コールトのお店
・ラッシュ: 黒髪の戦士。主につっこみ役。
・フロウ: 金髪の魔法戦士。美少年。
・ダー: ドワーフの戦士。白髭で基本ボケ役。
・エクセ: エルフの魔法使い。常識人。
・アビー: ダークエルフの盗賊。褐色の腹筋美女。
・エリス: 人間の女僧侶。かなりの天然。
「あれ、どこへ行くんですダー、4Fの階段の位置はそっちじゃありませんよ」
怪訝そうにエクセが声をかける。
マップ片手にパーティーを先導するエクセから離れ、ダーが別方向へ向かいはじめたのだ。
「いや、せっかく3階に来たんじゃ、買い物をしておこうと思ってな」
「ああ、そういうわけですか」
その一言で、エクセは理解したようだった。
一行は3Fの一角にある南西の部屋へとむかった。
モンスターの侵入を阻む鉄製の扉には『とにかく便利・安い・コールトのお店』とべたべたと張り紙がしてある。
「なにが安いじゃ、ぼったくり商店め」
ダーが悪態をつきつつ、ガラッと店の扉を開いた。
「おいおい・・・随分なごあいさつだなこんにちは」
頑丈そうな石造りの部屋の真ん中に、木製のカウンターが設置されている。
その奥の高い椅子に座っているノーム。これが店の主コールトだ。
「いえいえーこちらこそこんにちはですー」とエリス。
「ウム、こんにちはじゃな」とダー。
「悪態の直後、なんで急に丁寧なんだよ」とラッシュ。
「あいさつだけは大事じゃ」
「あいさつだけか!」
地下3Fは中級者はスルーする階層だが、初心者が狩りをするには丁度いいレベルの階だ。
狩りをして篭っているうち、アイテムの残量が心もとなくなり、地上に戻りたくなる初心者が出てくるのもこのあたりだ。
その冒険者心理を商売人根性でかぎつけ、すかさず店を出しているのが、このノームのコールトなのだ。
「で、わざわざ悪態をつきにきたわけじゃなかろう・・・何が入用だ?」
「アイテムの鑑定と買取と水と食料と」
「ふむ、ほかは・・・?」メモを取りつつコルト。
「酒と男と泪と女じゃ」
「あるかっ!・・・そんな注文がっ!」
「まあ今のは羽毛より軽い冗談じゃ。で、合計どれくらいじゃ?」
「全部で・・・3ギンカ払ってくれ」
「うむ、そんな金はない」
胸を張って威風堂々とダーは応える。
「ふざけるなっ!・・・鑑定までしているんだからその代金は払え!」
「その鑑定した商品を売ると言っとるのに、なぜ足がでるんじゃ!」
「この剣と盾は・・・なんの細工もないオンボロだからだっ!」
「それはお前の運がなかっただけじゃ。金は払わんの一点張りじゃ」
「相変わらずの理不尽さですー」とエリス。
「さすがキングオブ恥知らずの名にふさわしい男だ」とラッシュ。
ダーの性格を知り尽くしているチームメンバーも、これにはドン引きだ。
「じゃあもう水も食料も売らんっ! ・・・出てけっ!」
「ちょっと待て。ここでワシらに貸しを作っておくのも賢明じゃろ?」
「そんなボランティアをして私にどういうメリットがある・・・?」
「ワシがコールトは優しい男じゃとここにいる冒険者たちに宣伝してあげようじゃないか。困ってる人を見過ごせない男、それがコールトじゃと」
「うーむ・・・」
「さらに値引きしてくれる男、コールト。タダで鑑定してくれる男、コールト。金も貸してくれる男、それがコールトじゃと」
「なるほど・・・お前がなにを売りにきたか今わかった・・・」
ガタッと椅子から立ち上がり、コールトは壁にかかっていた棍棒を手に取った。
「喧嘩を売りに来たんだなっ!・・・買ってやるっ!」
ダーは不敵な笑みを浮かべて、こう言った。
「よーし売ってやろう! 3ギンカでな!」
バカダンジョンはつづく・・・→