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夜の外郭眠れぬ花城

もうしわけありません!

気づいたかと思いますが同じ話を二回もアップしてました。あわわ……

今回のが正しい物ですのでよろしければ読み直しお願いいたします。

アウリールの夕食は確かに美味しかった。

やや塩分控えめ、肉が多め。

俺好みの食事だが、焼き加減がレアすぎてもうちょっと焼いてくださいと言う所が難点だった。

何でもアウリールさんドラゴンらしく生肉を好むようで、これ以上焼くと美味くないと言うのが彼の主張らしい。

確かに美味い生肉料理はいくつもある。

生ハム、カルパッチョ、ユッケ、馬刺し、たたき、ルイベなどちょっと考えただけでもいくつか出る。

だけどやっぱり美食とは縁の遠い田舎の生活だった為に食べた事があるのはスーパーでもおなじみの馬刺しぐらいしかない。

確かにアウリールはこれ以上焼くと美味くないと言うが焦げ目も旨いという事を是非とも理解してもらわなくてはいけないと思うと言うくらいのレアっぷりだった。

彼の料理になれているブレッド達はさりげなく遠慮してスープを堪能していたが、血も滴る肉料理に俺はもちろんルゥ姉も少し顔が引きつっていた。

この世界生食文化ないから仕方ないよねと思うも、俺としては一体この肉は何なんだと言う方が気になって仕方がない。

まぁ、そんな食事を終えてこのお子様の体は睡眠を欲求し始めるから欠伸を零しながらランに手を引っ張られて早々に自分の自室へと俺は行く事になったのだが……

この後何が起きるかなんて俺の知らない事だ。



「それにしても早々おねむとは本当に子供ですねぇ」

「いやいや、9才だったか?あの年で俺達と同じように動いていたらああなるだろ普通」

「私達と同じように動こうとする方が普通ではありませんよ」


苦笑を零すジルにアルトもふむと頷く。


「俺達の周りには規格外の子供しかいないから普通の子供という感覚が今一つ理解できん」

「悪かったな規格外で」


むすっと渋面を作るブレッドにアルトもジルも口元に笑みを浮かべ


「ルゥ、このバカはディぐらいの年頃の時大人顔負けの剣術と知識で俺達をぼっこぼこにしてきやがったんだぜ?」

「はい。正直あの小さな体でどこに体力と剣の技術があるのかと本気で自分の目を疑ったぐらいですから」

「おやおや、それは将来頼もしいではありませんか。

 いえ、今も十分頼もしいですしね」


ルーティアまでそう言うのかと言う視線に誰ともなく笑みを零してしまえば


「俺をからかうのなら先に上がらせてもらう。

 軍と騎士団の方に予定より早いが帰郷の連絡入れてくる」

「じゃついでに俺達の分も頼む。

 俺達はこれからの予定を少し話し合ってから上がるな」

「では私は隊舎の方へと一回顔を出してきます。

 昨日と今日の事もあるので話だけしておきます」


そう言ってジルもブレッドと一緒に部屋を退出してしまい、既に食事を片付けたアウリール達はとっくに自分の縄張りへと戻って行ってしまっていた。

急に寂しくなった空間にお互い正面に席を取って


「さて、ルーティアにはこれから外郭の一室で魔法の論理をご教授してもらう事になるのだが、

 人数とか何かリクエストはあるか?」

「そうですね。これと言って特には。

 ただ実演しながらの方が判りやすいと思うので室外へと出入りしやすい場所がよろしいかと。

 それと真剣に魔法を知りたいと思う方をお願いします。

 失敗すると命を失う事もごく当たり前にあるので、遊び半分で学ばれても迷惑です」

「了解した。一応応募は掛けてみるが、フリュゲールでは魔法は憧れだ。

 最初は煩わしい事も起きるだろうがそこは勘弁してくれ」

「安心してください。そういった者はふるい落とすだけなので」


ニヤリと笑うルーティアにアルトもいらん心配だったなと苦笑。


「じゃあ、時間は遅いが一応場所の下見にでも行くか?」

「月夜の散歩とはそれは素敵ですね」

「夜のこの城も綺麗な物ですよ?」

「それは楽しみですね」


言いながら外郭へと足を運ぶ。

柔らかな白乳色の輝きを放つ建物の中を抜ければ、漆黒の夜が満天の星空を抱えて広がっていた。

そして見上げる花の城は夜の静けさを邪魔しないように柔らかくそして仄かな輝きを漂わせながら真っ暗な街並みに眠りを邪魔せぬように灯していた。


「幻想的ですね」

「この城が起動したときは皆で頭を痛めましたが、このような景色を見せられたら誰もが文句を言わなくなったくらいですから」


蝋燭の明かりだけでは心もとない夜だったはずなのに、貧困富豪関係なくすべて等しく明りを灯すこの城の優しい輝きに誰もが息を呑んだ。

月よりも明るく、そして太陽ほど眩しくもなく、心細い夜でも、この城を見上げれば少しだけほっとするそんな優しさに包まれながら朝を迎える。

精霊の居る国は豊かだ。

良く聞く言葉だ。

この年になるまで精霊がいるとは正直信じていはなかったが、精霊のいないと言われている国と比べれば確かにこのフリュゲールは豊かだ。

天候の災害も魔物の被害も、そして飢えと言う貧困も計算でき、手を差し伸べれば収まる範囲なのだから本当に恵まれてると言っても良い。

そして千年ぶりのこの国の精霊の出現。

圧倒的な存在感とその人知を超えた力で、俺達は守られる存在だという事を嫌と言うほど心に刻みつけ、そして自由に生きよと言うのだから本当にちっぽけな存在だと理解させらる。

だから俺達は精霊を敬うのだと無意識に剣を捧げ、膝を折るのだ。


「それにしても本当に美しい。

 花の城の輝きを受けて四公八家の陣でしたっけ?

 光を分け与えるように輝いて、このフリュゲールの地を千年の昔より守り続けているのですね。

 ああ、魔力を見る事の出来ないアルトにこの景色の素晴らしさをどうやって伝えたらよいでしょう」


感動してかふふふと楽しそうに笑うルーティアにこの景色を見慣れたアルトはそれこそ釘づけだった。

最初は確かに女性としての魅力にあふれた美しい人だと思ってたのに、圧倒的な戦闘力と突拍子もない行動、そして少女のようにくるくると回りながら景色を楽しむそんな彼女に間違いなく恋している、愛おしいと心は訴えている。

だけど、彼女は何れ旅立つ人。

この手を指し伸ばしていいものかと思うも、彼女なら間違いなく払い落とすのは考えなくても理解できる結果。

そして八家当主と言う自分の使命。

どう考えても良き友で居ようが最良の答えなのだが……


「ああ、くっそ……」

「どうしたのです?」

「いや、ちょっと考え事。

 悪いがすぐそこで待っててくれ。

 部屋の鍵を忘れた」

「あなたらしからぬ失態ですね」

「こう言う事はいつもはジルに任せてたんだ」


ちょっと行ってくると駆け足でこの場からとにかく離れる事にする。

もう決めた決意が揺らぎそうで、ポケットにしまってある鍵の重さを確認しながら心が落ち着くまで少し物陰に隠れて目を閉じて深呼吸を繰り返すのだった。


ルーティアがトラブルメーカーと言うわけではないが、トラブルを楽しむ傾向にある事を俺は失念していた。

そしてトラブルなんてそうしょっちゅうあるもんじゃない物だと信じていたのは当然の事だろう。

昨日今日と色々な事が続き、そして安住の地に辿り着いてまだトラブルが起きるなんて誰も思ってもいない事だし、予測なんて精霊フリューゲルでさえ不可能な事だろうから。




「今晩は。見ない方ね?」


声をかけられて振り向いたルーティアは同じ意匠の服に身を包んだ三人の娘に声をかけられた。


「はじめまして。こちらには友人を頼って来たばかりですので」


どこかイゾルデが着ていた隊服にも似たそのデザインに


「ひょっとして軍の方ですか?

 これは夜まで見回りお疲れ様です」


一応客人として淑女の礼をとるも三人の娘は黙ったままルーティアを眺めるだけだった。

きまずい沈黙の中三人の娘の真ん中に立つ一人が


「所でご存知です?部外者は夜の城には立ち入り禁止ですのよ?」


育ちがいいのかどこか金持ちの娘臭さを漂わす一人の主張に頷く様に左右の娘達も「そうですわ」と喚く。


「ですがここで待っているようにと待ち合わせているので」

「おーい、そこの奴ら、こんな時間何をしているんだー」


遠くから五人の男達が横一列になってやって来た。

通路を塞ぐようにして立つ娘達と男達。

これはこれはと理解して溜息を心の中で溜息を零すも明らかにめんどくさいと顔を歪めて男達を見る。

そして


「見慣れない顔だな。どこから侵入した?」

「この城は夜間は立ち入り禁止なのを知っているのか?」

「申し訳ありませんが本日こちらに着たばかりで何も知りませんので」

「不審な奴、とりあえずひっ捕らえろ。

 お嬢さんには質問したい事がある」


ニヤニヤと笑う男達と視線で合図を送る娘達。

この年になって何でこんな目にと久方ぶりのこの手の嫌がらせに顎に手を当て悩んでいれば不意に腕を掴まれる。


「うわっ、こいつすっげーエロい体してるぜ?」


軽く反らされた体の胸元に顔を近づける男に嫌悪の視線を落とせば


「お嬢さん、女なら女らしくそんな反抗的な目をするのはやめな。

 どうせ男には敵わないんだから」


そうだそうだと囲むように近寄ってきた男達を今はやけに冷静に分析している自分がいる。

もう森の中での様な失態は起こさない。

その為にも船の上で不特定……今では特定多数の男達と裸に近いようなドレスを着て体を密着してダンスを踊り続けたのだ。

他人の体温にも体臭にも拒絶感は薄まって来たが、これはこれで嫌悪の対象だ。


「一つ言っておきますが、私はここで待ち合わせをしているだけです。

 そして女なら女らしくとは言いますが何を持って女らしく問貴方は仰るのでしょう?」


こんな状況なのに笑みを浮かべて挑発すれば男達はニヤリとヤラシク笑う。


「そんなの決まってるだろ?女なら男にしたがってればいいだけだ」


もう片方の手まで男に掴まれる中


「この女好きにヤっちゃって!

 私達の許可なくアルトゥール様に声をかけるなんて絶対許さないんだから!」


なるほどと合点がいった。

血統もよくそしてあの見た目だ。

船の上でも判っていた事だが、あの男は非常に良くモテるという事を。

そしてファンクラブでなくても本人も知らぬ所で彼の専属の親衛隊が出来ていてもおかしくないのは考えるまでもない。


「とんだとばっちりですね」


後でなんと文句を言おうと考えていればくいっと強制的に顎を持ち上げられた。

く、首が痛い…


「こんな明るい場所じゃあんたも楽しめないだろ?」


クククと喉を震わして笑う男にルーティアは笑う。


「そうですか?私は十分楽しいと思いますよ」


そうでしょ?

だってこんな下種な者達があの優しい子供の側に居る事の方が許しがたいのだから。

ふわりと魔力が風のように立ち上る。

魔力を感知できない男達と女達は突然風が巻き上がった程度しか感じないだろう現象に違和感さえ覚えようとせずこの場で暴行を決行しようとして三人の娘の真ん中だった娘が私に平手打ちを当てた所でニヤリと笑う。


「これで正当防衛は決定ですね」


纏わせた魔力に炎を乗せる。

一気に周囲の温度が上がり、両側に居た二人の男と平手打ちした娘が炎に包まれた。


「安心しなさい。

 命までは取らないから。ただ、二度と人前に立てない程度に火傷してもらうだけ」


突然の出来事に三人の絶叫がこの惨劇を盛り上げる中上手く操って腕や脚、そして顔に経度の火傷を負ってもらう事にする。

当然髪を焼く嫌な臭いが周囲に充満した所で炎を消した。


「さてあなたたちにはもう一度聞かなくてはいけませんね。

 女なら女らしくとおっしゃいましたが……

 私が知る女らしさと言うのは男よりも強く、そして気高く美しくあれと言う物です。

 理解できまして?」


一歩足を踏み出せば残りの二人の娘達は腰を抜かし粗相をする始末。

そして残りの三人の男は剣を振り上げ妖精を呼ぶ。

見た事のない妖精だったが、その妖精の瞳は何処か濁っていた。

主の心を反映するかのような姿にため息を落とす。


「かわいそうに。

 私の知る妖精とは躍動に満ちた美しい存在なのに、いいでしょう。

 その絆断って見せましょう」


そして両手を差し伸べておいでなさいとベーチェとミュリエルを呼ぶ。


「あの妖精を救ってくださいまし。

 そして妖精をゆがめてしまった者に罰を」


頷いた二体は一瞬でルーティアの怒りと妖精の悲しみを理解して力を解き放つ。


ドン!!!


巨大な火柱が天を貫いた。

高温の炎が焔となり周囲を圧倒的な熱量が支配する。


「さあ、人を物としか見ない愚か者達、私が貴方達を人として生まれ変わらせてあげましょう」

「ひっ、来るなっ、化け物!」

「あわわ…… 誰か助けてくれ!!!」

「誰が化け物ですか。そして助けを求めるのは私の役だったはずでは?」


一歩前に足を出せば男は失神し、そして娘同様粗相をする始末。

あまりの雑魚ぶりに呆れてすぐに風と炎で作り上げた焔の柱を収めれば誰かが全力で走ってくる足音。


「ルーティア何があった!」

「おや?アルトではありませんか。

 鍵は在りまして?」

「鍵って、いや、それよりもこれは一体どう言う事だ?!」

「当人に聞いてみてください。

 そこの男なら会話が可能でしょう」


泣きながら笑い声を落として宙を見つめる男の頬を叩けば


「ノヴァエス隊長許してください!

 おれが、ああっ、ごめんなさい!もう二度と!助けてっ!」


喚いて抱き着いて錯乱する男の言い分なんてわからなくて


「とりあえず落ち着け!」


肩をがくがくと揺らすもそれでも治まる様子はない。


「こっちだ!アルト!ルーティア?!

 一体何があったんだ!」


今度はブレッドが部下らしき者達を連れてやってきた。


「それがさっぱり…… と言うか、ルーティアと何かあったらしい」

「それは見ればわかる」


苦々しい顔で救護活動の指示を出せば


「おいおい、これはまた見事に派手にやったな」

「うわー、すごい火柱だったけど、跡が何もないねこの城」

「って言うかさ、何でミュリエルとベーチェが居るんだよ。うわ、見た事もない妖精もいるし。

 つーか、言うな。ぜってーめんどくさい事だろ」

「あのですね。

 私のようなか弱い女性が男五人、女三人に襲われればいくら何でも自衛の一つでも致します。

 それに森での失敗は繰り返すつもりはないのでこんなことになりました」

「うわ、どこのどいつだよその命知らず……」

「さあ?名前もおっしゃらなかったので」


騒ぎを聞きつけてやって来たフェルスにラン、そして何処か寝ぼけ眼のディータも一気にこの光景に目が覚めたようだ

苦痛に呻く声と錯乱して笑い声をあげる男に何が起きたのかは大体想像は容易い。


「一体これは……アルト、何が起きたんです……」

「どこの部隊か知らんが女性一人に八人がかりで襲い掛かって返り討ちにあったと言う話なんだが」

「なぜルゥ一人に?」


視線は怪我人に向けたままのジルの言葉に目が合ってもいないのにもかかわらず視線を反らせて


「ちょっと鍵をな、と言うか、預かってたの忘れて取りに行こうとした間に……」

「……まあ、そういうことにしておきましょう」


あからさまに見せつけるようにはーっと溜息を掃出し


「ブレッドどうします?」

「とりあえずだ。八人全員独房へ連行!

 けが人は手当てが終わり次第独房だ!

 八人顔を合わせないように会話もできないようにばらばらに入れとけ!

 で、ルゥはとりあえず事情聴取だ。

 頼むから説明してくれ」


途方に暮れるブレッドに


「アルトと仲良く歩いていたらそれを理由にケンカ売られただけです」


その場で処理にあたっていた隊員たちにも沈黙が落ちた。

たったそれだけで、というか犯罪はいけない。

いけないが、ここまでする必要性があるだろうかとどう考えても過剰防衛じゃないか?などと誰もが心の中で叫ぶ中


「それにこちらの妖精なのですが、どうにか契約を解消する方法はご存じありませんか?」


三体の妖精を抱きしめて騒ぎに駆けつけたランにと言うか、胸元のシュネルに訴えればぴゅるると囀るだけ。

そして三体の妖精はお互いの顔を見合って頷き、ルゥの腕から飛び出した。

契約した相手の前に立ちその手を伸ばした先が淡く輝く。

そして何事もなかったかのようの空へと駆けて行ってそれっきりだった。


「何があったの?」


ディの声に


「さっきの妖精が契約を解除したんだ。

 シュネルが苦しいなら自由になってもいいんだって後押ししてくれたの。

 ただ、彼らは契約する前の状態に戻るから、妖精の輪に入るのは難しいだろうけど、あんな顔をするぐらいならまだましかもね」


飛んで行った方角をいつまでも見送るランの肩をフェルスが抱く。

お前まで悲しむ事はない。彼らの新たな出発を祝ってやれと言うように軽く肩をったきながら励ましているようで。


「とりあえずだ。

 ランとディはもう遅いから早く寝ろ。

 ルゥもだ。

 暫くこのドタバタが終わるまで内郭から出るな。

 アルトもだ。ルゥがこっちの事情も知らないうちに連れまわすなよ。

 あくまでものこの城は王の住む居城だ。

 内郭、外郭共に王の私物だ!

 こんな事件が起こる事があるなんて問題外!

 誰であろうとこんな事が起こすなんて許されると思うな!」


ブレッドの叱咤に返事をする軍の人達の動きの良さに頷きながら


「ではどなたか私を内郭に案内を」


言えばアルトが手を伸ばそうとした所で


「ジル、お前が案内しろ」


それより早くブレッドが指示を出す。


「アルト少し話がある。ついてこい。

 ああ、ヴァレンドルフ隊長、悪いが後を頼む」


呼ばれた男に後始末を押し付け各自帰る場所へと足を向ける。

まだ少数しか入る事の許されない内郭へと入れば背後からどよめきが聞えるも誰もが口を開かない。

そんな中ルーティアを部屋の前まで案内したジルはルーティと正面を向きあって


「少しは自重してくださいと言う所ですが、今回はアルトに任せた私の責任でもあります。

 ああ見えて意外に不器用な男ですが嫌わないであげてください」


苦笑して言うジルにルーティアも小首を傾げて


「嫌いではありませんよ?

 私は今回のあの男達の存在が許せなかっただけです。

 ただそれだけなのでもしアルトが気に病んでいるようでしたらそれは思い違いですと伝えてくださいませんか?」


何処か行き違いの問答にジルは苦笑しつつも笑みを浮かべたまま


「承りました。

 よければ外に出る許しがでたらアルトとお茶でもしてあげて下さい。

 あれでも落ち込んでいるみたいなので」

「お茶ぐらいいくらでもご一緒しますよ?」


言えばさらに笑うジルにルーティアも口の端を釣り上げて笑みを作る。


「さ、貴方の隊長さんが今頃きっと大変な事になってるでしょう。

 応援に駆け付けてあげなさい」

「はい。では頑張ってブレッドの応援をいたしましょうか」

「あら?」

「ではよい夜を」


そう言って駆け出すように言ってしまったジルを手すりにもたれながら見送り


「貴方達はいつまで盗み聞きをしているのです?」


振り向かずに言うルーティアの声に背後で子供らしき軽い足音が逃げて行くのを聞いて溜息を吐く。

少しは落ち着いた生活ができると思ったのだがそうもいきませんねと手摺から体を離し、自室へと続く扉をあけて、煌々と月の明かりが降り注ぐ室内で一人これからの事を考えベットに身体を横たえた。


ブックマークありがとうございます!

フリュゲール組の話を上げております。

すごく昔に書いていたものなのですが、この話に合わせて修正してあげてますのでお時間に余裕があれば覘いてみてくれると幸いです!

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