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開発事業は控えめに

パソコンをウ●ンドウズ10にアップデートしたらデータが全部ぶっ飛びました(´;ω;`)ブヮッ

よくよく調べたら別の場所に移っただけだったのでデータを発掘して元通りにして再起動掛けたら今度こそ完璧にぶっ飛んで(´;ω;`)ブヮッ

ウイ●ドウズ10使ってられんとダウングレードしてファイルをバックアップから拾い上げたら続きの部分がバックアップされてなくて(´;ω;`)ブヮッ

遅くなってすみませんでした。

気が付けば太陽は高く昇り、家令のバッシュさんの昼食のお誘いで俺達は目を覚ませた。


「おやおや、揃ってお寝坊とは。

 皆さんそろそろ昼食にいたいますよ」


何故か俺達と徹夜したはずなのにそんな気配すらない状態のルーティアがバッシュさんを引き連れてやって来たのだ。

マーダー家の乗っ取り完了済みだった。

とりあえずそんな事は気にしないようにともぞもぞと重い体を起こしながら「顔ぐらい洗ってらっしゃい」と言う言葉に従ってよだれの跡の付いた顔を洗い、寝癖を直し、シャツを着替え直してダイニングへと向かう。

何故か俺が一番最後だったのが解せなかったが、それでも一緒に食事を始めようと皆は待っていてくれたようだった。

何より驚いた事なのだがニコラが昨日までの街で見かける町娘と言う恰好から、良家のお嬢様と言うドレスアップを果たしていたのだ。

背後にはメイド長のアルベルタさんがテーブルマナーを実践で教え込んでいた。

あー、リーディックの記憶にもある光景だなと知らず知らずにもその叱咤する声に合わせて食事をしてしまうあたりルーティアの失笑を買う原因にもなっているのだが、同じようにランも緊張しながら食事をしてる当たり…… 笑うしかないだろう。


「ところで皆さん本日のご予定はどうなってますかな?」


穏やかな食事を勧める中、トビアスさんの言葉に俺はルーティアを見る。


「そうですね。 これだけご迷惑をおかけした後に言うのもなんですが、予定通り早々に出発をしたいと思いますが」


その視線はランに、アルトへと移っていく。


「だな。急げば夜までには次の街には着くだろう」

「でしたら私にもリズルラントまでの馬車をご用意お願いします」


イゾルデさんも自分の領地に帰ると言うが


「って言うかさ、面倒だから俺が送ってってやるぜ?」


見た事もない真っ白い髪の人が当たり前のように一緒のテーブルについていて美味しそうにハムをかぶりついていた。

今更だけど誰?

思わずランに視線を向けてしまえば彼はオムレツを急いで飲み込み


「そう言えば紹介がまだだったね。

 彼が昨日のフェルスだよ。 人型の時の姿がこれなんだ」


これ呼ばわりかと言うも、ワイルド系のお兄さんなのだ。

服装がファンタジーでこの空間に浮きまくりなのだが、なぜすぐに気付かなかったのか頭を抱えたくもなったが


「という事はウェルキィですよね? ではヴィンとティルルも人型に?」


ルーティアの目がキランと光るが


「あいつらはダメだ。 聖獣と言うか他の血が混ざり過ぎてこの能力はない」

「混血に問題が?」

「聖獣クラスの混血ならちょっと問題ありなんだけど、聖獣と呼べない程度の能力値だ。

 妖精達まで好き勝手に変化できたら混乱するだろ。

 と言う以前にその姿で居る必要性がないだろ?」


言いながらチーズを一欠片口へと放り込む。


「貴方には必要性があるとでも?」


首を傾げながらパンを一口大にちぎるルーティアに


「そりゃ聖獣の大きな姿でそこらへん歩いたら木も倒れるし、草原は荒地に、川だって決壊する。

 俺はまだ若い方だけど、クヴェル、アリシアみたいになると人を踏み潰しても気付かない場合があるからな」


だから普段は人の姿になってる方が多いんだと口にチーズを運びながら説明をし、


「それにこの姿の方がランと一緒に遊べるし」


「なー?」 なんていえばランも嬉しそうに「ねー」 と返す。

周囲のお守り役は溜息を零すが、それが彼らの普通の事だろうと理解する。


「そっちのお嬢ちゃんもついでに送ってってやるぜ?」

「だったらランを先に王都まで送ってくれるとありがたいんだが」


ブレッドの提案に


「ですね。私の事なら後回しで結構です。 送って下さるのなら陛下を優先でお願いします」


イゾルデは口元をナフキンで拭いながら


「ついでに王都のリズルラントの屋敷の方も顔を出したいと思うのですがよろしいでしょうか?」

「王都駐在組の監視と言う名目なら付き合うぜ」


ニヤリと犬歯の見える物騒な笑みのまま果物にかぶりつく。


「それにディータにも塩田についてお話を伺わなくてはならないので」

「昨日あれだけ色々あったのによく覚えてたなぁ」


思わず感心してしまえば


「貿易都市として塩は重要な商品です。

 塩の価格を暴落させてディザグランドにぎゃふんと言わせたいので」


ぎゃふんっていつの時代の言葉だよと心の中で突っ込みつつも


「なんだ。相変らずディザグランドの奴ら言いたい放題か?」

「ノヴァエスの方が近いのですからもうちょっとあいつらに警戒しなさい」

「いや、うちはこの天才様が向こうとの貿易に関しちゃ協定を結ばせたから安定してるぜ?」

「だからリズルラントにしわ寄せがいくのですね。納得しました」

「納得なんてできません!!!」


あまり知られてない内容にイゾルデさんは目元に涙を溜めながら叫ぶも、みんな慣れたように朗らかな顔でその様子を楽しんでいる。

イゾルデさんに関しちゃ俺もみならっとこ。

めんどくさい性格だと思いながらポタージュを口へと運んでから


「って言うか、塩田って田んぼって知ってる?

 そこに海水を溜めて蒸発させてさらに海水を入れて蒸発させてって言う行程を繰り返して一面真っ白になったら塩だけをかき集めて、また繰り返し。

 雨の降る時期には難しいけど、これだけ暑い気候だからいけると思うんだけどな。

 あと、詳しい事は俺も判らないから手探りで頑張って?」

「となるとノヴァエスには向かない方法だな。

 うちの気候では年間通して雨が降るし」

「マーダーもですな。

 海に面した場所は崖も多く、面した場所は港など重要施設が占めているから今更塩田を優先できないのぅ」


トビアスさんが新たな産業の開拓に息を巻いたものの、地形的な不利に断念をする。


「成功したら真っ先に取引先になって領地の人に安価な塩を提供できればいいんじゃない?」

「そうだな。 その時はノヴァエスもよろしく」

「開発の為の資金と、まずは田んぼとは何か教えてください」


チーン……


麦畑が広がってるのは理解していたが、稲作はどうやらメジャーじゃないらしい。

だけど意外な所からヒントが貰えた。


「田んぼって稲のなる水田だよね?」


ランがキョトンとした顔で目をぱちくりとしている。


「うん。 たぶんその田んぼ。 見た事あるのか?」

「見た事なんてないよ。フリュゲールに来る前に居た所で隣国で田んぼ作ってるって聞いた事ある程度で知ってるだけだよ」


言えば皆さん余ら様にがっかりとした顔。

だけど忘れてないか?

俺が農家の孫という事を…… そう言えばまだ云ってなかったなと余計な事は口に出さずに


「だいたいどんなものか知ってるだけで十分さ。

 田んぼって言うのは水はけの悪い粘土質の土を使って巨大な水たまりを作る。、その中に養分の多い土を敷いて水を溜めてある程度育った稲を植え付けて育てていくんだ。

 もちろん水が澱まないように近くの水路から水を引き入れて、そして溢れないように余分な水を水路に逃がすんだけど、塩田だから水を引き込む必要もない。

 むしろ大変なのは海水を塩田に入れる作業かな?

 売るにしてもゴミや埃も付いてるだろうから一度乾煎りした方がいいだろうしね」


そこは人海戦術という物で何とかしてもらおう。

提案するだけ提案したけどあとは自力でどうにかしてもらうしかない。


「意外と大変なんだね?」

「安定したものを手に入れる為にはそれだけ苦労が必要なのさ」


最も苦労するのは俺じゃないけどと心の中で突っ込みつつ、食事はいつの間にかデザートへと変わり、瞬く間に出立の時間になる。

もっともみなさん手荷物は少なく、旅慣れているのかコンパクトにまとめてるので、あまり旅行とかした事のない俺だけが溢れかえる荷物を詰めるのに一生懸命なのだが……


「私の姫、よろしければフリュゲール滞在中にはまたこのマーダーへとお越しください」


恭しくルーティアの手にキスを落とすトビアスに


「そうですね。 カールとニコラの結婚式の折りには招待状をお待ちしております」

「ははは、その際には陛下を始め皆様をご招待させていただきます。

 なにせ、このマーダーの恩人ですのでな」


ふくよかな体が笑い声と共に震えるのをおもわず凝視してしまう物の、何やら遠くから喧騒が近づいてくる。

思わず全員で何事?とその声を凝視していれば、屋敷の裏手から、身なりの小ざっぱりとした若者がやって来た。

その男を止めるようにセバスチャン、アルベルタとその部下達が行く手を阻むも男は我関せずに突き進んできた。

カールやニコラと同年代っぽい男性にトビアスはバッシュに誰だと視線で尋ねれば


「テオ? 一体どうしたの?!」


それよりも早くニコラが彼の名を呼ぶ。

テオと呼ばれた男は破顔して使用人の妨害を気にせず駆けつけてきた。

そしていきなりニコラの手を握り


「裏手に馬車がある! さあ逃げよう!」


思わず全員で耳を疑った。


「店の人から聞いたよ。

 強引にマーダーと婚約を迫られて屋敷に閉じ込められてるんだって?!」


キッと睨みつけるようにセバスチャンを始めとした屋敷の人を睨みつけるも、話がおかしい。


「ちょっとまってよ!

 確かに強引な婚約だったけど、婚約したのは私の意志よ!」


その手を払いのけてテオを睨みつけるも、頭に血が昇ってる状態のテオとやらには全く言葉は届かない。


「君は騙されてるんだ! ニコラは俺と結婚するんだ!」


そう叫んだテオにルーティアは唇の端を釣り上げる。


「面白い茶番が見れそうですね」

「めんどくせー」


トラブル好きなルーティアの意見に、昨日さんざんな目にあった俺としてはさっさと逃げ出したい所だが、彼女の発言にランを始め何故か傍観に徹するかのように荷物をイス代わりにし始めている。

諦めるしかない状況が周囲から固められていっていた。


「ニコラ、彼は一体……」

「ベンソン商会の長男で幼馴染のテオドール・ベンソン。

 こちらのお屋敷でもごひいきにしている港町の問屋商です」

「領主の家に乗り込むなんて最悪ですね」

「うちでやったらそく切るな」

「て言うか、それが普通じゃないの?」


聞けばイゾルデまでもそうですねと言う。


「俺達恋人同士だっただろ?! 貴族だからって、その仕来たりに合わせる必要なんてないじゃないか!」

「誰と誰が恋人同士よ!

 テオは私の幼馴染の一人なだけじゃない」

「おやおや、とんだ間違いがうまれましたね」

「ここまで来るとお約束だね」


はらはらと周囲が見守る中テオはどんどんエキサイトしていく。


「何を言ってるんだ!

 君は将来ベンソン商会に嫁ぐつもりで王都に勉強しに行ってきたんだろ!」

「馬鹿なこと言わないでよ!

 私は家を盛り上げるために王都に行ったのよ!」

「行っちゃ悪いが君のとこみたいな小さな店で何ができる!

 遅かれ早かれうち(ベンソン商会)に取り込まれる予定なんだよ!」

「父さんと母さんの手腕を馬鹿にしないで!」


もうニコラの悲鳴に近い叫びと、あからさまに見下した態度のテオドールとやらに誰もが顔を歪める。

こんな人を見下した人間にこの領地は物流を仕切られているのかと思うと小売業の方々を思うと不憫としか考えられない。

そんな見苦しい光景を眺めながらルーティアがちょいちょいとランを手招きする。


絶対嫌な予感。


ランもすでに察しているらしく、嫌な予感の顔を隠さずにルーティアの横へと行けば彼女は周囲に聞こえない声でランに二言三言何かを囁いた。

途端にランは白い目を向けるも


「あんな人間をこの国にのさばらせてて良いのですか?」

「良いわけないだろ。 だけどねぇ……」


抗議はするも少しの間逡巡し、盛大な溜息と共に


「仕方ないか」

「安心してください。その後の事もちゃんと考えてますので」


そんな魔女の励ましに少しだけ背中が丸まった後ろ姿でニコラの方へと足を向ける。


「何言ったんだよ?」

「大したことではないですわ。大して面白くもないこの茶番を終わらせるだけです」


どうやらこの程度ではルーティア様にはご不満のようで速攻幕を下ろさせる気のようだ。

まぁ、人の痴話げんかなんて傍目には面白いかもしれないけど、知り合いとなると微妙な空気しか感じる事しか出来なく、あまりにニコラの扱いがかわいそうすぎるのもあって、丸く収まるわけはないのだろうが、早く終わればいいと眺めていれば


「貴族とは言え庶民と何ら変わらない家柄の癖にベンソン商会に楯突くつもりか!」

「そんなあなただから同じ町に住むご近所さんなだけなのになんで気付かないのよ!」


思いっきり本音ダダ漏れの暴露会話を収めるべくランが


「二人とも落ち着いて……」


と、間に入れば


「なんだこのガキ! 邪魔だ!」


案の定突き飛ばされた。

それも勢いよく。

揚句にハーフパンツから覗くふくらはぎをものの見事擦りむいていた。

いわゆる擦過傷。 

目にも痛い擦り傷に俺まで痛みを感じてしまうが、周囲の人達が一斉に立ちあがる。

寧ろ俺とルーティアを残して全員が二人と言うよりテオに詰め寄った。

ブレッド達はもちろん、カール、トビアスさん、イゾルデさんまでテオを囲むように立ち、武器を手にし、そして大人げなく剣を抜いてテオドールに突きつける。


「な、なんだ……」


驚くテオだが、ニコラはここぞとばかりカールが手を引いて彼の後ろに隠されてしまう。

やっぱり心配してたんだお似合いだぜと二人の仲を心の中で応援する。

だって、テオの方は絶対やばい状況を理解していて見てる方としてははらはらして楽しいじゃないか。

それに保護者様は見た事ないぐらいご立腹で


「フリュゲール王に手を上げし反逆者、その首持ってでも許されると思うな」


ブレッド(保護者)の地の這うような温度のない声にもう誰も止められないだろう。

と言うか、周囲も止める気がない。

どれだけ徹底的に敵を潰すかそんな計算する顔が並んでいるのだから、もう止められない。

うん。

俺、傍観に徹するよ。


「フリュゲール王……?」


恐る恐ると言うように、ジルの手を借りて立ち上がったランを目を見開いて固まる。


「陛下、マーダー家出入りの業者とは言え陛下の前に何の了承も得ず姿をさらせた不始末、マーダーの不徳に値します。

 平にご容赦を」


トビアスさんの膝をついての騎士の礼にテオさんは真っ青になる。


「かつ、わが屋敷の防衛の不備、さらに御身への、尊い血が流れた事への罪、何なりと罰をお申し付けください」


いつの間にかトビアスにならってカール、ニコラ以下この場に居るマーダー家全員が膝をついて頭を垂れている。

リーディックの知識ではこの世界では膝をつき謝辞をする事がいわゆる土下座と同様に最大の謝罪の方法だという事。

それをゴミでも見るような目のアルトとか、真っ青を通り越して真っ白になってるテオとか、異文化の理解とは本当に難しい。


「まずはベンソン一族を総て捉えよ。

 そして未成年以外すべて打ち首。

 そしてこの八家にベンソン商会と名を語って入った店の営業を取り消し。取り扱い商品をすべて没収。

 マーダー当主、すぐに手配を」


氷のような温度のない声にトビアスさんとカールはふるりと身を震わし、家令のバッシュさんに指示を出す。

隣にいたセバスチャンが屋敷に向かって走り出す姿を見送りながら


「この者はひっ捕らえて、マーダー駐在の軍に引き渡せ」


更なる指示にテオはもう言葉もなくこの屋敷の衛兵に縄で縛られて連れてかれて行ってしまった。


「痛い事は痛いけどそこまでする必要あったのかな?」


テオが去ってから真っ先に口を開いたランに


「別に今すぐ切り捨てても良かったんだが、ベンソン商会を潰すにはあいつだけ切っても意味がないだろう」


ふうと言う言葉に疑問が浮き上がる。


「なんかそう聞くと前々から潰したかったみたいだね」


ひょっとしてと思って口を開けば


「こんな機会を待っていたぐらいですから」


イゾルデさんが口の端を釣り上げて笑う。


「ルーティアさんとディータは他所の方だから知らないと思いますが、ベンソン商会と言うのは国内でも有数な薬を取り扱う大店です。

 ですが、国内はもちろん他国からも安く、それこそ根こそぎ仕入れて商品を独占し、さらに暴利を加えて商品の価値以上の値段に釣り上げると言う…… 物が薬をメインに取り扱ってるだけに、金持ちしか薬が手に入らないと言う状況を作り上げた一族です。

 リズルラントでも薬は取り扱っていますが、ベンソン商会より安く販売している為に色々と営業妨害を被っておりました」

「さらに医師を目指す者にはそんな高額の薬品なんてめったに触る事が出来ず、医師の道を閉ざされた者も少なくありません。そのくせ医師になれば薬代の払う事の出来ない患者に懇願されると言う、板挟みになる医者が多く、かなりの廃業となったりしてます。

 私の友人にも医師を諦めた方は少なくありません」


言いながらジルはアルトに頭を下げる。


「この国の医療の発達が遅い原因の一つにベンソン商会がある。

 後継者がやって来たのには驚いたが……

 ルゥはこの事知ってたのか?」


ブレッドが不審な物を見る目でルーティアを眺めていたが


「そんな事知るわけないでしょう。

 医療の遅れなんて白魔法のあるハウオルティアでは意味を成しません。

 と言っても、白魔法も希少な為に貴族がその使い手達を囲ってしまいますが、それでも我々には魔法があります。

 普通の薬の効果を数倍にする程度なら街の子供の小遣い稼ぎとしてありふれてます。

 私としてはあの女性を見下すいけ好かない男に罰を与えようとしただけですが、面白いように転がりましたね」


ふふふと笑うルーティアに誰もが本当かと疑うなか、俺は魔法で作った綺麗な水でランの擦り傷を綺麗に洗い流す。

当然沁みるようで「あうー」なんて面白い悲鳴を上げるのを思わず笑ってしまえば、涙目で睨まれてしまう。

うん。 そんな顔で睨まれても別に怖くもないもんねと洗い流した傷口を触らないように指先を向けて


「痛いの痛いの飛んで行け~ってね」


白い光が指先に集まり傷口を包んでいく。

前回には見られなかった光景に驚きのまま眺めていれば、やがて傷口は塞がり、そして余剰となってしまった光は飛び散るように周囲に広がって消えて行った。


「前回はまだ見えなかったようですが、ここ数日の魔法の乱発に随分と上達したようですね。

 いかがです? 自分の魔法がこのように世界に干渉している光景は」


「綺麗…… だね」


目に魔力を集めるとこのフリュゲールには一面に広がる幾何学模様の魔方陣が広がっている。

そして、魔力を手のひらに集中させて水を集めれば透明な魔力が待機中の水分を集めて、俺が願うようように丸い魔方陣を中心に水球が出来上がる。

前はイメージだけで魔法を使っていたが、ここにきて目で見える魔法の世界に心が躍る。

思い描く図形が魔法となる世界と考えればそれはもう無限の世界だ。


「ほんと凄い」


光を呼び寄せたり、風を集めたり、次々に魔法を使えば描かれる魔法陣の花火に思わずいろいろ試してしまうが


「お遊びはそこまでになさい。

 それよりもランが何か言いたげですよ」


なに?とくるりと振り向いてランと目を合わせれば、そこにも花火が咲いていた。

もとい、シュネル同様命の炎のような躍動する赤がキラキラと輝いている。


「傷を治してくれてありがとう! もういたくないよ!」


傷跡も何もないその足をひょいとあげて見せてくれる。


「ね!」


凄い! と全身で訴える喜びにただ傷を治しただけだと思っていたのに俺が作った奇跡がすごい事のように思えてきて、ランとお互い手を伸ばしてパチンと手を鳴らして笑いあっていた。


ただ背後では物騒な事をルーティアが言っていた。


「とりあえず、あの一族の打ち首はランの寛容な心で取り消す事にして、リズルラントで起こす塩田の作業要員にしなさい。

 イゾルデも無償の労働力は少しでも欲しい所でしょ?

 奴隷は推奨しませんが、犯罪者の服役にはちょうど良い労働でしょう。

 生涯あの一族を飼うのですから、しっかり働いてもらいなさい。

 そして未成年の子供ですが、再教育を必要とするなら私が預かりましょう。

 子供の扱いには慣れてます。

 子供と言う生き物はなんせ純粋ですのでね。

 力と恐怖、そして洗脳するにはちょうどいい年頃。

 徹底的な教育に同じ一族であったことを恥じ入り、私を敬い恐れをなすまで躾けてあげましょう!」


俺もランも何も聞いてなかった事にしたいと言うように適当な会話で笑い声をあげる中、一族を押し付けられたイゾルデさんを始め周囲に居た一同ドン引きする空気の中トビアスさんだけが「ぜひ私も」と言う言葉は全員が全力で聞かなかった事にして、後の事はカールに任せて逃げるようにフェルスの背中によじ登ってマーダーを後にした。






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