怪談
・ラッシュ: 黒髪の戦士。主につっこみ役。
・フロウ: 金髪の魔法戦士。美少年。
・ダー: ドワーフの戦士。白髭で基本ボケ役。
・エクセ: エルフの魔法使い。常識人。
・アビー: ダークエルフの盗賊。褐色の腹筋美女。
・エリス: 人間の女僧侶。かなりの天然。
ついに一行は、地下3階へと降りる階段に到着した。
「つかれたー」と一息ついたのもつかの間のこと。
現在は黙々と階段を下っているところである。
「かいだんってあれですよねー。お化けの出るお話ー」
沈黙に耐えかねたか、エリスが口を開く。
「それは怪談だな」とラッシュ。
「そもそもさっき動く骸骨と闘ってたのに怪談もなにも・・・」
「でも暑いときは怪談話がいいというじゃないですかー」
「いやそれは季節の問題であってダンジョン内で暑いも寒いも」
「いいじゃないですかー。やりましょうよー、怪談話ー」
エリスは妙に乗り気だ。こういうのが好きな性格なのかもしれない。
「アビーは何かないですかー? 怖い話ー」
「怖い話ねえ・・・」
話を振られ、しばらく考え込んでたアビーだったが、
「昔、アタシは一人で売り出そうと 躍起になっている青二才だった――」
「なにか語り始めたわい」とダー。
「どっかで聞いた話だな・・・」
「盗みにドジっちまったアタシは敵に囲まれ、一か八か崖から飛び降りた」
アビーは当時のことを思い返すように目を閉じ、
「崖の凸凹を空中で蹴りつつ、うまくクッションにして降りようとしたんだけどさ。無茶だったねえ。着地に失敗して、足の靭帯が切れるブチブチブチーってすごい音が聞こえてさ――」
「いやーーーー!!!!」
エリスは頭をかかえてうずくまった。
「それは痛い話ーー!! 怖い話じゃないーー!!」
「そうか、そりゃ悪かったな」
ぶるぶる震えているエリスをアビーがなだめる。
「怪談ならおれも一つ知ってるぜ」とラッシュ。
「ほう、意外ですね」とエクセ。
「その昔、俺は一人で売り出そうと――」
「いえ、そのくだりはいりませんから」
「―――まあ昔、おれとフロウが同郷だったのは知ってると思うが、俺達が住んでいた村に怪物の集団が現れてさ」
「あったねえ・・・」とフロウ。
「モンスターの力は圧倒的で、とても村人なんかが敵う相手じゃない。俺達も逃げ回ったけど、追い詰められて、さすがにもうだめだと思ったときだった」
「何が起こったのじゃ?」とダー。
「そこに颯爽と旅の戦士が現れてさ、それが凄まじい強さで。もうバッタバッタと怪物の集団をなぎたおし」
「ふむふむ」
「そしてお礼を差し出そうとするおれたち村民に、名乗るほどの者でもないと、マントをひるがえして去っていったその戦士のかっこよさ・・・あれこそ男の中の男だと俺は子供心に・・・」
「ちょっと待て」
とアビーが制止した。
そしてスーっと大きく息を吸うと、叫んだ。
「それは怪談じゃなく、快男児だぁーーーッ!!」
バカダンジョンはつづく・・・・→