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王族と言う名の希少生物

妖精騎士団の会議室も外角にある一室だった。

最初にランと行った会議をしていた部屋よりも幾分優雅さのある造りの部屋で、やはりブレッドを筆頭にあまり多くないと言う妖精騎士団の人達がそろっていた。

ブレッドとジル、それにアルトを含めた四方八家の当主。

初めて見た人はもちろんイゾルデさんもカールもこの場に居た。

この人たちがこの国の中枢を握る人達かと眺める。

妖精騎士団の地位はブレッドを筆頭に四公と八家、その後に過去の戦争での英雄などなど。

連れそう妖精の優秀さがポイントらしいが、俺には正直判らん。

そんな人たちの前に俺とルゥ姉はならべられ、ブレッドからの軽い紹介をさらっと流す。


「ディータ、彼には陛下の要請で妖精騎士団での保護が決まった。

 同時に彼の姉のルーティアも保護の対象となる。

 護衛にはヴァレンドルフ隊に担当してもらう」


踵を鳴らして敬礼するその姿を見てそう言えばジルの名前がジルベール・ヴァレンドルフだっけと思い出す。

ジルとしか認識がないって言うのも失礼だよなと心の中で誤りながら、淑女として隣に立つルーティアをちらりと見上げる。

ここで何もしでかさないでくれと。

もっとも、一部の人だけが知ってる紅蓮の魔女と言う二つ名を知っているかいないかで彼女の印象は変わる。

細身だけど、でも出る所はきちんと出ている悩ましい姿に素直に喜んでいる人達は哀れと言うしかないだろうか。


「彼女ルーティアには話し合いでガーランドの捕虜の面倒を見てもらう事になった。

 彼女から色々な要請が来ると思うがその時は皆で手伝ってあげてほしい。

 ディータには本来学校に行く年なのだが、護衛対象として妖精騎士団で世話をする事になった。

 とりあえず俺の周辺で細々と教えるつもりだから、そのつもりで」


チラリと俺へと視線を落とす。

働かざる者食うべからずネ。了解しましたと頷き


「後は皆も説明受けたと思うが西のエンダース当主が空席となった。

 後継者、前エンダースの従兄弟の息子にあたるコンラディン・ベッカーと調整中だ。

 コンラディン・ベッカー・フォン・エンダースと名を改める予定だ。

 フリューゲルの指名だから俺達が口はさむ余地はない」


そこですっと誰かが手を上げた。

ブレッドはちらりと視線を流してどうぞと言う。


「議院の方の調整はどうなりました?

 そちらの意見も……」

「必要ない。

 それに議院の方も一度解散して調整に入る。

 宰相にブルクハルト・チェリウスを招く予定だ。禁軍はこのまま俺が預かる事になるが、誰か俺の代わりになりたい者はいないか?」

「さりげなく何寝言を言ってるのですか」


思わず呟いたルーティアのツッコミに俺も頷かずにはいられない。


「いや、だってめんどくさいだろ」

「ほんとにめんどくさかったらアルトに押し付けちゃえばいいじゃん」


思わず提案をしてみるが


「いや、あいつが総隊長になったら女士官の制服をみんなミニスカートかショートパンツにするって言うから女士官からの脅迫…… 要請で却下だ」

「人を選ぶ服装だね」

「まったく男と言う生き物は単純で困ります」


やれやれと頭をふるルーティアから視線を反らすアルトにご愁傷様と笑っておく。


「それにブレッドの地位は陛下の指名だから、陛下以外が変更できるわけないだろ」


呆れて言い返すアルトに盛大に溜息を吐いて見せて


「誰か陛下を説得してくれ」


俺は森に行きたいんだと呻く文句に誰もが諦めろと失笑を零す。


「あとは、南西のマーダーもようやく当主問題に決着がついた。

 初めての人も居るかと思うがカール・フォン・マーダーだ。

 たぶんみんな知ってる彼の兄のトビアスが補佐に入る。

 みんなも助力を頼む。

 あとはベンソン商会だ。

 陛下に暴行を行った罪によりリズルラントに預かってもらう事になった。

 陛下の怪我は大したことなく、陛下のご意向で極刑まではしないとの言葉。

 その場にいたリズルラントの新規事業の立ち上げの労力として生涯服役となる。

 ベンソン商会の後釜をマーダーが再配する事になるが、初めての仕事が大規模で大変かと思うが、トビアスがいれば問題なく進める事だろう。

 後は……

 そうだった。

 算盤と言う算術を今騎士団の一部で教育中だ。

 やがて全軍すべてに広め、子供の教育にも入れていくつもりだ。

 見本となる騎士団には全員必須の能力となる。

 今教本を作っているからそれを参照に各自マスターするように」


そう言って解散となった。

数日ぶりの再会となったカールとイゾルデさんが残り、彼らを連れてブレッドが自分の執務室へと移動する。


「それで、私の生徒は何所です?」


ルーティアが胸の所で腕を組み、さっきまでのおとなしそうな淑女とした姿はもう欠片もない。

というかだ。


「あの捕虜の子供達は一体どうするつもりなのですか」


イゾルデの厳しい顔にカールの難しそうな顔。

アルト達は捕虜達と近いせいか別段変化は見られないが


「とりあえず紹介をしよう」


ブレッドは騎士団の上着を脱いで案内してくれる。

フリュゲール指折りの地位に着くと言うのに誰よりもラフな格好をして歩く総隊長様にすれ違う人達はそれでも頭を下げる。

理不尽だろうなと思うも黙ってその後ろに着いて行く。

アルトとジルも一緒にみんなでいけば城をぐるりと一周する通路を歩き、北側の薄暗い一室へと案内された。

ノックもなくドアを開けてドアの前を避ける。

何事かと思えばいろいろな物が飛んできた。

コップから毛布、鉛筆などなど。

やがて飛んでくるものが無くなり、ようやく室内へと入る事になった。


「相変わらずだなお前達は」


荒れ果てた室内は最初はちゃんと整えられていた跡がある。

捕虜として扱われているはずだが、どう見てもちゃんとした扱いをしている。

一人の女の子を守るように並ぶ子供達。

その女の子は何処か勇ましい顔つきをしていて、他の子供達より身なりが少し良い。

体格も、肉付きも…… ランと同じくらいの年齢だろうが未だにまっ平らの所は割愛しよう。


「この室内では私達の自由は約束されているはずです」

「確かに。そして俺達の指示には従う事になっていたはずだが」

「自由の時間までは干渉しない約束でしょう」


ああ言えばこう言うで思わず肩を竦めてしまうも


「それより紹介をしよう。

 君達に教師を付ける事にした。ルーティアだ。

 彼女の言う言葉は絶対だ。従うように」

「初めましてルーティアです。これは弟のディータ。どうぞよろしく」


言うも全員が無視をする。

笑みを浮かべたままのルーティアが返事を待てど返事はなく、それどころか好き勝手に遊びだす始末。

やれやれと言うように頭を痛めるブレッド達だが


「なるほど。挨拶もできない田舎者の集団でしたか。お里が知れますね」


くすくすと意味深げに笑うルーティアにこの集団のボスがキッと鋭い視線で睨みつけてきた。


「貴女に何が判るって言うのよ!」

「サル如きの考え何て私が知るわけもないでしょう」


挑発を続けるルーティアに簡単に乗る少女。

勝負見えたなと、空笑が零れるが


「お黙りなさい!私はガーランド国の…… 唯一の王女のアデライード!

 アデライード・ブリッタ・ガーランドよ!」


金の長い髪を編み込んで結い上げた勇ましいまでの姿だが


「敗戦国の姫とは言え私は誰一人と特別視は致しません。

 それが弟のディータだろうが、この国のフリュゲール王であろうが。

 ゆえにその無駄に長ったらしい名前は今のサルには不釣り合いなのでアデラと略しましょう。

 家名なんて捕虜には関係ないのですから。

 そして生贄になった子供達も名前を教えなさい。

 どうせ冬を越えられない子供達を適当に見繕って差し出された程度の命でしょう?

 無事冬を乗り越えさせてくれたフリュゲール王に恩を返すべくその命を命でお返ししなさい」


容赦ない言葉にひるむ子供達。

そして顔を真っ赤にして屈辱に震えるアデラが手元にあったコップを投げつけるも


ボッ……


ルーティアが炎で一瞬で燃やし尽くしたコップに子供達は震えあがる。


「なに、今の?

 妖精の姿が見えなかったわ?!」


思わずと言うように叫ぶアデラにルーティアは意地の悪い笑みを浮かべ


「あれぐらい妖精の力なんてお借りする必要ないでしょう?

 この程度の芸、自力で出来て当然ですわ」


バフッと炎を手の平から吐き出す初めて見るだろう魔法に怯える子供達に恐怖を刷り込んでいく。


「さて、部屋から放り投げられた物は必要がない物ばかりと思ってよろしいですね?

 ごみはきちんと片づけなくてはいけません。

 そしてそれらはあなた方には必要のない物だと認識します。

 以後この部屋にそれらを持ち込む事を拒否しますが、燃やしても構いませんよね」


よろしいですか?

食事をするのも水を飲むのも総て手でしなくてはいけませんがと付け加えた言葉に子供達は真っ青になる。

ガーランドよりも暖かいとはいえまだ毛布が必要な季節。

一番幼い子供が慌てて毛布を取りに来るのをきっかけに誰もが自分の使っていただろうコップや毛布、鉛筆やスプーンをとりにやってきて、その光景を唖然と眺めていたアデルにルーティアは鼻で笑う。

意地が悪いもほどがあると思うも、子供達はもうルーティアの一挙一動に注意を向けて、次の言葉を待っている状態だ。

恐怖で支配は完了された瞬間と見ていいのかと頭を痛めてしまう。


「ではせっかくなので部屋を片付けましょう。

 檻の中とは言えサルの住処ではありませんので。

 アデル、貴女がこの部屋の主ならこの部屋のルールを明確におっしゃって下さい。

 もしないのでしたら私がルールを作って差し上げましょう。

 大丈夫です。こう見えても私は部下を持った事の在る身。

 埃の一つもわずかな歪みも、弛んだその精神から叩き直す事にかけては他の隊からも学びに来る程度に自信があります。

 さあ、一秒でも早く人として認められたくば時間を無駄にするのはもうおしまいにしましょう」


良くわからないが、これ以上ここに居ない方が精神的によさそうだとこの部屋の扉を閉める。

それを合図に軽い子供達の足音が一斉に動き出したのをドア越しに聞き、誰ともなく視線を合わせる。

ほっとくのが一番だと。




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