雨降ってぶよぶよ
・ラッシュ: 黒髪の戦士。主につっこみ役。
・フロウ: 金髪の魔法戦士。美少年。
・ダー: ドワーフの戦士。白髭で基本ボケ役。
・エクセ: エルフの魔法使い。常識人。
・アビー: ダークエルフの盗賊。褐色の腹筋美女。
・エリス: 人間の女僧侶。かなりの天然。
エリス・ファという女僧侶は、基本的にぼーっとしていることが多い。
と思えば、おもむろに突飛な事を口走ったりする。
このときもそうだった。
「ねー、『雨降って地固まる』ということわざがありますよねー」
「はい、ありますね」
冷静に返すエクセ。
「でも、実際は固まってないよねー、ブヨブヨだよねー」
「それはワシもそう思っておった」とダー。
「いえいえ。雨が降った直後はぶよぶよかもしれませんが、水が抜けると以前より強固なものになるんですよ」
「そうなんですかー?」
「耕した土なんか、隙間に空気が入って柔らかい状態になってるんだよ。そこに雨が降ると、空気のスキマにドロドロの土が流れ込んで、ピッタリ固まる、みたいな感じだね」
そこにフロウが口をはさむ。
「さすが農耕民族フロウだな」とラッシュ。
「農耕民族じゃないよ! 一時期まったく仕事がなかったから、畑で野菜作ろうといいだしたのはラッシュでしょ。君は言い出しっぺのくせに全然手伝わなかったし、経験不足で頓挫したけどね!」
日ごろ温厚なフロウが、珍しくむくれている。
ラッシュはごまかそうとしてか、へたくそな口笛を吹いた。
「まあまあふたりとも。つまり何かもめごとがあった後は、かえって物事がうまく収まるという意味で使われていますね」
「今の俺達みたいなものだな」
「いや、まだ僕の地はまだ固まってないよ」
フロウはツン、と唇をとがらせている。
とりなすように、エクセが言葉をつづける。
「ええと、似たような言い回しは他にもありますよ」
「ほう、聞かせてもらおう」とダー。
「たとえば『嵐のあとには凪が来る』とか」
「ふむふむ」
「でも逆に『凪のあとには嵐がやってくる』ということわざもありますね」
「なんじゃそら」
「まあ、言い回しひとつといいますか・・・・」
「人類の身勝手さ、傲慢さ、業の深さを見せつけられる思いじゃわい」
「なんでそこまで・・・」
「まあワシは理解したわい。とりあえず言いたいこと言っとけばことわざになる、ということじゃな」
「全然そういうことではありませんが・・・・」
まったく人の話を聞いていないダーはポンと手をうち、
「うむ、ワシもひとつ浮かんだわい」
「えー聞きたくなーい」と耳をふさぐエリス。
「どうせ聞かされるんだから、さっさと言ってください」
溜息まじりにエクセが言った。
もはやあきらめの極致といった顔だ。
「うむ、『痩せガエル、負けるなダーここにあり』というのはどうじゃ」
なんのてらいもなく真面目な顔でダーはいった。
一同そろってこう返した。
「「「「ちがう! それは全然ちがう!」」」
バカダンジョンはつづく・・・→




