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草原の黄金の狼

51話のアレ、直しました。

そう言えば間違えたな……なんてアップした時には気づいてたのに、忘れに忘れて今頃気付きました<殴!

ありえない事が普通に起きていますが、次は何だ?と、大きな心で眺めていただけると幸いです<蹴!

昼ごろやってきたエンバーによって俺とルゥ姉は起こされた。

うん。太陽が黄色い……

寝たのはなんだかんだ言って夜明け近く……明けてたかな?

ボーっとしている俺達を横目に幾ら昨日がハードだからって昼間まではないだろうとエンバーは呆れていたが、俺とルゥ姉はそろって


「お前が帰ってからが真打が出たんだよ!」

「暢気に外野でグースカ寝てた分際が黙りなさい!」


肉体的よりも精神的な疲労が激しく目が覚めても欠伸が止めどもなく零れ落ちる始末。

分が悪いと判断したエンバーは黙り込んできょろきょろと周囲を探し


「所でクレイは?」


何処かビビりながらも懸命に話しかけてきた勇気は認めよう。


「部屋に居ないんなら雌黄の剣かまだ帰ってねーよ」


とりあえず台所で硬くなったパンを切り、適当にハムを焼いたり卵をやりたり茶を入れて昼食の時間に朝食をとる。

エンバーも一緒に食べるかと差し出せば黙って頷きながらも食卓に着いた。

いくら強かろうが寝不足と空腹の人間の神経を逆立てるような真似はしてはいけないとこれで学んだはずだ。

三人黙ったまま黙々と食事を終えて茶を飲みながら


「そういや昨日の夜なんか魔物が出たって噂話があるんだけど聞いたか?」


この沈黙の空気を打ち破る為に話をしたつもりだがそれこそ地雷だ。

一気に空気が冷え込んだのを察したSSランカーは視線を彷徨わせながらトイレと旅立っていった物の、行った直後すぐに走りながら戻ってきて


「一体何があったんだよ!

 なんか、窓がめちゃくちゃで、壁にすげーひっかき傷とか、床のタイル捲れてるとか?!」


慌てるエンバーに


「あなたも噂話ぐらい知ってるでしょ?

 昨日の夜魔物が出たって」

「それこの家の話し」


今一番ホットな話題だよーと固まるエンバーを食堂に置いて水場を覗きに行けば、昨日は暗かったからあまりよくわからなかったけど、大工さんに手直ししてもらわないとだめだなーなんて考えれば隣でぼそりと「請求して問題ないですよね?構いませんよね?」なんて静かに怒っているルゥ姉が居て俺は黙って頷いておいた。

そんな俺達の背後でエンバーがちょっと忘れ物を取ってくると言って出掛けた物の暫くして帰って来た時には焼き菓子を手にしていたのでとりあえずこの場は許す事にした。

食堂のテーブルに再度着いてエンバーが持って来た紅茶を自ら入れて焼き菓子を並べて俺達が手を伸ばして一つ食べ終わるまで背筋を伸ばしながらも何処か俯きながらじっと無言で待っていたが


「聞いていいのかわからないがどんな魔物なんだよ。

 窓の壊れ位とか、走った程度で抉れるとか……」

「さあ?私が気付いた時にはディックはもう屋根伝いに城壁の外へと逃げている時なので」

「あんたにしちゃ珍しく後手に回ったな」


ゴブリン村の一件で後れを取る事はないと思っていたエンバーはそれこそ驚いて見せるも


「何分相手の方が上手でした。

 ドラゴンの時のように真の強者は無駄に強さをひけらかしはしないので」

「まあ、そうかもしれんが、あんたの魔術もかいくぐってなんて、どんなバケモンだよ」


漸く焼き菓子に手を伸ばして一口かじったエンバーに


「黄金の狼だったんだ。

 風呂場に来たって事は喉が渇いてたんじゃないかな。

 最も腹も減らしていて対象が俺になったっぽいけど」

「だから城壁の方へ……か。

 じゃなくって、それ本当に黄金の狼かよ?」


何故か目を輝かせて机の上に乗り上げるような体勢で俺達に顔を寄せてきた。


「月明かりに照らされてってのもあるかもしれないけど、キラキラした毛並みで綺麗だったよ。

 馬鹿でかかったけど。

 狼って言うより狐って言うのも混ざってるのかな?

 やたらと馬鹿でかかったけど。

 結構必殺の一撃をお見舞いしたつもりだったんだけどしっぽで軽く振り落されたし。

 しっぽも呆れるほどでかかったけど」

「ああ、ごめん。

 でかい事しか認識してなかったんだな……」


あの時の恐怖は美しい毛並みとかそう言うのを一切無視して総てでかいと言う事でしか認識できなくなっていた。

さすがにボキャブラリーが変な事に気づいて片耳になんか一房垂れてた事を伝える。

だってあれは違和感過ぎて正面から退治するとそこに意識が集中してしまうのだからおもわずチョウチンアンコウかよと声に出したかった。

ひょっとしてそれがあの姿のポイントなのかと思うも、目の前のエンバーは目をキラキラとさせて


「それってひょっとして精霊ロンサールじゃないか?!」


「は……い?」


ルゥ姉と二人小首かしげる。

ガーネットは自分がロンサールだと言う事は黙っててくれと入ったが、エンバーはその姿特徴でロンサールと判断したのだ。

俺達があまりに何を言ってると言う顔をしていたから少し待ってろと言って何処かへと出て行き、そして数分の後に戻ってきた。


「まぁ、黙ってこの本を読め」


俺とルゥ姉の間に置かれた随分読み込まれた本だが分厚い布で丁寧に装丁された本は何度も修正の痕がある。

大切に扱われていると一目でわかる本を分厚い紙に大きな手書きのページを捲れば懐かしいハウオルティアでよく見かけた上級者向け読本があった。

ロンサールは識字率があまり高く無いようでエンバーは難しい本は読めないけどこの本は暗記してるから読もうか?とも言うがとりあえず読んだ方が早いのでとけんもほろろな返答でルゥ姉は黙らせてしまった。




   草原の黄金の狼




遥か昔、ロンサールと言う名前がまだないこの地は草しか生えていない広大な何もない地でした。

一人の旅人の男、ガルディアは海沿いからこの草原の素晴らしさに、川をさかのぼり何日も旅をしたある夜、見た事のない大きな黄金の狼に出会いました。

黄金の狼に食べられると思ったガルディアでしたが、その黄金の狼の足に深い怪我をしている事に気づきました。

黄金の狼は逃げる事すら敵わず、ただ唸り声を上げるだけだったが、月明かりに照らされた黄金の狼の美しさにガルディアは一瞬で恋をしました。


「腹をすいているのなら私を食べなさい。

 ただし、どうかその前に貴方様に似合わない醜い傷を私に癒さして下さい」


黄金の狼はそれを聞き入れ、足をガルディアに治させました。

治癒の魔法が使えたガルディアは一晩かけてその傷を直し、朝日の中黄金の狼は癒えた足で立ち上がり


『我が名はロンサール。

 人よ、名は?』


「私の名はガルディア。

 当てのない旅の途中の哀れな男だ」


ロンサールは礼としてガルディアを側に居る事を許しました。

ガルディアはこの世界の果てを探しに冒険をしていると言って東へ西へ、海を渡りこの地へとたどり着いたと言う。

それからの一人と一体は夜眠る時も、食事をする時も、狩りをする時もガルディアとロンサールはいつも一緒です。

ロンサールは男をとても気に入り、時々背に乗せてこの平原を駆け巡るのをことのほか楽しみました。

男もロンサールの背に乗りこの広大な平原を風のごとく駆け巡るのを心よりたのしみました。



ある日、東の丘からこのどこまでも広大な平原が見える地を眺めながら


「本当を言えばここが終着の地であればいいと俺は思っている。

 貴方の居るこの地が終着の地だと私は願っている。

 ロンサール、あなたほどの誇り高く気高い方を私は他に知らない。

 だから長いとは言えない人の身分で共に居る事を許して欲しい」


『我は豊穣を願う精霊ロンサール。

 共に居たいと願うのなら最後の日までこの平原を共に駆け続けよう』


「ああ、最後の日まで共にこの平原を駆け抜けて行こう」


やがてロンサールが走った後には豊かな黄金の麦畑が広がり、飛び跳ねた場所には豊かな森が広がり、ロンサールとガルディアが初めて出会った地に家を建て、街となり、いつしか都となって始まりの男ガルディアは王となり、精霊ロンサールと共にこの豊な平原に集まった者の為に国を作りました。




   精霊ロンサールと国の成り立ち




「なるほどねぇ。

 黄金の狼が精霊ロンサールなわけだ」

「大体どの国も精霊と国の成り立ちは似たようなものですね」


妖精同様精霊も信頼を持って契約とする物だ。

これだけ気が合っていれば契約となるのも当然と言った所だろうか。

何やらすぐ目の前でお前ら今馬鹿にしてるだろ?と呻いている男が居るが、実際のロンサールを知っているとなると、物語のような清廉な精霊でもないし、こんなロマンス風な展開には決してならなかっただろう。

というか、この筆者は男と狼と言うコンビに何をさせたかったのか冷静に問いたい。


「児童書としてはぜひ子供達に読み聞かせたいな」

「ええ、稚拙な文章ですが話としては子供相手にちょうどいいでしょう」

「オチがな。急ぎ足過ぎるんだよ。

 もっと苦労があったはずなんだから精霊と男が悩み苦しみながら国を立ち上げる様を読んでみたかったんだよ」

「いえいえ、こういう本はそう言う肝心な所をさらっと流して精霊と男の友情を描いて代えがたい約束を交わすのが時代的には流行したのですよ」

「頼むからお前ら俺の愛読書を馬鹿にするのは止めてくれ」


むすっとした顔のエンバーに俺達は適当に謝りながら


「黄金の狼、精霊ロンサール。

 この国では有名なのですね」


ルゥ姉は本の表紙をそっと一撫でして金の糸で刺繍した「草原の黄金の狼」の文字をなぞる。


「そういや今更だけどハウオルティアって何の精霊だ?」


効いた事なかったなと言えばルゥ姉とエンバーのどこまでも冷ややかな視線

確かに王族の末端に席を置く身分として言っちゃいけない事だが、知らない物は知らない。


「仕方ないだろ。

 誰も教えてくれなかったし、興味もなかったんだから」

「意図して教えなかったかもしれませんが、興味も持たなかったと言うのは聞き捨てなりません」

「いいだろ?やっと興味持ったんだから」

「今頃?としか言えませんが、ハウオルティアの精霊は鹿のような姿をしている精霊だと言われています。

 豊かな実りを約束する者と我々は教えられました。

 国旗の枠は精霊ハウオルティア角の部分だと言われており、ハウオルティアの蹄の跡の中の模様はその土地の豊かさを、豊かな実りを、そして裏切りには血の制裁との意味が描かれていると伝え聞いています」

「なかなか物騒な精霊だな」

「精霊はただ与えるだけの存在ではないと言う事です」

「けど豊穣を願う狼と豊かな実りの鹿か……」

「二体合わさると立派な農園が経営できそうですね」


「人間って俗物だなぁ」


エンバーが呆れ果てていたが、しょせんは人間。

金になって生活が豊かに贅沢になる事を求める生き物なのだから仕方がない。


「ですが想像してみてください。

 黄金の麦穂の向こうに果実に囲まれた屋敷がある光景を。

 夢のような贅沢な話ではないですか」


この世界の一番の贅沢はやはり食べ物に困らない事だろう。

寝る所が無いのも帰る家がないのもこの世界ではわりと普通だ。

しかし、食べ物がないと人はどうあがいても死んでしまう。

ガーネットでさえなったように飢えは精霊すら狂わせてしまうのだ。

コンビニもなければスーパーもない。

冷蔵庫もなければ冷凍庫もなく、いくら保存を施しても半年がせいぜいと言った所。

魔法と言う反則技も在れど、この世界の人の大半が豊かな食事が一番の贅沢となるのは仕方がない。


「いつかルゥ姉にそんな家でも住ませてやるよ」

「それはそれは素敵ですね。

 ですが、農作業何てした事が無いので是非とも使用人をお願いします」


そんな叶えれそうもない夢を妄想していればやっぱりエンバーは呆れていた。

夢ぐらい好きなだけ言わせてくれよと心の中で毒づくも、とんとんとノックの音。

窓から玄関をひょいと覗けばクレイとクローム、後セイジさん達一行がそろっていた。


「おや、やっとお帰りですか?」


城からの帰り道だろうか。

雌黄の剣のアジトに戻る前に寄った面々の顔は疲れ果てていて、その中に見覚えのある顔があった。


「坊ちゃま!」


小さな鞄一つの荷物を持って見覚えのある顔、カヤ・エンデは建物の中に入って来た。

荷物を途中の廊下に落として駆け足で走り寄って来たかと思えば小さな声で「サファイア様もご無事で」と涙を流しながら目の前で泣き崩れてしまった彼女の肩を優しく叩き小さな声で


「カヤ、今、俺、ディックって名乗ってるんだ。ディータ・グレゴール。

 サファイアは俺の姉の設定でルーティア・グレゴールだ。

 間違えないで」

「坊ちゃま、承りました」


涙を指先で拭い、安心からか満面の笑みを浮かべてくれた。


「無事の再会お喜び申し上げます」

「ええ、国を出てどうしているか心配しておりましたが、王宮にて家庭教師をしていたと聞き安心しました」


王宮に召し抱えられるなんてカヤってやっぱりすごいよなと感心するも


「ですが、坊ちゃまとお嬢様がこの屋敷で暮しているとクローム様からお聞きしまして王宮のお勤めを辞してきました」

「はい?」


城勤め何て憧れの垂涎の職種なのに何の不満があるのだろうか。

自力で這い上がって行くか、有力者の推薦でしか王家の近くに侍る事は出来ないのだ。


「坊ちゃまもお嬢様のお二人暮らしと聞いていろいろ不便も御座いましょう。

 私カヤ・エンデ。

 あの混乱の後ロンサールの貴族の方のご子息の家庭教師と雇ってもらい、その伝手で王家の方々の家庭教師を推薦させていただけました。

 この旅あの時助けられた恩を今こそ返すべく馳せ参じました」


メイドらしく主へと深々と頭を下げる姿にクレイもクロームも本当に元使用人だったんだと感心する始末。


「お城のお勤めを辞めてしまったのなら仕方ありません。

 ですが我々の旅は決して明るくない物ですよ?」


ルゥ姉がいきなり最終通告をするように言うも


「お話はクローム様から伺っております。

 あの時無事逃げ出せた私ですが、今度はお二人にどこまでも着いて行きます!」


既に決心した後。


「何で……」


そこまで忠誠を誓うのかと思えば


「あれから船に乗って国を出た私は船の上でロンサールへと帰る新しい旦那様に拾ってもらいました。

 お美しい奥様の話し相手として、まだ幼く可愛らしい坊ちゃまの遊び相手として。

 ロンサールと言う国は砂漠のあまり豊かではない国と聞いていました。

 そのせいか使用人も儘にならないと船に乗って各国へと商談に奔走し苦労している旦那様と奥様の人柄に惚れて奉仕する事になりました。

 坊ちゃまは普段はロンサールのお屋敷で使用人に囲まれてお過ごしになられてますが、ロンサールもだんだんと暮して行くのが難しくなり、ついに旦那様はロンサールのお屋敷を手放して伝手を頼り、フリュゲールへとお住まいを移す事を決断されました。

 我々使用人はその場で離職となりましたが、旦那様は最後まで我々の再就職先を探してくださり、私は坊ちゃまの教育係として少々名を上げさせてもらった事もありちょうど王宮でも教育係を探していた事もあって私を推薦していただきました。

 使用人としては王宮に召し抱えられると言うのは最上の誉れに御座います。

 それもこれも、坊ちゃまと過ごさせていただいた折りに生涯触れる事のなかった本を、それこそ心行くまで拝見させていただいた恩が導いた事です。

 そんな恩ある坊ちゃまが使用人一人雇わずお嬢様とお過ごしとだなんて、私のここまでの道のりを考えればそのような生活を刺せるなんて使用人の矜持にもおちます」


「ああ、うん。良くわからないけど何としても恩を返したいと言う事だね?」

「話は短く簡潔にね。

 全く何の話が始まったかと思いましたが、身の回りの事をしてくださるのならあなたを雇いましょう。

 ただ、この国での生活をまだ始めたばかりなので離れていた時間の分少しずつお互い考えて行きましょう」

「てか、ルゥ姉の話しは短く簡潔って意味わかんないんだけど……」


思わずぼそりと呟いた俺の呟きにクレイが控えめにだが確かに頷いていたのがその証拠だろう。


「とりあえず、二階の開いてる部屋を使いなさい。

 使用人にはちょうど良い部屋があったと思いましたが?」

「北側の部屋だね。

 一応来客用にってベットは取っといてあるし家具も残してあるよ」


万が一の為に残しておいてよかったなんてクレイとエンバーで言うも


「使用人が二階にだなんて……

 屋根裏でも地下室でも離れでもいいのに……」

「ごめんなさい。そこはもう利用目的があって埋まってるの。

 やんちゃ盛りの男の子の部屋の向かいになるリスクがありますがそこでも構わないでしょ?」


聞きようによっては一番未婚の女性を置いてはいけない所だが、他に部屋が無ければ仕方がないと言う物だろう。


「そう言う事なら仕方がありません。

 生涯何所までもお供いたします」

「ふふふ、まるでプロポーズされた気分だわ」


わざと意地悪く言うルゥ姉にカヤは顔を真っ赤にするも、いい加減ルゥ姉の性格を理解しただろうエンバーとクレイはいい加減にしてやれよと視線で訴えていた。


「では早速ですが、クローム達と少々話があるのでお茶の準備を。

 家の案内は悪いが自分で開拓してください。

 魔術はある程度精通してましたよね?

 そこらじゅうに仕掛けてあるので注意してください」

「畏まりました」


ここに来たばかりだと言うのに軽く頭を下げて左側準備に向かう姿勢に彼女こそプロのメイドだと感心さえしてしまう。


「それでは早速話を伺いましょうか?」


くるりと振り返ってクローム達を、まるで何事もなかたように食堂へと連れて行くのだった。

逞しい性格だよなと感心しながら俺達は適当に席に付いた。

クロームの部下の人達も普段使わない椅子は壁際に置いてあるのを自分で持ってきて同じテーブルに着く。

素晴らしい事に今二階に行ったと思ったカヤが、黒のシンプルなワンピースに真っ白のエプロンをつけ、髪が落ちないようにヘアキャップで止めていた。


「おや、ずいぶんとかわいらしい衣装ですね?」


目ざとくルゥ姉が褒め称えれば


「やはりお仕事の時は汚れが目立つところにはすぐ気付くように、そうではない所は極力目立たせないようにと考えるとどうしてもこうなってしまいます」


「カヤは本当にメイドの鑑だね」

「お誉めに頂き凝縮です。

 早速ですがすぐにお茶をご用意いたしますのでしばらくお待ちください」


家令も執事も居ないこの家ではカヤが当面総てを仕切る事になるだろう。


「カヤ、水回りはあなたの城になるのですから好きなように使ってもらって結構ですよ」


ルゥ姉の言葉にありがとうございますと姿勢正しく使用人らしく顎を引いて気持ち頭を下げてから去って行く姿に


「へえ、あれがメイドねぇ」

「カヤはああ見えてもそこそこの魔術も使えます。

 魔法は少々お粗末としか言えませんが、留守を預けるにはちょうど良い娘ですよ?」

「あんたと比べれば大概がそんなもんだろ?」


呆れて溜息を吐くエンバーはそれでも台所でいくつもの、この感覚は水の魔法だろうか。

発動する感覚を感じ取り、瞬く間に湧いたばかりのお湯で淹れられた茶が出された事に感心するのだった。






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