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アズライン物語と精霊語り

評価ありがとうございます!

誤字脱字多いのにお目こぼしいただいてほんと……直したいです(ボソッ)

ありがとうございました!

今日はクロームが使えそうにないからと四人そろって家に帰って来た。

クロームではないが俺達も精神的に疲れ切って食堂へとたむろう事になった。

長椅子に横たわるエンバー、椅子の背もたれに身体を預けるルゥ姉、机に突っ伏すクレイと俺。

とりあえずルゥ姉に荷物を取り出してもらって適当にすぐに食べれるものを机に並べた。

それから割れない様に金属製のカップに紅茶葉を直接入れて魔法で作ったお湯を入れる。

やがて沈んだ茶葉を頃合いにゆっくりと口へと傾けるのが旅のお茶事情。

旅先では当然分別何て意識なんてないから飲み終ったら茶葉はその辺にぽい。自然に帰るがいい……

家の中そんなことやったら箒を持って追いかけられるが、そんなポイ捨てがまだまだこの世界では常識。

分別はともかくポイ捨てはダメだろと言えばとある国ではすぐにゴミをルールを作る徹底ぶりに、やっぱりこの世界の人でもポイ捨ては見苦しいんだと謎の納得を得てしまった。

どうでもいいけどね。

エンバーも食卓に着いて残りのビスケットなどをもそもそと食べながら茶をすすり


「先に言っておくが今回の任務がいつも発生している任務じゃない事を理解してほしい」


さすがにどこかぐったりしているエンバーはシロップ漬けのナッツをビスケットに乗せて齧れば


「当たり前です。

 いくらなんでもあれだけの任務が丸めて一つだなんて、一晩でするような内容じゃない事ぐらい私だって理解できます」


ルゥ姉はもう直接シロップ漬けを食べだす始末。

知らないぞ?吹き出物が出てもと思いながらも俺も食べ損ねたスモークした鶏肉を適当にナイフで切って齧れば隣からクレイの手が伸びてきたのでその手にも一欠け乗せる。


「っていうか、あんなの任務じゃないだろ……

 軍隊を連れて処理するような内容じゃないか」


鶏肉を齧りながらクレイも文句を言う。


「今はこの国は軍隊も動かせないんだよ。

 大軍を何日もかけて移動したり、大人数に食わす飯も用意する水も節約するにはギルドに頼むしかないのがこの国の金銭的な理由だよ」


この国はビンボーなんだと言うエンバーに


「それにしては魔石を景気よく買いましたね?」

「別の国で何倍もふっかけるつもりなんだろ」


どーせと言う口ぶりに懐事情を察してしまう。


「確かに、叔父上も可能な限り王宮には換金可能な物を入れているけど、こればっかりは国を挙げての大問題だから。

 その場しのぎにしかならない」

「草原のロンサールだった頃しかこちらには来た事ないのですが、その頃は豊かな国でしたよね?」


ルゥ姉が人も多く、物もハウオルティアに引けを取らないくらい溢れていた事を示唆すれば


「やっぱり流通が止まったのが原因か?」


俺が聞くも首は横にしか振らない。

少しだけ眉間を寄せて苦しそうな顔をして


「エンバーは外に行くから気付いてるだろうけど、この国の城壁の外では植物が育たないんだ」


俺もだけどルゥ姉も目を見開いてクレイを見る。

俺達の視線に合わす事もなくカップの中に映る自分を睨みつけ


「魔獣大暴走があった年の種蒔きの時に知ったんだ。

 何時まで経っても芽吹かない。

 井戸が次々に枯れて行く。

 水脈があった所を掘ってみても水脈はないし、井戸何度も深く掘って今何とか供給が回っている状態だ。

 王宮では水がまだ出る井戸に兵士をつけたり、枯れた井戸もさらに深く掘って水脈を探している」

「それは、何で……」


呻くように喉から絞り出して聞けば


「魔獣大暴走の弊害だと聞いている。

 魔獣が踏み荒らして死骸やその血が大地を殺したって。

 もう周辺国側ぐらいしか緑は育たない。

 城壁の中も辛うじて育っているけど水が手に入らないんじゃどうしようもない」


泣き出しそうな声に俺は眉をひそめる。

ルゥ姉も眉を顰め


「それはおかしいですね。

 だってそうでしょ?

 魔獣の大暴走何て早くて数年、もしくは十数年に一度はこの大陸のどこかで発生します。

 どの地域も数年はかかりますがそこそこ復興します。

 ましてや芽吹かないなんてありえません」


記憶を確かめるように口元に指を添えながら思い出すように口にする地域はハウオルティアもあり、そこはエンバーも知って居たようで驚いたように瞬きしていた。


「だったら一体何が原因だよ!」


おかしいじゃないかと言うクレイにルゥ姉は眉間を狭めてそればかりは何ともとしか返せなかった。

そこでルゥ姉は席を立ち


「どっちにしてもそこは調べてみるしかありません。

 申し訳ないですが今の我々は休憩を挟まなくてはまともな思考すら働かないので夕刻にでもまたここで集合でよろしいでしょうか?」


先程から誰とのなく欠伸を零す。

一晩戦い続けた揚句ドラゴンの背での移動。

俺達は慣れているもののエンバーとクレイの緊張が伝わってきて普段なら寝る所を寝させてもらえなかったのだ。

疲れはピークに達していて


「悪い。俺も一足先に寝かせてもらう」


エンバーの、そのまま二階へ行く足について行くように俺も寝てくると言えばルゥ姉も立ち上がって階段を上れば、少し悔しそうな納得しないような、そして理不尽と言うような顔でクレイも着いてきた。

各自部屋に入った所を見送れば部屋に入ろうとした所でルゥ姉に手招きされてルゥ姉の部屋へと入る。

そのままルゥ姉の部屋のソファの手すりに頭を預けながら何?と聞けばベットに座るルゥ姉は


「先ほどのお話を聞いて不思議に思いませんか?」

「先ほどって、ああ、植物が育たないって奴?」


言えばコクンと頷くだけ。


「それはまるでアズラインのようではありませんか?」

「悪い。アズラインって国良く知らないんだ」


二人の間に沈黙が訪れた。

だけどルゥ姉はしばらく考え込み俺にも判りやすいように話を始める。


「噂位聞いた事があるはずです。

 アズライン国は数百年ほど前まではウィスタリア国の一部でした。

 当時はアズライン州と言ってウィスタリアの港の玄関と言うそれは賑やかな町だったと物の本には書いてあります。

 ですが、貿易が盛んで、ウィスタリアの王都シュルドチアとも遠く、ウィスタリアの南の王都とまで書物には記されていました。

 ここまでくれば大体想像が出来るようにシュルドチアとアズラインとの紛争が始まり、時の王まで出陣しなくてはならない大きな戦となりました。

 ですが、勢いの波に乗り、周辺国からも協力を得たアズラインは時の王を打ち取り、それはそれは大層図に乗って俺がウィスタリアの王だとまで言ったそうです」

「スゲー、乗っ取ったのかよ……」


あっけにとられて話を聞いていればルゥ姉は何処か寂しそうに首を横に振り


「知っての通り、この大陸では王は国の精霊と契約を交わしています。

 王が亡くなれば次の王はその血縁者から出さなくてはいけません。

 ウィスタリアは精霊王と契約を交わし国。

 そのあたりの契約に従い王の息子を次の王へと玉座につけました。

 ですがそれを当然よく思わないアズライン州のこの戦争の代表者はそれをよく思わず、その新しい王さえ殺してしまったのです。

 王の兄弟を、親族を、そして10才にも満たない子供まで次々に殺して行きます」

「じゃあ、王族は……」


滅んだのかと息をのむも、未だにこの大陸で一番栄えている国だからそれはないと不安を払しょくするように首を振れば


「ええ、貴方の考える通り、王族の血は広く、そしてアズラインの代表者が措定してたよりも継承者が多かった為に次第に代表者に従っていた者達からも疑問視する者が出始めました。

 ですが、時すでに遅く、10才にも満たない、それどころか自分の足で歩く事も出来ない子供を王族の血を引く者と言うだけで殺してしまったアズラインについに精霊王が降臨なされました。


『これだけの血を引き替えに土地が欲しければお前に与えよう。

 これだけの命と引き換えに国が欲しければお前に与えよう。

 これだけの怨嗟引き換えに王位が欲しければお前に与えよう……』


 そうしてその者が初代アズライン王となりました。

 精霊王から一枚の地図を受け取ったそこにはウィスタリア国から独立した国名が書かれてあり、ウィスタリアの者達は大層精霊王に向かって国を切り離された事を嘆きましたが、それも数か月の間でした。

 今まであまりに凶悪な魔物の出なかったウィスタリアでしたが、アズラインが独立して以来かの国では魔物が跋扈するようになりました。

 緑豊かなウィスタリアとは別に潮風の強いアズラインでは次々に植物が塩害で枯れて行くようになりました。

 そしてそれまでどこでも種をまけば育ったはずの畑の植物も、豊かな水量の水も年々枯れて行くようになって気付いたのです。

 これは精霊王の恨みかと。

 結論から言えば酷い逆恨みですが理由は簡単でした。


『アズラインはウィスタリアから独立した国だ。

 なぜ独立した国を別の国の精霊が面倒を見なくてはいけないのだ?

 独立したいのなら守護するべき精霊ぐらい居るのだろう?

 なぜ独立した者に手を貸さなくてはいけないのだ?』


 つまりルールに則って独立させたのに、自らの不備を今更言われてもすでに精霊王の関する所ではないと言ったものでした。

 そうしてアズラインを独立と導いた男はアズラインの民の恨みを激しく買い、それは惨い死に様だと物の書には記されていました。

 とはいえ、国は既に立ち上がりました。

 民は誰かに導かれるもの。

 アズラインに残された小さな精霊王を奉る祈りの場がひっそりとありましたが、その場を代々守る者が名乗り出ました。

 この世界の仕組みを、精霊と交わされた約束を破った我々アズラインの民にこそ非はある。

 何時許されるかわからない精霊王の怒りをこれ以上買わないように我々は今ある総てを用いて、ウィスタリアを親国として敬い、慎ましく、勤労に、いつの日か精霊王の怒りを鎮め、かつての緑豊かなアズラインを取り戻そうと導いた導師が今のアズラインの国の初代の王となりました。

 数百年の時を経て枯れた川は細々とですが水が通り、枯れた大地には馬達や民達が辛うじて命を繋いで行けるだけの緑が戻りました。

 そして今も民を導いた導師の一族の長は一年に二度精霊王を奉る祈りを捧げる儀式を務め、今も精霊に許しを請うのでした。

 という物語がアズラインでは子供の頃から聞かされて育っています。

 もっとも、それなりに貿易の要の地なのでよそ者には受け入られないようですが、それでも古くから暮しているアズラインの民はその年に二度の儀式の際には祈りの場の近くで共に祈りを捧げると聞いています」


ルゥ姉の寝物語にしては物騒な話に耳を傾けながら俺はあまり働かない頭で考えて、簡単な感想を言葉にしてしまった。


「なんだ?

 つまり、この国の精霊はこの壊滅的な状況を回復させるだけの力がないって言うのか?

 それって、つまり精霊が精霊じゃないって事だろ?」


うつらうつらと意識を飛ばしながら何とか絞り出すように言いながらソファの手すりに頭を乗せる。

もうこうなったら寝てるのも同じで、ルゥ姉の息をのむ音、驚きに見開く瞳、そして険しい表情をしていたのを俺は閉じた瞼のせいでそのすべてを見逃すのだった。





夜になり、肌寒くなって目を覚ました。

まだ慣れない壁紙と、やたらと堅いベットに違和感を覚え身体を起こせば、すぐ目の前のベットでルゥ姉が寝ていた。

そう言えばルゥ姉が寝ている所は久しぶりに見るなと、月明かりで見えたその寝顔はハウオルティアを出てきた頃の傷心し切った物ではなく、穏やかな寝顔。

俺はこの寝心地の悪いソファから体を起こせばそのわずかな物音でルゥ姉も目を覚ました。


「もうこんな時間……」


寝る前と同じ服で目を覚ましたルゥ姉もそのまま寝てしまったようだった。


「そろそろ何か腹に詰めよう。

 さすがに腹減ったし、自分が汗臭くて死にそう……」

「賛成ですね。

 所で残りのお二方は?」

「さあ?俺も今起きたばかり。

 とりあえず着替えてくる」


言って俺も帰ってきてから着の身着のままだった事を思い出した。

部屋に戻る前にこの汗臭さと泥臭さ、そして煤けた匂いに耐えきれずに身体を洗浄してしまうも、やっぱりどこかさっぱりとしない。

後で風呂入ろうと着替えて下に降りればすでにエンバーは起きていたようでご飯の用意をしている所だった。


「ごめん。今起きた所」

「いや、俺も起きて腹減ったから適当に食材使わせてもらって作りだした所」


言いつつもオイルサーディンを摘まみながらスープを作っていた。


「何か手伝う?」

「ああ、じゃあ何か作れるものを」


言われて何が使えるのかと冷蔵庫ではないが氷の詰まった箱の中を覗く。

木箱の中に鉄の箱を入れてその中に氷を詰めてその中にもう一枚布を張った鉄の箱を入れた中に肉などを入れていた。

当然俺が作った氷なので融けない氷だ。

俺が離れてても俺が継続して魔術を使うなんてめんどくさない事をしなくてもいいようにとランからもらった魔石を使って氷を維持している。

この世界初の冷凍庫の出来上がりだ。

エンバーもクレイもおっかなびっくりと氷のように冷たい冷凍庫を開けては覗いているが、冷凍した物が溶けるからやめてよと文句を言いたい。


肉の塊を包丁で叩いてミンチにしていく。

それを隣にいるエンバーは目を点にしながらもスープを混ぜる手を休めなかった。

更に玉ねぎに類似する野菜を微塵切りにしてフライパンに玉ねぎを入れしんなりするまで炒めて行く。めんどくさいのでそこで火から下ろしておく。

ミンチした肉にパンをこれまたミンチして卵と塩コショウ、そしてまだ冷めきらなかった玉ねぎを混ぜて捏ねて行く。

うん。

スープを混ぜる手を止めずにがん味するエンバーの視線が気になるんだけどね。

ミンチした肉を四等分して形成してフライパンで焼けばハンバーグの出来上がり。

その間別の鍋でゆでていた野菜をハンバーグの残りの脂で塩コショウで味付けして焼いたものを添える。

うん。焦茶色一色の食事が出来た……

新鮮な野菜が手に入りにくいこの国では野菜も貴重だ。

だから地下に置いてあったような酢漬けの野菜が重宝がられるのかもしれない。


「スープ出来た?」

「ああ、豆と燻製した肉の切れ端のスープだけどな」

「十分。後は……みんなを起こすだけか」

「私は何時でもいただけますよ?」


ルゥ姉がいつの間にかテーブルに着いていた。

そして少しまだ眠そうだけどクレイも机に突っ伏しながらも一応起きていた。

とりあえずこのまま食事にしようとテーブルにハンバーグとスープを持っていき、ゆでたパスタにオイルと鷹の爪とアンチョビを絡めた物が並べられた。

麺状ではなく指で潰したような平べったいチップみたいなパスタで、それをスプーンで食べるらしい。

そういやここに来て初めて入った食堂でも食べてる人がいたなと思えば、沸騰したお湯に生地をちぎっては潰して放り入れると言う役よりも簡単なこの辺りでもポピュラーな物だと言う。

そう言えば貝のような形のパスタみたいなものがあったがあれか?と思いながらもやっぱりおいしいアンチョビパスタを食べて行く中、何故か全員ハンバーグを黙々と食べていた。

と言うか、あれだ。


「がっついてもお替りはないからな」

「って言うか、これ何の肉だよ!美味いんだけど!」


元王子様のクレイは寝ぼけ眼を覚醒させてフォークをハンバーグにぶっさしてかじりついていた。

おいおい、テーブルマナーはどうしたんだよと思うも


「なんかの魔物の肉だったな?

 って言うか、魔物の肉ってこんなにうまかったっけ?」

「ええ、口で蕩けて肉汁が……

 筋張って硬くてが魔物の肉なのに」


ルゥ姉も切っては口へ、切っては口へとのループ作業に入っている。


「ミンチにすりゃ柔らかくなるだろ」


呆れながらも俺もハンバーグを口にする。

その頃にはもうみんな食べ終わっていて、特にエンバーとクレイの視線は俺のハンバーグへと釘づけだった。


「めんどくさいからまた別の日に作るな。

 って言うか、肉って言えば大体ステーキだったな」


薄切りスライスもミンチもない。

傷むのが早いから肉の塊をどーんと焼いて切り分けるのがこの世界の常識。

それ以外だとソーセージや燻製みたいにして保存食にしたりするのだが……


「何でこの肉社会の世の中でハンバーグが出回らないんだよ」


思わず呻いてしまえば


「そりゃこう言った物はゴミとして出された物を拾い集めてそぎ取って食べる方達の食事だからでしょう」

「世の中損してるな」

「ええ、まったく。

 なので、明日もお願いします」

「それぐらいは良いけど、エンバー、とりあえずお前の家の下の食堂で広めてこい」

「いいのか?」

「店が作ってくれるか知らんが、正直面倒なんだよ!」


ユキトの世界ではプレス機みたいなのでにょーんとミンチしたのが出てくるだけだけど、ここでは塊りを薄く切って細く切ってみじん切りして、なお叩いてと腕がプルプルしてるのを知らないわけじゃないだろと睨んでしまう。


「ああ、じゃあ、後でメモを書くから合ってるかどうか見てくれよ」


どうやら盗む気満々だったエンバーは嬉しそうに食事を平らげてメモ用紙に調理方法を書いていた。

クレイもそのメモを欲しいと言って雌黄の剣でも食べさしてやりたいと意気込んでいる。

近いうちこの国ではハンバーグブームが来るなと、そんなどうでもいい事にも頭が痛くなってきた。


食事も終わって腹も満たされて、ワインを飲みながら寝る前の話しの続きになる。

クレイは


「何でこの国には植物が育たないと思う?」


神妙な顔をして口に出した。

王家の人間としてずーっと頭を痛めている問題なのだろう。


「確かに。砂漠の枯れ木ももうほとんどない。

 だが、洞窟の中には水と苔がある」

「なんつーか、地上の部分が一掃されたって感じだな」


俺の言葉には嫌でも現実味があるのを知ってるクレイもアンバーも苦い顔をする。


「所でこの件に関して王族の方は?」

「城壁の中なら食物が育つから。

 後は騎士団が定期的に狩りをして野菜を購入したり、ここからだとウィスタリアが一番近い隣国だ。

 ウィスタリアに頭を下げて土地を借りて畑を作らせてもらっている」

「驚きですね。そんな事をしていたのですか……」

「もちろん貴重な労力として借りてる領地の領主の所に騎士団の一部隊を預けて道路工事や治水工事とか貢献している。

 魔物退治も真っ先に駆り出されているし」

「まぁ、ウィスタリアに居る魔物ならそれほど危険な物はいないので命の心配はないでしょうが……」

「定期的に騎士団の奴らを入れ替えてるんだけど、戻ってくる奴らはみんなボロボロに疲れ切ってるんだ。

 だけどウィスタリアに使う土地を俺達に借りている状況だから文句なんて言えなくて」

「下手に反抗したらアズラインの二の舞ですか」


ルゥ姉の言う事にエンバーは苦笑して


「もうアズライン同様だよ。

 まだ川が流れていたり、隣村まで命がけじゃない分向こうの方がましさ」


鼻で笑いながら説明する内容にこの国が滅ぶのはもう十年持たないのかもと勝手に想像してしまう。


「だけど、俺達は諦めない。

 俺は、もう二度と家を失いたくないんだ……」


エンバーの淡々とした言葉は苦しくなるような悲鳴で、どれだけの思いが込められているのか想像が追いつかない。

そんなエンバーにルゥ姉は目を反らし


「国境付近に引っ越すと言う提案は?」


何もこの何もない所に縛られなくてもいいのではと思うも


「戦争でもふっかける気か?」


俺が茶化して言えば


「それも一度試しました。

 獣暴の乱に無事だった王家の別宅が国境付近に在るんだけど、そこは森と湖に囲まれた場所だったんだ。

 ウィスタリアに近かったんだけど、状況が状況だから仕方がなくってウィスタリア側も見逃してくれてたんだけど、しばらくしたら変化が現れたんだ。

 森が枯れて行って、湖の水も干上がって行って……それがたった10日間の出来事だったんだ」


エンバーも知っているのか顔を顰めているが、俺達はその比ではいられない。

だって、それはつまり……


「王族が呪われているのか?」


思わずと言うように言葉が口から零れ落ちた。

エンバーもクレイも俺のその言葉にすぐには返事が出来ないものの、暫くしたのちにクレイが口を開いた。


「王都に居る分には問題は起きないんだ。

 緩やかに国は滅亡に向かっているが、それでも自ら王都を離れて国を滅ぼす事は出来なくて、結局王都に閉じこもるしかない」

「ですが、精霊ロンサールはどうしておいでです?

 王家の方なら直接会う事は叶わなくても言葉が届く祭壇の様な場所があるはずです」


各国共通して言えるもの。

フリュゲールでわかったとことと言えば


国名は国の守護者でもある精霊の名を頂いている事

契約の証として精霊地図がある事

契約した者を王とし、その血が続く限り契約は続く

契約の血を引く者が精霊と心を交わす祭壇の場がある事


フリュゲールの場合はあのご陽気な花オルトルートがその場だったが、この国では?


「祭壇の場……この王都の草原に建てられた巨石石造群が祭壇の場だったがそれすらもう魔物に潰されてない……」

「声が届かないのですか」

「更に言えば秘密だけど精霊地図も紛失してる。まぁ、これは有名だけど。

 つまりは精霊ロンサールに繋がる物が何もないんだこの国は」


唖然とする。

精霊が居ながら精霊との繋がりがない。

精霊が居れど、その加護が届かない。

だけどフリューゲルだって千年国を離れていてもかの国はどの国よりも豊かで美しかったのだ。


「やっぱりおかしくないか?」


俺が首を捻れば何が俺を見るクレイ。


「だって、フリューゲルは契約者と一緒に千年国を離れてたけどフリュゲールの国は豊かだったんだ。

 フリューゲルの名前を間違えて精霊地図に名前を書いてフリューゲルの力を封印したのに封印前の効果は生き続けているんだ。

 祭壇や地図はたぶん関係ないんだよ」


俺の仮説に唖然とするもなら原因はと声を絞るようにクレイは俺の腕に、爪が食い込むようにしがみついて来る。


「そ、それは、そこまでは判らないよ」


思わず逃げ腰になる俺になおしがみつこうとするクレイをエンバーが俺から放してくれた。

両腕には爪の跡がくっきりと残っており、血が出てない分ましとしよう。


「悪い……」


さすがにその痕を見て反省するも、やり場のない怒りに親指の爪をがりがりと噛み始めた。

エンバーがそっと「考え事をしている時の癖だから気にするな」と言ってくれたが気にならないのはさすがに無理だ。

なるべく視界の外にはずし


「つまり、この状況は精霊ロンサールの方に問題があると考えましょう。

 契約は生きているし、この最悪の状況でも10日ほどで湖が干上がると言う状況を考えれば辛うじて精霊の恩恵が被害拡大を抑えているという事になると仮定します。

 条件は王族の方がこの王都に居る事。

 今の契約者、つまり王は?」

「リーゼロッテ・アメルング・ロンサール女王。

 先代の王の奥さんだった人だよ」


俺とルゥ姉は視線を合わせて息をのむ。


「その方はどういったご出自で?」


振るえるルゥ姉の声にクレイは眉間を狭めて


「女王の出自はこの国でも古い貴族の令嬢で、国の中枢を担う大臣の娘だったんだ。

 普通なら大臣の娘程度で嫁入りできる立場じゃないけど、古い貴族の令嬢、かつては王族が嫁いだ先と言う事もあっておじい様でもある先代の王の幼馴染でもあり、学友でもあって、自然に結婚って言う言葉が当然のようになって結婚したんだって父上から聞いてる」


再度俺とルゥ姉は視線を合わせて納得する。


「藪蛇的な事を聞くけど女王の家系って過去に浮気とか妾の事かそう言ったトラブルってなかった?」

「そんなの貴族なら嗜みみたいなもんだろ?」

「そんな嗜みを常識にしてはいけません」


呆れかえったルゥ姉は溜息を零し


「結果から申します。

 今の女王では精霊との契約をする条件を満たしておりません。

 早急に退位を申し出て正当な後継者に、先代の血を引く方に王位をつぐよう進言しなさい」


ポカンとするクレイの顔を見ながら


「祭壇を早急に復旧させて王位継承を略式でもよいので行いましょう」

「待ってよ!って事は何だ!獣暴の乱の後この国を支えたおばあ様が原因って言いたいのかよ!」


怒りに机に手をついて立ち上がったクレイをルゥ姉は冷めた眼で見上げ


「そうは言ってません。

 至急国の機能の正常化を急ぎましょうと言っているのです。

 恐らくですが、この国の精霊はもう精霊としての能力を失っておいででしょう。

 魔物となる前に見つけ出して解放するか、最悪魔物として討伐しなくてはいけないかもしれません。

 精霊と早期お会いしなくてはいけません。

 王族の方ならその方法をお持ちのはずですが?」


小首を傾げてご存じありませんかと言う視線にクレイはついに家を飛び出して行った。


周囲が暗くなり、王宮に避難していた人達が戻って来たのか、どこか空回りするようなにぎわいを取り戻した城壁の中を進む背中を追いかけようとすれば


「おや?お前達城で合わなかったと思ったらこんな所に居たのかい?」


クロームを始め、二つのギルドの幹部を連れたガーネットは俺達が追いかけようとしたクレイの首根っこを摑まえて妖艶な笑みを浮かべて立っていた。

クレイを捕まえてくれたのは感謝するが


「これはまた豪勢な顔ぶれで?」


ルゥ姉のどこか警戒する顔にガーネットは極上の笑みを浮かべ


「なーに。あたしの記憶が正しけりゃこの家の地下倉庫にワインとオイル漬けがたんまりあったと思ってさ」


ご近所のお引越しのお祝いのパーティーをしに来たのさと言うガーネットのクレイを持つ別の手にはワインを二本持っており、背後ではものすごく申し訳なさそうな顔を並べるクローム以下略の方々が並んでいたのを見て俺達の視線は宙をさまようのだった。










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