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いつかはやってくる因果応報と言う物

偶然その場にいた人には不幸としか言いようがないだろう。

雑草を抜くように木を抜いて放り投げていたのを目の前で見せられた流民の子供たち、大きな音に慌てて戻ってきた女達、そして次々に山が切り開かれていくのを遠くから見ていて慌てて戻ってきた男達は朝からすっかりと別の姿になってしまっていた小さな村に呆然としていた。


「おや?もう狩りは終わったのかい」


久々のルゥ姉の登場に一部の男達は「ひぃ!」と悲鳴を上げるあたりここに来るまでに何をやったのか少し話を聞きたい。


「そうそう。

 せっかく皆さんお揃いになったので紹介をしておきたいと思います。

 こちらは紅緋の翼のギルドマスター、ガーネット様です。

 そしてこちらの娘が私たちグレゴール家の使用人のカヤになります。

 リーナ、貴方のお仕事はカヤについて学びなさい」

「カヤです。

 ルーティア様とディック様についてまいりました」


ちょこんと使用人の礼を取り


「もしルーティア様とディック様に何かあれば不詳カヤ。

 地獄の底まで成敗にまいりましょう」

「そんな物騒な事お願いしないからもう少しマイルドでお願いします」


何やら不穏な話になりかけていたのでそこまでならないようにとストップをかけておく。

何処か不満そうに俺を見るもあまり血なまぐさい真似はしないでとお願いしておこう。

ほら、ここ城壁の中と違って血なまぐさい臭いすると魔物が来るからね?

何て説得を試みようと思うもその前にルゥ姉が居て何かあったと言う事が想像できなくて思わず空を見上げてしまう。

どうしたんだ?なんて、何とか復活した様子のエンバーがやってきて


「そう言えばお前の家あの女本当に持って来たぞ?」

「うん。今カヤから聞いた所。

 ちなみに設置もして来たらしいんだけど……」

「家はもちろん納屋も敷地内全部の物を持って来たんだ。

 クロームなんか目を見開いたまま意識飛ばしてたぞ」

「ああ、うん。

 今更そんな事で驚いてらんないよ」


ほら、非常識が服着て歩いてるような人だからね。


見晴らしの良くなった広場の先に場違いなまでの煉瓦造りの立派なもと宿屋が鎮座しているのを見晴らしがよくなった広場からぼんやりとクレイと三人で眺める合間にもカヤはリーナを連れて家へと入って行く。

取り残された俺達は元の手作りハウスへと戻りテーブルに着く。

リーナが片づけてしまった食器を取り出してお茶を入れ、エンバーが取り出した軽食を摘まみながら少し暗い顔をし


「あんまり聞かせたくない話だけどイングリットだ」


少し視線を反らせながらエンバーは重そうに口を開け


「あいつ、この家にお前の私物を盗もうとしてやってきたらしいんだけど、ルーティアの魔法だな。

 あれが発動してやばい事になった」


イングリットと言う名前を聞いてクレイの頬がひくりと恐怖に歪むのが一瞬見えた。

今まで気丈な振りをしていたけど、不意打ちで見せたこの顔がきっとクレイのイングリットへの感情だろう。

気付かないように視線を反らせたままのエンバーを眺めていれば


「あいつ、もう王女として復帰できんぞ。

 一生ベットの上だ」


震えて理解できない様子のクレイに代って俺が口を開く。


「ベットって、何があったんだ?」 


聞くもエンバーは顔を反らせ


「さっきも言ったようにお前の、私物、たとえば討伐の報奨だ。

 自分の得る報酬の金額の違いにあんなにたくさんもらうなら少しぐらい分けてもらっても構わないでしょうって理由であの家に入ろうとしたけどルーティアの魔法で邪な考えのあいつは家に入れなかったらしくってな。 

 家をぶっ壊しても入ろうとしたらしくってよ……」


何だか言いにくそうな話に黙って耳を傾ければ


「ルーティアの魔法だよな。

 魔法が術者に返ってくるって奴だ。

 よりにもよってあいつ風の魔法を使いやがって……

 両足切断、そして右腕を肘から下バッサリとだ。

 さらにお仲間の火の魔法も当たって顔面がただれて、あの髪も……燃えた」


さすがにその話を聞き終わる頃には俺もクレイも言葉を失くしてエンバーの次の言葉を待っていた。

冗談でした。

そんなオチを待つかのようにじっと次の言葉を待ち続けるも


「俺達がその話を聞いて王宮に言った時はベットの上から物と言う物を投げつけられて、あれの母親にも何とかならないかと言われたけど、既に魔法によって傷口の塞がった場所と、ご丁寧に宝石じゃあるまいし布を敷いた台座の上に置かれて干からびはじめた腕を繋げる事なんてルーティア所がガーネットですら無理な状態で、ずいぶんルーティアに酷く当たられていたけど『人の家に盗みに入ろうとした挙句に入れなかったからと街中で魔法をぶっ放した相手に掛ける温情がどこにあるのか私が聞いてもよろしいでしょうか?』だ。

 最後は女王が出てきて事のいきさつを総て説明すればイングリットを王席から除籍させて、母親と共に離宮で隔離だ。

 一緒に居たお仲間も既に何人か死んでるし、生き残った奴は心を患った」


一息に続けた言葉は想像以上の話しが続いており


「イングリットは今では暴れて手が付けれないからガーネットに魔力を閉ざしてもらい、鉄格子の付いた特別仕様の部屋にいる。

 それでだ。

 クレイ、お前の王席が復活した。早急に戻って来いって女王がガーネットに依頼を出した」


エンバーが言いたかったのは最後の一言だったのだろう。

だけど、納得してもらうには総てを話すしかなくって……


幾ら嫌な奴だとは言えどもこのような結果は決して誰もが望んだ事ではないと言うようにエンバーは視線を誰とも合わせられないでいた。


「一応ルーティアが本人の意志を大切にするようにって女王を説得させたが……

 お前の父親は新たに妻を何人か娶った。

 正直今のお前を俺は城に返したくない」


乱痴気騒ぎにただでさえ病んでるクレイの母親がさらに病むのは見なくても判る状況。

きっと戻ればクレイは城から出してもらえず、母親に興味を失くした父親への嫉妬は暴力となってクレイに降りかかるのも目に見えていて。


それを一番理解してるだろうクレイは少し考えた後


「一度城に戻るよ。

 だけど勘違いしないで。

 改めて王席を放棄するための手続きに戻るだけだ。

 俺は、この旅を、ディックの旅を最後まで見ていたいんだ。

 最悪失敗になって終わる事になっても、国を追われた王位継承者の行く末を見守りたいんだ。

 だってそうだろ?

 どう考えてもこれは他人事じゃない。

 卑怯と言ってもいいよ。

 ディックが進んでいる道はもう少しして俺が歩まなくちゃいけない道だ。

 俺がいくら王席や王位継承権を放棄しても流れる血から逃れられない運命だ」


誰とも目を合わせずに淡々と言うも、組んでる指先は真っ白になって皮膚に食い込んでいるし、顔色もどこか悪い。

泣き出しそうなほどの恐怖を感じているようですぐにはそうかとは言えないが


「何を血迷った事を言っているのです。

 貴方は既に王位で繋がれた親子の縁を切り離しているのです。

 女王の戯言にも、子供を物としか見ない母親に顔を合わせる理由がどこの在るのです。

 そのあたりは既にセイジにクレイはもう独立した子供なので今更王族のままごとに付き合ういわれはないと言うように指示しています。

 貴方の帰る家は雌黄の剣のギルドハウスか、こちらに越してきたあの家です。

 王位継承権返上がそんな軽い意志でどうこう出来る物ではない事を女王に知らしめて御上げなさい」

「いや、あんたが継承権復帰とか言ってたんじゃないんだっけ?」


すかさずいつから話を聞いていたのか……多分最初から話を聞いていただろう音もなくやってきて派手なドアを開ける音を立てて現れたルゥ姉にすかさずつっこむ。

というか、この搭乗の仕方懐かしいなあとぼんやりと頭の片隅で懐かしがっていれば


「さっさと王剣なり祭壇なりを見つけ、居るかいないかわからない、きっといるはずの隠し子を何とか見つけて王都の王族を切り捨てましょう。

 これがこの国にとっての最善です。

 クーデターなんて別に珍しい事ではありません。

 それだけこの国が傾いている証拠。

 沈没船に乗るくらいなら1つ大きな賭けに乗る方が楽しいではありませんか」


ニヤリと不敵に笑うルゥ姉にそりゃあんたはそうかもしれないかもしれないけどさ……なんて口答えしてしまうも


「あたしもそっちの方が面白そうだねぇ。

 クーデターの成功。

 金貨一枚かけてあげるよ」


ガーネットまで悪乗りに参加してきた。


「おやおや、それでは皆さんクーデター成功になって賭けが成立しないではありませんか」

「なーに、王都に戻ればそれなりに成立するさ。

 なんせ両方に賭ける奴やら大穴狙いが居たりするだろうしね。

 むしろあたしの予想じゃ成功の方が大穴だと思うけどね」


くつくつと笑い、足の長さの揃ってないぐらぐらの椅子に座り


「折角だからあたしの知っている情報をすこし教えてやろう」


そう言ってどこからか一枚の羊皮紙を取出して机の上に広げる。


「これは砂漠になる以前のロンサールの地図だ。

 このバツ印が今でいうセーフティーポイントになる。

 あたしが想像するにはこの北のセーフティーポイントが怪しいと思ってる。

 なぜなら王都の北側は歴代の王族の墓地群があるんだ。

 クレイやエンバーなら知ってるだろ?

 前王の墓地を王都の北側に地下都市のような穴を掘って深い場所で遺体を埋葬するこの国の独自の埋葬の仕方だ。

 祭壇はこのどれかにあるとあたしは思ってる」


ニヤリと笑うガーネットに知ってるくせにもったいぶってんじゃねー!本物教えろと心の底から喚いて見せるもガーネットはニヤニヤと笑うだけで立ち上がってカヤ達の方で酒でも飲んでくると軽い足取りでドアまで進むも、ドアの前にいた一団を見て


「そう言えば少し前からハウオルティアの盗賊団がこのロンサールとの国境あたりに潜伏してるって言う話しだったよねぇ。

 なんでも家族風を装って数日滞在したのち人間関係を調べ上げて全員殺し、根こそぎ総て持ち去るって言うハウオルティアじゃ噂の盗賊団だ。

 見つからないと思ったらこんな所に居たんじゃ見つけられないわねぇ」


ちょっと聞いてないですよクロームさんと心の中から王都に向かって叫ぶもすでに届かず、そして甥っ子も知らないと言う顔にこの国のギルド使えねーなんておっかない集団の中に居た事を今更ながらにビビってしまう。

そんな俺達の隣でニヤニヤとした顔を隠す事もなくガーネットはその一団を見てパンと手を叩く。

何が起きたかわからないが、その途端地面がへっこみ、多分盗賊団(仮)の人達が全員そこに落ちていた。

慌ててどんなことになってるか見て見たが、いきなり落とし穴にはまりましたと言うように団子状態になっており


「このまま埋めてやるのが今まで殺された人からの願いかもしれないけど、せっかく使える労力だ。

 なかなか上手な隷属魔法が刻まれているが……

 せっかくだからあたしもいくつか追加してあげるわぁ」


何処かほんわりと光る指先で空に横線を一本引く。

これがロンサールの魔法かと感心しながら眺めるも人の隷属魔法の発動条件に追加ってできるのかと考えてみる。

うん。わからんなんて考えている俺をよそに


「なーに、二度と人口50人以上の人の集まりの場に入れないようにして、後この山から二度と出る事が出来ないって言うのを追加した位よ。

 だいじょーぶ。

 ここは自然がまだ豊かだし人が生きるにはこれぐらいで十分よ!

 あ、でもうっかり子供をたくさん産んじゃったりしないでね。

 この場で50人以上になっちゃったらここから離れた人達から戻って来れなくってこの山でさまよい続ける事になっちゃうから」


楽しそうに笑うガーネットの背中を俺達は黙って見つめる。

シアー以上のえぐい事を考える人がいるんだと。


「でも安心しなさい。

 砂漠化が進んでいるからここもあと何年かで何もなくなっちゃうでしょうから……

 山と言う定義が無くなればどこにでも行けるかもしれないし、山と言う定義が無くならなかったら砂漠で干からびちゃう事になっちゃうだけだから。

 どっちにしろあんた達が殺した人達から見たら……

 楽しい光景になるわねぇ」


薄ら寒さを覚える口調に俺達でさえ息をのむ。

ルゥ姉がガツンと一発でヤルタイプならガーネットはじわじわと時間をかけて恐怖を植え付けながら狂気を与え続けるタイプ。


「敵じゃなくってよかった……」

「それな」

「ほんとな」


じゃああとよろしくと言って酒を飲みにルゥ姉達の所へと向かうガーネットを見送り俺達も家へと戻り、エンバーがドアへと何やら術をかけているようだった。

因みに、初日にかけた魔法は今も生きているようで、目を凝らしてよく見ると薄っすらと描いた線をなぞるように魔法が発動しているのが見える。

二重対策って大切だよねと、今晩あたりこの村にいる人がこんな怖い人な事を踏まえて対策を強化する事にしようと思う。

たとえ、それよりも怖い人達がそこら辺をうろちょろしていてもだ。


「でもよ、こっちに家移してきてルーティアは一体どうするつもりなんだ?」


クレイの疑問にそれを聞くか?と心の中の俺がつっこむ。

ルゥ姉のやる事に俺達の理解が追いつく分けがない。

と言うか、家よりも大切な物を忘れているなと考えていてやっとその何かに思い当たる。


「シルバーはどうしたんだよ!!!」


ラン兄が駄目だと思っていても思わず抱っこしたくなるくらい可愛がっていた片翼の妖精が周囲に居ない。

ルゥ姉がシルバーだけ王都に置いてかれたとだけは考えれなく窓から真っ白なその姿を懸命に探す。

エンバーとクレイが一瞬キョトンとするもなんだかんだ家の中をパタパタと飛びまわっていた犬の存在を思い出すが未だその姿を見ていない事に気が付き、蒼白な顔の俺は慌てて家を飛び出し


「ガーネット!

 シルバー食べてないだろうなっ!!!」


飛び出して叫びながら走る俺の後ろに、俺同様それはあり得ると顔を真っ青にしてついて来る2人とともに、すっかりカヤに餌付けされて駄犬に成り下がってソファーで寝そべっているシルバーと対面して……


俺はすっかり存在を忘れていた事を口にはせず首に紐をつけて半径一エールの刑を処すことにした。









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