長い一日の始まり
セバスチャンに案内された部屋はフリュゲールでも伝統ある家づくりらしく、各部屋にバルコニーを持つ煉瓦を用いた造りになっていると言う。
内装は白の漆喰が塗ってあり、イメージはイタリアな感じだろうか。
慣れた木造建築ではなく、ハウオルティアの家とも趣が違うという事。
「古民家が懐かしいな」
古い農家の家で育った雪兎の感覚で言えば光が反射して眩しかったり、金ぴか原色に目を背けたかったりと、まあそんなとこだ。
案内された部屋は深い緑色のカーテンとカーペットの落ち着いた部屋。
俺にもだが、各個室を与えられたのはいいけど、とにかく見栄を張りたいと言うのが判るように本来なら見事な彫刻を施された家具まで何故か金色に染まっていた。
「落ち着かん」
一番慣れていそうなランの部屋に行けば、そこはセバスチャンが王族にと代々大切に管理された部屋だったため
「おちつく~」
ロイヤルブルーではないが青を基調としたその部屋のソファでくつろいでしまえばブレッドを始めみんな小難しい顔でランの部屋に集まっていた。
勿論部屋の主のランも意味を理解して苦笑気味なものの
「それにしてもマーダー領は港と穀倉地帯と言う二大事業があるとはいえそんなにも裕福ではなかったはずなのだが……」
アルトがこの部屋に集まった俺達にお茶の用意をしてくれているセバスチャンに聞けば
「ご紹介遅れましたがマーダー家当代(仮)のトビアス様は有事の際の防衛費を着手してまして……」
「こら、そこは何としても誤魔化して隠す所だろう」
アルトがストップをかける。
たとえそれが傍目から判りきった事であっても口に出していい事では決してなく、なんとか口を濁して誤魔化すと言う物が家の財を管理する家令と執事の役目だと言えば
「今のところ隣国ヘリオールとアズラインとは友好的ですので…… とは言え、有事は戦争だけではありません。
夏には海風が嵐となって収穫前の穀物の被害が出た折には保障に当てなくてはならないし、キリアツム山脈の雪解けのシーズンには雪崩被害も発生します。
事故が起きた時の保証の確保は常にしておかなくてはならないのが我が家の役目なのですが…」
「ここ数年雪崩被害も聞いた事がないし、ヘリオールとも良好な貿易相手になっているし……
問題があるのは夏の嵐か。海水が押し寄せてくるのばかりはどうにもならないからな」
かぶせるように言ったアルトの言葉に「はい」と答えながら焼き菓子を添えた紅茶を差し出してくれるのを待って
「所でルゥ姉は?」
執事さんに聞けばちょっと困り顔で
「トビアス様のコレクションをご覧になってます。
歴代当主が長い年月をかけて集めた宝石や、王家より賜った勲章などの逸話を聞いてございます」
まるで自分がえた褒章のような会話だろう内容に、付き合わされるルゥ姉をかわいそうと思うも
「それよりさっき弟さんがいるって言ってたよね?」
ランが何気なく焼き菓子をほおばりながら聞けば
「ずいぶん歳の離れた兄弟だな。
確かトビアス殿はもうすぐ40になると聞いていたが」
伝統的貴族の当主でもあるアルトの情報を感心しながら聞いていれば
「はい。御年38歳になられます。
カール様は18歳になられまして、先代の当主と奥様がトビアス様の素行に悩まれて身ごもられたご子息になります」
つまり実質上の当主になるわけなのだが
「フリューゲル王立学院を無事ご卒業為された所で先代と奥方の乗った船が魔物に襲われ沈没してしまいました。
毎年更新している遺言でもカール様に当主の座を譲り渡した証文が西のエンダース当主と、南のリズルラントの当主にお預かりいただいているのですが、それは紛い物で無効だとトビアス様が騒ぐので、エンダース家、リズルラント家よりとりあえずこの状況が落ち着くまでお預かりするとなっております」
「リズルラントはともかくエンダースか。厄介な事に巻き込まれてるな」
哀れむように目頭を押さえるアルトをみて「似たような経験でもしたことあるの?」とランに聞けば「まあね」と苦笑ではぐらかされてしまった。
落ち着いたらゆっくり聞きだしてやろうとセバスチャンの話に耳を傾ける。
「ご存じのとおりフリュゲールでは家督は嫡男に譲る傾向にありますが、女児しかいない家庭では女児に、そして嫡男に問題がある場合家長の指名より次男だったり他の兄弟、さらには親戚筋から養子として迎え入れる場合もあります」
「随分おおらかなんだね」
ハウオルティアにそんな文化が根付いていればあんな茶番なんぞ起きなかったはずだ。
良い分かだなと思う反面
「ですが、当然嫡男の方は家督を譲ってもらうために幼い頃より勉学に励みます。
トビアス様もああですが、一応領主としての仕事は一通りできてしまうのです」
そこで目元を真っ白のハンカチで抑えた後、背中を向けて鼻をかむ。
「できてしまう為にこの起きた被害、やる事なす事めちゃくちゃですが、最低限領主としての務めをこなしてしまう為に誰もトビアス様を止める事が出来ないのです!」
う、うっ・・・と涙を流すもあれ?と疑問が一つ。
貴族で嫡男。そして38歳。
隣にいるべき人の姿がこの屋敷にはどこにもおらず……
「あのー、奥様…… は?」
聞けばアルトがそれを今聞くかと視線で訴えてきた。
どうやらフリュゲールでも有名な話らしい。
「奥方はトビアス様の事故を期に実家に戻られ、別の方と再婚いたしました。
幸か不幸かこうなっては判りませんが、子供もいません。
トビアス様は何度か再婚しようとしたのですが、やはり相手のお嬢さんのお家の反対があったり、子連れの再婚なんて当家では問題外なので、愛人を作っては捨てての繰り返しです」
「前半は同情できそうだったんだけど、後半で一気に地に落ちたって風だね」
なるほどと聞いていればポンと俺の方に肩にブレッドの手が置かれた。
「違うんだ。これはものすごく有名な話でな、フリューゲル王立学院三大悲劇の一つにもなぞらえる男として悲しい話なんだ」
ジルに本当なの?なんて聞くも頭痛そうに軽く横に振るさまやアルトも爆笑したいのを我慢しているさまにろくな話じゃねえなと思っていれば
「ひょっとして騎士団や貴族を招いての卒業式の主席と次席による剣舞を披露する時にステージが崩れてプチっと潰れちゃった事件って……マーダー家の話だった…… とか?」
だんだんと顔を真っ青にしていくランの言葉に執事が静かに頷く。
プチって、やっぱりあれだよな?
男なら思わず身を竦めてしまうあれだよな?
世継ぎができない理由の一つとして十分ならあれだよな?
必死に笑い声を隠しているも震えている肩が総てを物語る。
聞くんじゃなかったと思うのは既に遅すぎた。
「そんな有名な事故もあった為に先代の旦那さまと奥様は急ぎ世継ぎを作り、カール様をご指名したわけですが」
「それじゃあ納得できないよな」
「じゃあ、親戚筋から養子を迎え入れればいいじゃないか」
「はい。ただいまユリアーナお嬢様がエンダース家のご子息の一人と婚姻関係を結んでいまして、待望の男児を授かりましたが……」
「なんだその嫌な間わ……」
「待望の男児と言う以上まずはエンダースの家の方に一人入れて、もう一人……」
「とても優秀な兄弟でしたが優秀が故によりにもよって妖精ジェスタと契約してしまい、二人とも妖精に嫌われてしまったのです」
「うわ、ジェスタか」
「気まぐれ妖精に遊ばれてしまったのですね」
「むしろエンダース家の嫌がらせじゃないか?」
良くわからないが何やら陰謀めいた話になってきた。
「ディにはよくわからないと思いますが、この国では妖精と契約する事が圧倒的有利な立場になります。
ですが、妖精にもランクがあり、生涯一度きりと言ってもいい妖精の契約には慎重になるのが我々の常識です。
名家ならとくに沽券にもかかわる話になるのでそれはもう一家総出の大イベントになりますが、それと同じくらい家の立場を守ろうとするなら他者を蹴り落とさなくてはいけません」
「つまり、ユリアーナさんだっけ?その人はエンダースの家の人に嵌められた……って事でいいの?」
「もうちょっとオブラートに言いましょうね?」
そうだともそうじゃないともいわないが、ずいぶんとえげつない事をするもんだと溜息を零す。
「となるとエンダース家にはちゃんと何かの目論見があるんだろ?」
素晴らしい何かがだ。
「決まってるだろ?乗っ取りだ」
アルトがちらりとヴェルナーを見れば彼はただただ苦笑していた。
「カールが唯一の直系である以上エンダース家直系その血をマーダー家に入れたい。
だけど、マーダー家の血をエンダース家に入ってもらいたくない。
エンダース家にはカール様と釣り合いのとれるお嬢様もおらして、婚約の話もいただいております。
お二方も幼い頃より仲がよいので問題がないのですが、その話を受けるとなると……」
「マーダー家の分家はどうしている」
「家督譲渡の遺言がある以上背くわけにいかないと……」
関わりたくないと言う所だろう。
寧ろかわいい子供の為にも関わらないでくれと言う方が正解なんだろうが……
「なるほど。そう言う事情があったのですね」
ばん!
と大きな扉の音を鳴らして現れたのは我らがルーティア様。
ああ、いつの日かのデジャブが……
それよりも気になるのはぼてっとした体にちんどん屋とでもいうような原色の衣装をまとうトビアスのネクタイを握りしめて犬の散歩のように連れて歩いている事。
この短時間に何があったのか誰か説明してください。
「でいつから話を?」
「フリューゲル王立学院三大悲劇の辺りからですわ」
厄介な話を聞かれたもんだと誰ともなく視線を彷徨わせる。
「トビアスとしてはこの話をどう思おいで?」
しかも呼び捨てにしてるよこの人……
「わ、私は反対に決まっている!
私の為にカールは産まれて、しかも想いあってる相手のヴィッキーとお家騒動の結婚をしなくてはいけないなんて、カールの幸せはどこにあるんだ!」
意外にも弟思いであっけにとられるも、ここには当の本人がいなくては話にならない。
「セバスチャン。ここにカールを。
そして離れの家令も呼びなさい。どうせこんな事だから離れに隠しているのでしょ?」
執事は目を瞑りそのまま何も言わずに頭を下げ、静かに部屋を出て行ってしまった。
ルーティアは空いていた場所に座り、そしてトビアスさんはその足元に座る。
何だこの光景は?
誰もがその異様な景色に目を点にしているものの、ヴェルナーが茶器を借りて紅茶を淹れる。
勿論ルーティア一人分。
美味しいと言うとトビアスさんはその茶葉の説明を懸命にする。
このマーダー領の山間部で特別に栽培された茶葉で、輸出商品にもなるくらい人気のある商品だと。
なるほどおいしいわけだと、あとでセバスチャンに分けてもらえないか交渉しようと俺もヴェルナーにお替りを貰う事にする。
その合間にお菓子のお替りももらうも、給仕の方々は皆変わり果てたトビアスさんにぎょっとし、そして見なかったふりをして出て行ってしまった。
ルゥ姉、何てことしてくれたんだよと心の中で訴えている合間にセバスチャンが家令のバッシュとカールを連れてやって来た。
ここに来る間にセバスチャンから説明を受けたせいかバッシュもカールも部屋に入った早々ランに膝をつき、胸に手を当て臣下の礼をとる。
これぞ貴族と言う姿と、いまだにルゥ姉の足元で正座でお座りをしているトビアスに二人とも動揺をして、暗黙の了解と見なかった事にしていた。
「陛下のご訪問、マーダー家にはこれ以上とない誉、どうぞごゆるりと滞在を……」
いちおう次期マーダー家家長となるカールがたどたどしいながらも挨拶を始めるも
「それよりもセバスチャンから聞いた話、マーダー家はどうするつもりなの?」
見事なまでに腹を裂いて語ろうと、可愛い顔をして男前のランの姿にマーダー家側の顔は曇る。
「兄としては弟に望んだ道を選んでほしい」
「僕は、家督は兄が継ぐべきだ。
そして僕なり、親戚なりの子供を指名か養子に向えればいい」
「そうすればエンダースの娘と結婚は出来ないぞ」
「もういいんだ。話は学生時代の時に済んでいる」
その内容は家督の奪い合いと言うより譲り合い。
これまた珍しいケースがあると言う物だと二人の会話を聞いていれば
「家令としてはどれが一番この家の為かと?」
ルゥ姉の一言に、背後に控えていたバッシュが口を開く。
細身の割には筋肉質の体は燕尾服の端端から伺いとれる。
きっと凄腕の剣術でも使えちゃったりするんだろうなとぼんやりと謎の老齢の男性を眺めていれば
「お家の為でしたら…先代の遺言が世間に広まっている以上その通りになさるのが一番でしょう」
「そこにカールの幸せがどこにあると言うのだ!」
トビアスが机をバンと叩いて立ち上がるも、すぐさまルゥ姉がネクタイを引っ張ってお座りをさせる。
そして黙って座る様に誰もが何にも云えなくなるが
「カールの幸せと言いますが、カールは何を持ってあなたの幸せを謳いますの?」
その質問にトビアスは眉間を狭め、そしてカールは俯く。
「マーダーの、ヴィクトリア…… ヴィッキーとは学生時代に本当に終わったんだ。
学校で沢山の人と出会って、彼女は恋をして。
俺は幼馴染の役目を終わらせたんだ」
あるあるの失恋話に誰もが気まずい顔をして視線を反らす。
『ちょっとお兄さん、この話はちゃんと聞いていて?』
『いや初耳だ』
『セバスチャンもバッシュも何も聞いてないのかよ?』
『いあ、エンダースの方から婚約の話があるくらいだからてっきり……』
そんな事が読み取れる視線の会話にカールが頭を下げて謝罪する。
「今頃こんな話して本当にごめん!
卒業式の時に正式に僕からプロポーズしたらそんな返事が……
ヴィッキーも家の人に反対されていると言われてたんだけど、卒業式後に家の人に黙って二人で家を出たんだ……」
「まじか?!」
「最近エンダースの私兵がやたらうろうろしてると思ったらそんな事が」
「なかなかすごいね」
「いや、ベタ過ぎてなんだか……」
「まぁ、私に言わせれば愚の骨頂ですわ」
現実主義者の一言に一気に冷静になる物の
「それなのに婚約の話ですか。すべて有耶無耶にするつもりですね」
誰もが苦い顔をする。
たとえばもし、ヴィッキーとやらが妊娠して帰って来ても、婚約者がいる身。
カールの子供ですと四公八家の当主が言えば、総てそれが事実となる。
四公八家と言うが八家よりも四公の家の方が格式が高いらしく、八家は四公の言うがなすままにしなくてはいけない。
だけど今は時代が違う。
「そんな有耶無耶でマーダーと関わり合いのない子供を未来の当主にするわけにはいかない。
これはエンダースの血が入ってるからとかそう言う次元の話じゃないんだ。
悪いけど、古の盟約に則ってカールとエンダースのヴィクトリアの婚姻は今後一切認める事は出来ない。
例え、それが本当にヴィクトリアとカールの子供だと主張してもだ」
苦々しい顔でランは苦痛を伴いながら、そんな言葉を吐き出した。
ぎょっとした面々と、もう後戻りのできない状況に室内は葬式でもあったかのような暗い空気になるなかランはディータと隣に並ぶルーティアの二人を見て
「四公八家と言うシステムはまだボクの先祖がこの土地に居た頃に作った結界なんだ。
結界が遂行されたのは土地を離れてからだけど、それでも今も凶悪な魔物の侵入を許さない結界は生き続けている。
年月を伴い強固となった結界はもう精霊や聖獣が作ったと言われているウィスタリアやプリスティア並みの力がある。
四公八家はこの結界の守り人として与えられた役目。
故に与えられた特権は国に王さえいらないほどだ。
今、シュネルがエンダース家を見てるんだが、屋敷の中に年齢から言うと彼女がそうなんだろうね。
カールは家を出たと言うけど窓に格子のはまった部屋にいる以上連れ戻されたんだろうね。 彼女の側に一人の女の子と小さい男の子がいる。
その子たちはエンダースの血が流れてないね。
さらに言えば……
彼女は既に新しい命を宿している」
紅玉の瞳が静かに輝きながら目の前の景色とは違う別の景色でも見ているかのように俺達に伝えてくれる。
カールは静かにおめでとうとだけ言う。
暗にもうエンダースとは手を切れと言われたも同然の言葉が王の口から発せられ、家令のバッシュは深くお辞儀をした。
「さて、家督継承の話は振り出しに戻りました。
いかがいたします?」
魔女の口から発せられた言葉にカールが項垂れるように、この世の不幸を総て背負ったと言う顔で
「僕が継ぎます。
兄に補佐に付いてもらって、このマーダー家を継いでいきます」
「すまない。
決心してくれたらいいんだ。
それに女性はヴィッキーだけじゃない」
兄の励ましにどこか泣きそうな顔で、だけど無理矢理にでも笑顔を作って笑ってくれた。
まだ痛々しい笑顔だけど、それだけでこの屋敷が明るくなったような気がする。
「では、まず作戦を練りましょう」
そんな微笑ましい和やかな空気をぶっ壊したのは真っ赤な唇を弧に描いた長い髪を揺らす女性のルーティア。
誰もがそんな作戦いらないだろ!突っ込もうとするも彼女はそれより早くすくっと立ち
「せっかくこの茶番でエンダースとリズルラントをだませたのです。
まぁ、リズルラントには話を通した方がよろしいかと思いますが、エンダースは話を聞いてても胸糞の悪い連中です。
よって、今しばらくくこの茶番に付き合ってもらいましょう」
「いやいや、めんどくさいからしなくていいだろ?」
ブレッドのツッコミにそれは違うと首をゆっくりと振り
「話を聞いていればお家乗っ取り事件はこの素晴らしい結界をもう少しで壊すと言う話ではないですか。
魔法使いの端くれとしてこの芸術と呼ぶにふさわしい結界を穢そうとする者には罰を与えなくてはいけません」
「芸術?」
誰もが首を傾けるが、これは魔法を扱う者にしか見えない世界。
魔力の流れが糸となり、糸が織りなす結界と言う絵画。
「半端な者には見えないのですが、ディならみえてますよね?」
聞かれて頷くも、確認するまでもないと窓辺により
「長い年月をかけて豊かに育った自然。そしてこの地を守る事を約束した者達の血によってこの結界は完成されているようです。
幾つの幾何学模様の魔方陣が連なり、重なり、なぞり合って強化されています。
ランの言った盟約と言う言葉はプリスティアの聖獣達が使う約束の言葉だと聞いた事があります。
とすると、四公八家と言う役目を頂きながら時を経て無知となり、自己の利の為に壊そうとするエンダースの方々には少し痛い目にあっていただ無くてはなりません」
「ごめん。こうなるとルゥ姉の止め方なんてわかんないよ」
真っ先に匙を投げた。
「所でカール、貴方学校に居てどなたか可愛らしいと思う方、居ませんでした?
いえ、あなたなら声は掛けれなくてもきっと居たでしょう居たはずです」
ヴィッキーの事もあって、仄かに恋をすれども、身分差とか何かで仲が良くなってもあまり関らないようにしていた娘がいたはずだと断言するルーティアにカールは呻くも、暫くして顔を真っ赤にしてコクンと頷いて白状した。
「さあ、どんな娘です? 照れてないで言って御覧なさい!」
蛇に睨まれた帰るじゃないけど、年相応に恋バナに盛り上がるルゥ姉のはずなのに、どうしても尋問しているかのようにしか見えないのは気のせいか?
気のせいであってほしいと思う合間に
「同じ、このマーダー領から一緒に学校に入った男爵家のニコラ・タークだよ」
白状して出した名前に小さく頷き
「セバスチャン。そのニコラと家族を今すぐここに連れてきなさい」
「い、今すぐにですか?」
「そうです。この家の持てる力を使ってすぐに、そうですね。
ご両親と当人三人をセットで連れてきなさい」
ルーティアの命令に続けるようにトビアスが「今すぐ行け!」という。
あああ、またいつのまにか下僕が増えていたと一人頭を悩ませる俺にジルがのほほんと言う。
「素晴らしい人脈じゃないですか」
本当にそう思えるかと睨むも、人間関係で相当鍛えられてきただろうジルは「ええ、そうですとも」と言う顔で返事をするだけだった。
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