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慟哭にも似た剣舞

ブックマークありがとうございます。

週一ペースですがよければお付き合いください。

ガーネットと別れて俺はしこたまお菓子を買った。

もとい。

この国でお菓子なんてあまり売ってない為にその素材を買ったのだが、何故かカヤとエンバーとクレイも釘付けのお菓子作りを披露する事になった。

取り合えず適当に卵と牛乳と砂糖を混ぜた物を蒸したプディングを作って三人を大人しくしている間にナッツを砕くようにバットに準備したり、ドライフルーツを微塵切りにするようにバットに準備したり、チョコレートを見つけたので大量に買っておき一度溶かして使いたいからとバットに準備をしておいたり。

ほら、この世界カカオ99%みたいなやつだからちゃんとミルクと砂糖を入れないと口の中がとんでもない事になるしね。

ちなみにチョコあるじゃんと喜べばこの国では誰もが薬なんて使うのか?と言う顔をされたが、まあ異文化には何事も躊躇いが付きまとう物だと無視をしていた。

この世界のチョコレート菓子あまりおいしくないって言う欠点があるからね。

そう思うとランと初めて会った時に食べた激甘チョコレートケーキはかなりましな物だと今頃気付いた。

ばあちゃん以外から貰った事ないけどユキトの世界ではチョコレートの祭典なんて言う日があるぐらい素晴らしいチョコ菓子が女性達の心を鷲掴みする日も在ったりするが、そんな上等な物田舎過ぎて食べた事もなければ見た事もない伝説の物だから俺は知らないんだけどね。

なんか涙が出てきた……

そんな俺に何かを察してか目の前に置かれたバットを引き寄せて黙って細かく砕いたり切ったり削ったりしてくれた。

その間俺はひたすら小麦粉と砂糖とたっぷりのバターに卵を一個入れて混ぜる。

レシピはばあちゃんが2:1:1とか言ってたのを覚えていたからありがたい事に計りもあったので分量はたぶん大丈夫だ。

というか、小麦粉を袋売りしかしてくれなくて残りをどうしようと考えるもカヤがあっという間ですよとにこやかな笑顔だった為信じておくことにする。

1キロの小売りしか知らなかったために15キロぐらいかな?そんな纏め売り虫が湧くからやめてよと心の中で文句を言ってしまうも、唐辛子を幾つか小麦の袋に入れてるのを見た。

やっぱり生活の知恵って異世界でも共通なのねと感心しながら煉瓦造りのオーブンの中に入れて行く。

ちなみにカヤが魔法でオーブンを温めておいてくれていた。

フライパンで焼こうとしたけど、この際だからとオーブンの使い方を教えてもらった。

最初に薪などでオーブンを温めておいて、温まったら灰や炭を取り除き生地を並べて行くと言った余熱を余す事無く使うものらしい。

試にとクッキーの生地を入れたらわずか数分で焼き上がりみんなで早速試食。


「うめー!焼きたてのクッキーって美味いな!」

「美味しいです!特にトロット溶けたチョコレートを混ぜた物がまた!」

「俺はナッツを入れたのが良いな。このザクザクって言う食感旨すぎるだろ!」

「と言うか贅沢だよな。まだ窯の中熱いからなんか適当に飯でも作りだめするか」

「でしたら準備する間パンを焼かせてください!」


カヤが何かやってると思ったらどうやら俺達の居ぬ間にパン生地をこねていたようだ。


少しだけ生地を分けてもらいこの場はカヤの城だなと感心しながらもどこか楽しそうな様子を眺めていれば次々とパンを焼く姿に感心さえしてしまう。

まだまだ使い勝手を掴んでいる途中なので焦げ付いたりしているものの、試食として食べさせてもらった物は小麦の香りが口の中で広がる美味しいパンで、バターなんかつけずとも無言でむしゃむしゃと食べれてしまう物だった。

この子いい嫁さんになれるよと感心する中貰った生地を薄くのばして広げて行く。

何作ってるんだと言いたげな面々をよそにカットした野菜やチーズ、サッシュなどを並べてオーブンに入れて待つ事数分。

チーズのとろけ具合やパン生地の為に耳がかなりふっくらしてしまったその様子を眺めながら取り出せば久しぶりのご対面。


「石窯と言ったらピザだろ!」


そんな主張をする合間にカヤが俺を無視して鍋に入れた鶏肉をオーブンに入れていた。

勿論食欲に忠実なクレイもエンバーもピザを無視して鶏肉の様子が気になって仕方が無いようで……

ちょっとこの子達の見方が変わった瞬間だった。


「おやおや、やたらと良い匂いがしていると思えば原因は貴方達でしたか」


ルゥ姉がクローム達を連れてやってきた。

テーブルにはクッキーやらピザやらパンやらが山のように並べてて


「どうせすぐ行く事になるんだろ?

 だったら今の内から準備しとかないとな」

「なるほど」


納得したルゥ姉がパンに手を伸ばそうとした雌黄の剣の人の手を叩き落とす。

つまみ食いは許しませんと言った所だろうか。


「でしたら先日のドライフルーツの菓子を所望します」

「それは作る予定だよ」


一口で食べれる高カロリー食。

魔法を使う身としては少量でもエネルギーに換算できる数値の物が手早く食べれる方がありがたいだろう。


「で、いつ行く予定?」

「さっそく今夜にでもと言うお話ですが?」

「ああ、今夜紅緋の翼でシアーに連絡取ってもらうから今からでもクロームも一度ガーネットんとこ行ってくれ」

「ああ、了解した」

「で、支度金の話しはどうなってる?」


現金にはシビアなエンバーがクロームに一番大切だと言うように話を聞けば


「そこは雌黄の剣から出すが……」

「前回の任務の報奨金まだもらってないからこっちも準備したくても準備出来ないんだけど」


どこか少し低い声音のエンバーにまさか誤魔化す気じゃないよな?と言うドスの効いた口ぶりにセイジが冷静に


「任務は完了と言う事で額面通りの報奨金をご用意してます。

 四等分でよろしかったでしょうか?」

「当然。むしろ私から任務中の折りに集めた素材を売りたいのですが?」


俺達三人は何時の間に?!と驚くもルゥ姉はしたり顔で


「まだまだ経験値不足のようですね」


何て軽く鼻で笑い飛ばしてくれた。


「そうだった。おいクローム、このルーティア十分SSクラスでいいぞ。

 ディックも力量ならSクラスで十分だし、クレイも知識不足はこれから補うとして十分Sクラスでやっていける。

 セイジ、近いうちにランクアップした身分証の再発行してやれ」

「承りましたが……」


チラリとクロームを見る。

可愛い甥っ子を心配する目だが


「そんなに心配する必要はありません。

 私、こう見えても子供の教育には少々自信がありますので」

「部下の育て方だろ」


謎のやる気のルゥ姉に俺は諦めろとクロームに視線で訴える。

今更ルゥ姉好みの配下が1人2人増えたぐらい問題ないと。


「そうか。仕方がないんだろうな」


王族として生まれたのに不憫な待遇を受けてる甥を思っての考えだが、Sクラスの実力と借りとは言え叔父の手の外での生活の場を手に入れたのだ。

クロームに子供がいないのも一因かもしれないが、甘やかすのもほどほどにしないとイングリットみたいになるぞと心の中から釘を刺しておく。

面と向かって言うと周囲の方達がなんか怖そうな目で見てくるからねと言い訳をして。


「クローム様、ひとつお願いがあります」


顔見知りのカヤが台所から顔をのぞかしながら一つの鉄なべを持って来た。


「今からガーネット様の所にお伺いするとお聞きしまして、こちらに越してきた挨拶ではありませんがどうかこれをお渡しお願いできましょうか?」


これは?と言いながら鉄なべの蓋を開ける。

そこには先ほど焼いていた鶏肉一羽の姿焼きと丸々リンゴ一個を鶏肉の周りに敷き詰めた料理。


「これはこれは、懐かしいですね。

 ハウオルティアではお祝いの席でよくメインとなった料理になります。

 鳥だったり、豚だったり、牛だったり。

 肉の塊にリンゴを敷き詰めて塩とハーブで味付けする伝統的な料理です」

「はい。いろいろお話を伺っていると一度ご挨拶は……と思いましたが、私の身分ではあれなので、お使いだてして申し訳ありませんがよろしければお願いできればと」


ダメですかと20をとっくに過ぎてても可愛らしく小首かしげるカヤのお願いにクロームは苦笑して


「それぐらいお安い御用だ。

 出来ればそのうち私も一度この料理を食べてみたいのだが?」

「はい。でしたら鶏肉が手に入ったらお作りしますね!」


そう言ってまたうきうきと台所へと戻って行くカヤに俺達は軽く頭を振る。

台所が乗っ取られた……

じゃなくて、当分飯テロ決定か?と考えつつもすぐに出かけるから何やら作り続けてくれている料理はお弁当なのか?と思考を切り替えていればルゥ姉はセイジさんと報酬の受け取りと魔物の清算をしに行くと言ってエンバーを引っ付かまえてセイジ達と行ってしまった。


「まぁ、とりあえず明日の準備しようか」

「だね」


いつの間にか部屋にクレイと二人残された俺達はかなりの量の戦闘中の非常食を用意した後武器の手入れ、そしてフリュゲール産のグローブとかブーツとか使える物がないかいろいろ試して装備を整えるのだった。

勿論その後帰ってきたエンバーのものすごく羨ましそうな視線にエンバーの試着もする事になったのだが……大きくなってサイズが合わないと不便だろうといろいろ詰めて持たせてくれたその量には辟易とするしかなかったのは別の話しだ。

って言うか、どれだけ心配性なんだよと突っ込むのは仕方がないだろう。


「で、服はこれでよいとして、装備の点検だな。

 一人で出来るか?」


エンバーは俺の装備の再点検とって武器を全部並べさせ


「一応持っている剣はこの二本」


鞘を抜いて刀身を光に当てて欠けてないか確認する。


「まあ、魔剣だけあって刃毀れなしか」

「こっちの剣もゆっくり見れればなんて思ったけど、なんかすごくいい剣じゃないか?」


ランが用意してくれたのはウィスタリアのガロン師匠の作品だった。

柄と鞘は兄弟子のカロンの作品。

柄の先端と剣との境の留め具を隠す為の石はランがカッティングして磨いて装飾した物。

鞘の飾り石もランの石と装飾で飾られている。

ちなみに魔石だから何かの効果があるのだろうが、恐ろしい事に不明。誰か説明してくださいと言う所だろうが


「詳しくは。

 ウィスタリアの有名な鍛冶屋の剣だっていうぐらいしか知らない」


曖昧に零しておけばウィスタリア製品の良さは有名なのか、狭い室内で二人は剣を構えていたものの


「なんか、この魔石やばくね?」


眉間に皺を寄せるエンバーに


「やばいって、何かあるのかよこの石に……」


クレイいも素直に頷く。

俺は俺でホラーじゃねーよなといくつかの怖い話を思い出すも


「やばいって言うか、剣につけるような魔石じゃないよな?

 宝飾品向けというより、王様とかの王笏に付けるようなあれだよな?」

「……

 そ、そうなの?

 もらっただけだから良くわからなーい……」


高級品だと言いたいのだろう。

うん。知ってる。

ランの石なら間違いなくそれだが、あくまでも綺麗な石ぐらいしか価値を見出せないフリュゲール人に説明しても無理な話だろう。

クレイもこれまた難しい顔をしながら俺に剣を返してくれた。

石を傷つけたらどうしようと顔には書いてあるようだったが、それには気づかないふりをしておいた。


「そういやクレイの剣もなかなかの切れ味だよね?」

「ああ、俺のは切れ味特化した軽量の剣なんだ」


軽く振り回しても腕が疲れない剣に、おお?!と何度も振り回してしまう中、少し離れた所でエンバーが剣の手入れをしていた。


「ゴブリン退治でどうやら剣の柄に寿命が来たらしい」


罅の入った柄を取って新たに用意してあったのか同じデザインの柄を嵌めていた。

慣れているのか自分でトンカチなどを使ってコンコンと布を一枚かませて叩く様子を眺める。


「器用だな」


さっきまでは砥石で磨いていたし、手慣れた様子に感心してしまえば


「丈夫な剣だが魔剣じゃないからな。

 こうやって手入れしてやらんと錆びも生えるし刃も欠ける」


なめし皮みたいなもので刀身を磨けば、鏡のように刀身を覗くエンバーの顔が写っていた。


「だからそろそろ魔剣の一本くらい買えばいいだろ?」


そろそろそれぐらい貯め込んでるだろう?と言うクレイにそれがなかなかたまらないんだと苦笑するエンバー。


「その剣に愛着があるとか?」

「まぁ、あると言えばある。

 この剣が俺が戦う理由だからな」


そう言えば大ぶりの剣は見た目だけでもそれなりに値段も張る。

柄が壊れるくらい扱ってるのに刀身はちゃんと手入れすれば何も問題ない。


「ひょっとして凄い名剣だとか?」

「まあ、この剣を譲ってもらった時宝石もいくつかついてたからそれなりに名剣だったかもな」


そんな事をさらりと言うエンバー。


「おいおい、宝石はどうしたんだよ?」

「ひょっとして凄い剣だったんじゃないのか?」

「さあ?

 大体その宝石はばらして売っちまったしな」


俺達の顔を見ず、刀身を覗きながら剣の持ち具合を試し


「ちょっと庭で振ってくる」

「ああ、気を付けろよ」


仕上がった剣を満足げに担いで部屋を飛び出て行ってしまった。


「なんかもったいない話だよな」

「でもそれだけ困窮してたって事だろ?」

「仕方がないって言うにしても……」

「子供が宝石持ってる方がやばかったんじゃね?

 あんな立派な剣じゃ相当の石が付いてただろうし」

「ディックの剣もな。お前も気を付けろよ」

「だからこうして収納しています」


空間に隠せば確かにと頷くクレイは立ち上がり


「折角だからエンバーの素振りの様子を見よう!

 SSクラスの練習なんてめったにお目にかかれないぞ」


大体隠れてこっそりやる奴らばかりだしと笑いながら部屋を駆けだして行くのをつられて着いて行けば、そこにはどこか幻想的な姿があった。

月明かりの下それなりの広さのある庭の真ん中で剣を振り上げてまっすぐに振り下ろす。

横に構えては薙ぎ払い、下から切り上げて片手でくるりと振り回してまっすぐ突きだす。

斜めに振り払い、振り向きざまに構え直す。

それをどんどん繰り返しスピードも上げていく。

やがて風を切る音がどんどん鋭さを増し、俺達もただただ息を飲むだけ。

下手に声をかけようとするならその切っ先が俺達に向けられる。

そんな風を切るような剣舞にも似た光景を脳内に焼き付けるように真剣に見る合間にこのどこか蒸し暑いロンサール国だと言うのにエンバーの体からは湯気のようなものが立ち上り、汗が飛び散り、やがてその動きが止まった頃には全身水でも浴びたかのような大量のが溢れ出していた事に驚かされ、だけど俯く顔はまるで泣いているようにも見えた。


「随分追い込んでましたね」


エンバーが大きく息を吐いた所でルゥ姉が部屋の窓を開けて声をかけて、やっとゆっくりと顔を上げればいつものエンバーが居た。

カヤが冷たい水とタオルを差し出せばエンバーはありがたく水を飲んでタオルを首にぶら下げる。


「まあ、次の任務にはいろいろ考えさせられる事があるからな。

 出かける前に気持ちを切りかえたかった事もあったしな」


気持ちよさそうに頭から滴り落ちる汗を豪快に拭う。


「そうですか。

 でしたらそろそろ準備をしてクロームの所に合流しましょう」

「ああ、着替えたら玄関の所に行く」


タオルを首にかけて部屋へと戻るエンバーに俺とクレイはお互いを見る。

出かける前だと言うのにこんなにも自分を追い込まなくてはいけない故郷で何があったのかと。

クレイも不安げな顔で階段の窓から見えるエンバーの姿を追ってくれていたが、いくら仲良くなっても打ち明けてもらえない話に二人の徹底的な溝があると言う事だろうか。

なんとなく居づらくなって俺も荷物まとめるからと部屋へと逃げ込み、こっちに来る時にジルが持たせてくれた薬品をもう一度見直す。

魔法のあるこの世界でこの薬がどれだけ役に立つかは判らない。

だけど最悪を想定して、ジルの書いてくれた処方書を読みながらカバンに詰め直す。

いくら魔法のあるこの世界とは言え、絶対という神話はない。

想定に想定を重ねて準備するぐらいルゥ姉は許してくれるだろうと荷物をいくつか追加した。

役に立たなければいい。

そんな荷物にこれはフラグではありませんよーにと願をかけて鞄を閉じる。


ルゥ姉がいつもの通り、ノックもなく部屋にやって来て俺の荷物を見て呆れた顔を見せるも、鼻を一度すんと鳴らしてから何も聞かずに直ぐに収納してしまった。

そしてソファに身体を預け


「思ったよりもエンバーの心の傷は大きそうですね」


壁を越えた向こう側のエンバーの部屋の方を向いてぽつりとつぶやく。


「まぁ、時間が癒すとは言えどもそこまでまだ時間経ってないだろうし、忘れられない過去もあるからね。

 今まで上手く付き合ってたんだから付き合い方の1つや2つぐらい知ってるだろうし。

 さっきの素振りみたいに」


次々に目の前から消えて行く荷物をぼんやりと眺めていれば


「そんなわけで、今回のマル秘ミッションです。

 エンバーの過去を聞きだしなさい」

「簡単に言うのかと思ってるのかよ」

「言わせるのですよ。

 何をぐだぐだ悩んでいるのか知りませんが、エンバーみたいな子供はこの世の中山のようにいます。

 別に珍しいものでもないでしょうし、貴方自体そう言う身の上だと言う事を忘れないように。

 それにランを思い出しなさい。

 あんな目に合わされてもそれを口に出して自分のような境遇の子供が増えないように模索しているではありませんか。

 年季の違いもありましょうが、そろそろあの陰鬱とした顔を何とかさせてみたいと思いませんか?」


どんな理由かはわからないがどうやらルゥ姉はエンバーをいたく気に入ったようだ。

だから何としても欠片程度には救ってやりたいと思っているんだろうが、それともただの好奇心か。


「適当に頑張ってみるよ」


根掘り葉掘り聞きだして関係悪化させてもやだしと荷物がすべて消えた所で席を立つ。


「じゃあ出発かな?」

「ええ、二人の準備が整い次第参りましょう」


階段を下りてロビーで待つ事もなく扉の開く音を聞いて部屋を出てきた二人を満足げな顔で見て、ロビーで待っていたカヤに家の事を頼むと、当面の資金と水場の修繕費を渡したりルゥ姉は色々と指示を出す。


「そういや、最近シルバーの奴見てなかったな……」


うっかりと言うように口を出せば


「ああ、ガーネットが気に入っておもちゃにしてるぞ」


エンバーがそっぽを向いて呟いたその横顔を見ながらどんな扱いされてるか大体理解できた。

精霊と妖精。

相性は悪くないはずだし……

クロームのイケメンとわんこっぽい何かのトーテムポールよりましだなと、いざとなったら非常食にされそうで心配だけど、とりあえずかわいがってもらえそうなのでほかっておく事にしよう。

なんせ自由気ままの性格で、首輪をつけても抜け出して幻獣界から逃げ出すようなシルバーに世の中怖い事もあるんだぞと教えるにはガーネットの所が一番だろう……かな?





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