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1つの国の終わり方

ブックマークありがとうございます!

ラストに向けてお付き合いください。

目の前には俺が投げ捨てた剣を手にしたリーナがブルトラン王の胸に突き立てていた。


「何て事を!」


ランがリーナを力任せに引き離した所で、あわてて駆け寄ってきたエンバーとクレイによりリーナは後ろまで引き離されて、返り血で真っ赤に染まった両手を彼女は静かに見つめながら自分が何をしたのか理解するかのように涙をこぼしていた。


「こういう事が!

 親が子を、子が親を殺す事がないようにブルトランに止めをしないといけなかったんだ!」


ブレッドの叫びにリーナにこんな事をさせてしまったのは俺の責任だと気付かされる。

総ての罪を背負う者。

すなわち、他の者に罪を背負わせない者。

判っていたはずなのに、初めてその意味に気づかされた。

首が音を立ててるのではと思うぐらい歪な動作でリーナを見るも、彼女はもう俺など意識の外で、たった一つ求めた物を見つめていた。

彼女が求めていた物。

ただ一人の、自分の人生を捧げてきた父親だった。

剣を突き立てられたブルトランは横たわって涙をただ零すリーナに微かに音がする声で言う。


「どこかで見た事ある顔、だな……」


肺に穴が開いたのだろう掠れた声にリーナの頬に僅かな喜びの色が浮かび上がる。


「貴方の娘のカタリーナ=ヴィレン=ブルトランです」

「カタリーナ……」


呼吸の零れる音に苦しげな男は尚も言葉を紡ぎ、目を閉じる。


「知らんな。

 私には、子が多く、道具……に付けられた名など……

 一々……覚えておらぬ……」


エンバーに肩を掴まれていたリーナはまるで希望を失ったと言う様に崩れ落ち涙をただただ零しながら


「私はただ、ただ貴方に、たった一度でいい!

 貴方の娘として、父として認めてほしかった!!

 ただそれだけっ!!!」


静かな、でも強い思いの嗚咽に周囲は戸惑う。

メイドとしてずっと馴染んでいた少女がまさか敵国の王の娘と言う存在だとは、殺しに行く相手の娘だとはさすがに誰も気付いてないようで背後から意味を問う視線が突き刺さるが、哀れなまでに親に見捨てられた子供の慟哭に誰もが口を開けないでいる。


「僕に血縁の家族はいない」


静かなランの声が泣きじゃくるリーナの声をかき消すかのようにかぶせる。


「親の顔さえ覚えていないが、家族として愛してくれる人も家族として愛している人も両手で抱きしめられないくらい沢山いる。

 フリュゲールに来てこんなにも沢山の人と出会って、それだけでも僕はこの地に来てよかったと思っている」


語り出すランの言葉は何が言いたいのかと困惑する中


「本当なら僕はこの件に関して知った事じゃないと思っていたけど、カタリーナがあまりにも哀れすぎて貴方の勘違いを正さないといけないと僕は考えている」


「勘違い……だと?」


苦しそうにひゅーひゅーと息を荒げるブルトランに向かって


「おいでブリューグラード」


静かな声にランの足元から『はい』と言う美しい声が答えた。

ゆっくりと影が形作る様に、そして異様なまでの異臭と汚れきった光すら吸い込む淀みに誰もが吐き気を覚えて口を押えて押し留める。

それさえましな者もいるが、室内に瞬く間に充満する肉の腐ったような死の匂いと現れた姿に俺は思わず口元を抑えた手を降ろして……


「は、母上……」


そんな、とルゥ姉でさえ近寄って来た。


「グローリア……」


驚きから恍惚とした顔の代わり様に、初めて見る父の喜びに満ち下顔を信じられないと言うように泣き腫らしていたリーナは現れた少女のような面立ちの美しい顔を見上げて、悲鳴を上げる。

顔こそ死んだ母と瓜二つなのに、首から下が人の形を失っていた。

岩が侵食するかのように首から顔をめがけてごつごつとした物が今も成長していて、両肩から醜いまでの歪な岩のようなごつごつとした、ゴーレムと言う魔物が居るのならそのような太く重い腕はだらりと下げられていた。

下半身はマングローブの木の根のように、太く八方に地を這うようにうごめきながら美しい大理石の床を砕いて根付こうとする姿は正に魔物と呼ぶにふさわしい存在となっていた。

だけどそれに向かってブルトランは腹に剣を差したまま、今すぐに死にそうになっててもその魔物に向かって手を伸ばし、ゆっくりと、必死に全力で側に向かって這って行く。

うごめく太い木の根に叩かれても他には目もくれずにただひたすら側へと這って行く。

そんな男をリーナは涙も忘れ茫然とただ見守るだけ。

覚えきれないほどの娘と妻さえどうでもいいと木の根に拒絶されても得ようとする男の姿にただただ自分は必要のない道具だと知らしめされて涙さえ枯渇してしまうほどの悲しみに襲われていて、俺達はただその二人を眺めていただけだった。


そんな娘のすぐ目の前でゆっくりと、でもその美しい顔の魔物に手を伸ばそうと触れる瞬間ランはその手を返り血でさえ染められることのない美しい棍の先で叩きつぶした。


「僕の精霊に触れるな」


ぐちゃ……


骨の砕ける音と共にブルトランが絶叫して悶える様に転がれば、懸命に近寄った距離は振り出しに戻った。

温度と感情の無い瞳でブルトラン王を見下ろす初めて見るランの顔にぶるりと身震いをしてしまえば


「改めて紹介しよう。 

 彼女はブリューグラード。

 貴方達にはブルトランと言った方が早いだろう。

 精霊ブルトラン、それが彼女だ」


これでもかと目を瞠る男にブリューグラードと呼ばれた彼女はその体で自らブルトランの側に行き視線の高さを合わせる様に這いつくばるブルトランの顔を覗き込んで


「お久しぶりと言っても覚えてないでしょう。

 貴方が5歳を迎える前に王族の子供として与えられた試練の1つの試練の森以来の再会となります」


彼女はそう言って子供を慈しむ様に前髪を、頬を触れて


「貴方の勘違い。

 それは試練の森で貴方は約束してくれました。

 貴方は私の為に、暖かな暖炉の前で共に過ごそうと言ってくれました。

 10年を掛けてあの美しい城を私の為に立ててくれた貴方に、王になった暁には民の為に豊かな暮らしを願った貴方の願いを叶える為に私は契約に則り、凍てつく地の民の為に尽しました。

 ですが、偶然とはいえ瓜二つに生まれたハウオルティアの王女の姿に貴方はきっとおぼろげに私との出合った時を思い出してしまったのでしょう。

 思い出だけを頼りにそうだと思い込んでしまった貴方によって契約は歪められてしまいました。

 最後に記憶を消される試練の森での約束は互いに叶えられた物の、私の為の城はハウオルティアの王女の為に、そして豊かな暮らしの財となるべく我が生み出し鉱物達は民には行き渡らず貴方の娘から外の国に、そして復讐の為に我が力はこの国から流れ出て行くばかり。

 循環しない力に私は精霊としての力を失い、そして代わりに巡る貴方への恨みが今にも私を魔物に落とそうとしてます」


泣き出しそうな顔をするも堪える少女の顔立ちのブリューグラードはブルトランの王の顔をなぞり


「私の為に建てた城の肖像画を見ました。

 気づいておいでですか?

 あの瞳の色は私の色だと言う事を」


驚きに目を瞠る。

改めて俺もブリューグラードの顔を見れば、それは深い青にキラキラとした不純物を含んだラピスラズリのような奇跡の色。

俺やハウオルティアの血が流れるとするなら色は翡翠。

ブルトランは俺とブリューグラードを交互に何度も見て項垂れていた。


「幼いころからずっと出会う事を夢描いていたのは貴女だったのか……

 私はなんという過ちを……」


再度手を伸ばそうとするもランは再度容赦なくその折れた手を叩き落とし、ブルトランは崩れ落ちる。

けど、なおも視線はブリューグラードに縋り


「共に我らが国に帰ろう。

 二度とハウオルティアを欲しようとはしないから、この地に二度と足を踏み入れないと約束する!

 あの国に、氷に守られた国で共に!!!」


まるで捨てられた男が恋人に縋るようなそんな口ぶり。

だけどブリューグラードは目を伏せたまま何も答えず代わりに


「それは叶わない。

 ブリューグラードは既にブルトランの守護を辞めた。

 あの地に留まる理由はない。

 あの地にブリューグラードの愛を注ぐ理由はもうどこにもない。

 そしてブリューグラードは新たに別の盟約により僕の下僕となった者」


怒りよりもその言葉が信じられないと言うブルトランの瞳と同じように俺もランを見上げる。


「僕はね、ディと……船の上で出会う少し前に彼女と盟約をした。

 いや、させられたかな?

 彼女とブルトランの地との制約により、契約者と出会えるのは5歳未満の一度きり。

 そんな彼女が貴方の間違いを正すには総てを捨てて別の誰かに頼らなくてはいけない。

 僕は精霊の為に生きる精霊騎士。

 彼女は貴方にもう一度会えるのなら命さえ差し出すと言って僕と盟約をした。

 自分を好きにしていいと言うそこまでの思いに僕は既にあなたの居なくなってしまったブルトランに赴いて彼女と共にあの現状をこの目で見て、あの地に残された民の嘆きをこの耳で聞いた。

 民の為に使う資源も他国に流し、他国に流したとしても得る物は僅かな食料でもなく温かな暖でもなくハウオルティアを落す為の戦略。

 戦略の為に嫁がされた娘達もこの国から離れさせる為と言う親心でもないただこの戦いに口を出させない為の捨て石!

 民の為のブリューグラードの力は総て貴方のエゴの為に消えて行った!

 最後にとハウオルティアにも足を運べばあなたが最愛と言った彼女とよく似た人の首を自ら切り落とす所。

 ブルトラン、ブリューグラードは最後まで巻き込んでしまったハウオルティア、そしてディの母親の事を、そして逃げ出して隠された子供の事を心配して直接ブルトランに関る事を禁じられた契約すら無視をしてこのような姿になってもブリューグラードが愛したブルトランの民を守って来た」


あの時、船で出会ったのも最後まで船があったのも全て偶然ではなく俺の為に準備された事だと初めて知る。


「ブルトラン王、精霊にここまでさせておき、あまつさえ娘に親殺しの罪を着せるつもりか?!

 このままハウオルティアに命をゆだねてものうのうとその命は長らえるだけ。

 王なら最後の務めを果たせ!」


冷酷なまでの非情な言葉。

そんなと言う前にランの言葉に従うかのようにブルトランは胸に突き刺したままの剣を唯一自由な片手で力任せに抜く。

血止めとなっていた剣が抜けた事で口から胸からさらに血が溢れて目の前の白銀のブリューグラードを染め上げて行く。

力任せに抜いた剣を首に当てた所でブリューグラードが、岩のようなごつごつとした歪な腕を伸ばせば、嬉しそうにその腕の中に倒れて行く。


図体ばかりの幼い子供。


歪な容姿の彼女に血まみれの男は子供のような顔で笑みを浮かべ、初恋が実ったかのような幸せそうな口ぶりで


「フリューゲル、ブルトランの最期しかと見届けよ」


無言のまま頷くランの目の前で、それを最後にブルトランは自らその首を切り落とした……





歪な腕がその頭を抱きしめる。

身体はすぐ横にごろりと転がっていった。

あふれ出た血に洗い流されていくように彼女の体にまとわりつくような岩のような物が剥がれ落ち、木の根のような下肢はぼろぼろと腐り始めた側から崩れ落ち、やがて人の物へと変って行った。

呪縛が解けたかのように精霊としての美しい姿に変わっていく……


それはブルトランとの契約の総ての終了を意味していた。





「今を持ってフリュゲール国はブルトラン国に勝利宣言をする!」


ブレッドの大きな、そして険しい声に誰もがはっとしたかのように顔を持ち上げれば意識が切り替わる。

とても悲しい悲劇を見ていたはずなのに、ブレッドを始めとしたフリュゲール達は臨戦態勢に入っていた。

漸く気付く。

ブルトランの兵士達が俺達に向かって武器を構えていた事に。


「何で……

 どうして……」


戦争は終わった。

王も居ない。

何を持ってこれ以上戦いをしなくてはと考えるもあまりの悲劇に思考はまだ正常に活動しない。


「何で?どうして?

 ここからが戦争の本質だ!

 主を失った兵士がする事はただ一つ!」


「そう!

 どこまでも平和ボケしたハウオルティアの亡霊共よく聞け!

 我はブルトランの王に代わり次なる時代を導く者!

 ハウオルティアの残りとフリュゲール共々総てを静粛してあらたなブルトランとして大陸を制覇しようぞ!」


玉座は私の物だと高らかな宣言と共に今まで何もしなかった兵士達が鬨の声と共に一斉に新たに用意した弓で矢を放ち、室内戦だと言うのに容赦なく魔法も発動させてきた。

一瞬狼狽える俺の横をフリュゲールの騎士達が通り過ぎて行く。


「弓と魔法なら剣の接近戦の方が有利だ!

 陛下の剣術に比べたら子供のお遊び程度!

 恐れる事はない!

 足を止めるな!動き回れ!!」


ブレッドの鼓舞にフリュゲールの騎士は放たれた矢を、魔法をその剣で切り落としていく。


「ディ!

 戦えないのなら壁際に移動だ!

 ジル連れてけ!!」

「さあ、ブリューグラードもカタリーナ姫も」


ジルがそう言って二人を抱えて柱の陰に隠れていたアメリアとカヤの下へと移動してくれていた。

俺はいつの間にかオスヴァルトと共に邪魔だとリーナ達の所に移動されていたけど、目の前の景色にこんなはずではと言葉が落ちてしまう。


「何が『こんなはずでは』なのです?

 民を、そして兵をないがしろにした王の行く末としては当然ではありませんか。

 ましてやディが言うには王族の能力ですか?

 今まで抑え込まれていた物から解き放たれたのです。

 鬱憤は爆発するものでしょ!」


当然と言う言葉に確かにそうかもしれないけどと頭をよぎるがそれでもこんな風に戦いあう必要はないじゃないのかと思う。


「だからって殺し合う必要なんて!!!」


俺達を守るジルに訴えればそれこそ眉間を深く皺を寄せ何を言ってるんだと言う顔をしていた。


「ええ、あの方達が素直に負けを認めれば殺し合う必要なんてありません。

 そんな事無理な話だと言う事ぐらい最初から分かってたのではありませんか?

 想像が追いつかなかったとしたらそれはディの甘さの問題です。

 生き残る道を最後まで考え抜かなかった貴方の責任です。

 それにディこそ我々を何だと思ってるのです?

 我らフリュゲールは魔法がありませんが対人戦を得意とした国です。

 ランのやんちゃばかりが各国に知れ渡ってますが、それこそ魔法のような力押しではなくこのように剣技を駆使して闘います。

 それしかないので極めなくてはいけない国なのです。

 剣技には当然相手の意識だけを失わせる技術もあります。

 この場に居る者達は総てこのような事態を踏まえて鍛え上げてきた者達です。

 我々をただの人殺し集団と馬鹿にしないでください!」


ここまで言われれば否でも思い出してしまう。

この玉座の間に来る前にランはほとんどの兵士を昏倒しただけで、実際命にかかわるような戦い方をしていたのは俺達の方ばかりだと。

次第にどっちが凶悪なのかを考えて行けば顔が青くなっていく。


「お、俺……」


致命傷を与えなかった。

だが深い怪我をした者が何人もいた。

これから生きて行くには困難な者も何人もいた。

命を奪わなければいいのではないと言う主張は許される物ではなくて、大半を仕留めたランの技術に感謝よりも驚きが先に出てしまえばジルの冷たい視線に気づいて俺はそんな自分に情けなくて視線を反らせてしまう。


「反省会は後にしましょう。

 それよりも思ったより敵の数が多いです。

 分散させたのにこれだけ時間が経てば集まり出しましたか……」


戦いの真ん中に居る彼らにはこの状況を理解しているのかとジルは大きな声で


「ブレッド!これではらちがあきません!」


叫べばブレッドの頭上をくるくる回る光の柱が上る。

何かの合図のように戦っていたフリュゲールの騎士は数人に分かれて入口を固めた。


「ディ!後ろの入り口の扉を氷で固めろ!」

「戦う事が出来ないのならせめて守る事ぐらいは出来るでしょう?

 貴方の魔法で敵も味方も死傷者が減ります。

 やるべき事をするとはこういう事では?」

「あ、ああ……」


ジルが背中を押してくれる。

戦いあって傷つけあって殺す事だけが戦争ではない。

妨害して戦場に足を踏み入れさせない事も時には必要と言う言葉に従い近くの扉を氷で覆う。

厚さ数十センチとなれば早々に破られはしないだろう。


「もうなんなのよ!

 ここが一番安全だって言うのに全然安全じゃないじゃないの!」


頭を抱えて身を小さくするアメリアの様子を見てジルは笑う。


「残念ですが、一番の激戦区にもなるここが一番安全なのです。

 なぜならこの戦場が絶対勝つと言う保障がされているので」


最後まで娘と認められずに死に別れた父の首を抱くブリューグラートを目の前に悲しみに呼吸を繰り返すだけのリーナはただただ力なく壁にもたれているだけ。

カヤは体調は大丈夫なのか防壁を貼って飛んでくる矢や、軌道をそれた魔法を弾いてくれていた。

オスヴァルトはジルの横で混乱する戦場でも指揮する様を食い入るように眺めていて、ジルは一人でここにいる女子目当てに剣を振りかざす騎士の風上にも置けない者達を昏倒とさせて、俺はそいつらを縄で縛り上げていた。

此処でもか……

必要あるのか?と思うも敵の肉壁は案外効果がないので彼らの安全の為にも隅っこに転がしておいてくださいとの指示にジルってこんな人だっけと頭を捻りながらも言われた通り縛り上げる。

服は脱がさない物の縛った足と足を更に縛り、そして万歳の状態で縛った手と手を縛り上げて一本のロープのように結んでいく。

というか、こんな縛り方ありかよと思うも


「簡単にほどけないように時間稼ぎしているだけなので大した意味はありませんよ」


どこまでも嫌がらせなのでと言う男の本性に冷や汗が出る。


「それにしてもティルシャルが居ればこんなにも面倒なんてなかったのに」


今も剣の柄で一人の騎士を昏倒させて俺とアメリアに縛れと縄を渡してくれながらのボヤキに


「ティルシャルって女の人の名前よね?恋人?」


戦場と言うのに女の子と言うものはコイバナには沸かずにはいられないらしい。

ティルシャルがどういった相手かも知らないのによくそう言った話に繋がるなと感心さえしてしまうが


「ええ、かわいい女の子ですよ。

 甘えるのが下手なのでついつい甘えさせてしまうのが私のいけない所ですが、任務で離れ離れにならなくてはいけないので安心して任せられる方の所に身を寄せてますので長い事合ってないので忘れられてないか不安ですね」


苦笑するジルにアメリアはガッツリと食いついて


「手紙は書いてるの?放って置いちゃだめじゃない!このお仕事終わったらプレゼントぐらい用意するわよね?!ひょっとしてもう用意してあるの?!」


とまあ早口でエキサイトしながらもカヤよりも手早く縄で縛り上げて行く様はもう見事しか思えない。

苦笑して誤魔化すジルに大概にしろよと睨むも間違った事は言ってないと言う様に笑みを浮かべて


「早くあのもふもふに顔をうずめて眠りたいですね」

「もふもふ?!」


素っ頓狂なアメリアの声に


「光の加減では銀色の綺麗な毛なんですよ」

「プラチナブロンド!

 憧れるわぁ」


うっとりとするアメリアだが、戦闘態勢に入るとあの毛はどういった構造か知らないけど針金のように固くなって凶器そのものなんだとは黙っておいた。

こんな時ぐらい夢見てもいいんじゃねと黙っていればジルは何故かうんうんと頷いていた……






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