ブレイン5
・ラッシュ: 黒髪の戦士。主につっこみ役。
・フロウ: 金髪の魔法戦士。美少年。
・ダー: ドワーフの戦士。白髭で基本ボケ役。
・エクセ: エルフの魔法使い。常識人。
・アビー: ダークエルフの盗賊。褐色の腹筋美女。
・エリス: 人間の女僧侶。かなりの天然。
地下2階は浅い階だけあって、敵よりもむしろ冒険者同士が出会う確率の方が多い。
あちこちで「おや、はじめまして」
「いえいえこちらこそ」
「道中お気をつけて」などと、出会ったパーティーの社交辞令がかわされている。
「ああ、浮世はわずらわしい。早くもっと階下へ行こう」
「ラッシュってそんな厭世的だったっけ?」
フロウがふしぎそうに金色の髪をかしげる。
「厭世的じゃなく、地下は非日常の世界だぜ。つまり俺のバトルフィールド。地上と同じようなニコニコ挨拶なんてしたくないんだよ」
「どこでも挨拶は大切ですよー」
そうエリスがたしなめたところだった。
「やあ、ごぶさたしてます。ラッシュとその他のご一行さん」
と、声をかけてきた5人の冒険者パーティーがいる。
「誰かと思えば『ブレイン5』の面々ですね。こちらこそご無沙汰しています」
エクセが応えると、ブレイン5の女魔法使いが顔をポッと赤らめる。
この濃いメンバーのせいで忘れがちだが、エクセの容貌は際立って秀麗なのだ。
「しかし、お前らあれじゃのう。久々に見るとやっぱり・・・」
ダーがあきれたように見やる。ブレイン5のメンバーは、男の戦士2人、女戦士1人、ニンジャ1人、女魔法使い1人という、非常にかたよったチーム編成になっている。
「・・・どっちかというと『脳筋5』じゃな」
「そんな、ひどい!」
「わ、私は脳筋じゃありませんよ!」
女魔法使いが抗議の声をあげる。
「じゃあ脳筋4かのう」
「私の存在を消さないで!」
「わかったわかった。それなら『脳筋4/With魔法使い』でどうじゃ?」
「どうじゃ、とそんなドヤ顔で言われましても・・・・」
「しかも、WITH 魔法使い』で韻を踏んで洒落おつじゃ」
―――沈黙が降りた。
「そんな・・・・寒い・・・」
「寒いとはなんじゃ、せっかくのナイスアイディアを!!」
ドワーフと女魔法使いが口論している隙に、フロウがブレイン5の戦士に話しかけた。
「ところでさっき、ごく自然にラッシュとご一行といわれてましたが・・・」
「ああ、そういう登録名になったのでしょう?」
冒険者は出入り口に設置してある窓口に、参加人数とチーム名を提出する義務がある。
出るときも窓口に報告をする。そうしないと行方不明者が出たときにこまるからだ。
「ラッシュ! 珍しく真面目に書類を書いてたと思えば、バカみたいなチーム名にして!」
「バカみたいとは何だ! ラッシュとその他一行とは、そのまま言い得て妙なチーム名じゃないか!」
「妙なのは君の頭の構造だよ。いつリーダーになったの!」
「そーですよー、『エリスと愉快な仲間達』に変更すべきですー」
口をとがらせてエリスも加わる。
「いや、『ダー・ヤッケンウッフ』できまりじゃ!」
「それはお前の単なるフルネームじゃねえか。何が決まりだ!」
「アビーの腹筋にちなんで、シックスパックはどうですー?」
「アタシを巻き込むな! というかアタシは腹筋だけの女か!」
「あ、あの、それでは私達はここで・・・」
白熱する議論に没頭する彼らをよそに、そそくさとブレイン5は去っていった。
触らぬ神に祟りなしであった。
バカダンジョンはつづく・・・→