砂海のロンサール
評価&ブックマークありがとうございました!
ここのところずっと予約投稿だったのでご挨拶が遅くなって申し訳ありませんでした。
残り4話よろしくお願いします!
気が付けば広い室内の広いベットに横たわっていた。
血の気が引いて横たわっているのにくらくらと眩暈さえ感じていた。
すぐ横にはガーネットとクロームとセイジ、ディックに頭に鳥を乗せたランとブレッドが居た。
俺が目を開けた事で誰もが不安な顔を隠さずに心配してくれた為に俺は毛布をかぶって誰とも視線を合わせないようにしてしまう。
「一体どうしたんだい?
急に顔色悪くしてぶっ倒れて。
お前は一度も口に出した事はないが父親の事を思ってた事ぐらいみんな知っているしやっとお前に話してやれたって言うのに何が不満なんだ?」
抵抗は無駄だとかぶった毛布をばさりとガーネットに奪われてしまう。
だけど俺は背を向けたまま枕に顔をうずめて何も話せないで居た。
「一体何が不満なんだ?
お前の父親は、母親と婚姻は認められなかったが民にも優しく政治にも手腕を発揮して、ロンサール一番の乗馬の名人だ。
あの日も当時持っていた権力をすべて使ってお前とお前の母の下へと総てを投げ捨てる覚悟で向かったんだ。
お前は父親のフリードリーンが総てを掛けて助けたと言うのに何をそんなに恐れる事があるんだ?」
顔こそ見えないが、がたがたと震えるエンバーに何をそんな恐ろしい物があるのかと言う様に誰もが黙って様子を眺める。
話しだしてくれるのは無理だと言う様に辛抱して待つ中、ガーネットがすぐ隣に座ってエンバーをあやす。
もう怖い事は何もないんだと言う様に、お前はロンサールの子なのだから胸を張れと優しく諭すガーネットにエンバーはその胸ぐらをつかんで
「俺が……殺したんだ……」
絞り出すような声に息を呑んで、その意味を考える。
「エンバーが……なぜ?誰を?」
クロームの驚きを隠せない声に
「出会った時にはもう魔物のせいで死にかけていたんだ!
片足を失くしてて、腹からも血が流れてて止まらなくて、まともに呼吸も出来なくて止めをって言われて!
魔物にではなく友の手で終わらせてほしいって!!!
これも形見じゃないが受け取ってくれって大切な物なんだって!!!
あの時の騎士は自分の事は忘れてかまわないって!!!
この宝石を持つ者がここに来た事だけを覚えていてくれって!!!
それ以上の幸せを、私は望まないって、だから!!!」
誰もが呼吸を忘れて慟哭と共にあふれ出す叫びにエンバーにかける言葉を失う。
そんな事があったんだと言う様に胸元から取り出した宝石をクロームに押し付けるように見せつけるのを辞めさせるように、ガーネットがそれ以上思い出させないようにとエンバーを抱きしめて黙らせてしまった。
「辛かったね。
お前が王都に来る前にそんな事があったなんて想像もしてなかったよ。
その石と剣を持ってるから無事フリードリーンに会えたと思っていたが……」
「知らなかったんだぁぁぁっ!!!」
心の底からの悲鳴に誰もが言葉を失う。
母親を目の前で魔物に食われ、初めての人殺しが顔の知らなかった瀕死の父親への救いだとは誰が想像するか。
「ああ、もういいんだ。
エンバーが苦しむ事はもうないんだ。
お前はもう散々苦しんできただろ?
今も夢を見ながら泣いてる事だって知ってるんだ。
誰もお前を恨んでない。
むしろフリードリーンを、お前の父を救ってありがとうと我々は言うべきなんだ。
だから、少し休むんだ」
ガーネットの言葉と同時にすーっと意識を失う様に眠りについてしまったエンバーを横たわらせて毛布を掛けていた。
言葉を発する事が出来ないままぽつりと俺は呟く。
「エンバーって俺の世界じゃ残り火とか思い出の名残とかそう言った意味があるんだ。
あの村の唯一の生き残りで名前がエンバー・ラスト。
最後の残り火って随分嫌味な名前を付けたなって思ったけど……」
意味もなく口に付いた言葉に返ってくる言葉はなかった。
みんな突然現れたロンサールの正当の王位後継者第一位の存在にどうするべきかと集まったは良いが、想像外の過去の出来事に誰もがエンバーをどう扱うべきか頭を悩めるなか一人、一人と部屋を出て行ってしまった。
「すまない。少しエンバーの事を考えさせてくれ」
そう言ってセイジを連れてクロームは出て行ってしまった。
「じゃあ、ディとブレッドも仕事に戻って。
僕が様子を見てるよ。
何かあったら誰かを呼ばせに行くから」
強制的に追い出されてしまった室内にはエンバーとランとガーネット。
どうなるか不安を表すようにブレッドが黙って溜息を零していた意味を俺は想像できなかった。
「随分辛い生き方をしてきたんだね」
『それでもお前に比べたら随分幸せな生き方じゃないか』
シュネルは人の姿に戻り涙を流しながら眠るエンバーの顔を覗き込んでいた。
「ランはこの生き様に驚かないのかい?」
「そりゃびっくりはしたけど、魔物に食べられそうになって一緒にいた子の足を引っ掛けて逃げたり、魔物から自分を守る為に逃げてきた子を締め出して餌に持って帰って行った合間に逃げ出したり、僕の代わりに誰かが掴まって餌として連れて帰って行くのを黙って見送っていたとか、そう言うのはよくあった事だから」
「ロンサール、ランの常識は我々の常識とは違う。
誰にも守られずに野生の生態系の中で生きてきたんだ。
親の記憶は片手で数える程度しかなく、家畜以下の奴隷生活だったんだ。
この子じゃエンバーの思いには寄り添う事は出来ないぞ」
「……って言うか、あんたらが可愛がって来たんじゃないなんて」
「出会った時はただ生きていただけの人の形をした生き物だ。
我々はこの子に命を受けて生まれた喜びを教えている途中だ」
「なるほど。
だからちぐはぐなんだねぇ。
あたしを倒すほどの戦闘力を持ちながらもどこかガキっぽいのは正しく順序を持って育ってなかった証拠か?」
「知識を詰め込んだのはブレッド達だが、成人するまでに総じて大人になれれば問題はないだろう?」
「そんな物かねぇ」
肩を竦めるガーネットはエンバーの髪を優しくなでつけながら顔を覗き込む。
「って言うか、もう目を開けてもいいよ。
ここにいるのはお前を否定しない者だけだから」
言えば身じろぎはするものの頭を上げようとはしない。
「これは何て魔法?」
眠りについたかと思えば既に目が覚めている状態に気付いたランが人払いをしたのだが
「単に瞬間的な気絶をするだけの魔法さ。
眠りの中意識ははっきりしていて、寝たふりで誤魔化すにはちょうどいい魔術だよ」
「なんか便利そうだね」
へーと驚きの簡単を零す中、ようやくエンバーは起き上がってきて
「何でもっと早く教えてくれなかったんだ」
「悪いな。あたしだって色々な誓約に縛られている。
ロンサールをあれ以上酷い状態に私自らするわけにもいかないが、今は別の盟約をもって出来た事だ。
ランを恨むのは筋違いってものだぞ?」
「そりゃ解ってるさ。
あんたがあの精霊ロンサールって言うのだけで俺の憧れがぶち壊しだし、死んでも言わないつもりの事を、誰にも言った事のない俺の過ちをぶち撒いちまったし、親父が発覚したと思ったら親友が従兄弟だとか、いきなり王位継承者とかわけわからない事の連続なんだ……
何で順序を持ってゆっくりと教えてくれないんだっていうの」
疲れたような口ぶりに確かにそんな事が一気に起きれば恨み言の一つや二つは言いたいだろう。
それでもこの短時間で理性を取り戻せたのはさすがと言うか、先日の戦いの中でも一番理性的だった彼の強さはそんな過去が作り上げた物だと思えば少し寂しい物を感じていた。
ぐったりとしたと言う表現がぴったりのエンバーにランはアイテムボックスにしまってあるおやつ袋を取出し、テーブルをベットの側まで引き寄せてそれらを並べる。
果物からクッキー、飴にシロップ漬けと部屋の片隅にあった水差しにを持ってきてコップに茶葉を淹れて注ごうとすればエンバーが苦笑しながら水差しを温めてくれてお湯にしてくれた。
「水の魔法は使えないが、水を熱くする事はお手の物だから」
誰とも視線を合わせないまま、まだ透明に近いお湯にそっと口をつけてゆっくりと息を吹き付けて飲みだした。
だけど誰も話をする事が出来なくて、長い間沈黙が支配する狭いとは言い切れない室内で
「そういやアリシアがエンバーの事半妖って言ってたけど、どういう事?」
シロップ漬けの木の実を乾かした物を口へと放り込む。
真っ白な糖衣を纏うナッツは軽い音を立てながらランの中で砂糖のように溶けて行く。
甘く至福な瞬間なのに、この沈黙にざらりとした食感を流すようにまだしっかりと出てないお茶を口にする。
茶葉を糸で縛り、お湯を掛けて水分を含むと同時に茶葉が花開くような工芸茶はすっきりとした甘みと香り豊かなお茶で、甘い物好きのランでもこのお茶は砂糖もミルクも入れずにそのまま飲むのが好きなお茶の1つだった。
ランがシロップ漬けを食べた事でエンバーもためらいながらも口にして行くのをどこかほっとしたように見守っていれば
「文字通り妖精と人間の間に出来た子供の事を言うんだ。
別に人間に限らないが、妖精が他の種族との間に儲けた子供の事をさし、それが魔族なら半魔と言うんだ。
エンバーは半分妖精だから、精霊騎士の側にいるとほっとするのは妖精としての習性だから仕方がない。
前にエンバーには話した事あったと思ったが、ロンサールの王族は私と初代の王との間に儲けた子供が代々引き継いでいる。
その中に稀にあたしの本性と同じ金の瞳と金の毛並みを持った子供が生まれてくる。
見た目その物で生まれてくる子もいればエンバーのように魔力を受け継いで魔力が高まった時に黄金化するパターンもある。
アズライン国のコーラル姫って言う何とかって言うギルドのSSランカーも半妖だが、それほど大した事のない妖精の血を受けているがそれでも強いぞ。
一度手合せしてみる事を勧めるよ」
「手合せは別にいいけど、あの話は本当の事かよって言うかガーネットの髪は赤いのに黄金?」
エンバーの疑問にロンサールは笑い
「この姿は一時の仮の姿だ。
たかだか100年生きる事も出来ない人と合わせる為に十年ぐらいで姿を変えながら人間の生活の中に紛れ込んでるのさ」
このようにと言って、次々に少女から老女まで姿を変えて髪の色も変えて行けばこの姿が一時の物だと言う様に最後は見慣れた姿に戻っていた。
「だから、お前は正真正銘、私とロンサールの子供なんだよ」
愛しいと言う様にエンバーの頭を抱き寄せれば複雑そうな顔のエンバーは何所か逃げようとしているようにも見えるのだがロンサールを押し返してたがびくともしないのでじゃれ合っているようにも見えた。
だけどランは知っている。
ロンサールの馬鹿力加減にエンバーのあれは本気で押し返しているのだと理解すれば一ミリも身動きとれない様子を哀れと思うも微笑ましく見守る事にした。
「ところで僕は今から精霊騎士として聞くけど、ロンサールの地図と王位継承の権利を持つエンバーが居る。
エンバーが約束の地に行けばロンサールの契約は復活するの?
もしそれが叶うのなら僕は手助けをしたいんだけどどうする?」
「どうするって……」
「エンバー、お前が決めろ。
お前次第でロンサールの契約は復活するし、新たにあたしが得た力でもう一度ロンサールを、今度こそ精霊とその地に住まう者達と手に手を取って行く契約に帰る事も出来る。
何もしてやれなかったお前の為にあたしはお前の希望に沿ってやりたい」
「だって。どうする?」
「どうするって言われても……」
シュネルはいつの間にかまた鳥の姿になって僕の頭の上で座っている。
少し肌に突き刺さる爪と足の裏はひやりとするのに、腹部の暖かさの心地よさの幸せに鼻歌さえ歌ってしまいそうになる気分を抑えていれば
「所で今のロンサールってどうなってるんだ?」
「そういやお前はここんところずっとハウオルティアだったかねぇ」
「じゃあ一度ちょっと見に行ってみようか?」
気楽に言うランにエンバーは笑う。
「ちょっとって言う距離じゃないだろ」
確かにどうなってるのか興味は尽きない。
俺が部屋を借りていた食堂は健在か、紅緋の拠点はまだ残っているのか、蜃気楼のように白い大きな鳥が翼を広げたような優美な城がどうなってるのか気にならないと言えば嘘になる。
「まぁ、ちょっと見て見たいけどな」
本心を悟られないように小さなリンゴをかじりながら言えば
「じゃあちょっと行こうか!
リンヴェル」
「お呼びでしょうか?」
足元から影が伸びて一人のメイドの姿をした髪の短い見慣れた姿の女性が立っていた。
「悪いけどブレッドに連絡して。
エンバーとロンサールの様子をちょっと見て来るって。
晩御飯までには帰るって伝えておいて」
「承知しました。
ですが、エンバー様の体調はよろしいでしょうか?」
事務的に俺の顔を覗くカヤ事リンヴェルは……もう俺の知らない女性と言う様にどこかラン
が気遣っているから気遣ってますと言う顔をしていた。
「俺の事は大丈夫だけど、本当に今からロンサールに?」
「シュネルならすぐだよ」
「だったら向こうに着いたらあたしを呼んでおくれ。
フリューゲルの翼なら一緒に駆けて行くより呼び出してもらった方が早いからね」
「判った。じゃあシュネル、超特急で行こうか!」
ぴゅるる……
鳥らしく鳥の声で返事をするにはあまりに美しい声だったものの、目の前にはその鳥と人間が交わった姿があった。
「この姿も三度目ともなるともう驚かないな」
意外と見慣れる物だなと感心して言えばランは少しだけ目を瞠り、笑い声を立てながら「じゃあ行ってくる」とそれだけを言って窓から俺を抱え上げてその翼で羽ばたくのだった……
それから10分も時間は過ぎてはいなかった。
俺は砂漠の上で両手をついて思いっきり先程食べたリンゴとナッツとお茶を吐き出していた……
「お、おま、もうちょっと普通に飛べないのか……」
そう言ってもう一度空っぽになった胃から何かを吐き出すように吐くも当然何も出ない。
ブレッドの気分がようやく理解できたと、これは仕方がないと言う様にさらにもう一度何もない空っぽの胃から何かを吐き出すように気合を入れてえづいて見せた。
「普通にって……」
「いいか?いきなり最高速の三回ひねりで急上昇したかと思ったら地面すれすれまでの自由落下とか連続大回転しながら飛んだりする必要性って、普通の鳥がそんな飛び方しないだろ?!」
「えー?シュネルはいつもこうやって僕を楽しませてくれるよ?」
「いいか?絶対これはいつか事故るから誰かと一緒の時はやるの禁止な?」
「えー……」
「不満なら俺は帰りは道歩いて帰る。途中で干からびてやるから、それが嫌ならタンデムする時は二度とやらないように」
「なんかよくわからない理屈だけど、誰かが一緒の時はしないようにするよ」
折角なら楽しんでもらいたかったのにとのサービス精神からしょぼんと言う様に肩を竦めるランはセラファザードと声を掛ける。
すると足元からさっきのカヤ同様しゅるんと姿を現して顔を顰めつかせる。
きっと足元に吐き出した汚物を見ての物ではないと思いたい。
どうでもいいと反らされた視線はゆっくりと周囲を見回し
「知っている場所がこうなると寂しいもんだね……」
「って言うかここ何所?
目印になるようなものないからなんかのシュネルの案内で建物っぽい場所に降りたんだけど……」
不安を隠さない顔でランは周囲を眺めれば俺は見覚えの屋根が見える……
美しいはずだった建物を見てから恐る恐ると言う様にガーネットを見上げる。
まさか、そんな……
思わず零れ落ちる言葉にガーネットは頷いて
「ここはロンサールの王宮だね。
見事街は砂漠の中に埋もれちまったか……」
見渡す限り砂塵の荒野と、そこからポッコリと突き出したような砂まみれの建物の屋根に俺でなくてもランもぽかんと聞いた言葉と想像する建築物と見ている物が一致しないと言わんばかりに言葉を失っている。
屋根には窓が付いていて、風でガラスも破られていた場所から侵入を試みるも通路の奥にあったはずの下の階に降りる階段は既に砂で埋もれていた。
完全に砂に呑み込まれた様子に、上に上がる階段を見付けて昇って様子を伺うも人の気配は全くない。
安全を兼ねて黄金化して気配を尖らせたうえで眷属達を呼ぶ。
眷属達は嬉しそうにガーネットの前で子犬のようにはしゃぎ回る様子に、ガーネットがロンサールなんだからと思えばこの光景も何でこの狼の眷属なのか納得できた。
「この犬はセラファザードの下僕なの?」
「眷属って奴だ。
フリューゲルの所の両翼のウェルキィの下に片翼のウェルキィが居るって言うのと同じ関係だ」
「ふふっ、初めて見る子達だ。
僕もセラファザードじゃまだわからないか。ロンサールと仲良しになったんだ。よろしくね」
毛の密な耳の裏側を掻いてあげれば嬉しそうにランに身体をなすりつける眷属達は苦笑するガーネットによって追い払わられる。仕事をしておいでと。
すぐに眷属達は散ってドアの入り口を一つ一つ鼻で嗅ぎ回り、何かがあるようでドアを懸命にひっかいていた。
彼らが開ける事の出来ない代わりに俺達が代わりに開けて様子を伺えば、そこにはいくつもの亡骸が横たわっていた。
餓えたと言わんばかりに痩せ衰えた身体で親子なのか子供を抱きしめて眠るような姿の骸が並んでいた。
あまりの熱さに身体の水分が奪われた、それともそんな状況を通り超えてしまっていたのか干からびた遺体には虫さえ寄り付いていなかった。
別の扉を開けても同じような光景が続いていた。
砂の匂いが充満する室内を次々と確認すれば最後の部屋は奇跡的なまでに砂の汚染がされてなく、一人の男が机に向かって椅子に座っていた。
目の前の机には一通の手紙が置いてあり、ランがそれを読み上げる。
『この国に訪れし者へ』
そう手紙の始まりには書いてあった。
ランは一度俺達の顔を見回してから
『この国はもうすぐ砂漠に呑み込まれてしまう。
それは我々、この王都に残された者達が精霊ロンサールの使いでもある王族に手を掛けた罪によるもの。
ロンサールの民はハウオルティア、ウィスタリア、アズライン、ドゥーブルへと塵尻になってしまったが、我ら城に乗り込んだ者達はどういうわけか城から二度と出る事が叶わずここで全うするしかない運命を得てしまった。
これが精霊に愛されし王族を手にかけた呪だと言う事は理解した。
食料は尽き、井戸は枯れ、城はどんどん砂に呑まれて行く。
浅はかな我々が起こした罪は計り知れない代償を齎してしまった。
もし、ロンサールの最後の王族……
ハウオルティアへと向かったクローム王子がご存命ならこの手紙の内容をどうか伝えてほしい。
精霊に守られし王族に刃向った我々が犯してしまった罪を、そしてこのような結末、侘びて死しても許される事ではない事を判った上でも言わせ欲しい。
愚かな民が犯した罪をどうぞお許しください。
そして、ロンサールから遠い離れた地でもどうかロンサールの復興を願っております。
ロンサールの民代表 バレット・クーバー』
読み終えた手紙を「はい」と何の感情もなく俺へと渡してくれた。
癖の強い文字と難しい言葉をよく読めたなと言うのが第一印象の手紙だったが、
「聞いた事のない名前だな」
ガーネットでさえ思い出せない名前に俺だって思い出す事も出来ない。
「つまり、ここにはもう誰もいないって事?」
「だな。だけど、ここからすぐ近くに地下水の流れる洞窟がある。
ひょっとしたらそこに誰か居るかもしれないから足を運んでみても構わないか?」
言ってみたものの外は照り返しの強い日差しと体温を遥かに超えた気温。
今行くべきかどうするかと思えば
「アウリールいる?」
「ここに」
出てきたのはドラゴンのロンゲのにーさんだった。
「ここからすぐ近くに水の流れる洞窟があるんだけどどこにあるか判る?」
「いやいや、聞けば分かるってもんじゃないだろ」
呆れてつっこむもあまり表情のないロンゲのにーさんは驚く事にコクンと頷いた。
「今地面に沿って探査魔法を飛ばしてみたらいくつか見つかったな。
一番近い所で言えばここから真北にある。
歩いて半日ほどもないが、外は熱いから連れて行ってやろう」
「ありがたい申し出だけどどうやって……」
と問う前に既にドラゴンの姿になったロンゲのにーさんの背中にはすでにランがよじ登っていた。
「二人とも早く乗ってよ」
早くと急かすランに急かされるように俺もその背中を登る。
青空を切り取ったような美しいドラゴンの鱗一枚一枚に俺の顔が反射して映る。
美しい鱗だとこぞって各国の王がドラゴンの鱗を所望する理由も納得できるが、つい先日このドラゴンのおっかなさを体感したばかりなのだ。
間違っても敵にしてはいけない相手が居る、いきがって剣を向けてはいけない相手がいるって言う事を肌で感じた瞬間だ。
「このぐらいの距離ならあたしは走って追いかけるよ。
行先ぐらいランの気配を追っていくから大丈夫さ。
クヴェルが居るから心配はないが何かあればすぐ呼ぶんだよ」
「うん!
じゃあ、先に行くね」
ふわりと浮遊感に身が包まれる。
それから風の音を聞きながら照りつける容赦ない日差しの下を移動する事数分……
地面からパックリと割れた裂け目を発見して俺達はその目の前で降り、陽射しから逃げるようにその中へと潜り込んだ。




