ベテランの人たち
ラッシュ: 黒髪の戦士。パワーバカ、主につっこみ役。
フロウ: 金髪の魔法戦士。美少年。
サンダー: ドワーフの戦士。白髭でボケ。
エクセ: エルフの魔法使い。常識人。
アビー: ダークエルフの盗賊。褐色の腹筋美女。
エリス: 人間の女僧侶。かなりの天然。
さて、今回の舞台はローズ・ダンジョンだ。
難易度は初心者から中級者むけ。
敵はそんなに強くはない。冒険者になりたてのルーキーから、そこそこ慣れてきた中堅たちが使うダンジョンだ。
このダンジョンを卒業して、ようやく一人前と認められる。
階段をおりると、ちょっとした広間になっている。
初心者はここで装備を整えたり、作戦を練ったりするのが普通だ。
そこかしこに、そういうルーキーたちの姿が見える。
だが、この6人は一応中堅どころなので、そういう面倒なことはしないのだ。さっさと三方向に分かれた通路のどまんなかを進んでいく。
彼らの背中から、
「ベテランの人たちはカッコイイね……」
という、羨望のこもったささやき声が聞こえる。
エリスはにんまりとして、
「わー、わたしたちカッコイイですってー」
「悪い気はしないな」
と満足げに頷くラッシュ。「ウム」とサンダーも同意する。
「しかし、慣れとは危険なものでもあります。気を引き締めていかねばなりません」
「そうですねえー」
「ようするに、最初の頃の気持ちを失っちゃダメということだね」
と、フロウは真剣な顔つきでつぶやく。
「さにあらずじゃ」
サンダーは静かに首を左右に振った。
「――えっ?」
目をまるくする一行。
「すべてを同一の思考でまとめてはいかん。一人一人がみな違う生命体」
「いきなり何の話だ」
「もののたとえじゃ」
「何も例えてない気がするんですがそれは」
「だからお前らはわかっておらぬ。まだ若い証拠じゃ」
「私はあなたより年上ですが……」とエクセ。
見た目は若く、美しいが、エルフ族はたいていがドワーフ族より長命だ。ちなみにこの世界の人間族の平均寿命が70歳ぐらいとすれば、ドワーフは200歳、エルフは500歳だ。
「わしの言っとるのは実年齢のことではない。精神的な若さのことじゃ。だからして、お前らはまだ青い。採れたてのバナナのようにな」
「採れたてのバナナって緑だよね」
「カーッ! いちいち揚げ足をとるでない!」
エクセは「フムフム」となにやら頷くと、
「そこまでキッパリいうなら、その精神的な年長者さまから、ぜひ、タメになるひとことをぜひお聞かせ願いたいものですね」
「よし、その耳の穴をかっぽじってよく聞いておくんじゃ」
「聞いてますから、どうぞ」
と言ったものの、しばらく沈黙するサンダー。
威勢よく啖呵をきったものの、何も考えてなかったらしい。
「おや、どうしました?」
意地悪そうに横目で見てくるエクセにムッとしたのか、ようやくサンダーはこう言いはなった。
「……し、初心、忘るるべからず!」
ラッシュはすっとローズダンジョンの出入り口を指差し、こう宣告した。
「―――退場」
バカダンジョンはつづく・・・・→