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国とは

ブックマークありがとうございます!

珍しく続きましたが変らず週刊を目指して行きたいと思います!

せめて季刊にならない様に頑張りたいと思っております<ヲイ!

フリュゲールとガーランドの関係は驚くほど良くなった。

俺が薦めた様にガーランドの王はフリュゲールの王に季節の手紙を書き、フリュゲールの王はその手紙に返事を書くと言うやり取りを始めた。

一足早く冬を迎えた季節の移り変わりから周囲の様子、王宮の庭に在るオージェで王様自らシロップを煮詰めすぎて焦がしてしまった失敗した話、王宮の庭にもリコの実があり思わず食べてみた所をゼゼットに見つかって怒られた話など他愛もない話が書いてあり、ランもアデラから押し花を使ったしおりづくりを教えてもらい、その方法で漉いて作ったフリュゲールの押し花を混ぜての手紙の素晴らしさにガーランド王はそれを臣下に見せて回るのだった。

ガーランド王に乞われてゼゼットもフリュゲールの紙漉きを教えるのだが、ガーランドの女官達の間で流行り、好い殿方に恋文を送ったりするために使ったりと新たな文化が生まれていた。

ゼゼットからの報告では上手く軌道に乗ったドヴォーの飼育にドヴォーの乳を使っての発酵食品を作ったり、元来働き者の国民性に与えられた新しい事業は思いのほか早く浸透したと言う。

そしてイエンティから送り込まれるドヴォー織りの職人育成の交換留学、アデラが披露した新たなモチーフの刺繍も流行り、アデラを残して預かっていた子供達の見違えるほどの立派になった姿に次々に我が子もと交流は深まって行った。それほどにドヴォー狩りで見せた立派になった子供達の姿とランとコルネリウスのお揃いルックは可愛らしいと好評のようだった。主に女の子達の間で……

もちろんフリュゲール側も金属の精製技術や船の造船技術などを学ぶなどいろいろ進展はあるようだ。

仲良きことは良いかなと、今日もガーランド王に送る手紙に添える贈り物に川原で拾った綺麗な石を磨いて東の大陸で男女問わずよく身につけられると言うラリエットと言う一本の紐状のネックレスみたいなものを作る手伝いをするのだった。

時々ふらりとどこか出かけたと思ったらそんな石を持って帰っては磨いて、今では部屋の一角にはどこで集めたか知らない工具の揃う作業場さえできていた。

ちなみにオリヴィアはもちろんアデラ、フランはもちろん俺やルーティアからブレッド達ももらっている。アウリールの長い髪は綺麗に結い上げられた揚句お手製の髪飾りだらけの時もあるくらいだから、結構器用だなと巻き込まれないように注意はしている。

当然それを見たガーランド、フリュゲール問わずあまりおこずかいの多くない世代で綺麗な石を拾ってはそうやってプレゼントすると言った光景がちらほら見えるようになり、それを見た下種な大人がどう考えるかなんて自然の成り行きを黙って見守るしかないだろう。

いつの間にか随分とスタイリッシュした物に変り、婚前前の若いカップルが何かの記念に贈り合うと言う微笑ましい光景がちらちらと見られるようになったのは下種い大人の努力と言う物だろうか。

フリュゲールの軍人さん達も恋人にプレゼントしているのを見かけるあたり随分と良心的な大人でよかったと最終的に思うのだが。

発展と言えばアルトとルゥ姉の中もいつの間にか発展していた。発展何て起きてたんだと言うのが正直な所なのだが、いつの間にと言うのが大半の意見だと思う。

とある夜神妙な顔をして俺の部屋に現れたルゥ姉はとんでもない爆弾を落とした。


「どうやら妊娠と言う状態になっているのですがどうしたらいいでしょう」


何故か寝る時は俺の部屋のベットを占領するランもぽかんとした顔でその告白を聞いていたが……


「ええと、確認するけど父親はアルトでいいんだよな?」

「ご存じなら話が早いです。ハウゼルではない事は確かです」

「アルトはこの事知ってるの?」

「いえ、まだです。その前に陛下にも一応相談したくお伺いしたまでです」


ぴゅるるとシュネルは鳴くがランは「ああ、そうだね。そうなんだね」と返すのみ。

どんなやり取りしてるんだと心の中で突っ込みたいのはやまやまだがヤル事はヤってたんだと改めてただのヘタレじゃなかったかと感心する。

いやいや、そうではなくてだ。


「それよりも産むの?産まないの?」

「まだそれは、アルトに話をしてから……」

「ディ、アルトなら産めって言うに僕は一票」

「同じく俺も一票。ルゥ姉愛されてる」


良かったねーと言うも


「私は……」

「まだ時間はある。産めるなら今のうちに産んで、アルトに託そう。

 せっかく授かった命、こんなチャンス二度はないだろうから」


きゅっとルーティアの唇が結ぶ。

ここ生活がいくら楽しくてもが終の住処ではなく目的の為の潜伏先でしかない事は俺もルーティアも重々承知。

普通ならとっくに結婚をして、子供に囲まれて人並みの幸せを経験しているはずなのに選ぶのは苦難の道ばかり。少しぐらい幸せを噛みしめても罰は当たらないだろうと訴えれば、ベットに寝転がり頭にシュネルを乗せて黙ったままのランはルーティアが「そうですね」と小さな声で決意をするまで沈黙を守ってくれていた。


「ルゥ姉は不安なんだね?

 確かにルゥ姉の子供はアルトの家で家族と育つのが一番だと思う。だけどアルトの家でもあるしノヴァエスの家でもある。

 ノヴァエスの事情しだいなら僕が預かる。心配はないよ」


突然の言葉に俺はランの顔を見る。


「養子って言うんだっけ?

 ルゥ姉とディは僕の家族だ。その子供も当然家族だから。

 ルゥ姉の子は何があっても僕が守るよ」

「ラン……」


男前なランの言葉にルーティアは感動に涙ぐむも


「その前にアルトに報告しようぜ?

 まずはそれからだって」

「だよね。じゃあ、早速今からアルトに会いに行こう」


そうでしたと言うようにランがルーティアの手を引っ張る。


「あ、あの今から……ですか?」


既に就寝に着くために俺もランも寝間着、いわゆるパジャマに着替えている。

ルーティアは化粧こそ落してないものの、高い位置で結い上げている髪は降ろしていていつもと雰囲気は違い、いつものきりっとした雰囲気は成りを潜め無防備な状態と言っても良かった。

ランはルーティアの動揺なんて気づかずに手早く着替えてしまい、待ってと言う間もなくそのままのルーティアを連れて行ってしまった。

俺も慌てて着替えるもシュネルが早く追いかけろとぴゅるるぴゅるると急かす。

普段は判らないけど今は絶対遅いとかとろいとか言ってるだろうと心の中でこれでも一生懸命なんだよ!そんな文句聞きたくねえ!と涙を流すだけだった。


シュネルに案内されて遅れる事辿り着いた部屋は外郭に在る騎士団の会議室だった。

思わずシュネルとぽかんとその部屋のドアを見上げる。

おいおい、まさか嘘だろ?

騎士団会議室の衛兵さんにランに置いて行かれただけだから中に入れてくれとそっとドアを開けてもらった所から見えた部屋の中は沈黙が支配していた。やっちまった感半端ない状態だ。

そこには最奥に当然のようにブレッドがいて、手前にジルがいる。

ブレッドの側にいるはずのアルトはルーティアを抱きしめていて、ルーティアは必死の形相で逃げ出そうとしている。ルゥ姉ってツンデレ属性持ちだったのか?

取り残された皆様は次第に状況を理解していき、両サイドの人達とお祝いの贈り物は何にしようかとか相談を始めていて、ランは何やらブレッドの背中にぶら下がって話をしているようだった。

なんか平和そうだなあと他人事のようにあまり考えないようにしていればジルが部屋に入っておいでと手招きしてくれる。話が長くなるだろうからと空いた椅子を引き寄せてそこに座るようにと、揚句お茶まで出してくれた。

こんな夜遅くまで会議してるのに何かのんびりとした光景だなと現実逃避していれば


「どうやら子供はノヴァエスの屋敷で育つ事になりそうだね?」


ぼんやりとアルトとルーティアの言い合いを眺めていればジルは「これで跡取り問題は解決ですね」とのほほんと笑う。


「まぁ、正妻としてルーティアを迎え入れる事は叶わないと思いますが、子供は跡継ぎとして育てられるでしょうね」

「それって、正妻から見たらどうなんだよ?」

「面白くはないでしょうが、アルトはノヴァエス当主の地位を得る為に同年代の従兄弟を切り殺した経緯があります。

 私たち世代には有名な話題にもなったので、正面から咬みつくような人は居ないでしょう」

「おいおい、物騒だな……」

「安心してください。

 ノヴァエスの家系は代々愛に生きる一族らしいので、多少過激ではありますが愛しい人の為なら無茶の一つや二つ軽くこなしてくれます。

 かく言うアルトの父親も実は別人でしたと言う実績があるので、先代の当主もアルトが真に愛した人ならば強い味方になってくれるでしょう」

「なぁ、ノヴァエスの家って今ちらっと聞いただけでもまともに思えないんだけど……」

「安心してください。四公八家は家ごとにちょっと変わったな家系ばかりなのでそう言う物だと判っていれば気にもなりませんよ」


のほほんと言うジルにそっちの方が全然安心できねーじゃんと心の中で突っ込んでおく。

わいわいと収拾がつかなくなりかけた所でブレッドが手をパンと一度叩き


「とりあえず陛下とディックは帰って寝るように。

 そして陛下は明日学校に遅刻しない様に夜更かしはしない事」

「判ってるけど今日は何の会議してるの?」


それを今聞くか?と眉をひそめるも


「もうすぐ国が立って一年が経つ。

 四公八家と新たな騎士団軍部の面では形は出来ているが政治面の方が確定とは言い切れてない。

 元老院側の長の候補はそろってるが、今一つ色よい返事をもらってない。

 あまりに四公八家の地位が高すぎる故の問題は今に始まった事じゃないんだが……

 今まで散々こき使われてきたから元老院側は地位向上と職場の改善を求めてきた。

 元老院側はなくて問題ないが四公八家はなくてはならない血族だ。そちらの保護を優先しないといけないのは変らないから仕方がないだろうって問題が出てくるわけだ」


同道巡りなんだと言うブレッドの説明に俺は今1つ判りきらないが、ランはきゅっと眉をひそめて


「僕は断然四公八家の保護を優先するよ。

 結果元老院を取り潰しても構わない。

 元老院を重用して四公八家を失い精霊フリューゲルの加護を消してしまう事ほど愚かな事は出来ない。

 魔法を失ったこの国でそんな危険な賭けは出来ない。

 もし何かを言う元老院がいれば一度ガーランドにお願いしてガーランドに行って加護のない世界を体験した方がいい。

 魔物の恐ろしさに対面すればいかに人は無力だと言う事を知る事になる。

 自分の命の為に簡単にすぐさっきまで一緒に笑いあっていた人に代わりに死んでくれと願い実行できる恐怖を僕は知っている。

 四公八家側の権力が大きいのはその血を続けなければ加護が維持できなくなる代償だ。

 国民すべての命を背負う代償ならば安いぐらいだと僕は思う。

 そして四公八家は精霊フリューゲルにかけた呪いの償いの為に血を繋げる為だけに生き続ける運命だと言う事を忘れるな。

 仮令それがブレッドでもアルトでも、やがて生まれてくる子供だとしてもだ」


そう言ってランはブレッドの背中から下りてルーティアを見上げる。


「ルゥ姉の子供にはそんな運命を背負わせることになるけど、それでもよければ是非とも産んでほしい。

 森の民としてフリューゲルの妖精達は祝福しよう」


この言葉を最後にランは俺の手を引いて部屋を後にした。

シュネルがランの頭の上で囀る中ランは苦笑してる。


「ちょっと言い過ぎたかな?」


何てシュネルに向かって言うもシュネルは否定するわけでもない様に当然だと言うようにぴゅるると囀る。


「アリシアがあの場に居てくれるから後は上手く話しあえると思うけど、みんなこんな遅くまで会議してて大変だね」


まるで他人事のように言うランと部屋まで戻ってきて前々から考えていた事を口にする。


「ラン兄はさ、王って何だと思う?国ってなんだと思う?」


そんな質問をする。

一族総ての首を切り落としたブルトランの王、そして未成年の子供を残して処刑したフリュゲールの王。

王は王を潰すための存在なのかとこの世界の考え方に時々ついていけなくて聞いてみれば


「王なんて誰もがなれるすげ替えの利く存在だ。

 僕だって一人で戦争に乱入して勝利しただけで王様になった存在だ。

 だから、殺した人の分恨みを持たれるし、今も何時殺されたっておかしくない王様なんだ。

 そんな王様の国だから、こうして成り立った国だから、国は滅びる物なんだよ」


代わりに誰かが立ってすぐ生まれる物だけどねと笑顔で言う。


「俺にはやっぱりわからない。

 ユキトの国は1600年以上続いた国だし、王様が国を動かす力が無くても誰もが王様って崇めるし、滅びるなんて考えたことなかったから、この国の、この世界の事なんて理解できなくて……」

「ならディはさ、ブルトランと決着で勝った時のイメージってできる?」

「イメージ?」

「そう。どんなふうに生きたいか考えた事ある?」


ゆらりと揺らめく炎のように輝く瞳が俺を見つめる。

一応この国のような国政を取りたいと思って勉強をしているがそう言う事ではないのだろう。

もっと一個人としての未来の話しだろうと黙って考え込んでしまえば


「僕の時は、ただブレッドに、アルト、ジルに生きて欲しかった。

 僕がいなくても笑って生きてもらいたかった。

 ブレッド達が、この国で出会ったみんながこれまでと変わらずに生きてくれればそれでよかった。

 願いは叶って、その中に僕がいて、みんなが笑ってくれている。

 僕の為に怒ったり泣いたりもしてくれて、僕は【愛しい】って言葉をやっと理解できたんだ。

 ディはハウオルティアに戻った後の生活のイメージってできる?」


若干12歳にしてそんな選択をしたランの言葉に俺は思わず黙ってしまう。

魔法がイメージを重要としたが、この旅の後に続くイメージ何て考えた事が無くて。

ランの言葉に俺は言葉を失ってしまった。

暫くの間、ランは俺をじっと見つめていたが、やがて黙ったまま、俺の思考の邪魔しない様にそっと部屋を出て行くのだった。



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