新チームができました!
ブックマークありがとうございます!
いつの間にか評価を下さってありがとうございます!<遅!
未だに誰かに読んでもらってる自覚ないのでお礼が遅くなって申し訳ありません!<ほんとにね!
誤字脱字が酷いにもかかわらず(自覚はしている<殴!)ありがとうございます!
これを期に誤字脱字の修正をしようかと思ってます!(思ってますと言う日は絶対に来ない日と言うのは正論だと思います<殴!)
エンバーに連れられて街の中を歩く。
通り過ぎるあの店が美味いとか、あの店が良心的だとかこの街が好きなのだろう。色々と紹介をしてくれるように、彼は紅緋の翼のメンバーだからか知らないが街を歩くだけでよく声を掛けられる事に驚かされる。この街の人にも好かれているのだろう。
「やあ、エンバー。
綺麗な人連れて羨ましいな」
「おいエンバー、今夜うちの店に連れてこいよ」
「なぁ、エンバー、俺にもその人紹介してくれ」
「エンバー!その綺麗な人誰よ!」
大体ルゥ姉がらみで声を掛けられるのを後ろからついていく俺とクロームは苦笑交じりに眺めている。
「君の姉上は美人で得だなぁ」
「ルゥ姉の性格はさておき、見た目って重要だよな」
「よく見た目じゃない、心がって言うけど、結局は第一印象が良くないと性格までたどり着かないからね」
しょうもない事を話しながら何人目かの挨拶を交わした所で一軒の賑やかな食堂の前に辿り着いた。
「ここの屋根裏が俺の家。ちょっと待っててくれるか?」
「よければこの国の家の様子を拝見したいのですが?」
ルゥ姉の好奇心にクロームは苦笑を零し、エンバーも少しだけ困った顔をして
「いいけど参考にするなよ」
そう言って案内されたのは家の外に在る非常用のような階段を上った先に在る屋根裏部屋の天井の低い部屋だった。
壁沿いにベットを置いて小さなテーブルと椅子は一つだけ。
台所やふろ場はなく、下の食堂の大家に水場を借りたり食堂で食事を済ますと言う。
そもそもこの国には風呂と言う文化は金持ちのステイタスでしかなく、水で汗を流したり浴びたりと言う程度。水が豊かなフリュゲールではどの家も浅いバスタブのような風呂に腰までつかる程度の風呂があっただけに風呂は国の豊かさと言う目安の一つでもあった。
代わりにではないが香水の文化が発達していて、今一つ慣れない俺の鼻はクロームの纏う香水の匂いにそろそろ曲がりそうになっているなか
「見事参考になりませんね!」
きっぱりと呆れかえったルゥ姉の一声が狭い室内に響き渡る。
「まぁ、そろそろ此処を出ようかと思うんだが。
金がたまる頃剣や装備に金がかかって総て振り出し」
「SSクラスなら儲けてそうですけど?」
「無茶無謀を売りにしてる割にはうちの依頼料は激安なんだよ」
「なんとなくガーネットの人柄が伺えますね」
「俺一人だから金持ちな生活をしたいとも思わないし、ほとんど依頼で家に居ないから最後はこうやってまあいいかってなるんだよ」
せめて間借りはそろそろ卒業したいと言いながらもベットの下の引き出しから空の鞄を取り出し武器を纏ってマントを羽織る。
「さて、雌黄の剣に行くか」
「ああ」
そう言って部屋に鍵をかけ、賑やかな食堂の女将に暫く留守にする事を告げる。
女将も慣れた物で、何の心配も気にもせずに行ってらっしゃいと言う言葉にこれこそエンバーがここを離れられない理由じゃないかと考えてみた。
それから歩くこと10分もせずに通りを抜けた先に雌黄の剣のアジトはあった。
と言うか……
「城壁ですか?」
「すげー」
ルゥ姉と一緒にこの王都をぐるりと囲む城壁の入り口には伝説の霊獣麒麟に似た獣の絵と二本の剣が交わるギルドを象徴する旗が壁に描かれていた。
「クロームおかえ……」
入口の近くで待っていたクロームとよく似た色の髪の少女は鼻にかかった甘ったるい声で弾けんばかりの笑顔を見せていたが途端その顔を曇らせる。
そして
「エンバー!その女何よ!」
「何で俺に聞くんだよ……」
頭の痛い事案が始まったようだ。
「初めましてルーティアと申します。
これは弟のディータ。
これから一年ほども居ませんが暫く御厄介になろうと思っております」
よしなにと丁寧にあいさつするルーティアに少女は顔を歪ませてふんと鼻を鳴らしルーティアを睨んでいた。
「いきなり嫌われたな?」
「まぁ、洗礼としては優しい物でしょうか?」
「確かに、前にもあったなこんな事」
「今思うと懐かしいと言うか大人げなかったですねぇ」
あははと笑う俺達にエンバーは何かを察してか肩を竦めて怖い怖いと震えて見せた。
その直感良い直感してるなと心の中で褒め称える合間にもクロームは俺達を睨みつける少女を無視して俺達を城壁の中へと案内する。
「ここは四層になっていて一階にあたる一層目は完全にギルドの倉庫だったり集合場所だったり、交流の場として使っている。
二層目がギルドの事務室だったり資料室だったりとまあ事務的な場所で三層目、四層目は居住区だな。
知っての通りこの国には人間の数よりも建物の数が圧倒的にない。
家族がそろっている物も珍しい。
怪我で一人で暮すのが難しかったり、幼くて一人ではまだ生きていけなかったり、魔物に家を壊されて以来住み続け帰ってこない家族を待ち続けたりとさまざまだ」
クロームの説明を聞きながら二層目に在るギルド室長室、つまりクロームの執務室へと招き入れられる。
ずーっとルーティアを睨みつけていた少女に幹部を集めさせ、揃った所で俺達の紹介をする事になった。
「今日からこの雌黄の剣のメンバーになる事になったルーティアとディータだ。
討伐隊に組み込むからみんなそのつもりで。
二人を迎え入れるに当たりガーネットより二人のアドバイザーとしてみんなも知ってるエンバーが当面彼らと共に行動する事になり、我々とも行動を共にする事になった。
入隊試験についてはガーネットの所でさせてもらった。
エンバーの一撃をいなしたディータとエンバーを瞬殺したルーティアだ。
文句は言わせない。
貴重な戦力が雌黄の剣に三人も増えた。
これを期に三人には今まで足止めしていた討伐依頼をこなしてもらう事にする」
その一言にクロームの背後に立っていた男が隣の部屋から分厚い書類の束を持って来た。
いくら紙が分厚いとはいえ紐で本のように止められた束はまるで辞書のようだ。
「では、私セイジ・ドーミーと申します。
隊長の補佐を務めさせてもらっております。
お三方の任務については私の方から紹介させていただきましょう。
なんせ、力だめしと言って無謀にも挑戦する者の後が絶えない為に私が管理させていただいております」
「所で俺達はこの三人パーティでいいのか?」
俺が質問と手を上げて聞けば
「パーティ?」
「えーと、グループ?チーム?部隊って事で」
うっかりゲームの世界観で聞いてしまって失敗と笑って誤魔化せば
「ああ、そう言う意味か。
その言い方も楽しそうだが君達は土地に不慣れな為にエンバーをリーダーにルーティアとディータ、そしてクレイ。
お前もチームに入ってくれ」
「判りまし……」
「ちょーっと待ってよ!
なんで私じゃなくてクレイなのよ!」
クロームとよく似た髪のさっきの女の子が机を叩きながら直談判を始めた。
「そりゃクレイがここの若手ナンバーワンだからだろ」
「何よ!私じゃ役不足って言うの!」
「イングリット、お前は黙ってろ。
そもそもここに在る依頼は総て最低でもSクラスからだ。
そしてここに綴られている以上ただのSクラスではない事ぐらい知らないわけでもないだろ?」
「だからって……」
「お前はまだBクラスなんだ。限りなくCクラスに近い。
ついて行けば確実に死ぬ。
お前に何かあれば母上にどうやって告げればいいんだ?」
夫も息子も孫も失った女王の悲しみをどう慰めろと言う言葉に勢いのよいイングリットは視線を反らす。
「クレイはこの任務を5個クリアできれば十分Sクラスに値する。
恵まれたチームで自分の特徴を理解して何が足りないか、何を伸ばせばいいか改めて自分の役どころを学んで来い」
「はい」
余計な言葉はなく、でも持ちかけられたチャンスを嬉しそうに受け止めていた。
「所で、先ほどお願いした私達の家の事ですが」
「ああ、セイジ、どこか売家があれば紹介できないか?
希望はここからエンバーまでの家の間で一軒家、できれば風呂付が希望とか」
「まぁ、いくつかありますので、クレイも一緒に新しいチームとの交流を兼ねて見学に行きましょう。
して、予算は?」
「とりあえず、この魔石でお支払をお願いしたく思います」
小袋から取り出しておいた魔石を見せればセイジはすぐにクロームへと視線を向けるも
「総て込々でこの値段で、だそうだ」
「承知しました」
冷や汗を垂らすセイジにクレイはエンバーに凄い魔石だけど幾ら位になるだろうと好奇心旺盛に小声でエキサイトしているが
「でもこんな良質の魔石を良いのですか?
お釣りが出ないですよ?」
「ええ、その点はクロームが換金していただけると約束していただいているので残りは手数料と手間賃、紹介料として取っておいてください」
「はー、こんな良い商売ができるなんて。
生きて見れるものではないですよ」
「はい。私達が前に御厄介になった方が日夜私達の旅立ちの日に備え探してくれたものです。
なので一つも無駄に出来ませんので」
変な紹介は止めてくださいねと言葉に出さずに念を押すルーティアにクロームの補佐のセイジも息を飲んで頷くしか出来なかったようだ。
「で、では、さっそく物件を見に行きましょう。
の前にギルドの登録としてこちらのカードに魔力を流してください。
後はこの国で統一している術……ああ、この小さな魔石が媒体になってるので壊さないようにしてください。
あとはこの登録番号と書類作成を私共の方でさせていただきますのでお名前をこちらに記入お願いします。本名でなくても大丈夫なので、代筆の必要はなさそうですね」
書類の名前の覧に名前だけを書いたルーティアに見習ってディックとだけ書く。
意図した事ではないが、馬鹿正直に名前を書く必要はないんだってとランが言ってたのを思い出し、当面ディックと言う通り名で行こうかと思う。
書類に名前を書き、カードと書類に共通の番号を記載し、同じ番号の札を俺達に渡して隣の部屋にいる部下に渡してから一つのファイルを持って俺達を案内してくれる事になった。
あまりに杜撰な仕事ぶりだから不安になり思わずルゥ姉を困らせるように駄々っ子になって書類を最後まで書くのを見させてもらった。
何故か関係ないのにその書類を書いている人の後ろで俺達をちらちら見ながら舌打ちをするイングリットの存在にルゥ姉さえなるほどと頷く始末。
苦笑するクロームに本当に笑っているだけでいいのかと心で訴えるも、最後まで手出しをさせずに登録を終わらせたのを見届けてからようやく家さがしに出かけるのであった。
最初はこの城壁にも近い物件だった。
魔物の大暴走があった折りに空からの被害が最もあった場所だっただけに建物の被害が目立っていた。
所々修繕をしている風景も見られるが、雨漏りする家は御免こうむりますと言うルーティアにそうですよねーとセイジも頷いていた。
それから通りを一本入ると商業通りから居住区に移り、建物の被害もあまり見当たらなくなってきた。
その中からそれなりに綺麗な一軒の鍵を開け
「この家では獣暴の乱ののち、帰らぬ父を待って母子5名が飢え死に……」
「次お願いします」
そんなやり取りを数回したのちに
「ここはどのようなお宅で?」
既に疲れた面々が一軒の長い事空き家になっていた家を見上げていた。
二人で暮らすには少し大きすぎるがそれなりに立派な家だった。
屋敷と言うには庶民じみているものの家の中をのぞかせてもらう。
「ここはもともと小さな宿屋でした。
この宿を経営していた夫婦は乱の折りに城壁の防衛で亡くなられて子供もおらずそのまま空き家になったようですね」
セイジが書類をぱらぱらとめくりながらルゥ姉は一つ一つ吟味していく。
玄関を抜ければ正面に受け付けがあって、空き広げられた一室には大きな部屋にテーブルがいくつか並んでいた。
食事も出していたのか奥には大きな台所はちょっとしたレストランのキッチン並みに大きく、そして色々と当時のまま残されていた。
キッチンからさらに奥へと向かえば更に部屋があり食料庫だろうか大きな棚が並ぶ部屋があった。
裏庭に続く扉から外を覗けば草むしりをしなくてはいけない状況だがそこそこ広い納屋があり、多分この宿が営業していた時は馬小屋だったのだろう。
室内に続くドアを覗けば見取り図を見ていたセイジがちょうど受付の裏側ですねと言う通り、廊暗い裏方用の廊下を通り向かう先はいわゆる事務所だった。
明るいグリーンの壁紙は何処かすすけているものの掃除をすれば問題ないと見ながら廊下を出て別の扉を見る。
そこはトイレだったり石が敷き詰められ、巨大な水瓶の在る、いわゆる水場だった。
「この国皆さんはなぜお風呂に入らないのでしょう?」
ルゥ姉の疑問に
「そりゃ、薪代も水代も高いこの国では魔法で身を清めるのが安いですからねぇ」
もっともな答えが返ってきた。
水も薪もここに来た道のりが示す通り希少な物なのだが
「でも水なんて魔法でちょいちょいだろ?」
俺は言いながら瓶を綺麗にしていっぱいに水を張る。
「おおー!」
「水系が得意か。貴重な人材だな」
「当分水不足は解決ですね」
何かすごく嫌な事が聞こえた気がした。
「あ、あの、なんか理解が追いつかないんだけど」
ルゥ姉もひょっとしての予測にこめかみを指先で支えながら恐ろしい返答を待っていた。
「ああ、他所の国の方はあまり知らないと思うのですが、この国の魔術師、魔法使い、そして魔導師揃って水魔法を得意とする者がいないのです」
「ありえねー」
速攻の突っ込みに皆さん苦笑し
「まぁ、全く使えないわけじゃないけど、どう頑張ってもコップ一杯の水が限度なんだ」
「どれだけ相性悪いんだよ」
「まぁ、私の両親、祖父母も揃って水魔法が使えなかったので、仕方がないと言う物です。
獣暴の乱の前はこの国は川と草原のそれは爽やかな国で町中に水路が引かれていてわざわざ水魔法なんて使わなくても水に溢れていた為に誰も水魔法なんて使わなかったのです」
と小さなな声で呟くセイジの言葉に悲しき遺伝の結晶でこの国は既に固められていたようだった。
と言うか、いつかの船上の出来事を思い出してしょうがない。
魔法使い過ぎて倒れては食料をたらふく食って魔法を使っては倒れては食料をたらふく食っての無限ループ。
嫌だ……
さすがにあれはない……
あの悪夢再びはない……
思わずルゥ姉に視線であの時の原因は俺達だからやったけどこれは違うだろと訴えればこの視線での訴えに何を受け取ったのか知らないがニヤリと弧を描く口元に俺の訴えが伝わらなかった事を理解した。
まあ、そうだよね。
ルゥ姉が面白いかどうかわかんない事に首を突っ込むわけないよね。
最近大人しかった為にすっかりこの性格を忘れていた数秒前の俺を殴りつけたいと後悔が圧し掛かっていた。
「姉弟とは言え私もあまり水魔法は得意ではありませんが、見ての通りディックはそこそこ使えます。
とはいえ、無償で奉仕するほど私達暇ではないので」
「有償ならと言う事ですか?」
ズバリとセイジが聞けば
「有償と言われても困りますね」
予想外にきっっぱりと断った。
二児の母となれど男前すぎる。
「使わない水をおすそ分け程度なら問題はないでしょう?」
ね?と何故かニヤニヤと俺を見るルーティアの提案にまあ、それならと頷けば興味なくなったのか次は二階を見に行きましょうと階段を上って行くのだった。
何とも言えない三人の視線に見つめられる中俺も二階へと向かう。
二階は6室の客間と屋根裏に続く細い階段があった。
大きなベッドがでんとおかれた、いかにも余裕がある奴の部屋と、他はベットが2つ置かれた部屋が3つ。残りはシングルベットが一つの部屋で、ついでに屋根裏を覗いてみれば二段ベットがいくつも並ぶ雑魚寝部屋だった。
戦時中映画の捕虜の部屋を思い出すような二段ベットにカーテンで仕切ってあるのを眺めていれば
「ああ云うのは金のない冒険者が夜を凌ぐだけの寝床だ。
冒険者になりたての奴らはまずこういう場所で寝る所から目標になってる」
なんせ、ここは暑いから夜でも外で寝れるからなと笑うクレイも苦労してきたのだろうかとぼんやりと考えるなか、
「まぁ、ここは悪くはありませんね。
ディック、貴方さえよければここにしませんか?」
「ルゥ姉が良いなら俺は文句ないよ」
「ではここで決定にしましょう」
赤い屋根のそこそこ大きな煉瓦造りの家を見上げながらルーティアの満足げな声に俺も頷いて了承するのだった。
雷とピカピカの差がそろそろなくなってきて電気落ちそうと言うか逆流してきそうで怖いっす。
これだから田舎は……




