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歩く災厄と歩く非常識。普通は何所だ?!

明けましておめでとうございます。

今年も週一更新目指して頑張りたいと思います。

少し足りない睡眠時間だったが朝早く出立するルゥ姉達を無事見送る事ができた。

ヤックルとかいう角が空に向かってスクリューのような、刺さったらぜった危ない奴を標準装備したヤギにも似た奴が家の前の草を食べている光景に出くわしヤギ乳のチーズが食べれるなと何処か場違いな事を考えていたのは寝ぼけている証拠だろうか。

背中には馬具に似たようなものを既に設置してあって、すぐ隣にはルゥ姉に従う馬達が嫉妬する視線でヤックルを睨んでいた。

ルゥ姉は馬達の首筋を撫でながら


「山道を越えたら次は貴方たちの番ですからね。

 砂漠での活躍を期待してますよ」


なんて馬に言い聞かせて喜ばせているあたりほっといてもいいよなと割愛。


ヤックルに跨るエンバーと、ヤックルは初めてなのかクロームとルゥ姉は馬よりも低い馬上から行ってくると一言だけ言い残し、行ってらっしゃいませと頭を下げるリーナの返答を聞きながら颯爽と駆けて行くのを朝もやの中見送った。


「さて、じゃあ、私達はあいつらに簡単な食事の為にも働かせるか」


やれやれと言うように上から目線の言葉と同時に流民達の家を見下ろした。

流民達の家……

巨大にほられた落とし穴に木の枝で組まれた蓋に葉っぱを置かれただけの……家とは言えない家に視線は虚ろになる。

総勢17名の流民は恨めしそうに俺達を睨み上げ、どことなくすえた臭いに言いたい事は理解できる。


「いいかい?

 昨日話した通り貴方達には隷属の印が施されている。

 私達に暴力や暴言といった恐ろしいと言う感情に触れる物、反抗的な態度、私達の私物に損害を与える事を一切許さない。

 もし何かしようとしたらその隷属の印が発動しそれは身を切るような痛みが全身くまなく襲い掛かるだろう。

 私はルーティア程優しくないからね。

 簡単に殺して終わりなんてしてあげない。

 私はルーティアよりも几帳面なので今言った言葉よりも細かく設定させていただきました。

 貴方達は人の形をした家畜以下の存在です。

 何を思って隣国に逃げ込んだのか知りませんが、それ相応の立場があると言う事を学びなさい」


冷酷な視線が穴に向かって見下ろせば


「聖女なんてよく言ったな!」

「裏切り者の癖に!」

「私達を見放した癖にロンサールに取り入った分際で!」

「俺達の家を返せ!」

「この売女の悪女がっ!」


一斉の非難。

シアーは視線を反らせば


「うわああああ!!!」

「く、くる……苦しっ!!!」

「痛い!痛い!痛い!痛い!」

「ああああああ!!!!!!」

「ご、ごめんなさっ……許して!」

「お!お許しを!」

「たっ、助けてええええええ!!!」


全員が蹲り悲鳴を上げながらのた打ち回る。

それこそ苦しそうに身体を抱きかかえ、穴から出たいと言うようにもがき、涙を流して許しを請う様子にシアーはぽつりと一言。


「私の経験上、まだまだ躾が必要ね」


とても聖女様の言葉には思えなかったが、その辺は自己紹介も兼ねて自ら話をしてくれた。


「私だって純粋無垢な無知で愚かな年頃もあったのよ。

 領主からの推薦で王都の魔導学院で魔法を学び、紳士淑女としての学び舎でもあったから田舎者って馬鹿にされながらも必死に勉強したわ。

 どうあがいても『生まれ』って言う絶対に越えられない壁がいつかは超えられると信じていた頃サファイアと出会ったの。

 サファイアもあまり地位の高くないお家の娘だからってからかいの対象にあったけど、あんな性格でしょ?

 あっという間にそんな物を乗り越えて学院のヒエラルキーの頂点に立ってしまいました」


クレイと二人で聞いていたけど「ですよねー」と呟いてしまうのは仕方がないだろう。


「ましてや王子と公爵家長男を顎で使う所を見せられたら……

 誰も逆らう意志なんて削り取られたわ。

 私だって自分の目が信じられなかったもの。

 こう見えても全属性使えて高魔力保持者って言うふれこみだったからね。

 サファイアこそ風と火の二属性がメインでしたが別に使えないわけでもなく、それほど困ってるようにも見えなかったから、ただの同じクラスメイトって言うぐらいで取り分け仲が良かったわけではないの。

 だけど紳士淑女の学び舎と言うようにそれなりにお金が必要になる授業があってね、ドレス代に宝石代、化粧代。

 嫌がらせかって言うような授業内容に途方に暮れていた時、初めてサファイアから声をかけてもらったのです。

 『ないものはないので、持ち合わせている方から拝借しましょう』ってね。

 ハウゼルと共に連れて行かれた先はまさかの王宮!

 びっくりでしょ?!

 『王宮にお住いのお友達のお姉さまのお下がりをお借りしましょう。

  安心なさい。顔の広いハウゼルのお父様に間に入ってもらってお話してもらいましょう』

 なんて当たり前の顔でお願いしに行った時は王宮に住むお友達のお父様に向かって堂々と

 『学院の授業は見直しが必要ですね!

  授業で必要な物を学校が用意してないとは国の名を頂いている学院として笑い話にしかなりませんね!』

 あの時サファイアに連れていかれた面々はもう家に帰れないなんて思ったけど、その後すぐに授業内容の見直しが行われ、その年よりすぐに全員が学校から用意されたドレスを着用してのマナー講座へと変りました。

 上級貴族からは不満の声が出ましたが、卒業式で全員がダンスを披露するのですが、今までは個人でドレスを用意していましたが、学校の行事だからと意識を改めて学園で用意させた卒業用のドレスを纏いダンスを披露と言う……

 王族にすら意識改革をさせる根性の持ち主でした」


「ルゥ姉の性格ってそん時からの性格かよ!!!

「諦めよう。

 生まれ持った性格は死ぬまで直らないんだから」


あまりに不憫な学院時代を過ごしただろう聖女様からの瞳からは一筋の涙があふれており


「田舎の母がこの日の為にとドレスを用意するために陽が出る前から沈んだ後も休みなく働き続けたと言うのにあのドレスを纏えなかった事は今も伝える事が出来なくって……」


それは泣けるな、とクレイと共にそっと顔を背けるのは不憫すぎる学院時代の記憶に某だする彼女をもう見てもいられないからだろう。


「そんなわけで……私は卒業後は魔導師団に努める事になりましたが、何の配慮かサファイアのブレーキ係として行動する事が多く、聖女と崇め湛えられても出世街道からはじき出され、私と私の部下達はサファイアの部下とよく間違えられるようになり、私達もやけくそでサファイア式魔導兵団強化訓練に強制参加させてもらって……

 隊長まで上り詰めさせていただいたまではいいのですが、色物集団とみられるのは避けられなくてあれだけ学生時代の頃もてはやされた私は瞬く間にあまりかかわっちゃいけない人トップ5に名を継なれるようになり……」


「ルゥ姉にハウゼル兄さん、マルク兄さん、王子にシアーでちょうど五名か。

 やさぐれるのは仕方ないね」

「っていうかさ、ルーティアはうまーく世渡りしてたのに何でそばにいたはずのシアーがそんな目になってんだか」

「あのテンポについて行けるのはハウゼル達位よ!」

「その中にシアーが含まれているのに未だ気付いてないなんて……」

「私はただの部下であってあの仲間じゃないわー!」


うきー!

なんて妙齢の女性の叫び声じゃないだろうと思うも、穴の下では隷属の魔法の効果が切れたばかりの皆様が怯えに怯え、狭い穴なのに一塊になって俺達を見上げる始末。

やっぱりルゥ姉の知り合いだなんて妙な関心をしてしまうが今では俺もルゥ姉の弟設定。

同類と思われてるよなーなんて今も発狂してストレス解消しているシアーが収まるのをぼんやりと待つかと考えていれば


「シアー、所で今日は一体何する予定なのさ」


果敢にもクレイがシアーに声をかけてくれた。

そこで我に返ったとシアーが少し恥ずかしそうに頬を染めて


「とりあえず畑を作る為に開墾だね。

 ああ、こいつらをまず出さないと。

 男共は狩りにいっておいで。

 女共は私達と家づくりと開墾だよ」


言いながら口の中で何か唱えた呪文と共に穴が少し広がって階段の様な物が出来上がった。


「さあ、今日も一日モリモリ働こうか!」


別段流民と言うような扱いはしないものの、それでもたった一日でお互いの立場は恐ろしく変わったのだ。

シアーはリーナを背中に隠し、俺達はなんとなく剣を腰に佩いた。

それだけでびくりとあからさまな脅え方にこれは演技だろうかと思うも、男共は木で出来た剣や、植物のつたなどで出来た弓矢をシアーから受け取り森の中へと狩りに出かけて行った。

これで狩りが出来るのか?と思うも今までしてきたのなら問題はないだろうと納得しておくことにする。

残されたのは女子供。

特にリーナを苛めて遊んでいたのだろう子供はあからさまに良い服を身に纏うリーナに物凄い視線で睨みつけていたが、すぐに隷属の印が子供達に痛みを与えて悶えはじめる姿でシアーに母親が謝り倒す。


「そうそう、隷属の印は魔法封じでもあるから」


下手な事を考えると痛い思いをするよ、と言って歩き出した背中を眺めながら本当に聖女なんて呼ばれたのかと思えば、心の中の俺も盛大に頷いていた。




畑作りをすると言っていたシアーはまず地の魔法で大地を柔らかく解し始めた。


「さて、子供達は草と石、木の枝、その他の骨とか変な物をゴミ置き場に集めるんだ。

 女達は私と一緒に家の補修をするよ!

 クレイは子供達の監視!ディックはリーナと一緒に食事の準備だ」


それだけを言い残してシアーは大人の女性達を連れて作りかけの家へと向かうのだった。

クレイも剣を取り出して子供達に仕事に取り掛かるように威圧的に声をかける中、俺はリーナに案内されて家の中の台所へと足を向けた。


田舎の台所みたいな土間があって煉瓦造りの竃みたいなものがあり、大きな水瓶と水槽みたいな洗い場に土間の真ん中に大きなアテーブルが置いてあった。

テーブルに置いてあった厚手の鍋に戸棚から取り出した雑穀のようなものを水ですすいで鍋に入れる。

おかゆでも作るのかと言うぐらいの水の量を入れ、それを竃に置いて薪に器用に魔法で火をつける。


「手伝おうか?」

「慣れてるから大丈夫……」


少し怯えた声と俺に向けない視線に居心地は悪い。


「だったら、瓶の水を入れ替えようか?」

「それはもうやったから大丈夫……」


さすが未亡人。

既に朝の支度は万全なようだ。


「だったら食器の準備をしようか?」

「あの人達のだったら机の下の籠にまとめて入れてある……」


机の下から出せば人数分だろう。

木で出来たお椀の様な物と木で出来たスプーンが重なり合って並んでいた。

他の籠にはコップもちゃんとあり、一通りそろっているのを確認するわずかな合間にもリーナはくるくると動く。

初めて見る葉っぱを刻んだり、木の実を細かく砕いて鍋に入れて行く。

そして印象的だったのが一欠けらに肉を細かく裂いて沸騰したのを確認して鍋に入れて行く。

味付けは何かは知らないが、そこでもう手を加えるのを止めて使ったナイフなどの洗い物を始めていた。

次には家の外にある机を綺麗にしてコップやお椀、スプーンなどを並べて行く。

さすがにこれは手伝えたから率先して手伝わせてもらったが、ここまでの所要時間約一時間。

どろどろにとろけた雑穀粥を器によそってコップに水を注ぐのだった。

それからすぐに木槌で木の板をトントンと叩けばすぐに子供と女の人が集まって来た。


「ご飯できました」


リーナはそれだけを言って自分の分は家の中に持っていってしまった。

どうしたと思うもやってきたシアーの何とも言えない顔になんとなく理解。

目の前には親子と友人で楽しくおしゃべりする輪があり、その中に入れてもらえないリーナは文字通りはじき出されてしまったわけだ。

家の外に置かれたテーブルで一緒に食事をさせてもらったが、このどろどろのおかゆは七草粥か?と塩味すら何もしないそれをクレイと二人で顔を顰めながら一口だけ食べただけで食を進める事が出来なかったのだ。

思わず二人で顔を見合わせてしまうが、周囲は団欒と言ったように暖かな食事を楽しんで食べる光景にシアーに説明を求める。


「都会育ちのあんた達には理解できないかもしれないけど、これが田舎暮らしの一般的な食事なんだよ。

 塩何て貴重で滅多に使えないし、パン何て夢のような食べ物だ。

 野鳥や野生動物なんかは田舎の方が手に入れやすいかもしれないが、それも生活の為のお金に変るとなると滅多に口に入れる事が出来ない。

 下手な事考えて甘やかすと取り返しのつかない事になるから、食事はリーナに任せるように。

 何かある時は上手くやりな」


昨晩の食事の事を言ってるのだろう。

どろどろとした水っぽい粥を子供達は舐めるように食べ、物足りない食卓から離れたくないと言うようにわずかな水をちびちびと飲んでだらだらとしている光景に、それを綺麗に食べたシアーは立ち上がり


「休憩はここまでだ!

 すぐに仕事に戻るんだ!」


その言葉を合図に気だるげな流民達は重い足取りで仕事に戻っていく。

時々不埒な事を考えたようで数人の子供が地面に倒れ込んで苦しんでいるのが見えたが、シアーが近づけばその子供を残して他の子供達は散り散りに去って行く。

だが、逃げようとした足はすぐに止まり、ぱたりと倒れ込んでもがき苦しんでいた。


「言っただろ?

 仕事に戻れって。

 食料が少ないんだ。子供が遊ぶ余裕もないのをいい加減に理解しろ」


不安げに母親達が見守る方へとシアーは視線を向ける。


「お前達もだ!

 私は魔物からこの集落を守る約束をしたのだからお前達は与えられた仕事をする約束を果たせ!

 少なくとも男共は狩りをしてわずかな食料を持ってきている!

 ここを預かる女子供はおしゃべりして遊ぶ時間はないはずだ!」


凛としたシアーの声に誰もが不満を浮かべるも、既に交わされた約束に従うように家づくりを再開する。

不満だらけのこの空気に俺は大丈夫か心配してしまうが


「それもこれも家が出来て屋根と壁に守られれば少しは落ち着くさ」


あまり裕福でなかったと聞いている育ちのシアーはぽつりとつぶやく。

ひょっとしてこれは彼女の生い立ちに似た物があるのかと勘ぐってしまうが、シアーも家づくりに向かってしまえばその事も聞けないし、聞くつもりもない。

ルゥ姉が居ないとは言え、こんなにも心細いと感じてしまうのはあまりにこの環境が不安定だからだろうかと、食器を片づける一向に距離の縮まらないリーナの手伝いをしながら、彼女の心が少しでも開いてくれるように当たり障りもない言葉をかけ続けるのであった。




それから7日が過ぎて……




「呆れるねぇ。

 話に聞いていた通り流民が住み着いてるよ」

「皆さんお久しぶりです。

 開拓作業があまり捗ってないようですが、お元気そうで何よりです」

「クレイ様、ディック様お久しぶりでございます。

 ルーティア様よりお屋敷をこちらに移すとお聞きしまして、不詳ながらカヤは新しいご主人様を求めるより皆様に付き添いたいとこちらにご同行させていただきました」

「お、おうっぷ……

 水……貰えるか……」


豪快なドレスを身に纏い、背中にその名の通りの髪を豊かに広げるガーネットと、ヤックルに乗ってあまり疲れた様子のないルーティア。

何故かガーネットの片腕に座るカヤと反対側に俵抱きをされてやって来たエンバーは顔を真っ青にして四つん這いになりながらちょうど穴が掘っあったその中に向かって豪快に空っぽの胃の物を吐き出そうとしていた。

エンバーにとってこの地方は完全に鬼門だなと背中をさすりながら、今日この中で流民の人達寝るんだけどなーなんて考えながらも口には出さなかった。


「それにしても随分早い帰還じゃないか。

 私の予定では後2、3日かかるはずだと思ってたんだけど」


苦笑するシアーに


「クロームから流民の事を始めいろいろ話を聞いてね、一度どんなもんかこの目で見ておきたかったのさ」

「彼らの処分を含めてどうしたらいいかと相談したのですが、その前に私達がこちらに拠点を移す話をしていたので、なら現場を見て見ようと……ガーネットの噂の脚力を拝見する事になりました」


そっと目を反らして肩をフルフルと震わせているあたり顔面と腹筋の筋肉総出で込み上げる爆笑を何とか抑えつけているのだろう姿に何があったか聞いてみたいのは俺だけだろうか?


「話では聞いていたけど、まさか本当に砂漠を走って横断とか、なんか走りやすいとはいえ山道を馬と同じ速度で駆け抜けるとか、ヤックルと一緒に飛び跳ねながら崖を降りるなんて、実際見てても自分の目を疑うもの!

 それにルーティア様の魔力空間が大きいとは理解してましたが、まさか家一軒すっぽりと飲み込んでこちらに持ってくるなんてどこから笑えばいいのかほんと判らないもの!」


「歩く非常識が二人も居たか……」

「ディック、何で冷静に達観できるの?!」

「慣れろ」


クレイのこれもっと突っ込む所でしょ?!と言いたげな視線から逃れるように視線を外す。


「とりあえず家はどのあたりに設置しましょうか?」

「ああ、この辺りからすこしだけ離れるが眺めのいい場所がある。

 そちらにしようか?」

「あら?それは素敵ね」

「じゃあ一緒に下見に行こうか?

 地面平らにしないといけないからね」

「ふふふ、器用な友人を持って私は幸せですね」

「なーに、こんな事も出来ないのかって言う昔鬼上司がいたからね。

 これぐらいの器用さなんて器用の内に入らないさ」

「それはそれは、上司に感謝しなくては、ですね」


何やら物騒になって行く会話を黙って聞きながら二人を見送るのは仕方がないだろう。


「所でクレイ、流民とやらはこれだけかい?」


目の前にいる子供や女達は場違いなドレス姿のガーネットに完全にビビッて仕事をする手が完全に止まっている。


「今男達が森で狩りをしているはずだ」

「そうかい。

 所で流民達はこのロンサールの地で何をしているんだい?」

「女達は自分達の住む小屋作りをしていて、子供達は開墾と言う肩書」

「そんでこんなちまちまとした事をしてるのかい?

 一体何年かかるって言う話だよ」


森を切り開いて王の剣を探そうと言うのだろうが、確かにこの調子ではいつになる事やらと考えてしまう。と言うか、本当に見つかるのかとさえ考えてしまえばガーネットは側にあった木を掴み、よいしょと言う小さな掛け声と共に木を引っこ抜いてしまった。


幾つもの声にならない絶叫が山々の谷間に響き渡った。

人は本当に驚くと声が出ない物らしい。

それは俺もクレイも、常日頃一緒に行動しているはずのエンバーでさえもそうなのだから、目の前の光景は今見ている物を疑わなくてはいけないと言う事だろう。


なんせ、雑草のように木を引っこ抜いては隅っこにポイと捨てて、また引っこ抜いては捨ててを繰り返すガーネットを眺めながら不意に理解してしまう。


歩く災厄とはよくいった物だと。


ほんの数分の後にシアーとルゥ姉は新しい拠点の場所の素晴らしさを俺達に伝えるべく帰って来たのだが、それよりも先に見事な空地へと変わり果てていた村の広場の様子をあえて何も言わなかった当たり、現実逃避に徹してるんだろう。




俺も少しはその神経の太さを見習う事にしよう……




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