「残酷な動悸」(2)
キッチン」に入るとメイドたちがラキスに気付き頭を下げる。
今いるメイドたちは1年おき変わっていたメイドたちではなく
最近はずっとこのメイドたちがラキスの世話をしてくれていたので
メイドたちとラキスはかなり仲が良くなっていた。
このメイドたちはみな年が高く、怯えた表情もラキスには向けない。
ラキスはメイドたちが「ラキス様!私たちがやりますから、どうか火のそばから離れてください!」と言われながらも「大丈夫大丈夫。みんなの分も作ってあげるから。」と年の高いのメイドたちに紅茶を配りながらさりげなくウェルの
部屋へ着く。
「紅茶を持ってきましたよ。」
そういうとドアを開け中に入る。すると落ち込んだ表情を
したまま、大事そうにそして悲しそうに自分の手帳を見つめながら
眼鏡を外し泣いて椅子に座っているウェルの姿がそこにはあった。
その姿を見たラキスは急いでウェルに近づき呼びかける。
「大丈夫ですか?ウェルさん!こ、紅茶持ってきましたよ。ほら飲んでください。
紅茶と言われましたが種類は言っていなかったので体と心が安らぐ紅茶を持ってきましたから。」
ウェルはゆっくり頭を上げるとラキス頬や髪を撫でながら、
涙は流したままだが今まで見せたことがないほど優しい表情で
「ありがと、、、ラキス君。。」
と静かに言った。それからじっとラキスの顔を懐かしむように見つめる。
ラキスはウェルと出会ってから約4年ほど一緒にいたがこんなに
優しい表情は初めて見たので少し驚いた。それでウェルはなかなか
美人なので見つめられるのが恥ずかしくなり耳を赤くする。
それに気づいたウェルは少し笑うと、また撫でるまるで母親のように。。。
それから覚悟を決めたような表情をしながら笑って手帳をラキスに差し出した。
「これは?」
ラキスは何故渡されたのか分からず、これがウェルにとって大切なものだと知っていたので悩んでいると。
「ラキス君。貴方はまだ若いけど真実が知りたいんだったら、この手帳を
自分の部屋に戻ったら中身を見て。そしてその《《ルール》》に従いながら
上手く使いなさい。貴方が真実を知って、それでも望む未来が欲しいのであれば。
これは私とラキス君の約束ね。」
そしてウェルは言い終えるとドアを開け、ラキスの頬に少しキスをしながら
近付き、手帳の一番最後のページを破いた後、ラキスを部屋から追い出す。
「え?」
ドアが閉まった直後、いくら呼び掛けてもウェルが返事しないので
仕方なく自分の部屋に帰るといわれた通り手帳を開きそして読み始める。
表紙にはウェル・サレンダーと書かれていた恐らく
メイドの本名だろうだが中を見てみると全部白紙でなんなんだと思いながら
最後のページの1ページ後ろまでいくと
突然ルールと書かれた文字の下に5つのルールが書かれていた。
それを見た直後ラキスはドアを開け、急いでウェルの部屋へ行き開けると。。
『
「ルール」
1・この本は所有者の運命や相手の心が手帳に記され
知ることができる手帳である。
2・この本は所有者以外が見ても何も書いてないページしか映らない。
3・この本の所有者は2人以上存在しない。
4・この本所有者が死んだ場合、次に読んだものが所有者になる。
5・この本の所有者は他の人物に奪われたまま
最後のページを破られた場合2分後に
《《死ぬ》》。
「うわあああああぁぁっぁあぁぁぁぁ!」
そういって、わけも理由もわからないまま死んでいったウェルの死体を
前に大声で泣きながらうなだれていると、メイドや執事が集まる。
ラキス様が大声で泣いていると誰かが国王に行ったのか
滅多に外に出ない国王や王妃がラキスのそばへ駆け寄る。
目の前の光景に目もくれず。。
「ど、どうしたんだいラキスよ?」(どうしたんだ?)
「どうしたの?ラキスちゃん」(ああぁやっぱり世界一かわいいわね)
「へ?」
目の前にいる人たちの思いや感情が脳の中に直接入ってくるように飛び込んでくる。
目の前の死体にやっと二人は気付くと余り驚かず悟ったように笑顔でラキスに
肩を掴む。
「そんなにあのメイドを気に入っていたのか。。。よし分かった!新しいメイドを
おまえにやろう。それもよりいいメイドだ!どうだ?うれしいだろう?」
「はえ?」王は不気味なほど優しい笑顔で訳のわからないことを言い出す。
ラキスは同じ笑顔なのにこんなにも残酷な笑顔があるだろうかと
更に困惑する。
その意見を聞いた王妃は手を合わせると同じように笑顔でラキスの顔を
覗き込む。
「そうね、それがいいわ新しいのを用意しましょう!ほらメイドそこにいる
汚い物を片付けなさい。」そういわれたのは専属のメイドのゼメルだった
ゼメルはいつも道理優しく笑う。ラキスはその笑顔を見て安心した。。。
のは束の間でポケットからごみ袋を出すと近くにいるメイド三人と
ウェルの死体を詰め込み始めた。
「あら、入らないわね。。。_____ちゃいましょうか。」
聞き取れなかったがすっと後ろにいたメイドがラキスの目を塞ぐ。
直後、ガサガサとした音が流れた後にブチブチといった何かがねじれながら
ちぎれている音が耳に入ってくると右手に粘着質の液体が
触れる。においを嗅ぐと鉄が腐ったような匂いがした。。。
見えてはいないがこんなの誰でも想像つくじゃないかと。
何もかも常識から外れた現実を泣きながら受け入れ
ある計画が脳裏に浮かぶいや、聞こえるといった方がいいだろうか
精神が不安定な中でもラキスはこれは何としてでも
ウェルのためにやりきろうと覚悟を決めた。
それから数分した後にようやく塞がれていた目が自由になると
何もなかったように綺麗に何もなかった。
自分の部屋に戻されるとラキスは手帳に目を落とす。
その中身は最大1200ページにもよる内容でこの国について
書かれていた。見るだけで吐き気がするほど残酷な内容が記されていて
今まで信用していたものがほぼすべて崩壊し。
今までのラキスという人格を壊すには十分すぎるほどだった。。。




