嗅ぐとほのかに香るブドウの香りに少し頬を緩める。一口飲み葡萄酒の香りが鼻を通るが、口の中にある渋さにより眉を顰める。もともと、下戸であるアズマはあまりお酒を嗜む習慣がないため、一杯だけ飲んでそれ以上頼むことはなかった。


 (お酒がダメなの言っとけばよかった。)


 朝食はミレリアの見よう見真似で食事を食べていた。パンは甘い香りとふんわりした食感としっとりとした舌触りがした。オムレツは一口食べた瞬間に卵だと理解したがパンとは違うふんわりした食感と卵特有の味とちょうどいい塩味ととろりとしたチーズが口に広がった。燻製肉は2cmの厚さがあり、ずっしりとした肉の重量感と噛むことで肉汁があふれ出て、さらに燻製にしたことでの香りが鼻を透き通る。そして、琥珀色のコンソメスープ。一見野菜などの具がないため、一瞬がっかりしたアズマなのだが、口に含むことで、驚いてしまった。スープの味は数多の野菜と肉、少々効いた塩と香辛料が口に広がりさらに食欲が進んだ。

 結局のところ、アズマは三つの料理をそれぞれお替りしてしまい、食欲が満たされたアズマは至福の表情をしていた。それでも二人の会話は途切れることもなく、様々な会話をし、かれこれ鉄道へ乗ってから4時間がした。ミレリアは窓を見てアズマに声をかける。


 目的地へ到着したのだ。


 「アズマ様。窓をご覧ください。帝都へと到着しました。」


 そうミレリアが言いアズマが窓を向けると、帝都の大きさに我を忘れてしまった。



 帝都『カルラディア』 

 人口は4000万人。多種多様な『種族』がこの地へと集まり、様々な思いの者がこの帝都へと人が集まって来るのである。帝都の面積は6000㎡で20mにもなる壁が帝都全体を円になるように囲っている。壁の外に建物がぽつぽつと立っている様子も見られるが鉄道から見える帝都の壁の中がアズマは気になっていた。壁の近くには家々が建っており、中心にに合わせて建物の高さがどんどん高くなり、帝都中心にはとても大きな城がそびえ立っていた。城の頂点は350m程でその城が誰の者かが見ただけで理解できた。


 そこがアズマの主である皇帝の住まう場所であると


 「どうですか?帝都はとても大きいでしょう?」


 帝都の様子を見ていたアズマはミレリアの声に反応はしていたが、目線は帝都から離れることはなかった。


 「ええ、広いです。こんな場所初めて見ました。」


 アズマの無邪気な様子を見て微笑ましいと感じているミレリアは咳ばらいをして、アズマにこちらへ向くよう注意をした。


 「コホン。そろそろ準備をした方がいいのではないですか?』

 「そ、そうですね。そろそろ準備しないと・・・。」


 ミレリアの言葉に急いでアズマは鉄道から降りる準備を行い、しばらくして鉄道は帝都へ到着し、ミレリアと共に鉄道から降りた。アズマとミレリアはほかの人たちとは違い、空いている道へ歩いていた。アズマは混雑している方へと視線が向いていると駅の中でも多くの人が歩いていた。他種族の人が鉄道に乗車したり、駅の中で様々なものを購入するために並んでいるなどあまりの人の多さにアズマは驚いていた。


 「やはり帝都となるとかなり混雑していますね。いいんでしょうか私たちだけ空いている道を歩いていて・・・」

 「お気持ちはわかりますが、ここの道は貴族専用なんです。一般人の前で権力を使うわけにもいきませんの・・・。」


 ミレリアの後ろを付けるように歩くアズマ。駅から出ると帝都の町中を見た。町の通路には馬車専用の通路と歩行者専用の通路があった。馬車専用の通路は通路の中心にあり、すれ違うように今でいう4車線に分かれていた。馬車には様々な動物が引いており、二足歩行の大きなトカゲが引いていたり、大きなオオカミが乗り物を引いていた。その脇には歩行者専用の道には様々な種族の者が歩いており、そこにはぎゅうぎゅうになるくらい多くの人が歩いており、それぞれの目的地へと向かうためにすれ違っていた。 一方でアズマの目の前には見たことのない乗り物を見た。一見して馬車の様に乗る部分が横に伸びた長方形の箱型をしており、それには装飾品が施されている。しかし、前方を見てみると骨の姿をした馬が二頭いた。さすがに様々な種族を見てきたアズマには慣れた光景だったためか驚きもしなかった。


 (なんだ・・・。骨の馬か。そういえば、さっきすれ違った人も骨の姿をしてたな。でも凄いな。)


 馬車に乗り、動き出したことでアズマはこの後の予定をミレリアに聞いた。


 「ミレリアさん。この後の予定はどのようになってます?」

 「この後は、『アダムス』様の宮廷までご案内いたします。それからは私とは、しばしお別れとなりますので後のことはアダムス様の指示に従っていただきます。」

 

 ミレリアは淡々と説明していたが、アズマは少し寂しい思いをしてしまった。帝都まで案内してくれたミレリアにその場で感謝した。


 「有難う。ミレリアさん。なんだかんだ色々助けてくださって。この恩をどう返せばいいか・・・。」 「いいんですよ。私は主の命に従っているだけです。」


 そう会話していると、馬車はゆっくりとスピードを落ちていき最終的に止まった。


 「ミレリアさんどうかなさったんですか?」

 「馬車の交通整理のため、一度止まってます。移動手段は基本的に馬車ですがルールを作らないと死傷者が出ますので。」


 そうミレリアはアズマの質問に答え、アズマは帝都の町中を眺めていた。すると、ある光景を見てアズマは険しい顔をして苛立ちを覚えた。

 その光景とは、三人の『人間』と『魔族』の一種の『鬼人(オーガ)』と『亜人』の一種の『獣人』の三人がフードを被った一人を路地裏で囲んで何かをしようとしていた。アズマはその光景を見ていてもたってもいられなくなり、馬車を飛び出してしまった。あまりの行動の速さに思考が止まって「え?」と言って状況が理解できずにいたミレリアがいた。


 「すいません。ミレリアさん!一度下ります!」

 「ええぇ!?ちょ、ちょっとまってくださいよー!?」


 アズマの服に掴もうとしたが、アズマはすぐに人通りが多い歩道へと一飛びで着いたことで見失ってしまった。見失ったと同時に馬車が発信してしまった。

 ミレリアが頭に浮かんだのは『任務失敗』による処罰とアズマの負傷による処罰の二つが浮かんでしまい、青ざめたミレリアはすぐさま馬車を止めようとした。


 「馬車を止めて、今すぐに!!!」


 ミレリアは、御者に強く言うもすぐに御者は否定した。


 「無理ですって!今日も馬車の交通が多いですんで、止めるには路肩に止めんと!」


 すぐに止められないことへの苛立ちとアズマの理由を伝えないことへの礼儀知らずな行動に憤慨し、ミレリアは完全に取り乱していた。


 「もおおおおおおおおお!!なんなのよおおおおおおお!!!」

次回少しバトル。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ