スケルトン
・ラッシュ: 黒髪の戦士。パワーバカ、主につっこみ役。
・フロウ: 金髪の魔法戦士。美少年。
・サンダー: ドワーフの戦士。白髭でボケ。
・エクセ: エルフの魔法使い。常識人。
・アビー: ダークエルフの盗賊。褐色の腹筋美女。
・エリス: 人間の女僧侶。かなりの天然。
そんなこんなで、ラッシュはようやく扉をひらいた。
内部は、正方形の部屋である。
左右に扉がついており、先に通した冒険者たちはすでにいない。さっさとどちらかに消えたのだろう。
「私たちも、先をいそぎましょう」
今回の旅は、地下6階まで到達するのがとりあえずの目標だ。今回、中堅の彼らが、わざわざこの初心者用ダンジョンへやってきたのは、ここでしか採れない、あるアイテムを入手するためだ。
下へおりる階段は右の扉のほうなので、とりあえずそちらを開く。
「転送の呪文でも使えれば楽なんじゃがの」
と、サンダーはぼやく。
「転送の魔法は、常に危険がつきまといます。座標を誤まって、壁の中で実体化でもしたら、目も当てられませんよ」
いましめるようにエクセが言いつつ、次の扉をひらいたときだった。
無機質なアナウンスが、室内にひびきわたった。
<<<呪われた骸骨のモンスター、スケルトン3体があらわれた!>>>
「さあバトルじゃ! 見せ場じゃ! お前ら闘え!」
「お前も前衛だろうが!」
ラッシュ、反射的につっこむ。
さて呪われし系の魔物といえば、聖職者のエリスの出番となる。しかし、どういうことか。彼女はあらぬ方向を見て、ボーっとつっ立っているではないか。
「エリス、なにボーっとしてるんだ!」
苛立って、ラッシュが声をあらげる。
「まあ、今に始まったことでもないがの」
それでもエリスは動かない。まるで石像と化してしまったかのようである。つんつんとフロウが肩をつつくと、ようやく彼女はハッと我にかえった。
「ちょっと考え事をしてましたー」
「お、お前はこんなときに……」
シーフのアビーが呆れ声でつぶやく。
「なにを考えていたのですか?」
杖を構え、援護体勢をととのえつつ、エクセが聞く。
「はいー。スケルトンといいますが、べつにどこも透けてないなーと考えてましたー」
「く、くっそくだらねえ……」
アビーはそれを聞いて、悶えるように赤い髪をかき乱した。
「……スケテナイトンとでも変えますか」
「斬新な発想じゃな」
「固有名詞を変えていいものだろうか……」
<<<呪われた骸骨のモンスター、スケテナイトン3体があらわれた!>>>
「変えるな変えるな」
もうバトルもくそもない。
スケルトン3体も、この風変わりな連中に恐れをなしたのか、なかなか襲い掛かってこない。
「でもスケテナイトンって、語呂が悪いですー」
「おまえが言うな」
「それならば、スケテナイだけでいいんじゃないですか?」
「もう本来の意味もクソもないな」
「そう考えると、確かにトン部分はいらないのう」
「えー何をいってるんですー。トンいりますよー」
エリスは唇をとがらせて異を唱える。
「なんでだ?」
「だって、トンってかわいいじゃないですかー」
「か、かわいいかあ?」
ラッシュは大いに首をひねった。
「かわいいよー。ラッシュも名前をラッシュトンにしたらいいよー」
「だ、だが断る!!」
かたく拳を握りしめてラッシュは叫んだ。
本当にいやそうだった。
サンダーはやれやれと首を振りつつ、フロウに言った。
「エリスは恐ろしいのう、フロウトンや」
「そうですね、サンダートン」
「アビートンはどう思う?」
「アタシにトンをつけるな、殺すぞ!」
アビーは眼を血走らせて殺気立っている。
「エクセトンはどう思うんじゃ」
「私のフルネームはエクセリアン・ラ・ルルーランですから、そこにトンをつけるのは間違いです」
やんわりと、エクセがたしなめる。
「じゃあ、どう呼べばよいのじゃ」
「エクセリアン・ラ・ルルーラントンといったところでしょうか」
「めんどくさい男じゃ。長ったらしすぎて、舌を噛みちぎってしまうわい」
「その点、サンダートンは単純でいいですね」
「ようし、この喧嘩、買ったわい!」
ふたりの間に、激しい火花が散った。
そこへ、とことことエリスが駆け寄り、
「喧嘩はよくないですー」といった。
「「誰のせいだ!!」」
※ところでスケルトンはエクセが魔法で処分しました。
バカダンジョンはつづく・・・・→