フリューゲル式戦場で……
戦いが終わるまでなるべく早く更新したいっす(希望)
戦場の真ん中に居るブレッドの代わりにジルが新たに指示を出す。
何所が手薄か、何所が苦戦してるか。
オスヴァルトにも同じように見分けろと言うも、本当に戦場は初めてなのか普段の寡黙なれどテキパキと指示を出す姿はどこにも見当たらない。
あたふたとするオスヴァルトにどこを見るのか指示を出しながら改めてオスヴァルトが指示を出しても何も問題がない辺りジルの指示の上手さを認めるしかないと言う物だろう。
「だけど、脇の通路からの侵入が多いですね。
どこかで決定的な決着をつけないとランやブレッド、フリュゲールは良くてもだいぶ動きの悪い方達が目立ち始めましたね」
魔力切れが目立ってきたのだ。
ルゥ姉のような魔力馬鹿やシアー、エンバーはともかくクレイ辺りが既に肩で息を切らしている。
きっと初めてだろう対人戦の緊張から無駄に体力の消費ばかりしているようだ。
酷い怪我はまだ誰も見当たらないが小さな怪我は少しずつ目立ち始めていた。
「魔力に頼り過ぎた戦いをしているのはもちろん室内戦と対人戦の経験不足ですか」
ジルの判断に違うとは言えずに唇をかむ。
「では、我々もそろそろ動きましょう。
何時までもここに居ては役立たずになるので」
そう言ってにこやかな笑みを浮かべればブレッドから指示を貰ってるのでと
「ブリューグラードはここでどうか姫をお守りください。
アメリアさんもカヤさんもご一緒にお願いできましょうか?」
「戦う事は苦手ですが、守りに関しては多少の自信があります。
この娘は少々寝ていた方がよろしいでしょう。
お任せください」
小さく頷くブリューグラードは細く美しい指先でカタリーナの頬を撫でた後に血で汚れたままの腕で抱き寄せる。
す……と瞬間的に眠りに落ちてしまったカタリーナの乱れた髪を優しい手つきで整えるその横でオスヴァルトは私も一緒に行くのですか?と言うどこか泣き出しそうな顔をしていけどさらりと無視をして
「あの、ここが無事なら私もお力添えできますので!」
カヤが手伝うと言う。
「どういった事をするのか判ってますか?
この状況でたった一枚の地図を探すのですよ?」
「地図?
精霊地図を今この状況で?」
俺は何でこんな時に正気かとジルに考え直せと言うも
「何度も言ったでしょう。
我々の行動を正当化するには地図を得る事。
この国を我々が完全に支配した事を周囲に認知させる為の方法の一つです!」
「でしたらカヤをお連れ下さい!
そう言った探し物こそ得意です!」
言いながら床にどこからか取り出した剣で傷をつけながらリーナ達を囲む。
そこに何か祈るように魔法を掛ければこれで大丈夫ですとにこやかな顔で立ち上がり
「探すとすると地図の目星はついておいでですか?」
ジルに向かって顔を上げるカヤに
「たぶんブルトランの王の側にあると思います。
身に着けているか、玉座の付近のどこかに。
まだこちらに来てあまり時間を過ごしてないので安心して隠せる場所を知るには時間が足りてないでしょうとのブレッドの分析です」
言いながらも玉座の背後にあるブルトランの国旗辺りが怪しいと思っていると言う様に視線を上げればカヤも頷いて
「貴重な物ほど自身の側に起きたがると言う心理ですね」
なるほどと言いながら壁際に沿って玉座へと向かう。
途中ルゥ姉とすれ違ったが、心配そうな瞳を一瞬俺達に向けるも直ぐにやってくるブルトラン兵についにキレて
「ここから先は火をくぐって来てください!」
高火力な炎の魔法でドアから外に向かって炎の海を作れば、バタンと閉ざされた扉の向こうから聞くに堪えない悲鳴がドアが閉ざされても飛び込んできた。
「ほどほどにしろよ?」
「何を言ってるのです?
こんな時のシアーと言う便利な言葉があるではありませんか」
びくりと身を振るわすシアーにあの人達の命は貴女の頑張りにかかっていますと目礼をしておけば涙を流して笑っていた。
器用だなと感心するも、先導するジルは襲い掛かってくるブルトラン兵を次々に斬り付けて行く。
追われないように手の筋を切り、足の腱を切り……
「こんな医者に掛かりたくねえ……」
「ははは、戦場で医者なんて選べませんよ。
まず医者に面倒見てもらえる方がましだし、薬があるとは限らなのですから」
「治癒魔法が有って良かったと思います」
オスヴァルトさえジルの無駄に命を散らさない戦い方につばを飲み込んでいる始末。
チラリとシアーの様子を見れば、彼女は防御結界を張り、その範囲を広げて周囲に群がるブルトラン兵を壁に押しつぶして身動き取れなくなった所を切りつけると言う斬新な戦い方をしている所を見てあんな戦い方もありなのかと頭が痛くなってきた。
「あはは、ハウオルティアの女性はなかなかどうして大胆な戦い方をする方ばかりですね」
にこやかに笑うジルにジルと俺の間に居るカヤは小さな声で
「私もその中に入っているのですか?!」
聞きたいのに聞けない状況に何度も訴えかけていたがついにジルから返事はもらえなかったようだ。
俺でさえやっとの所で聞こえた言葉なのだからまず無理だなと心の中で諦めろと訴えて見た。
やがて玉座の雛壇を上りかけた所でブレッドとランがひな壇にブルトラン兵を上げないようにと防衛ラインのように立ちふさがっていた。
「先程から合図をしてないのによくお互い動きが判りますね」
驚きの声はオスヴァルト。
ジルは苦笑しつつも
「すでにブレッドが考えていた作戦に沿っての行動です。
怪我人や、ディがブルトランを攻撃できなかった事も踏まえての作戦です。
あらかじめ決めて在ればその作戦に従うように動くだけの事。
我々はブレッドの駒です。
駒は与えられた指示を良く考えて行動すればまず作戦は失敗しません」
「与えられた指示を行動すること自体が難しいのでは?」
オスヴァルトの意見に
「ブレッドは決して無理な指示は出しません。
多少卑怯でも確実に生き残る方法を与えてくれます。
何せ、彼には部隊全滅と言う大失敗と言う苦すぎる経験があります。
よくもまぁまた剣を持って戦場に立てるなってぐらい酷い姿でしたが、だからこそ確実に生き残る方法を私達に与えてくれます。
勝ち負けよりも生き残る方法を作戦として指示します。
我々はその思いを良く知っているので、駒として彼の指示を絶対に遂行する。
それが我々の役目であり誇りなのです」
ブレッドへの信頼を語るジルは玉座の裏の絵画の枠を壊したり絵画を破いたりと大胆な様子に俺は芸術が……と手を伸ばすもびりびり破いたり、豪奢なカーテンも剣で切り刻んだり、カーペットさえめくったり切り刻んだりとやりたい放題だ。
「ジル、地図が……」
ちょっとそれは本当に探しているのかと手を伸ばして止めようとするも剣を振り回す彼に手を伸ばせないで居れば
「本物の精霊地図は火でも燃やせず、ましてや武器で切り刻んでも傷一つつく事はありません。
なので、思いっきりやっちゃって構いません」
構いませんと言われてもと悩んでいる間に
「ジル!」
ブレッドの声に部下の方がブルトランの王の身体を運んできた。
「私はこちらを改めますので皆さんはそのまま探してください!」
カヤが花瓶を壊したり、謎の置物を押し倒して破壊したりと大胆な破壊活動についにオスヴァルトも顔を引き攣らせながら飾られていた国旗やらタペストリーなどを燃やしていく。
どう見てもやけっぱちだなと幾重にも重なるカーテンを切り刻みながらどこかにある地図を探す。
ジルは恐ろしいほどの手際の良さでブルトランの鎧を剥がしてはこっちに来ようとする兵士に向かって投げつける容赦なさに目が点になる。
敵さんからも「えー?」と見守る視線を幾つも浴びていたがブレッド達は一切気にしないように剣を振るう。
「お前らよそ見するな集中しろ!」
クローム達に飛ぶ叱咤する声にだがと何か言いたげだったが
「後ろからまだまだ飛んでくるぞ!」
そう言う前にブーツが飛んできて、一人のブルトラン兵の顔面に着地していた。
「いいか!前も後ろも敵だらけだ!とりあえず目の前の敵に集中しろ!」
背後からは仕方がないと言う言葉のフリュゲール騎士の言葉に誰もが無理やりこの微妙な空間を無視する事にした。
「ブレッド!お持ちではなかった様子!」
横目に下着はもちろん総てをはぎ取られた姿に幕やカーペットの切れ端を掛けてやるのが良心だと言う様にオスヴァルトもカヤも一緒になって掛けていた。
「相変わらずフリュゲールの戦場はどこかずれてますね!」
杖から剣に持ち替えたルゥ姉はランと一緒に防衛ラインの維持を務めていた。
「ランが出陣する戦場だ!
まともなわけないだろ!」
ブレッドの叫びにフリュゲールの騎士の人も頷く様子にランは大層ご立腹のように力任せに棍を振り回して「そんな事ないよ!」と否定していたが過去に何があったのか聞きたいような聞きたくないような不安しかない。
だけど防衛には敵の戦力の三倍が必要と言うセオリーがある様に……いや、逆だったか?
とりあえず三倍必要じゃないが、相手の本拠地に乗り込んだ俺達はただただじり貧になって行く一方の為にブレッド達もひな壇に押されるようになってきた。
「ブレッドどうする?!
アウリールを呼ぶ?!」
「あいつらは呼ぶな!
城が崩壊する!」
確かにと頷くジルはこうなると使えない方ですよね?と笑いながら玉座を蹴り倒していた。
さすがにと言うか何と言うか、一瞬この場から音が消えたような気がした。
気のせいでありたいと思っている。
金箔を貼られ、いくつもの宝石が嵌められた玉座を足蹴にした挙句に体重を掛けて解体している姿には、いずれ俺が座るんだと息巻いていた敵兵の将でさえ顔を真っ青にして固まっているのだからどれだけ衝撃な光景かは言うまでもない。
「まったくどこに隠したのでしょうか」
一仕事したと言う様にふうと息を吐くジルの最後の仕上げが仕上がった所でここがハウオルティア時代から続く豪華絢爛な玉座の間だとはとても思えない廃墟が出来上がっていた。
元ハウオルティア騎士の人も呆然と何もなくなってしまったひな壇をただ眺めるのを紅緋達がフォローする。
他国であれど玉座の間の神聖さを知る雌黄ですらどこか呆然としている。
俺は……
初めて見る城の中なので全くもって関心はなかったが、それでも黄金の椅子が破壊されていく様子にはただ見守るしかなかった。
俺が王様になったとしたらどの椅子に座るの?
と言うくらいの受け継いでいくべき美しい贅を凝らしたイスだったのにと少しだけ羨むようにジルを睨んでしまえば、椅子もカーペットも何もなくなった場所に違和感を覚えた。
傷一つ無く鏡のように磨き上げられた白地の大理石が一枚だけ角が掛けていたのだ。
場所は玉座の真下。
カーペットを掛けられ直接椅子が当たったりする事もない場所なのにと思ってやっと気が付いた。
剣を取出し、その角に剣先を当てる。
俺の仕種を見てジルがすぐに壊れた椅子の足を利用して梃子の原理で大理石のタイルを剥がせば、そこには一枚の額に嵌った地図があった。
本物かとジルを見れば、彼は容赦なく剣を垂直に叩き付ければ額に嵌められたガラスが砕けて額も折れ曲がる。
だけど剣の先にある地図には穴が開くどころか傷一つつく事もなく、類似する物がもう一枚出てきた……
地図に飾られた石が一つはハウオルティアに、もう一つはブルトランに……
かつて見たフリュゲールの地図はその地に石が飾られていた事を思い出せば
「ブレッド見つけました!」
「ラン!地図の確保!」
「させるか!!!」
ブルトランの、次は自分が王になると言った男がひな壇を遂に突破した。
ランやブレッド達防衛ラインを無視してまっすぐ俺達の地図に向かってくるあたり、この男はこの地図の重要性を知っている。
「ディはランと合流して!」
カヤと二人でランと合流するための突破口を開こうとするも既に囲まれる始末に俺は容赦なく水の魔法を使って押し流す事に成功をしていた。
但し一緒に助けに来たランもブレッドもエンバーもルゥ姉もみんなまとめて流されていたけど、そこは仕方がないだろうと言う物。
「ふふふ、どれだけ水の威力が恐ろしいかその身に教えてくれるわ!」
かつて自分が水に流された膝下ぐらいの水量とスピードでのイメージはウォータースライダー化したひな壇に皆さんお約束のように流されながらも昇ってくる根性にジルはカヤとオスヴァルトに壊して砕けた物達を投げつけるように指示を出す。
「一人でもこちら側に来させないように投げつけてください!」
楽しそうに高価な花瓶だった物とか金箔の張られた木片の残骸とか投げつける様子にオスヴァルトも涙を零しながらその指示に従っていた。
何所までも容赦ない人だとジト目で見てしまうのは仕方がないだろうがこのままいつまでも続けるわけにもいかず、やがて途絶える魔力にどうするか悩んでいる合間にも風の魔法の付与により、宙を飛んでやってくる者もいるが、空中戦なら圧倒的優位のシュネルを始めとしたシェムブレイバーの容赦ない攻撃で墜落して流されていく様に空中戦はほっておいても大丈夫だろと目の前の様子を睨みながら考えないようにする。
ぴゅるるぴゅるると何やらシュネルはせわしなく文句言っているようだが生憎シュネルの言葉を翻訳する能力はないので無視していれば、翻訳しようとしたランがまた流されていった。
多分この事への苦情だろうと思えばほかっておく事を決定する。
自慢じゃないがそこまで器用にピンポイントで流す事は出来ないんだ、魔力もまだ当面大丈夫だから安心してと心の中で謝りながら一度お互いの距離を仕切り直す為にも水を多めに流して近寄ってくる者を排除する。
さすがと言うか無駄に色んな条件下での訓練をしているフリュゲールの騎士達はすぐに立ち上がって防衛ラインを作ってくれていた。
その上司達は流された先でここに来る前に兵士達を昏倒とさせ、それをドアの前にほうり投げて扉が開かないようにと土嚢代わりにしている。
扱い酷過ぎるだろうとつっこみたいけど、同郷の人はもちろん誰も何も言わない辺りあまりかかわりたくないのだろうと判断に、俺もその一票に投じる事にした。




