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花の王都フリュゲール

フリュゲール王都編はいります。


マーダーから逃げるようにフェルスと言う名のウェルキィの背に乗ってフリュゲールの王都、花の都と言われている王都フリュゲールへと向かっている。

どの国も王が住まう城がある場所が王都となり、その国の名を頂いた都となっているのは知識で知っていたが、この国では王都フリュゲールと言うより花の都フリュゲールと呼ぶらしい。

ランが王位につく前数百年ほど、王位についた人が居なかったから王都なんて言葉が無くなったのかと思っていたんだけど、半分だけ正解らしいが、その半分はなんだか教えてはくれない。

ブレッド曰く「見りゃわかるから」と言うが、ルーティアも知識程度で「温暖な気候の為一年を通して花が咲き乱れているからでしょうか」との答え合わせにも苦い顔で笑うだけ。

一体なんなんだよと考える間にずっと雲の上を飛んでいたフェルスが雲の下へと降りはじめた。


「もうすぐ着くって」


相変わらず頭に赤い鳥シュネルをちょこんと乗せたランはやっと帰って来たとどこか楽しそうな様子。

そして見りゃわかると言われた花の王都も眼下に確認できるようになって、緑と色とりどりの花が咲き乱れる美しい街並みと……


謎の巨大花が街の中心にでんと構えていた。

どの建物よりも高く、この世界で見たどの建物よりも高くそびえるように、そして近くの建物の屋根のように花弁をこれでもかと優美に広げていた。


「これは……

 予想外にもほどがある大きな花ですね」


ルーティアでさえもドン引きする巨大な花は白乳色の色を持つ薔薇のようなロゼットの形をしていて、地面から直接花を咲かせ、蔦だろうか蔓だろうかわからないが、ひょっとしたら根かもしれないものが四方八方へと延びていた。

百聞は一見にしかずとは言うが


「まさかこれが花の都…… と言う云われじゃ……」


あまりの巨大な花が咲いた花の下の家は花弁の影になっている。

それどころか、この際蔓としよう。伸びた蔓が橋のように遠くの地面と突き刺さり、街中を縦横無尽に広がる光景に唖然とする。


「花城、精霊フリューゲルが作り出した城なんだ。

 簡単に言えばシュネルの巣…… なんだけどね」


たははと笑うランに


「シュネルの相棒のランの家でもある。

 ちなみにこの城は解放されてからまだ一年もたってないけどな」


ブレッドが言うも


「解放?」

「前はただの棒みたいな塔だったんだけど、戦争とかちょっとにいろいろあって、せっかくだからシュネルが安心して生活できるようにって家を用意してくれたんだけど……

 まだ城内の探検も終わってないし、妖しい機能もまだあるみたいだし……」

「正直俺達にもどうなってるかわからん」


ブレッドの降参の言葉に頭の中に笑い声が響く。


「花の城はもともと俺達の故郷でもある精霊界に在ったんだ」


その声は今俺達を乗せてくれているフェルスの物だった。


「こっちにくるにあたってフリューゲルが住み慣れた家を精霊界から持ってきたんだけど、当時は周囲がまだ木々で囲まれてたから違和感なかったんだけどな。

 時代を経て城の周辺から人が住みだしたらスゲー目立って思わず腹抱えて笑っちまったけどな!」

「それはそれは歴史を感じる建物ですね。

 ですが、そうなると材質が気になります。精霊界ではありふれた物ですか?」


面白いと建物の形を気にすることなく興味を持ったルーティアに


「ありふれた…… と言うより、精霊の力で周囲に満ちている魔力を物質化して形状したという、アホみたいな魔力を持つ精霊が使える能力だから俺にはできん。

 この形は精霊界に居た時に建っていた場所周辺ではそこらじゅうに咲いている花の形を真似しただけど、ここで復活させたら違和感すごくてな!」


げらげらと笑うフェルスにシュネルはランの頭の上からフェルスの頭の上に飛び降り頭部の毛を嘴で毟り始めるから空中だと言うのに痛みで悶えるから慌ててランが止めに入る。


「と言うか、この城を復活させた時に出た被害の多さの方が戦争被害よりひどかった方が頭が痛かったですけどね」

「あれだけの被害に被害者ゼロと言う奇跡のほうが俺には驚きだったけどな」


ジルとアルトの当時を思い出すようなそぶりに本当大変だったことに心の中でお疲れさまと言っておく。

その合間にもぐんぐんと近づき、花の城から延びた蔓らしきものの一本にフェルスが降り立てば遠くからじゃわからなかったけど一本の道になっていたそこを城へとまっすぐと駆けて行く。

そして花の根元へとつながっていて、その突き当りが白乳色の薄い膜みたいなものが窓のようになっていて、そこにぶつかるよう向かうも、何の衝突もなくいつの間にか城の中に入っていた。

白の中は白乳色で淡く輝き、太陽のような強烈な光はない物の細かい文字を読んでも問題ないくらいの明るさがそこにはあった。

体を沈めてくれたフェルスからゆっくりと降りてその明るい城をぐるりと見回す。

幾つもの部屋へと通じる扉。

そしてどこまでも続く透かし彫りのような装飾が施された回廊。

中心部に案内されれば筒状の部屋があり、天井には入口同様薄い膜が張ってあるものの青空が眺める事が出来るようになっていた。

そしてこの部屋を中心にいくつもの部屋へと続く様に階段がぐるりと何階へと何階へも続いている。


「で、でかい……」

「と言うか、高い…… ですね」


べつにこれほどの高い建物を見るのは初めてではない。

首都で見た高層建築群から見たら劣るものの、でもこの世界で知る限りは圧倒的な高さを誇っていた。

初めて見るだろうルーティアは唖然としてたけど、それよりも俺はこの建物にエレベータがない事に唖然としている。

この巨大建造物の階段を昇れと言うのか?歩いて登れと言うのかとおもうも、人型に戻ったフェルスはひょいひょいと階段の手すりに足をかけてまっすぐ上へと登っていく。

シュネルも幾つもある廊下の一つの奥へと飛んで行ってしまった。


「なるほどねぇ」


まねできねー。

それなら高さなんて関係ないなと眺めていれば


「お帰りですか」


建物の奥から静かな男の声が聞えてきた。


「アウリール! 今帰ったよ!」


やがて現れた影に向かってランは走って彼に飛びつく。

それから聞こえない声のボリュームで少し話をしたかと思えばランがその手を引っ張ってやって来た。


「皆に紹介するよ。ここで一緒に住んでるアウリール。

 アウリール、彼がディータ、そしてルゥ姉。

 フェルスから聞いたかもしれないけどディータはね、異世界の記憶を持ってるんだよ!」


すごいよね!異世界のお話すごく面白いんだよ!

土産話をしたいのかはしゃぐランの姿はまるで親に甘える子供そのもの。

きっと大切な家族なんだよなとほっこりと眺めてしまえば、その姿に息を呑む。

鮮やかなまでの青空を切り取った長い髪を川のように揺らせながら、でもどこか冷たさを感じる群青の瞳が俺を見下ろす。

ただしその肩には先ほど飛んで行ったばかりの赤い鳥が羽を休めていた。

長身のアウリールから見下ろすその角度に思わず息を呑みこんでしまうも


「おやおや、ひょっとして船の上でお会いした方ではないでしょうか?

 その節は大変お世話になりました」


ありがとうございますとルーティアは淑女の礼をとり感謝を伝える。

俺も慌てて「ありがとう」と言うも


「なぜわかった?」

「さすがに先ほどのフェルスに似た魔力の波動を感じましたので。

 聖獣クヴェルとお見受けしますが?」


ニヤリと笑うルーティアに何の温度もない視線で小さく頷く。


「ランが世話になったようだ。

 客人として我らは迎え入れよう」


これまた温度のない声でそう言われれば本当に迎え入れられたのかよくわからないけど


「アウリールはいつもこうだから気にしないで。

 これでもご機嫌なんだから。

 慣れるまで気になるかもしれないけど、アウリールは本当に優しい奴だから何も心配しなくていいんだよ」


いいんだよと言われても……

チラリと側に居たジルを見上げれば


「大丈夫です。私も彼らと知り合ってからあの表情意外見た事ないので何の問題もありません」


にっこりと優しく、そしてどこか諦めたような笑みを浮かべながら彼はそう人(聖獣)なんだと教えてくれたが


「慣れるまで時間かかりそうですね」


どこか困り顔でルーティアさえ肩をすくめる。


「長旅に疲れただろう。

 昨日の話も、今日の話も聞いている。

 今日は食事を済ませて早々に寝ると良い。

 食事の用意はできている」

「ありがとう!

 アウリールのご飯も久しぶりで楽しみだ!」


キラキラと瞳を輝かせて喜ぶランに


「聖獣が食事の用意?」

「意外な事に美味しいんですよ」


疑問にジルが掃除もそこら辺のメイド達よりよっぽど手早くそして美しく仕上げるんですと説明を加えてくれたものの……


「長命ゆえに無駄に生活スキルが上がった悲しい聖獣の姿だ」


いつの間にか音もなくフェルスがやって来て、手には果物を持ってかじりつきながら呟いた言葉に誰ともなく納得する事にした。


「とりあえず荷物置いて来るね。

 後ディとルゥ姉の部屋も案内するよ。

 迷子にならないように僕の部屋の近くでもいいよね?」

「迷子……」

「そうですね。これだけ広いのですから連絡は取りやすい方がいいのでそうお願いします」

「じゃあきまり。ブレッド先案内してから行くね」

「りょーかい」


二手に分かれて誰も居ない静かな廊下へと向かう。


「さっきみたいな蔓の所からと一階の部分からはどこから入ってもさっきのホールにつながってるから覚えておいて。

 二階からはホールから八方に大きく分かれてるんだ。

 階段はホールに沿って螺旋状になって天辺まで行けるけど……

 これはまた今度にしようね。

 見ての通り広いから僕達は二階までしか使ってないんだ。

 一階はご飯作ったり食べたり、団欒の場になってて、二階は個人の部屋になってる。

 僕とブレッド、アルト、ジル。

 今はまだ人間は四人しか住んでないけど。

 一応僕の両隣をブレッドとアルトが固めてくれてるから、その隣になるけど、もし好きな場所があったら好きに選んでもらっても構わないよ。早い者勝ちだ。

 あとアウリール達はもっと上層階の方に部屋があるんだけど、ホールから呼べばどこに居ても聞こえるから何か用があったらそこから呼んで?

 後、さっきの膜みたいなやつの内側が内郭、外側が誰でも入れる外郭になってるんだけど、シュネルが二人には内郭に入ってもらっても構わないって言ってくれたからこっちに住んでもらうからね。

 ちなみに外郭には政治の場だったり軍や騎士団の隊舎があったりするんだ。

 後他にも色々住んでる人達がいるけどまた別の時に紹介するね」

「なるほど。

 ですが人数の割に大きなお屋敷になってますのね?」


外郭より圧倒的にこの城の大半を占めている内閣に俺達合わせて6人とは贅沢な話だが


「昔はもっと聖獣達が住んでたらしいんだけど、精霊界を出た時にほとんどの聖獣達とお別れしてきたんだって。

 その名残で大きななお城になっちゃったんだって」

「それは手厳しい友情ですね?」

「皆臆病だから人の世界に来るのが怖いんだって言ってたんだって」

「確かに我々も魔物を見ると無意識に敵対意識を持って攻撃してしまうので妥当といった所でしょか」

「悲しいね。もっとたくさんの妖精達に出会えたらもっと楽しかったはずなのに。

 でも、だから、みんな喧嘩しなくて済むんだから……仕方ないよね」


しょぼんという姿で零した言葉にランの優しさと純粋さに驚いてしまうも、ブレッド達がこの小さな子供を大切にする理由がなんとなくわかった気がする。

純粋なまでの笑顔と溢れんばかりの優しさ。

当然人としてのエゴや醜さも持ち合わせているが、それ以上に一緒に笑顔になりたくなる……

それを幸せと言うのだろうか。

一緒にいる事で今生きている事に幸せを覚えるそんな魅力を持つランを守りたい、きっと近しい人からその周囲へと感染していくだろうその幸せをみんな愛しているのだろう。


「全部が全部じゃなくていいさ。

 まずは手始めに自分の手の届く範囲で十分なんだから。

 出会えた妖精達と仲良くしてれば、そのうち他の奴らもランに会いに来たがるんじゃないかな?」


そんな気休めにもならない言葉にでもぱあっと笑顔が咲き広がっていく。


「だったらすごくいいね!」


確かにこの笑顔は守りたいと思った。

ランと言う少年の存在を知らなかった時は考えもしなかったのは当然だが、知り合ってからほぼ一緒にいる今ではランがいない生活の方が想像が出来ない。

気が付けば俺もランの家族の一員になってしまったのだろうか。


「それはそれで幸せだな」


初めての弟。

いや、兄か?

今は亡き兄達とは年が離れているせいか兄弟らしさはあまり感じずにはいられなかったが、一生懸命年下(だとおもってる)の俺の面倒を見る姿は確かに家族として大切にされていると感じていて


「何が幸せなの?」

「ランと兄弟になれた事」


思わずと言うようにぽつりとつぶやいてしまえばランは顔を真っ赤にして目を見開く。


「おやおや、それはまたすごい告白ですね」

「何言ってるんだよ。ルゥ姉もランの姉さんなんだからな」

「なるほど。それもすごくいいお話ですね」


あ、なんか変な方に話が曲がった気がする。

ランも察したようで二人してさっと視線を反らす。


「ですが、仲良し兄弟の話は貴方達二人と確かブレッドも十代でしたね。

 年の近い者同士三人で兄弟してなさい。

 私は隣の部屋を頂く事にします。すぐに荷物を置いて来ましょう」


私とは師弟関係なので別枠でお願いしますと言う枠組みに


「ルゥ姉らしいね」

「って言うか、ルゥ姉って言われてる当たりで兄弟枠じゃね?」


二人で考えるも兄弟枠に居れたら絶対服従と言う権力を発動しそうでそれも怖い。

否、今更かと考えながらも荷物は後で解くとして部屋の外でルゥ姉を待って食事に向かう事にした。




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