懊悩のアデラ
お久しぶりです!
別所で20万打してきてちょっと満足したので復活してみました<殴!
別所……二次で悶えながら続けますので<蹴!
気長にお付き合いくださると大変うれしいです!<投!
ルーティアの保育ではアデラには少々手こずっているものの恙なく教育が施されてるようだった。
「今日は子供達を連れて城の一角の庭園に散歩に行ってみようと思います」
初めてのお散歩との一言に、一小隊の護衛と、外での食事、つまり弁当の要請があり、俺もその様子を眺めにランと一緒に参加する事になった。
フリュゲール王と言うのがばれたらまずいし、俺がルーティアの義弟と言うのがばれると何があるかわからないのでお互い仮の名前を名乗る事にした。
ランは船上で会った時のレツで、俺は前世の名前、ユキトで。
「って言うか、ランはまずいんじゃね?親の仇だし」
「僕だってそう思うけどルゥ姉がさ」
「捕虜の言葉なんて気にする事ありません。
それよりも王と言う立場の以外の貴方を知ってもらいたいだけですので。
ですが、後々羨まれても私を恨まないでくださいね」
「勝手だなぁ」
「そんなのをいちいち気にしてたら埒がありません」
言いながら一小隊の護衛を連れてルーティアは捕虜の子供達の部屋の扉を開ける。
前回はあまり中を見る事が出来なかったが、今回は室内に入ってゆっくり見る事が出来た。
大きな室内の一角には二段ベットが占めている。
一応その上だけが各自のプライベート部分のようだ。
ベットメイクは皺1つなくちゃんとできていて、足元には数少ない着替えの服がすべて同じ形となって折りたたまれて小さな箱の中にしまわれているのを見て、ここはどこの軍隊だろうかと一瞬頭を悩ませる。
頭上の棚にはコップやスプーンブラシなど、数少ない身の回りの物があり、多くはないけど手作りらしい人形と言った物が置いてある当たり故郷の荷物も少しは持参する事は許されているらしい。
じゃなきゃかわいそうすぎるよなとぼんやりと考え名がら、家を出る時色々荷物を持たせようとした両親や兄弟の姿を思い出して、途端に懐かしくなる物をぐっと押さえつける。
「今日もきちんと出来たようですね。
約束通り外へ連れて行ってあげましょう。
と言っても城内の庭園です。
捕虜と言えど健康は考えなくてはいけないので、運動を兼ねてこの城の南側の場所を用意していただきました。
そして、彼は背の高い方がレツ、そしてもう一人がユキト。
この国の一般的な子供です。
他国の人間とも交流する事も勉強の一環なので、ご一緒願いました。
では参りましょう」
一般的とは何を持ってそう言うのだろうと二人で思わず顔を見合わせてしまうも、俺達は笑顔を浮かべてよろしくーなんて手をふれば、既に小さな子供達は警戒心を解いて手を振りかえしてくれる。
と言うか、興味を持った子供達が近くによってきて今から行く庭園について話しかけてきた。
アデラは少し警戒してるのか何処か睨むような視線を向けられるものの、俺は無視して一番小さな子供の手を握って庭園には噴水があり、池がある事を教えてあげた。
「池には魚も棲んでるんだよ」
「ユキトが提案したんだ。ビオトープって言うんだっけ?
生き物の住居環境をなるべく自然に近い形にするんだって」
「水草や水生植物を育てれば見てても楽しいし、虫や鳥なんかも羽を休める場所にもなる。
生態系が確立されれば人の手で作られた池でも生き物をお世話する必要もないし、綺麗な魚も育てる事が出来る」
「妖精達の遊び場にもなるしね」
そんな話をしながら小さな子に合わせてゆっくりと庭園へと向かう。
勿論一個小隊の皆様もご一緒に大移動。
途中子供が転んで泣き出すと言うハプニングもあったがアデラがガーランドの子供ならこのくらいの事で泣くのではありませんと年長者らしく窘め、そしてユキトを見習ってその手を引っ張っていた。
一個小隊の皆さんもその光景に微笑ましく笑みを浮かべているが、よくよく見ればその顔触れの中にはブレッドを始めアルトとジルもいる。
お前らどこまで親バカなんだよと呆れてしまうのは隣にいるランも同じようで。
やがて見えてきた庭園に子供達が駆けていく。
池の側には少し大きめの岩が並んであって、暑くなればそこから飛び込んだりしても遊べるだろう。
水源がどこだか知らないが小さな噴水からあふれ出した水はそのまま池に流れ込み池からあふれた水は城の外郭から直接外へと流れていく。
ちょうど伸ばされた蔦を伝って遠くの水路へと延びていた。
まさかこの城ここまで計算されているのかよと思うもシュネルの用意した城と言うのだからきっとそれくらいの小細工ぐらいあってもいいだろう。
水生植物はまだ提案したばっかりだから安定はしてないが、それでもその陰で暮す魚たちには十分な陰で、子供の声に驚いた魚は植物の影から岩場の隙間へと去って行ってしまった。
「こんなのガーランドでも見た事ない」
「そうでしょう。私もこんな野原にでもある池を手作りした実例何て見た事ないので是非とも見ていただきたかったのですから」
ルゥ姉がそう言いながら東屋にアデラと一緒にベンチに座り
「ガーランド様式の庭園がどのような物かは存じませんが、私の知る限り庭園に造られた池とは綺麗に切りそろえられた石やレンガで枠を作り、中央に謎の彫刻を施したものから水がちょろちょろと流れ出ると言った物ですか。
ああ、ただどこからか水を引いて石畳の水路を流れていくと言う物もございますが?」
「そうね。ガーランドでも似たようなものだわ。
もっともガーランドは乾いた森林の国なので水を溜めると山が崩壊するために必要な分しか水瓶に貯める事しかしません。
城内や村にも当然貯水槽もありますが、乾いた森林と言うように森は深けれど水には恵まれていません。
夜露や降りてきた雲の水分が生活水の総てです」
「なるほど。雨のような水はもっと標高の低い、たとえばこのフリュゲールの為の物になるのですね」
「ガーランドには精霊様がいません」
アデラは池のほとりで遊ぶ子供達を眺めながらぽつりと言葉を発した。
「精霊様がいないので妖精も居ません。
我々が崇めるアウリール様、アリシア様、ウェルキィ様はこのフリュゲールを守護する役目の方。
ガーランドの物ではないからその恩恵は欠片もありません」
「なるほど。精霊がいれば乾いた森林なんて物にはなりませんね。
きっと水と森の国と呼ばれていたでしょう」
言えば悔しそうに膝の上で握りこぶしを作っていた。
「何とかしてアウリール様だけでも我らの精霊様となっていただきたかったのに、そうすればみなもっと暮らしやすくなったはずなのに」
「そして更に暮らしやすくなってほしくてウェルキィ、アリシアも手に入れようと戦争は尚も続くと言うわけですか。
ですがアウリールは精霊ではなく聖獣です。精霊になれるのでしょうか?」
子供の思いに大人の思いを上乗せすれば、彼女は「なれる!」と言いたかっただろうがその言葉を寸でで呑みこんだ。
「フリュゲール王はずるい。
精霊様と一緒にアウリール様達を総て独占している。
この国が豊かなのを独り占めして父上、母上、兄上、姉上を皆殺した」
「確か一人お国に残されていると聞きましたが」
「フリュゲール国に監視された状態でガーランドの王と言えるでしょうか。
これはまるで生贄です」
「敗戦国なので当然でしょう。
ですが、その兄が未成年であったから首の皮一枚つながった状態なのでしょ?
他国の人間なのでよその国の事に感情を入れる事無く見て言いますが、フリュゲール王のした事は戦争に勝った国としての決断として間違いではありません。
既に正当な王族が居ないガーランドに置いて、自分が王族だと口に出す者はこれで現れる事は無いでしょう。
見つけ次第殺される事が前提となるので。
そして貴女の兄を筆頭に血統が残ります。
貴女の兄を守る為に今度こそ官民一体としてガーランドを守る事になる事でしょう。
貴女と言う子が残せる血をフリュゲールで監視する事で、奸臣の歯止めにもなりましょう。
政治的にも見事と言いたい所ですが、12歳でその冷徹な決断を下せたフリュゲール王こそ私は素晴らしいと思います。
感情を殺して戦力を根こそぎ奪い、そして戦争の理由すら上げさせずに沈黙させて既に1年ですか?
かつ、正常に機能してない国を乗っ取りと言う形で正常化する為に、信頼の厚い騎士団を送り込んでは教育に努めさせると言う、サービスにもほどほどがあります」
「そんなの!」
「西の国のハウオルティア国がブルトラン国に戦争に負けたと言う話は聞いた事ありますか?
つい最近なのでどこまで話を聞いたか知りませんが、かの国の王族は一族総て根絶やしにされたと言います。
しかし、唯一の残った未成年の子供がおりましたが、その子供すら命を狙われました。
国財はすべて没収。
精霊の居る豊かな国同士なはずなのに乗っ取られ、政治も兵も総てブルトランに染まり、有能な兵は総て極寒のブルトランの最北の地へと送られ、処刑されたと聞います。
さて、どちらの王が人道的と言うのはどうかと思いますが、王の器としてましだと思います?」
「そんなの、私は知らない……」
そっぽを向いて現実を直視しない子供にルーティアは視線を池へと向け
「この大陸の遠く東には別の大陸があると言います。
あちらの大陸ではどの国も精霊の加護もなく、私達と同じ程度ん文化を持っていると聞きました。
貴方達に必要なのはいつまでも精霊に頼る事ではなく、精霊から自立し、そして自らの手で国を豊かにする事なのでしょう。
考えなさい。
この国は精霊が居ても代わりに魔法文化を失い、代わりに豊かなくらいの知識が溢れています。
ここにヒントがあると私は思うのですが?」
そう言い残して立ち上がり東屋から出る。
背後で警護と言う出で立ちで一般兵の姿に紛れたブレッドとアルトをちらりと見て池で小さな魚を捕まえて遊ぶ子供達の所に足を向ける。
一人東屋で自分の手ばかりを見て顔を揚げれない少女には考え事をする時間だけはたくさんある。
考えなさい。
それは私達にも言える事で、ブルトランの王の前に立ち勝利した後の事を考えなくては明日の未来も考えれない。
その為の時間は決められている。
ディータの16を迎える頃には自分の命も決まる。
命が続ける為に何をすればいいのか、預かった心とどこまでも共に歩むためにも考えろ。
見上げれば一面の青空に浮かぶ白い雲。
ハウオルティアより青の濃い空を長い事見上げて、ゆっくりと視線を池へと戻し、子供達と同じように池へと足を入れる。
スカートが池の水を吸い上げ重くなり、歩くたびにサンダルと足の隙間に砂が入り込む。
戦場でしか知らなかった感触だが、今は悪くはない。
「ルゥ姉スカート……」
「全員聞きなさい!
学ぶ時も遊ぶ時も全力で!
そして洗えば綺麗になる服など気を遣う事ありません!」
そう宣言して池の中の土を使って泥団子を作り、その展開に驚く警護の兵、たとえば次の展開はどうなるんだとのんびりした顔のアルトとブレッドの方を指さし
「足を鍛えたのなら次は腕です!
さあ、あの若いお二方が的になってくれるそうなので力いっぱい当てて行きましょう!」
「おいちょっと待っ……」
「ユキト頑張らなくちゃ!」
「アデラ!そこにいると巻き込まれるぞ!逃げろ!!!」
「え?ええ?!」
わーい!と、泥団子を作ってはアルトとブレッドに向かって投げつけるランを筆頭に子供らしい顔ではしゃぐ子供達。
アデラは無事脱出して別の東屋の方に逃げて恐ろしいと震え、巻き込まれてたまるかというようなジルを始めとした警護の人達も同じ東屋に逃げている。
髪も泥だらけになって指示を出すルーティアの指示に追いつめられた二人は見事泥になった揚句、この泥団子合戦に参加して……
全員誰が誰だかわからないくらいの泥だらけの姿になった頃、ようやくこの戦いは幕を閉じ、最後は全員で掃除の時間と荒れてしまったビオトープの再生、そしてディータの水魔法による洗浄の後、久しぶりの室外での運動に恐ろしいまでの食欲の子供達の笑い声が響く昼食に、さすがのアデラも無意味な抵抗をする事はなくなり、ようやく笑みを見せる日が始まったのだ。




